前回(Day43)は、特定口座の「源泉徴収あり」と「なし」の違い——税額は同じで手続きの手間が違うだけだという話を確認しました。今日は、税金そのものが一切かからない「NISA口座」について見ていきます。カナは特定口座の税率の話を聞いてから、NISAという言葉がずっと気になっていました。

カナ「NISAって、特定口座と何が違うんですか?」
多くの人が最初に抱くのは、この素朴な疑問です。証券口座の話を進めていくと、必ずと言っていいほどNISAという名前に行き当たります。

カナ「条件が厳しくて、私みたいな初心者には使えないんですよね?」
「NISA」という言葉の響きから、何か特別な資格や条件が必要な制度だと身構えてしまう人は少なくありません。難しそうという印象だけで検討を後回しにしてしまうのは、もったいないことです。

カナ「普通の会社員でも口座を作れるんですか?」
サトル「日本に住む18歳以上なら誰でも使える制度だ。特定口座で得た利益には約20.315%の税金がかかるが、NISA口座の中で得た売買益や配当は税金が一切かからない。特別な資格や年収条件は無い。」
種明かしです。NISAは一部の人のための特別な制度ではなく、条件さえ満たせば誰でも開ける非課税の「箱」です。 中に何を入れて運用するかは自分で選べますが、箱そのものの利用資格に高いハードルはありません。

