前回(Day41)は、証券口座が銀行口座とは別物で、分別管理と投資者保護基金という二重の仕組みで資産が守られていることを確認しました。今日は、その証券口座を実際に開設するときに、最初にぶつかる選択——「一般口座」か「特定口座」か——を見ていきます。カナはまだ証券口座を持っていませんが、開設画面のイメージだけは事前に調べてみることにしました。

カナ「一般口座と特定口座って、結局どっちを選べばいいんですか?」
多くの人が最初に感じるのは、この素朴な疑問です。証券口座の開設画面まで進むと、必ずと言っていいほどこの2択に出会います。

カナ「名前からすると「一般」の方が標準的な感じがしますよね?」
「一般」という言葉の響きから、多くの人が特定口座よりも一般口座の方が「普通の」「基本の」選択肢だと考えてしまいます。言葉の印象だけで選んでしまうと、後から手間の差に驚くことになります。

カナ「「一般」の方が普通に使う口座なんじゃないんですか?」
サトル「逆だ。一般口座は、1年間の売買の損益を全部自分で計算して、確定申告する必要がある。特定口座は、証券会社が代わりに計算して『年間取引報告書』を作ってくれる。今個人投資家の大半が選ぶのは特定口座の方だ。」
種明かしです。「一般」という名前は、選ぶ人が多いという意味ではありません。 あくまで制度上の分類名であり、実際に多くの個人投資家が選んでいるのは、手間の少ない特定口座の方です。

カナ「「一般」は自分でやる方で、「特定」は任せる方なんですね」
そういうことです。
ここからは、一般口座と特定口座の具体的な違い、特定口座が選ばれている理由、口座開設後に変更できるかどうか、申し込み画面で実際に何を選ぶことになるのか、そして私の100万円がどちらの区分に入っているのかを、順に見ます。
一般口座と特定口座の違い
一般口座を選ぶと、1年間(1月1日〜12月31日)に行ったすべての売買について、いつ・いくらで買って、いつ・いくらで売ったかを自分で記録し、損益を計算し、必要であれば確定申告をする必要があります。取引の回数が増えるほど、この作業は煩雑になり、銘柄が増えれば増えるほど計算ミスのリスクも高まります。
特定口座を選ぶと、証券会社がその年の売買損益を代わりに計算し、「年間取引報告書」という書類を作成してくれます。この報告書があれば、確定申告が必要な場合でも、計算作業自体は証券会社がやってくれているため、大幅に手間が減ります。 多くのネット証券では、口座開設の画面でこの2つのうちどちらかを選ぶよう求められ、後から変更することもできます。
なぜ特定口座を選ぶ人が多いのか
特定口座が広く選ばれている理由は、単純に手間の差です。株式や投資信託の売買を複数回、複数の銘柄で行うと、取得価格や売却価格、手数料を踏まえた損益計算はかなり複雑になります。 特に、同じ銘柄を異なる価格で何度も買い増した場合の取得単価の計算(総平均法)は、手計算では間違えやすい部分です。
ここからは説明のための架空の例です。 ある株を、1回目に1,000円で100株、2回目に1,200円で100株買い、そのあと1,300円で100株売ったとします(手数料は考えません)。
- 取得単価:(1,000円×100株+1,200円×100株)÷200株=1株1,100円
- 売った100株の利益:(1,300円−1,100円)×100株=2万円
- かかる税金:2万円×20.315%=4,063円
「最後に買った1,200円で計算すれば利益は1万円」と考えてしまうと、利益も税金も半分に見積もってしまいます。買うたびに取得単価が変わるので、取引が増えるほど、一般口座で自分で計算するのは大変になります。
特定口座であれば、この計算を証券会社のシステムが自動で行ってくれるため、投資を始めたばかりの人ほど選ぶメリットが大きくなります。なお、特定口座にはさらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」という2つのタイプがあり、これによって確定申告が必要かどうかが変わってきます。この源泉徴収の仕組みについては、次回(Day43)で詳しく取り上げます。
実際の数字で見る:株の売買益で確定申告した人は約115万人
