【Day 51/365|1日1金融用語】約定とは ——「「注文した」と「取引が成立した」は、別のことだったんですね」と気づいたカナの話

【Day 51/365|1日1金融用語】約定とは ——「「注文した」と「取引が成立した」は、別のことだったんですね」と気づいたカナの話

昨日はDay 50「板情報」で、板はまだ成立していない注文の在庫表だという話をしました。 1,000円の売りに100株しか並んでいなければ、1,000円の指値で買えるのは100株だけです。
今日は、その「買えた100株」と「買えなかった200株」に、それぞれ名前をつけます。 約定と未約定です。
カナはここ3日間、「成立した」という言葉を何度も聞いてきました。 それを取引の世界では何と呼ぶのかが、今日の用語です。

約定とはを学ぶカナの4コマ・起
カナ「「約定」って、注文を出すことと同じ意味なんですか?」

同じではありません。 読み方は「やくじょう」。 約束が定まる、と書きます。
注文は「こうしたい」という申し込みで、約定は「その申し込みに相手が応じて、約束が定まった」ことです。

約定とはを学ぶカナの4コマ・承
カナ「注文を出したら、その時点でもう約定したってことですよね?」

そこが今日の分かれ道です。 成行注文なら、相手がいればすぐに約定するので、ほとんど同時に見えます。
でも、Day 49の指値の例では、注文を出したあとも200株は約定しませんでした。注文と約定のあいだには、時間があることもあるのです。

約定とはを学ぶカナの4コマ・転
カナ「注文が通れば、それで取引は終わりなんじゃないんですか?」
サトル「そこは分けて考える必要がある。『約定』は、出した注文に対して売買の相手が見つかり、実際に取引が成立することだ。注文を出すことと、約定することは別の段階。指値注文なら、注文を出してもすぐには約定しないこともある。」

種明かしです。 「注文が通った」は、証券会社が注文を受け付けて、取引所に並べたという意味です。並んだだけで、まだ相手は見つかっていません。 相手が見つかったとき、はじめて約定です。
そして、約定したあとにも、まだ続きがあります。 株とお金が実際に受け渡されるのは、約定の日ではありません。 それは明日、Day 52「受渡日(T+2)」で見ます。

約定とはを学ぶカナの4コマ・結
カナ「「注文した」と「取引が成立した」は、別のことだったんですね」

そういうことです。
ここからは、注文が約定するまでにたどる段階、Day 49の例を「約定」の言葉で言い直すとどうなるか、約定した値段が複数に分かれたときの数え方、約定したら取り消せないことの意味、そして私の100万円で注文と約定をどう分けて書くのかを、順に見ます。

約定とは?

約定とは、出した買い注文(または売り注文)に対して、条件に合う反対側の注文が見つかり、売買が成立することです。
約定したときに決まるのは、約定した株数・約定した値段(約定単価)・約定した日時の3つです。

1つの注文は、次のような段階をたどります。

  • 受付:証券会社が注文を受け付けた。まだ何も成立していない
  • 未約定:取引所に並んでいるが、相手が見つかっていない
  • 一部約定:注文した株数のうち、一部だけ相手が見つかった
  • 全部約定:注文した株数すべてに相手が見つかった
  • 取消:約定する前に、自分で注文を取り消した
  • 失効:約定しないまま、注文の期限が来て消えた

どう表示されるかの言葉は証券会社によって少しずつ違いますが、取引所に並んだ注文は、必ず「全部約定」「取消」「失効」のどれか(またはその組み合わせ)で終わります。

Day 49の例を、「約定」の言葉で言い直す

Day 49の架空の例を、今日の言葉で書き直します。 売り注文が「1,000円に100株/1,050円に100株/1,100円に100株」の銘柄に、1,000円の買い指値を300株出しました。

  • 注文を出した直後:1,000円の100株と相手が見つかる → 一部約定(100株・1,000円・100,000円)
  • 残りの200株:1,000円以下の売りがないので 未約定 のまま並ぶ
  • 当日限りの注文なら、その日の取引が終わったところで、残りの200株は 失効

当日限りの注文で、その日のうちに1,000円以下の売りが現れなかった場合、最終的な結果は「300株注文、100株約定、200株失効」です。
ここが今日いちばん大事なところです。「注文した株数」と「約定した株数」は、同じとは限りません。 記録に「300株買った」と書いたら、それは間違いです。買ったのは100株です。