カナ「難しい制度じゃなくて、誰でも使える非課税の箱なんですね」
そういうことです。
ここからは、NISA口座が非課税になる仕組み、2024年から始まった新NISAで何が変わったのか、非課税で保有できる上限額と期限、NISA口座と特定口座どちらを優先すべきか、そして私の100万円がNISA口座を使っているのかどうかを、順に見ます。
NISA口座が非課税になる仕組み
通常、株式や投資信託を売却して利益が出ると、その利益に対して約20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税の合計)の税金がかかります。配当金や分配金についても同様に税金が差し引かれます。
NISA口座の中で保有している株式や投資信託であれば、売却益にも配当にも一切税金がかかりません。 ただし、株の配当を非課税で受け取るには、配当の受け取り方を「株式数比例配分方式」(Day 43)にしておく必要があります。 銀行振込などで受け取ると、NISA口座の株の配当でも税金が引かれます。 また、外国の株や投資信託では、外国で先に引かれる税金があり、これはNISAでも戻りません。
同じ銘柄を同じタイミングで売買しても、特定口座で持っているかNISA口座で持っているかによって、手元に残る金額が変わってきます。 税金がかからないので、NISA口座の中の利益については、確定申告も必要ありません。
実際の数字で見る:NISA口座は3,048万口座、非課税の差は利益の約2割
金融庁によると、NISA口座の数は3,048万口座です(2026年10月2日公表)。 一部の人のための制度ではなく、これだけ多くの人がすでに使っている「箱」だということです。
では、非課税だと、手元に残る額はどれだけ違うのでしょうか。 ここからは説明のための架空の例です。 100万円で買った投資信託が、何年かあとに150万円になって売ったとします(手数料は考えません)。
- 特定口座の場合:利益50万円に約20.315%の税金がかかり、10万1,575円が引かれます。 手元に残る利益は39万8,425円です
- NISA口座の場合:税金は0円で、利益の50万円がそのまま残ります
同じ商品を、同じ日に買って同じ日に売っても、入れた箱が違うだけで約10万円の差になります。 利益が大きくなるほど、この差も大きくなります。
また、年間の上限いっぱいの360万円を毎年入れれば、生涯の上限1,800万円は最短5年で埋まります。 毎月3万円の積立なら年36万円なので、1,800万円に届くまで50年かかる計算です。 多くの人にとって、上限は「すぐ当たる壁」ではありません。
新NISAで何が変わったのか
2024年から始まった新しいNISA制度では、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの非課税枠が用意され、この2つを併用できるようになりました。つみたて投資枠は主に長期・積立・分散投資に適した投資信託が対象で(金融庁の届出一覧では376本、2026年10月16日時点)、成長投資枠は個別株式を含むより幅広い商品が対象です。 ただし成長投資枠でも、毎月分配型の投資信託や、値動きを何倍にもするような投資信託などは対象外です。
さらに、以前の制度にあった非課税期間の制限が撤廃され、無期限で非課税のまま保有し続けられるようになりました。 2023年までの旧NISAで買ったものは、新NISAとは別の扱いで、新NISAの1,800万円の枠には数えられません。
制度が変わる前は非課税で持てる期間に限りがありましたが、新NISAではその制約がなくなっています。
非課税保有限度額と期限
新NISAでは、生涯にわたって非課税で保有できる上限額が1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)と定められています。 この上限は1人ごとなので、夫婦それぞれが口座を持てば、2人で3,600万円になります。
この上限に達するまでは、年間の投資枠(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)の範囲内で、非課税のまま投資を続けることができます。
また、NISA口座内の商品を売却すると、その分の非課税枠が翌年以降に再び使えるようになる「枠の再利用」という仕組みもあります。 戻ってくるのは、売った値段ではなく、買ったときの金額(簿価)の分です。 たとえば100万円で買って150万円で売った場合、翌年に戻る枠は100万円です。 また、戻るのは翌年なので、売った年のうちにすぐ使えるわけではありません。
この再利用のルールについては、後日あらためて詳しく取り上げます。
NISA口座と特定口座、どちらを優先すべきか
すでに特定口座を持っている場合でも、NISA口座は別に開設して併用するのが基本です。NISA口座の非課税枠には年間・生涯それぞれ上限があるため、その範囲内で買う商品はNISA口座、それを超える分は特定口座で買う、という使い分けが一般的です。 たとえば1年に400万円投資したい人なら、360万円をNISA口座、残りの40万円を特定口座、という分け方になります。
新規に証券口座を開く場合は、証券会社によってはNISA口座と特定口座を同時に申し込める仕組みになっています。 なお、銀行でNISA口座を開いた場合、ふつうは投資信託しか買えず、個別の株は買えません。 株も買いたいなら、証券会社で開くことになります。
「まず特定口座だけ開いて、あとからNISA口座を追加する」という順番でも問題はなく、どちらを先に検討するかは、投資を始めるタイミング次第です。
私の100万円と、NISA口座
この連載では、私が実際に100万円を1年間運用しています。
昨日、記録に足したのは「源泉徴収の有無」の欄でした。 答えは「源泉徴収あり。証券会社が都度計算・納税し、原則確定申告不要」。
今日足すのは、その100万円がNISA口座を使っているかどうかの欄です。
これまでの記録は、すべて「特定口座」という課税口座の中の話でした。今日は初めて、非課税という別の枠組みが選択肢に入ってきます。
答えは、まだ使っていません。私の100万円は、現時点では特定口座(源泉徴収あり)の中で運用されており、NISA口座は開設していません。 記録には、こう書きます。「NISA口座:未開設。 非課税枠は未使用。」
カナも証券口座自体をまだ持っていないので、この欄はまだ書き込めません。「まだ使っていない箱がある」ことも、比較のための記録の一部です。
よくある質問(FAQ・全6問)
Q1. NISAとつみたてNISA・一般NISAは同じものですか?
2024年からの新NISAは、以前の「つみたてNISA」「一般NISA」を統合・拡充した後継の制度です。 旧制度で買ったものは、旧制度の非課税期間(一般NISAは5年、つみたてNISAは20年)が終わると、課税口座に移ります。 新NISAの枠に移すことはできません。
制度は変わりましたが、非課税というコンセプトは共通しています。
Q2. NISA口座は複数の証券会社で同時に持てますか?
NISA口座として非課税の扱いを受けられるのは、1人につき1つの金融機関のみです。 金融機関を変えるとき、その年にすでにNISA口座で買っていた場合は、変更は翌年の分からになります。
年単位で金融機関を変更することは可能ですが、同時に複数は持てません。
Q3. NISA口座で損失が出た場合、他の口座の利益と相殺できますか?
NISA口座内の損失は、特定口座や一般口座の利益と損益通算することができません。 たとえば、NISA口座で10万円の損、特定口座で10万円の利益が出ても、特定口座の利益には2万315円の税金がかかったままです。 NISA口座の中で損が出たまま売ると、その損は、税金の計算の上ではどこにも使えません。 損が出やすい短い売り買いより、長く持つ使い方のほうが、NISAの良さを活かしやすいということです。
この点は税制上の大きな注意点です。
Q4. NISA口座で売ったら、非課税の枠はすぐ戻りますか?
すぐではなく、翌年に戻ります。 戻るのは、売った値段ではなく買ったときの金額(簿価)の分です。 100万円で買って150万円で売れば、翌年に100万円分の枠が戻ります。 ただし、年間の上限(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)は変わらないので、戻った枠があっても、1年に入れられる額は360万円までです。
Q5. 18歳になったばかりでも、NISA口座は作れますか?
口座を開く年の1月1日時点で18歳以上なら作れます。 たとえば、その年の2月に18歳になる人は、1月1日の時点ではまだ17歳なので、その年は作れず、翌年から作れます。 つみたて投資枠と成長投資枠は、口座を作ればどちらも使えて、合わせて年360万円まで入れられます。
Q6. 非課税保有限度額の1,800万円を超えて投資するとどうなりますか?
上限を超えた分は、NISA口座ではなく通常の課税口座(特定口座・一般口座)での投資になります。上限管理は証券会社のシステム上で行われます。 1,800万円は、今の値段ではなく、買ったときの金額(簿価)で数えます。
まとめ
NISAは、NISA口座内で得た売買益や配当が非課税になる制度で、日本に住む18歳以上であれば誰でも利用できます。新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用でき、非課税保有期間も無期限になりました。生涯の非課税保有限度額は1,800万円です。 NISA口座は3,048万口座あり(金融庁、2026年10月2日公表)、架空の例では、50万円の利益に対して特定口座なら10万1,575円の税金がかかるところ、NISA口座なら0円でした。 私の100万円は、まだNISA口座を使わず特定口座の中で運用されています。
🎯 今日の1手(実践)
昨日は、特定口座が「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」のどちらになっているかを確認しました。今日は、自分がNISA口座を持っているかどうか、持っていない場合はどの金融機関で開設できるかを確認します。手順は2つです。
1つ目。 すでにNISA口座を持っているなら、つみたて投資枠・成長投資枠それぞれの年間の利用状況を確認します。持っていない場合は、自分が使っている(あるいは使う予定の)証券会社でNISA口座を開設できるか、サイトで確認してください。2つ目。 非課税保有限度額1,800万円のうち、自分がどのくらいの規模で投資を考えているか、大まかにイメージしておきます。枠の再利用ルールについては、後日改めて扱います。 月にいくらなら何年で1,800万円に届くか(月3万円なら50年、月10万円なら15年)も、あわせて書いておくと目安になります。
今日の「NISA口座を持っているか、持っていない場合はどの金融機関で開設できるかを、日付つきで控えること」で38個目です。
🔗 あわせて読みたい
- Day 43「特定口座(源泉徴収あり・なし)の違い」 — 税額はどちらも同じで、違うのは確定申告の手間だけという話
- Day 42「一般口座と特定口座の違い」 — 一般口座は自分で計算、特定口座は証券会社が代わりに計算してくれるという話
⚠️ ご注意
本記事は筆者個人の投資記録および一般的な金融知識の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
記載の運用実績は筆者個人の資金によるものです。
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