国税庁の「令和7年分の所得税等の確定申告状況等について」によると、株式などの譲渡所得について確定申告をした人は約115万人で、そのうち所得があった人は約74万人でした。 申告した人の中には、損を翌年以降に繰り越すために申告した人も含まれます。
一方、金融庁によると、NISA口座だけでも3,048万口座(2026年10月2日公表)あります。 株や投資信託を持っている人の数に比べて、売買益を自分で申告している人は、ずっと少ないということです。
これは、多くの人が特定口座(源泉徴収あり)かNISA口座で取引していて、証券会社が計算と納税を済ませてくれるか、そもそも税金がかからないからです。一般口座を選ぶと、この「申告する側」に入ることになります。 口座区分の選択は、毎年の手間がどちらに入るかを決める選択でもあります。
口座開設後に変更はできるのか
一般口座と特定口座は、口座開設後も証券会社を通じて変更の手続きを取ることができます。多くの証券会社では、マイページやアプリの口座管理画面から、書類を提出することなく切り替えができる場合もあります。
ただし、年内に一般口座で行った取引を、後から特定口座扱いに切り替えることはできません。そのため、選択は口座を使い始める前、あるいは年が変わる前に検討しておくのが基本です。 反対に、特定口座をやめるときは「特定口座廃止届出書」を出す手続きになります。 一度取引を始めてしまうと、その年の分はその口座区分のまま計算することになります。
口座開設の申し込み画面で実際に何を選ぶのか
多くのネット証券では、口座開設の申し込みフォームの中に「特定口座の開設」という項目があり、そこで「開設する(源泉徴収あり)」「開設する(源泉徴収なし)」「開設しない(一般口座で取引する)」のいずれかを選ぶ形式になっています。「開設しない」を選んだ場合に、初めて一般口座での取引になる、という設計です。
つまり実務上は、何も考えずに申し込みを進めると、自然と特定口座(多くの場合「源泉徴収あり」が初期値)が選ばれる証券会社がほとんどです。一般口座を選ぶには、むしろ意識してその選択肢を選ぶ必要がある、という点は覚えておくとよいポイントです。 NISA口座は、同じ申し込みの中で別に「開設する」を選ぶ形が多く、特定口座とNISA口座は並べて持てます。
私の100万円と、口座区分
この連載では、私が実際に100万円を1年間運用しています。
昨日、記録に足したのは「保有場所」の欄でした。 答えは「証券口座。証券会社自身の資産とは分別管理され、法律上の名義は私自身にある」。
今日足すのは、その証券口座が「一般口座」か「特定口座」かの欄です。
証券口座を持っていることが分かったら、次に確認すべきなのは中身の区分です。「持っているかどうか」の次は「どちらの区分で持っているか」——記録はここでも一段階、細かくなります。
答えは、特定口座です。私の100万円は、証券会社が年間の損益計算を代わりにやってくれる特定口座の中にあります。 記録には、こう書きます。「口座区分:特定口座(証券会社が年間取引報告書を作成)。 損益計算は自分でしない。 翌年1月に届く年間取引報告書を、自分の記録と突き合わせる。」
ただし、特定口座でも確定申告をしたほうがよい場合があります。 たとえば、別の証券会社の口座で出た損と、こちらの利益を合わせたいとき(損益通算)です。 この判断に必要な「源泉徴収あり・なし」の違いは、明日 Day 43 で見ます。
カナはまだ証券口座を持っていないので、この欄はまだ書き込めません。「まだ書けない欄がある」こと自体も、比較のための記録の一部です。
よくある質問(FAQ・全6問)
Q1. 一般口座と特定口座、どちらを選ぶのが無難ですか?
特に事情がない限り、計算の手間が少ない特定口座を選ぶ個人投資家が多いです。投資を始めたばかりの段階では、損益計算の複雑さを実感しにくいため、あらかじめ手間の少ない方を選んでおくと安心です。 迷ったときは「証券会社が計算してくれる方」と覚えておくと選びやすくなります。 国税庁の数字でも、株の売買益を確定申告した人は約115万人(令和7年分)にとどまり、多くの人は申告のいらない形で取引しています。
Q2. 特定口座を選ぶと確定申告は一切不要になりますか?
