昨日はDay 48「成行注文」で、値段を指定しない代わりに、すぐ成立することを最優先にする注文を見ました。 架空の例では、売り注文が少ない銘柄で300株を成行で買うと、思っていた30万円より15,000円高くつきました。
今日は、その15,000円を払わずに済ませる方法を見ます。 指値注文です。
カナは昨日の例2の数字を見て、「最初から値段を決めておけばいいのに」と思っていました。

カナ「「指値注文」は、成行注文とは逆の注文方法なんですか?」
逆です。 成行注文が手放したものを、指値注文は握ります。
そして、成行注文が握っていたものを、指値注文は手放します。

カナ「指値注文なら、指定した値段で確実に買えるってことですよね?」
そこが今日の分かれ道です。 「値段を決められる」と「その値段で買える」は、別のことです。
決められるのは自分の側の条件だけで、相手がその条件に応じるかどうかは、決められません。

カナ「自分で決めた値段なら、すぐ買えるんじゃないんですか?」
サトル「そこが誤解しやすい所だ。『指値注文』は、自分で買いたい値段・売りたい値段を指定する注文方法。でも市場の価格がその値段まで動いてこないと、いつまでも約定しない。値段は自分でコントロールできる代わりに、成立するタイミングは分からない。」
種明かしです。 指値注文が約束してくれるのは、「その値段で買える」ことではなく、「その値段より高くは買わない」ことです(売りなら「その値段より安くは売らない」)。
サトルの「いつまでも」には、ひとつ補足があります。 注文には有効期限があり、期限が来れば成立しないまま消えます。成立しないまま終わることも、指値注文の結果のひとつです。

カナ「値段は決められるけど、成立するかは市場次第なんですね」
そういうことです。
ここからは、指値注文の「線」の意味、昨日の例で指値を使うと何が起きるか、線を引ける刻み(呼値の単位)、成立しなかった注文の数え方、そして私の100万円で指値を使うときに何を書くのかを、順に見ます。
指値注文とは?
指値注文とは、買うなら「この値段以下」、売るなら「この値段以上」という条件をつけて出す注文です。
条件に合う相手がいれば成立し、いなければ、条件に合う相手が現れるまで(または注文の期限まで)待ちます。
昨日見た東京証券取引所の「価格優先の原則」を思い出してください。 買い注文は値段の高いものが、売り注文は値段の低いものが先に扱われます。 そして成行注文は、値段を指定した注文(指値)より先に扱われるのでした。
つまり指値注文は、順番の上では成行注文の後ろに並ぶ注文です。 値段を守るかわりに、列の前は譲っています。
ひとつ大事な性質があります。指値は「上限(下限)」であって「その値段ぴったり」ではありません。
1,010円で買いの指値を出したとき、1,000円の売り注文が出ていれば、その100株は1,000円で成立します。 自分に有利な値段なら、線より手前で成立します。
昨日の例に、指値を当ててみる
ここからは、昨日と同じ説明のための架空の例です。
売り注文が「1,000円に100株/1,050円に100株/1,100円に100株」しか出ていない銘柄を、カナが300株買いたいとします。
成行で買った場合(昨日)
- 300株すべてが、その場で成立
- 支払い:315,000円(思っていた30万円より15,000円高い)
1,000円の指値で買った場合(今日)
- 1,000円に出ていた100株だけが成立:100,000円
- 残りの200株は成立しない。1,000円以下で売りたい人が新しく現れるまで待つ
- 15,000円のずれは払わずに済む。そのかわり、手に入ったのは300株のうち100株
ここが今日いちばん大事なところです。
成行は「株数」を原則として確実にして「値段」を不確実にし、指値は「値段」を確実にして「株数と時間」を不確実にします。 不確実さが消えたわけではありません。どこに不確実さを置くかを、自分で選んでいるのです。
では、待っているうちに値段が上がっていったら? 1,050円も1,100円も売れてしまい、次に出てきた売り注文が1,200円だったら、カナの200株は1,000円の線の下に取り残されたままです。
