昨日はDay 56「配当金の受け取り方式」で、NISA口座の株の配当を非課税にするには、株式数比例配分方式を選ぶ必要があるという話をしました。 ほかの方式なら、配当6,000円から1,218円が引かれます。
今日は、その「引かれる1,218円」のほうの話です。 引かれたら、それで終わりなのか。
カナは昨日、受け取り方を株式数比例配分方式にすると決めて、配当の税金の話はもう片づいたと思っていました。

カナ「受け取り方式を株式数比例にしたら、あとは税金の話は終わりですよね?」
NISAの中なら、そうです。 でも、NISAの枠の外で持つ株の配当には、税金が引かれます。
その税金には、もう1つ選べるところがあります。

カナ「配当の税金って、誰でも同じ20.315%なんですよね?」
そこが今日の分かれ道です。 受け取るときに引かれるのは、誰でも同じ率です。
でも、最後にいくら払うことになるかは、人によって変えられます。

カナ「え、申告したほうが税金が安くなる人もいるんですか?」
サトル「配当は、申告しないで20.315%で終わらせることも、確定申告で総合課税を選ぶこともできる。総合課税にすると配当控除が使えるから、所得税の税率が低い人ほど、引かれた税金の一部が戻ることがある。」
種明かしです。 総合課税は、配当を給料などと合わせて、自分の税率で計算し直すやり方です。 税率が低い人ほど、20.315%より軽くなりやすい。 そこに配当控除が加わると、さらに差し引かれます。
逆に、税率が高い人は、自分の税率で計算し直すと重くなります。 だから「申告したほうが得」かどうかは、人によって違うのです。

カナ「引かれて終わりじゃなくて、自分の税率しだいで払い方を選べる税金だったんですね」
そういうことです。
ここからは、配当の税金の3つの選び方、配当控除の率、カナの数字で申告しないときと総合課税を比べるとどうなるか、どの税率から逆転するのか、総合課税を選ぶときの注意、そして私の100万円の記録に何を足すのかを、順に見ます。
配当控除とは?
配当控除とは、確定申告で総合課税を選んだ配当所得について、税額から一定の割合を差し引ける制度です。 国税庁は、対象を「確定申告において総合課税の適用を受けた配当所得」としています。
まず、上場株式の配当の税金の選び方は3つあります(国税庁のタックスアンサーNo.1330)。
- 申告不要:受け取るときに引かれた税金(所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%)で終わり。国税庁は「支払を受けるべき配当等の金額にかかわらず、確定申告を要しません」としています(持株3%以上などの大口株主は除きます)
- 総合課税:確定申告で、配当を給料などと合わせて自分の税率で計算する。配当控除が使えるのはこれだけ
- 申告分離課税:確定申告で、配当を給料とは分けて約20.315%で計算する。株を売った損と差し引きたいときに使う(差し引きは Day 58「譲渡損益と損益通算」で扱います)
配当控除の率
国税庁のタックスアンサーNo.1250は、課税総所得金額等が1,000万円以下の場合をこう書いています。
「配当控除の額=イ+ロ。イ 剰余金の配当等に係る配当所得の金額×10パーセント。ロ 証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得の金額×5パーセント」
国内株式の配当は「イ」なので、所得税から配当の10%を差し引けます。
住民税にも配当控除があり、1,000万円以下の部分に含まれる上場株式の配当なら2.8%です(指定都市の横浜市は市民税2.24%・県民税0.56%、練馬区は特別区民税1.60%・都民税1.20%と案内しています。 配分は違っても、合計は同じです)。
課税総所得金額等が1,000万円を超える部分に含まれる配当は、率が半分になります。 また、外国の会社の配当やJ-REIT(不動産投資法人)の分配金は、配当控除の対象外です。
カナの数字で比べる
ここからは説明のための架空の例です。 昨日と同じ架空の株(1株配当60円・100株)を、今日はNISAの枠の外(課税口座)で持っていたとします。 配当は税金を引く前で6,000円とします。 カナの税金の数字は、これまでの回で出したものを使います(課税所得は所得税87万2,000円・住民税148万2,000円、所得税の税率5%)。
申告不要のとき
- 所得税・復興特別所得税:918円
- 住民税:300円
- 合計 1,218円。手元に残るのは4,782円
総合課税を選んだとき
- 所得税:課税所得が6,000円増えて87万8,000円。税率5%で43,900円、そこから配当控除600円(6,000円×10%)を引いて43,300円。復興特別所得税を足すと44,200円。配当がないときの44,500円より、300円少なくなります
- 住民税:課税所得が6,000円増えて、10%で600円増える。そこから配当控除168円(6,000円×2.8%)を引いて、432円の増加