約定の値段が分かれたときは、平均で数える

Day 48の例1では、成行で300株を買うと、3つの値段に分かれて約定しました。

  • 1,000円で100株:100,000円
  • 1,001円で100株:100,100円
  • 1,005円で100株:100,500円

約定代金の合計は 300,600円。 1株あたりの値段は、合計を株数で割って 300,600円 ÷ 300株 = 1,002円 です。
注文は1回でも、約定は3回に分かれています。1株あたりいくらで買ったのかは、約定ごとの値段ではなく、合計を株数で割った平均で数えます。 あとで損益を計算するときに使うのも、この平均の値段です。

Day 48の私の記録に「約定の平均値段」と書いたのは、このためでした。

実際の数字で見る:約定代金と、手数料と、1株あたりの値段

約定のあと、実際に口座から出ていくのは「約定代金」だけではありません。 証券会社の手数料があれば、それが足されます。 この合計を受渡金額と呼びます。

いまの手数料の数字から見ます。 ネット証券の大手では、SBI証券が2023年9月30日から、楽天証券が2023年10月2日から、ネットでの国内株の売買手数料を、条件つきで0円にしています。 条件を満たせば、Day 48の例1は次のとおりです。

  • 約定代金:300,600円
  • 手数料:0円
  • 受渡金額:300,600円。 1株あたり 1,002円

比べるために、仮に手数料が1回500円かかる証券会社だったとします(ここは説明のための仮定です)。

  • 受渡金額:300,600円+500円=301,100円
  • 1株あたり:301,100円 ÷ 300株 = 約1,003.67円

1株あたりで約1.67円、0.17%ほど高くなります。 Day 50で見た「刻み1つ分のスプレッド」(1,000円の株で1円)より大きい差です。
そして、税金の計算で「いくらで買ったか(取得費)」を数えるときは、買ったときの手数料も含めます。 売って利益が出たとき、Day 43で見た約20.315%がかかるのは、売った額から、この手数料込みの取得費を引いた分です。 約定の平均値段と、手数料込みの1株あたりの値段は、別の数字として両方残しておくのが確実です。

もう1つ、約定のされ方の数字です。 東証では、朝9時の最初の値段(寄付き)と、15時25分〜15時30分の終わりの値段(引け)は、それまでに集まった注文をまとめて突き合わせ、1つの値段で一斉に約定させます。 それ以外の時間(ザラバ)は、注文が来るたびに1件ずつ約定します。
Day 48の例1のように「1,000円・1,001円・1,005円」と値段が分かれるのは、ザラバでの成行です。 寄付きで同じ300株を成行で買えば、300株とも同じ1つの値段で約定します。 ただし、その値段がいくらになるかは、9時になるまで分かりません。

約定したら、取り消せない

約定する前の注文は、多くの場合、取り消したり、値段や株数を直したり(訂正)できます。
でも、約定した分は、原則として取り消せません。 相手との約束が定まったからです。

これは、成行注文の性質と組み合わせると重くなります。 Day 48で見たとおり、成行注文は相手がいればすぐ約定します。 つまり、成行で出した注文は、出した瞬間にほぼ取り消せなくなるということです。
株数を1桁間違えた、買いと売りを間違えた——こうした間違いは、約定する前にしか直せません。ボタンを押す前の確認が、いちばん安い取り消し方です。

私の100万円と、約定

この連載では、私が実際に100万円を1年間運用しています。

昨日、記録に足したのは成行の前に書く2つの項目(最良気配の値段と株数、スプレッド)でした。
今日足すのは、「注文」と「約定」を分けて書く決まりです。

これまでの記録では、注文のしかた(成行か指値か)と、その前後の数字を書いてきました。 今日から、1回の注文を2行に分けます。

  • 注文の行:日時・売買の別・株数・成行か指値か(指値なら値段)
  • 約定の行:日時・約定した株数・約定の平均値段・約定代金

2行に分けると、「300株注文して100株約定」がそのまま残ります。注文した株数で記録すると、持っていない株を持っていることになってしまうからです。
記録には、こう書きます。「注文と約定は別の行。約定は株数・平均値段・代金を書く。取引報告書の約定の内容と照らし合わせる。」 実際の数字は、月1回の運用記録で出します。

カナの欄は、まだ空欄です。でも、最初の注文の日に書く行が、1行から2行になりました。

よくある質問(FAQ・全6問)

Q1. 約定したかどうかは、どこで確かめますか?

