昨日はDay 53「単元株と単元未満株」で、取引所では100株が1単元なので、株の入口の値段は1株の値段の100倍だという話をしました。 株価1万円の株なら、1単元で100万円でした。
今日は、その入口の値段を会社の側が下げる方法を見ます。 株式分割です。
カナは昨日の「株価×100」を、手当たり次第に計算していました。 そして、ある株で手が止まりました。

カナ「100株で30万円の株なら、12,000円の株は120万円……? 私には一生無理ですね」
「一生」かどうかは、会社の側が変えることがあります。 入口の値段は、株価と単元の株数で決まっていました。
単元は100株で決まっているので、動かせるのは株価のほうです。

カナ「株式分割って、株が増えるならお得なんですよね?」
そこが今日の分かれ道です。 持っている株の数は、確かに増えます。
でも、株数が増えることと、持っている価値が増えることは、別の話です。

カナ「え、4倍に増えるのに、得してないんですか?」
サトル「1株を4株に分けても、会社そのものは1ミリも大きくなっていない。株数が4倍になる代わりに、1株の値段がおおよそ4分の1になる。変わるのは入口の値段で、持っている価値は同じだ。」
種明かしです。 株は、会社を細かく分けた持ち分です。同じ会社を4倍の数に分ければ、1つ分は4分の1になる。 足し合わせた大きさは変わりません。
ひとつ言い添えると、分割のあとの株価は、その後の売買で決まります。 分割そのものが価値を増やしも減らしもしない、ということです。

カナ「ピザを4つに切っても、8つに切っても、ピザの大きさは同じなんですね」
そういうことです。
ここからは、株式分割で何が変わって何が変わらないか、架空の例で入口の値段がどう下がるか、配当と株主優待はどうなるか、そして私の100万円の記録で分割があったときに何を直すのかを、順に見ます。
株式分割とは?
株式分割とは、会社が、すでに出している株を一定の割合で分けて、株の数を増やすことです。 「1株を2株に」「1株を4株に」のように、比率で決まります。
分割が行われると、株主が持っている株数は、その比率で自動的に増えます。株主が何か手続きをしたり、お金を払ったりする必要はありません。
変わるものと変わらないものを並べます。
- 増える:持っている株数(1株→4株なら4倍)
- 下がる:1株の値段(おおよそ4分の1)、1単元(100株)の入口の値段
- 変わらない:会社そのものの大きさ、自分が持っている株の価値の合計(分割の時点で)
会社が大きくなったわけでも、新しくお金が入ったわけでもありません。 同じものを、細かく切り直しただけです。
架空の例で、入口の値段はどう下がるか
ここからは説明のための架空の例です。 株価12,000円の会社が、1株を4株に分割するとします。
分割の前
- 株価:12,000円
- 1単元(100株)の入口の値段:120万円
- 100株を持っている人の価値:12,000円 × 100株 = 120万円
分割のあと
- 株価:おおよそ 12,000円 ÷ 4 = 3,000円
- 1単元(100株)の入口の値段:30万円
- さっきの人の株数:100株 × 4 = 400株
- 価値:3,000円 × 400株 = 120万円(変わらない)
ここが今日いちばん大事なところです。
持っている人にとっては何も変わらず、これから買う人にとっての入口だけが4分の1になる。 120万円はカナの手取りの5か月分(120万円 ÷ 24万円)ですが、30万円なら1.25か月分です。 昨日のDay 53で見た「株価3,000円の株」と同じ入口の値段になります。
株式分割をする理由として会社がよく挙げるのは、投資しやすい金額にして、より多くの人に株を持ってもらうことです。 入口の値段が下がれば、買える人が増えるからです。
実際の数字で見る:分割した会社は1年足らずで266社、個人株主は中央値で44%増えた
東京証券取引所が2026年3月に公表した資料「投資単位の引下げに向けた取組の状況」には、実際に分割した会社の数字が出ています。
1つ目は、分割した会社の数です。 2025年4月1日から2026年2月末までに、株式分割を決めた会社は266社でした(REITや外国株などは除く)。 この266社の、分割を発表する前日の投資単位(1単元の金額)と、分割後の試算値を比べると、次のとおりです。