- 合計:所得税で300円減り、住民税で432円増えるので、配当にかかる税金は 約130円
受け取るときに引かれた1,218円は、総合課税で計算し直した税額と精算されます。申告しないときの1,218円が、約130円になる。 差は約1,090円です(住民税の100円未満の端数処理などで、数十円ずれます)。 ラーメン1杯と少しです。
所得税が300円「減る」のは、配当控除600円が、配当が増えた分の税金300円(6,000円×5%)より大きいからです。税率5%の人は、配当に所得税がかからないどころか、給料にかかる所得税まで少し軽くなる。 ここが今日いちばん大事なところです。
どの税率から逆転するか
同じ計算を、所得税の税率ごとに、配当にかかる税金の割合で並べます(課税総所得金額等が1,000万円以下で、復興特別所得税を含む。 住民税は10%・配当控除2.8%)。
- 所得税の税率 5%:約2.1%(申告不要の20.315%より軽い)
- 所得税の税率 10%:約7.2%(軽い)
- 所得税の税率 20%:約17.4%(軽い)
- 所得税の税率 23%:約20.5%(申告不要の20.315%より重い)
計算は「所得税の税率×1.021 − 10%×1.021 + 住民税10% − 2.8%」です。所得税の税率23%の区分(課税所得695万円を超える区分)から、総合課税のほうが重くなります。 税率が高い人は、申告不要のままのほうが軽い、ということです。
実際の数字で見る:給与所得者の93.4%は年収1,000万円以下
総合課税が得になるかどうかは、所得税の税率で決まりました。 では、実際に給料で暮らす人は、どのあたりにいるのでしょうか。 国税庁が2026年9月に公表した「令和7年分 民間給与実態統計調査」で、1年を通じて勤務した給与所得者5,163万人の年収(給与)の分布を見ます。
- 平均給与:487万円
- 年収500万円以下:62.4%
- 年収1,000万円以下:93.4%
- 年収1,000万円超:6.6%(約340万人)
年収1,000万円の会社員でも、給与所得控除や社会保険料、基礎控除などを差し引くと、課税所得はおおむね600万円前後で、所得税の税率は20%の区分です。 税率23%の区分(課税所得695万円超)に入るのは、それより年収が高い人です。
つまり、給料で暮らす人の9割以上は、配当を総合課税にしたほうが軽くなる側にいます。 ただし、申告の手間や、合計所得金額に入ることの影響(次の節)とあわせて決めます。
総合課税を選ぶときの注意
- 確定申告が必要です。 会社員で、ふだん年末調整で終わっている人も、配当を総合課税にするなら、自分で申告します(確定申告が必要になる場合は Day 60「確定申告が必要なケース」で扱います)
- 所得税と住民税で、選び方をそろえることになります。 横浜市は「令和6年度(令和5年分)より、所得税と市民税・県民税の課税方式を一致させることとなり、異なる課税方式を選択することはできなくなります」と案内しています
- 申告した配当は「合計所得金額」に入ります。 東京都主税局は、源泉徴収だけで終わらせる場合は含まれないが「確定申告をした場合には、合計所得金額に含まれますので注意してください」と書いています。家族の扶養に入っているかどうかの判定や、国民健康保険料などに響くことがあります
- 申告分離課税を選ぶと、配当控除は使えません。 横浜市も「申告分離課税を選択した場合には、配当控除は適用されません」としています
- NISAの配当は、そもそも非課税なので、配当控除の話は出てきません
私の100万円と、配当控除
この連載では、私が実際に100万円を1年間運用しています。
昨日、記録に足したのは「配当の受け取り方式」の欄でした。 私の100万円は特定口座(源泉徴収あり)にあり、配当と売った損の差し引きを口座の中でやってもらえるかが、この欄で決まります。
今日足すのは、「配当の税金の選び方」の欄です。
私の100万円の配当は、何もしなければ申告不要で、引かれて終わります。
それを総合課税にするか、申告分離課税にするかは、その年の自分の税率と、株を売った損が出たかどうかで決まるので、1年が終わるまで決められません。 だから今は決めず、決めるために必要な数字だけを記録に残します。
記録には、こう書きます。「配当を受け取ったら、税引き前の金額と、引かれた所得税・住民税の額を書く。年末に(確定申告の前に)、申告不要・総合課税・申告分離課税のどれにするかと、その理由(税率区分・売った損の有無)を1行書く。」 実際の数字は、月1回の運用記録で出します。
カナの欄は、今日も空欄です。 でも、口座を開いたあとの話が1つ増えました。「NISAの外で配当を受け取ったら、税率5%なら、総合課税で申告すると軽くなる」。
よくある質問(FAQ・全6問)
Q1. 特定口座(源泉徴収あり)で受け取った配当も、総合課税にできますか?