証券会社の「注文照会」や「約定照会」の画面と、取引報告書です。 画面では、注文ごとに「未約定」「一部約定」「約定済」などの状態と、約定した株数・値段が見られます。 取引報告書は、約定のあとに証券会社から届く書面で、いまは画面で受け取る電子交付が多くなっています。 記録をつけるときは、画面の数字ではなく、取引報告書の数字と照らし合わせるのが確実です。

Q2. 成行注文なら、注文と同時に約定しますか?

相手がいれば、ほぼすぐに約定します。 成行注文は値段を指定せず、そのとき並んでいるいちばん良い反対側の注文と成立するからです(取引所のルールでも、成行は指値より優先されます)。 ただ、相手となる注文がない場合など、すぐに約定しないこともあります。

Q3. 朝9時の約定は、昼間の約定と何が違いますか?

集まった注文が、1つの値段でまとめて約定します。 朝9時の最初の値段(寄付き)と、15時25分〜15時30分の終わりの値段(引け)は、それまでに並んだ注文をまとめて突き合わせて決めます。 昼間は、注文が来るたびに1件ずつ約定するので、成行の株数が多いと値段が分かれることがあります。 寄付きでは値段は分かれませんが、その値段は9時になるまで分かりません。

Q4. 約定しなかった注文はどうなりますか?

期限まで並び続け、期限が来たら失効します。 期限はその日限りのものや、期間を指定できるものがあり、選べる期限は証券会社によって違います。 期限の前なら、自分で取り消すこともできます。

Q5. 約定した注文は取り消せますか?

原則として取り消せません。 相手との売買が成立しているからです。 取り消せるのは、約定する前の分だけです。 一部約定の注文なら、まだ約定していない残りの分だけを取り消せます。

Q6. 何回かに分かれて約定したら、いくらで買ったことになりますか?

約定代金の合計を株数で割った平均の値段です。 Day 48の例1では、1,000円・1,001円・1,005円で100株ずつ約定して、合計300,600円。 300株で割ると1株あたり1,002円です。 手数料がかかる場合、税金の計算で使う「いくらで買ったか」には手数料も含めるので、手数料込みの1株あたりの値段も別に出しておきます。

まとめ

約定とは、出した注文に相手が見つかって、売買が成立することです。 注文と約定は別の段階で、そのあいだに「未約定」「一部約定」があり、注文は「全部約定」「取消」「失効」のどれかで終わります。
Day 49の架空の例は、当日限りの注文なら300株注文・100株約定・200株失効。 約定の値段が分かれたときは平均で数え、Day 48の例1なら300,600円 ÷ 300株 = 1,002円です。
約定した分は原則として取り消せません。 私の100万円では、注文と約定を別の行に分け、約定は株数・平均値段・代金で書きます。

🎯 今日の1手(実践)

昨日は、気になる株の板で、最良の売り・買いの値段と株数、スプレッドを控えました。今日は、「約定の平均値段」を自分で出してみます。 手順は2つです。

1つ目。 昨日と同じ株の板をもう一度見て、いちばん安い売りと、その次に安い売りの値段と株数を書き写します。 そのうえで、「いちばん安い売りの株数より多い株数を成行で買ったら」の約定を書き出します。 たとえば、いちばん安い売りに100株しかなければ、200株買ったときに、どの値段で何株ずつ約定するかを並べます。今日の日付と時刻と一緒に控えてください。 板が見られない場合は、昨日の記事の架空の板を使ってください。
2つ目。 約定代金の合計を株数で割って、平均の値段を出します。 そして、いちばん安い売りの値段との差を、1株あたりと合計の両方で書きます。 今日はここまでで、実際に注文はしません。

Day 47でお金を3つに分けた金額、Day 48で成行の最悪の値段、Day 49で呼値の刻みに合わせた指値、Day 50で板のスプレッドを控えてきました。
今日の「同じ株の板で、株数を増やして成行で買ったときの約定の平均値段を出し、日付と時刻つきで控えること」で45個目です。

🔗 あわせて読みたい

  • Day 50「板情報」 — 板はまだ成立していない注文の在庫表だという話。約定すると板から消える
  • Day 49「指値注文」 — 300株注文して100株だけ成立した架空の例。今日の言葉では一部約定
  • Day 48「成行注文」 — 3つの値段に分かれて約定した例1。平均すると1株1,002円

⚠️ ご注意

本記事は筆者個人の投資記録および一般的な金融知識の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
記載の運用実績は筆者個人の資金によるものです。
投資判断はご自身の責任において行ってください。
なおコンプライアンス上、当社の取引先に関連する銘柄は取引対象外としています。