- 1単元が50万円以上の会社:分割の前は45% → 分割後は2%
- 1単元が10万円未満の会社:分割の前は4% → 分割後は24%
今日の架空の例(120万円→30万円)と同じように、多くの会社が、入口の値段を何分の1かに下げています。
2つ目は、分割のあとに株主が増えたかです。 同じ資料は、2024年度に1株→2株以上の分割をした199社について、個人株主の数が前の年度末からどれだけ変わったかを調べています。 増え方の中央値は+44.2%でした。 比率別の中央値は、1株→2株で+27%、1株→4株で+77%、1株→5株で+74%です。
入口の値段を下げた会社には、実際に新しい株主が入ってきています。 ただし、これは株主の数の話です。 分割で株の価値が増えたという意味ではありません。
配当と株主優待は、どうなるか
配当は、1株あたりの金額で決まるのが一般的です。 1株を4株に分けたなら、1株あたりの配当もおおよそ4分の1になるのが自然な形です。 株数が4倍になるので、受け取る配当の合計は、配当の方針が同じなら変わりません。
- 分割前:1株あたり年200円 × 100株 = 2万円
- 分割後:1株あたり年50円 × 400株 = 2万円
(これも架空の例です。 実際の配当は会社が決めるので、分割に合わせて1株あたりの額をぴったり割るとは限りません。 )
株主優待は、「100株以上」のように株数で条件を決めている会社が多くあります。 分割で株数が増えると、条件の段が変わることがあります。 どう扱うかは会社ごとに決まるので、分割の発表と一緒に出る会社の案内で確かめる必要があります。
分割のあとの株を受け取れるのは、会社が決めた日に株主として記録されている人です。 その日の数え方は、Day 55「権利確定日と権利付き最終日」で扱います。
私の100万円と、株式分割
この連載では、私が実際に100万円を1年間運用しています。
昨日、記録に足したのは注文の行に「単元株か単元未満株か」と「1単元の金額が100万円の何%か」を書く決まりでした。
今日足すのは、持っている株に分割があったときに、株数と取得単価を分割の比率で直す決まりです。
理由は、損益の計算がずれるからです。Day 51で、1株あたりいくらで買ったかは、約定代金の合計を株数で割った平均の値段で数えると書きました。
架空の例で、12,000円の株を単元未満株で10株(12万円)持っていたところに1株→4株の分割があると、株数は40株になります(単元未満株でも、分割の株は株数に応じて割り当てられます)。取得単価を12,000円のままにしておくと、3,000円の株価と比べて「4分の1に減った」ように見えてしまいます。 実際には何も減っていません。
だから、分割があったら次のように直します。
- 株数:10株 → 40株(比率を掛ける)
- 取得単価:12,000円 → 3,000円(比率で割る)
- 取得額の合計:12万円のまま(変えない)
特定口座では証券会社の側でも取得単価が直されますが、自分の記録の単価がそれと合っているかを確かめるためにも、自分で直しておきます。
記録には、こう書きます。「保有株に分割があったら、分割の効力発生日と比率を書き、株数に比率を掛け、取得単価を比率で割る。取得額の合計は変えない。」 実際の数字は、月1回の運用記録で出します。
カナの欄は、今日も空欄です。 でも、昨日の「一生無理」は1行書き換えられました。「入口の値段は、会社の分割で下がることがある。そのとき、持っている人の価値は変わらない」。
よくある質問(FAQ・全6問)
Q1. 分割が発表されると株価が上がることが多いと聞きました。得をするのでは?
分割そのものは、持っている価値を増やしません。 12,000円×100株も3,000円×400株も120万円です。 発表のあとに株価が動くことはありますが、それは「買う人が増えそうだ」などと考えた人たちの売買の結果で、上がると決まっているわけではありません。 分割を理由に買うなら、変わるのは入口の値段だけだと先に思い出してください。
Q2. 分割の逆で、株をまとめることもあるのですか?