できます。 確定申告で、その配当を総合課税として申告します。 特定口座の中で受け取った配当は、口座ごとにまとめて、申告するかどうかを選びます。 同じ口座の配当の一部だけを申告する、という分け方はできません。
Q2. 配当控除で軽くなった税金は、いつ戻ってきますか?
確定申告をしたあとです。 所得税の分は、申告で計算し直した結果、引かれすぎていた分が還付されます。 住民税の分は、翌年度の住民税が、配当控除を差し引いて計算されることで軽くなります。 どちらも、申告しなければ戻りません。
Q3. 総合課税にすると、誰でも得をしますか?
いいえ。 所得税の税率が低い人ほど得になりやすく、23%以上の区分では申告不要より重くなります。 架空の例の配当6,000円なら、税率5%のカナは1,218円が約130円になりましたが、税率23%の人は約20.5%かかり、申告不要の20.315%より多く払うことになります。
Q4. 総合課税で申告すると、ほかに影響はありますか?
申告した配当は、合計所得金額に入ります。 扶養に入っているかの判定や、国民健康保険料などに影響することがあります。 また、令和6年度分(令和5年分)から、所得税で申告した方式が住民税にもそのまま使われます。
Q5. 配当が少しだけでも、申告したほうがいいですか?
手間と見比べて決めます。 架空の例の配当6,000円で軽くなるのは約1,090円です。 もともと確定申告をする人なら、配当を書き足すだけですみますが、申告のためだけに手続きをするなら、その時間と比べることになります。 合計所得金額に入る影響も、先に確かめておきます。
Q6. 外国株やJ-REITの分配金も対象ですか?
どちらも対象外です。 外国の会社の配当も、J-REIT(不動産投資法人)の分配金も、配当控除は使えません。 対象は国内の株式の配当などです。 持っているものが対象かどうかは、国税庁のタックスアンサーNo.1250や証券会社の案内で確かめてください。
まとめ
配当控除とは、確定申告で総合課税を選んだ配当について、所得税から10%・住民税から2.8%を差し引ける制度です(課税総所得金額等が1,000万円以下の部分)。
上場株式の配当の税金は、申告不要・総合課税・申告分離課税の3つから選べ、配当控除が使えるのは総合課税だけです。 架空の例の配当6,000円なら、税率5%のカナは申告不要の1,218円が約130円になり、約1,090円軽くなります。 所得税の税率23%以上では逆に重くなります。 給与所得者の93.4%は年収1,000万円以下(令和7年分)で、多くの人は軽くなる側にいます。
総合課税にすると合計所得金額に入り、所得税と住民税で方式もそろいます。 私の100万円では、配当ごとに引かれた税額を書き、年末に選び方と理由を1行書きます。
🎯 今日の1手(実践)
昨日は、自分の配当の受け取り方式と、気になる株の1単元の配当・税金・税引き後を控えました。今日は、自分の所得税の税率を確かめ、総合課税と申告不要のどちらが軽いかを出します。 手順は2つです。
1つ目。 去年の源泉徴収票(会社員の場合)を出し、「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いて、課税所得を出します。 そのうえで、国税庁の所得税の速算表で、自分の所得税の税率が5%・10%・20%・23%以上のどれに近いかを書きます。 はっきり分からなければ「たぶん◯%」でかまいません(控除の改正で、今年の区分と少しずれることがあります)。今日の日付と一緒に控えてください。
2つ目。 昨日出した気になる株の1単元の配当に、今日の「どの税率から逆転するか」の割合を掛けて、総合課税にしたときの税金を出します。 昨日の20.315%の税金と並べて、どちらが軽いかを書きます。 今日はここまでで、実際に申告も注文もしません。
Day 53で1単元の金額、Day 54で分割されたときの入口の値段、Day 55で権利付き最終日・権利落ち日、Day 56で配当の受け取り方式と1単元の配当・税金を控えてきました。
今日の「自分の所得税の税率と、気になる株の配当を総合課税にしたときの税金・申告不要の税金を並べて、日付つきで控えること」で51個目です。
🔗 あわせて読みたい
- Day 56「配当金の受け取り方式」 — NISAの配当を非課税にする受け取り方。今日はNISAの外の配当の税金
- Day 55「権利確定日と権利付き最終日」 — 配当6,000円の架空の株。いつまでに買えば配当がもらえるか
- Day 43「特定口座の源泉徴収あり・なし」 — 約20.315%が口座の中で引かれるしくみ
- Day 44「新NISA」 — NISA口座の中の配当は非課税。配当控除の話が出てこない理由
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