指値注文のリスクは「高く買うこと」ではなく、「買えないこと」です。
線を引ける場所には、刻みがある
指値は、好きな値段を自由に書けるわけではありません。 値段の刻みが、銘柄と値段帯ごとに決まっています。 これを呼値(よびね)の単位といいます。
JPXの表から、ふつうの銘柄(TOPIX500の構成銘柄以外)の刻みを並べます。
- 3,000円以下:1円
- 3,000円を超えて5,000円以下:5円
- 5,000円を超えて30,000円以下:10円
TOPIX500の構成銘柄は刻みがもっと細かく、1,000円以下なら0.1円、1,000円を超えて3,000円以下なら0.5円です。
たとえば4,000円台のふつうの銘柄に「4,003円」の指値は出せません。 4,000円か4,005円です。線は、決められた目盛りの上にしか引けないということです。
実際の数字で見る:刻みの大きさと、線を引ける範囲
刻みが値段の何%にあたるかを出すと、銘柄による違いがはっきりします。 どれも、その値段帯でいちばん安い値段で計算しています。
- ふつうの銘柄・1,000円:刻み1円 = 0.1%
- ふつうの銘柄・3,005円:刻み5円 = 約0.17%
- ふつうの銘柄・5,010円:刻み10円 = 約0.2%
- TOPIX500の銘柄・1,000円:刻み0.1円 = 0.01%
ふつうの銘柄の1,000円台なら、線は0.1%ずつしか動かせません。 TOPIX500の銘柄なら、その10分の1の細かさで引けます。狙った値段に「ぴったり」置けるかどうかも、銘柄で違うということです。
もう1つ、線を引ける範囲にも上限と下限があります。 Day 48で見た制限値幅です。 前日の終値が1,000円の株なら、その日に成立しうる値段は700円〜1,300円。この範囲の外に指値を置く注文は、受け付けてもらえません。 「500円まで下がったら買う」という線は、その日には引けないのです。
前日の終値が2,500円の株なら、範囲は2,000円〜3,000円です。 今日の1手で使う「3%下」は、どの値段帯でも制限値幅の内側に収まります。
そして、期限の数字です。 その日だけ有効な注文(当日限り)は、東証の売買が終わる15時30分を過ぎても成立しなければ消えます。 Day 48で見たとおり、15時25分〜15時30分は、その日の終わりの値段をまとめて決める時間です。 ここで成立しなかった当日限りの指値は、その日のうちには二度と成立しません。
成立しなかった注文は、どう数えるか
指値注文を出して、成立しなかった。 このとき、何か損をしたのでしょうか。
Day 29で、この連載は1つの決まりを作りました。確定していないものは、値段として数えない。
成立しなかった200株が、もし買えていたらいくら増えていたか——これは確定していない数字です。 だから「損」としては数えません。
ただし、「成立しなかった」という事実は書きます。 数えないことと、書かないことは違います。
指値を出したのに1株も成立しなかった、100株だけ成立した、3日後に全部成立した。同じ指値注文でも、結果は1つではないからです。
私の100万円と、指値注文
この連載では、私が実際に100万円を1年間運用しています。
昨日、記録に足したのは「注文ごとに、成行か指値か、成行ならずれがいくらだったか」を書く決まりでした。
今日足すのは、指値のときに書く4つの項目です。
- 指値の値段(いくらの線を引いたか)
- 注文を出した日
- 成立した株数と、成立までにかかった日数
- 成立しなかった分があれば、その株数と、取り消した日か期限が来た日
成行のときは「ずれ」を書きました。 指値のときは「待ち」を書きます。 成行が値段で払ったものを、指値は時間と株数で払うからです。
記録には、こう書きます。「指値:値段・出した日・成立株数と日数・不成立の株数と終わった日。不成立分の『買えていたら』は数えない(Day 29の決まり)。」 実際の数字は、月1回の運用記録で出します。
カナの欄は、今日もまだ空欄です。でも、最初の注文を出す日に書く項目は、これで成行と指値の両方がそろいました。
よくある質問(FAQ・全6問)
Q1. 指値注文は、指定した値段で必ず成立しますか?