あります。 株式併合といいます。 2株を1株にまとめるように株数を減らし、1株の値段はおおよそ同じ割合で上がります。 持っている価値が変わらないのは分割と同じです。 ただし、併合のあとに100株に満たない株(単元未満株)が出ることがあります。
Q3. 分割の前に単元未満株で持っていた株は、どうなりますか?
比率どおりに増えます。 単元未満株でも、分割の株は株数に応じて割り当てられます。 30株を持っていて1株→4株の分割があれば120株になり、そのうち100株は1単元の株として持つことになります。
Q4. 株式分割のあと、配当はどうなりますか?
1株あたりの配当は、比率に合わせて下がるのが自然な形です。 株数が増えるので、配当の方針が同じなら、受け取る合計は変わりません。 ただ、実際の1株あたりの配当は会社が決めるので、分割の比率でぴったり割られるとは限りません。
Q5. 株主優待はどうなりますか?
会社ごとに違います。 「100株以上」などの株数で条件を決めている会社が多いので、分割で株数が増えると、受けられる優待の段が変わることがあります。 分割を発表するときの会社の案内で確かめてください。
Q6. 分割があったら、自分の記録はどう直せばいいですか?
株数に比率を掛け、取得単価を比率で割ります。 取得額の合計は変えません。 12,000円で10株を持っていて1株→4株の分割があったら、40株・取得単価3,000円・取得額12万円です。 取得単価を直さないと、損をしたように見えてしまいます。
まとめ
株式分割とは、会社が1株を何株かに分けることです。 株数が増えるぶん1株の値段はおおよそ同じ割合で下がり、持っている価値は変わりません。
架空の例では、株価12,000円の株を1株→4株に分けると株価は3,000円、1単元の入口の値段は120万円→30万円。 100株を持っていた人は400株になり、価値は120万円のままです。
変わるのは、これから買う人にとっての入口の値段です。 東証の資料では、2025年4月〜2026年2月に分割を決めた会社は266社で、1単元が50万円以上の会社の割合は、分割の前の45%から、分割後の試算で2%に下がっています。
私の100万円では、保有株に分割があったら、株数に比率を掛け、取得単価を比率で割り、取得額の合計は変えずに書きます。
🎯 今日の1手(実践)
昨日は、気になる株の1単元の金額と、単元未満株を扱っているかを控えました。今日は、その株が分割されたら入口の値段がいくらになるかを計算し、過去に分割したことがあるかを調べます。 手順は2つです。
1つ目。 昨日出した1単元の金額を、2と5で割ります。 1株→2株、1株→5株に分割されたとしたときの入口の値段です。 それぞれ、手取りの何か月分かも書きます。今日の日付と一緒に控えてください。
2つ目。 その会社のホームページの投資家向けのページ(IRのページ)で、過去に株式分割をしたことがあるかを1つ確かめます。 あれば、その年と比率を書き写します。 見つからなければ「見つからなかった」と書きます。 今日はここまでで、実際に注文はしません。
Day 50で板のスプレッド、Day 51で約定の平均値段、Day 52で受渡日と月末現金化の最後の約定日、Day 53で気になる株の1単元の金額と単元未満株の扱いを控えてきました。
今日の「気になる株が1株→2株・1株→5株に分割されたときの入口の値段と、過去の分割の有無を、日付つきで控えること」で48個目です。
🔗 あわせて読みたい
- Day 53「単元株と単元未満株」 — 取引所では100株が1単元。入口の値段は株価の100倍という話
- Day 51「約定」 — 1株あたりの値段は、約定代金の合計を株数で割った平均で数えるという話。分割のときに直す取得単価のもと
- Day 7「可処分所得」 — 手取り24万円。入口の値段が手取りの何か月分かを測る物差し
⚠️ ご注意
本記事は筆者個人の投資記録および一般的な金融知識の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
記載の運用実績は筆者個人の資金によるものです。
投資判断はご自身の責任において行ってください。
なおコンプライアンス上、当社の取引先に関連する銘柄は取引対象外としています。