特定口座の中でも「源泉徴収あり」を選んだ場合は原則不要ですが、「源泉徴収なし」の場合は自分で確定申告が必要です。この2つの違いについては、次回(Day43)で詳しく整理します。
Q3. 一般口座を選ぶメリットはありますか?
特定口座の対象にならない一部の取引や、自分で細かく損益管理をしたい場合に使われることがあります。 特定口座に入れられない商品を持つときは、その商品だけが一般口座に入ります。
ただし、一般的な個人投資家にとって積極的に選ぶメリットは大きくありません。 上級者向けの選択肢と考えておくとよいでしょう。
Q4. 特定口座を作ると、一般口座はなくなるのですか?
なくなりません。 特定口座には入れられない商品もあるため、多くの証券会社では、特定口座を作っても一般口座が並んで残ります。 ふだんの株や投資信託は特定口座で、対象外の商品だけが一般口座に入る、という形です。 年間取引報告書は特定口座の分しか作られないので、一般口座で売買した分は、自分で計算する必要があります。
Q5. NISA口座とは何か関係がありますか?
NISA口座は、一般口座・特定口座とは別の非課税の枠組みです。税金の計算方法自体が異なるため、関係についてはNISAを扱う回(Day44)で改めて整理します。
Q6. 途中で一般口座から特定口座に変更したら、それまでの記録はどうなりますか?
変更前の期間の取引記録は、自分で管理しておく必要があります。 売買した日付・値段・株数・手数料を、自分の記録に残しておきます。
証券会社によって過去の記録の引き継ぎ方が異なるため、変更のタイミングには注意が必要です。
まとめ
一般口座は損益計算も確定申告も自分で行う口座、特定口座は証券会社が年間の損益を計算し「年間取引報告書」を作ってくれる口座です。個人投資家の大半は、手間の少ない特定口座を選んでいます。 架空の例では、1,000円と1,200円で100株ずつ買った株の取得単価は1,100円で、この計算を証券会社が代わりにしてくれるのが特定口座です。
株の売買益で確定申告をした人は約115万人(国税庁、令和7年分)で、NISA口座の3,048万口座と比べるとずっと少なく、多くの人が申告の手間のない形で取引しています。 名前の響きに引っかかって「一般」を安易に選ばないことが、証券口座を開くときの最初のチェックポイントです。 私の100万円は、特定口座の中で管理されています。
🎯 今日の1手(実践)
昨日は、証券口座そのものについて、自分が持っているかどうか、どの証券会社かを確認しました。今日は、その証券口座(あるいはこれから開く証券口座)が、一般口座と特定口座のどちらになっているかを確認します。手順は2つです。
1つ目。 すでに証券口座を持っているなら、口座管理画面か口座開設時の案内で、一般口座・特定口座のどちらを選んでいるかを確認します。持っていない場合は、口座開設の申し込み画面でこの選択肢がどう表示されるかを、証券会社のサイトで確認してください。2つ目。 特定口座を選んでいる(選ぶ予定の)場合、それが「源泉徴収あり」か「源泉徴収なし」かも合わせて確認しておきます。あわせて、年間取引報告書がいつ・どこで受け取れるか(郵送か、マイページか)も見ておくと、翌年の確認がしやすくなります。 この違いについては次回、詳しく扱います。
今日の「証券口座(開設予定含む)が一般口座か特定口座かを、日付つきで控えること」で36個目です。
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- Day 41「証券口座とは」 — 証券口座が銀行口座とは別物で、分別管理と投資者保護基金の二重の仕組みで守られているという話
- Day 30「資産と負債」 — 持っている額は引いたあとの数だという話。口座区分の選び方にも通じる考え方です
⚠️ ご注意
本記事は筆者個人の投資記録および一般的な金融知識の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
記載の運用実績は筆者個人の資金によるものです。
投資判断はご自身の責任において行ってください。
なおコンプライアンス上、当社の取引先に関連する銘柄は取引対象外としています。