必ずではありません。 指定した値段か、それより有利な値段でなら成立しますが、条件に合う相手がいなければ成立しません。 架空の例では、1,000円の指値で300株を買おうとして、成立したのは100株だけでした。 このように一部だけ成立することもあり、残りは期限まで待ちます。 1,010円の買い指値で1,000円の売り注文があれば1,000円で成立するように、線より有利な値段で成立することもあります。
Q2. 制限値幅の外の値段で、指値は出せますか?
出せません。 その日に成立しうる値段の範囲(制限値幅)の外に置く指値は、受け付けてもらえません。 前日の終値が1,000円の株なら、その日に指値を置けるのは700円〜1,300円の間です。 もっと下で買いたいなら、値段がそこまで下がって範囲が動いた日に、改めて出すことになります。
Q3. 指値注文はいつまで有効ですか?
注文を出すときに選ぶ期限までです。 その日だけ有効な注文や、期間を指定できる注文があり、選べる期限は証券会社によって違います。 期限が来ると、成立しなかった分は消えます。
Q4. 指値を出したあとで、値段を変えられますか?
成立していない分なら、変えられます。 値段を直す「訂正」や、注文そのものの「取消し」ができます。 ただし、値段を変えると、同じ値段の注文の中での順番(時間優先)は、原則として後ろに回ります。 先に並んでいた場所を、手放すことになるのです。 すでに成立した分は、訂正も取消しもできません。
Q5. 成行と指値、どちらを使えばいいですか?
不確実さをどこに置きたいかで選びます。 株数と速さを優先したいなら成行(値段がずれる)、値段を確実にしたいなら指値(買えない・時間がかかることがある)です。 どちらも不確実さは消えず、置き場所が変わるだけです。
Q6. 指値が成立しなかったら、損をしたことになりますか?
この連載では、損としては数えません。 「買えていたら増えていた」は確定していない数字だからです(Day 29の決まり)。 ただし、成立しなかった株数と、注文が終わった日は記録に残します。
まとめ
指値注文は、「この値段より不利なら成立させない」という線を自分で引く注文です。 値段を守るかわりに、成立する株数と時間が不確実になります。
架空の例では、成行なら300株で315,000円、1,000円の指値なら100株・100,000円だけが成立し、残り200株は待ちになりました。
線を引ける場所には刻み(呼値の単位)があり、ふつうの銘柄なら3,000円以下は1円刻み。 私の100万円では、指値のときに「値段・出した日・成立株数と日数・不成立の株数と終わった日」の4つを書きます。
🎯 今日の1手(実践)
昨日は、気になる株の前日終値と、制限値幅から出した成行の最悪の値段を控えました。今日は、同じ株に指値を置くとしたら、どこに線を引けるかを確かめます。 手順は2つです。
1つ目。 昨日の前日終値から3%安い値段を計算します。 たとえば1,000円なら970円です。今日の日付と一緒に控えてください。
2つ目。 その値段が、呼値の単位の刻みに乗っているかを確かめます。 ふつうの銘柄なら、3,000円以下は1円、3,000円超5,000円以下は5円、5,000円超30,000円以下は10円刻みです。 乗っていなければ、刻みに合わせて切り下げた値段を書きます(30,000円を超える株はJPXの呼値の表で確認してください。 TOPIX500の構成銘柄かどうかで刻みが変わるので、分からなければ証券会社の銘柄ページで確認してください)。 今日はここまでで、実際に注文はしません。
Day 45でつみたて投資枠の取扱本数と手取り比、Day 46でiDeCoの上限額と軽くなる税額、Day 47でお金を3つに分けた金額、Day 48で気になる株の前日終値と成行の最悪の値段を控えてきました。
今日の「同じ株で、前日終値の3%下に引ける指値の値段を、呼値の刻みに合わせて日付つきで控えること」で43個目です。
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- Day 48「成行注文」 — 値段を手放して速さを取る注文。300株で15,000円ずれた架空の例
- Day 29「機会費用」 — 確定していないものは値段として数えない、という連載の決まり
- Day 47「NISAとiDeCoの使い分け」 — 注文を出す前に、お金を「いつ使うか」で分けた話
⚠️ ご注意
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