【Day 48/365|1日1金融用語】成行注文とは ——「値段より、とにかく早く成立させたいときに使う注文なんですね」と気づいたカナの話

【Day 48/365|1日1金融用語】成行注文とは ——「値段より、とにかく早く成立させたいときに使う注文なんですね」と気づいたカナの話

昨日はDay 47「NISAとiDeCoの使い分け」で、お金を「すぐ・60歳より前・60歳まで使わない」の3つに分けて、入れる箱を決めるという話をしました。
今日から、箱の中身を実際に買う話に入ります。 口座を開き、NISAかどうかを決めたあと、最後に押すのが注文のボタンです。
その注文画面で最初に選ばされるのが、「成行」か「指値」かです。

成行注文とはを学ぶカナの4コマ・起
カナ「「成行注文」って、そもそもどういう意味なんですか?」

読み方は「なりゆき」です。 字の通り、成り行きに任せる注文です。
ただ、何を成り行きに任せるのかが、今日のポイントです。

成行注文とはを学ぶカナの4コマ・承
カナ「値段を全く指定しないで、なんとなく注文する方法ってことですか?」

半分正解です。 値段は指定しません。
でも「なんとなく」ではありません。 成行注文には、はっきりした狙いがあります。

成行注文とはを学ぶカナの4コマ・転
カナ「値段を指定しないなんて、危なくないんですか?」
サトル「いい加減な注文ってわけじゃない。『成行注文』は値段を指定せず、今出ている一番良い条件の相手とすぐに売買を成立させる注文方法だ。とにかく早く買いたい・売りたいときに使う。ただしその分、実際にいくらで約定するかは注文を出すまで分からない。」

種明かしです。 成行注文が成り行きに任せているのは「値段」で、手放していないのは「速さ」です。
ひとつだけ言い直しておきます。 いくらで成立するかは、正確には「注文を出すまで」ではなく「成立するまで」分かりません。 注文を出した瞬間に見えている値段と、実際に成立した値段は、ずれることがあります。
値段を手放して、速さを買う。 それが成行注文の取引です。

成行注文とはを学ぶカナの4コマ・結
カナ「値段より、とにかく早く成立させたいときに使う注文なんですね」

そういうことです。
ここからは、東証のルールで成行注文がなぜ先に扱われるのか、値段がどれくらいずれうるのかを2つの例で、それでも上限が決まっている仕組み、そして私の100万円の注文で成行を使うときに何を書くのかを、順に見ます。

成行注文とは?

成行注文とは、買う値段・売る値段を指定せずに出す注文です。
買いの成行注文を出すと、そのとき出ている売り注文のうちいちばん安いものから順に成立します。 売りの成行注文なら、買い注文のうちいちばん高いものから順に成立します。

東京証券取引所(JPX)は、売買が成立する順番を2つの原則で決めています。

  • 価格優先の原則:「売呼値については、値段の低い呼値が値段の高い呼値に優先し、買呼値については、値段の高い呼値が値段の低い呼値に優先する」
  • 時間優先の原則:「同じ値段の呼値については、呼値が行われた時間の先後によって、先に行われた呼値が後に行われた呼値に優先する」

(呼値=注文のことです。 )
そして成行注文について、JPXはこう書いています。 「成行呼値は、いくらでもよいから売りたい又は買いたいというものですので、成行呼値は値段を指定した呼値(指値)に優先することになります。」

つまり成行注文は、ルールの上でいちばん前に並ばせてもらえる注文です。 「いくらでもいい」と言っているのだから、相手がいれば誰よりも先に成立する。速さは、値段を手放した見返りとして、ルールが与えている順番なのです。

どれくらい、ずれるのか

では、値段を手放すとどれくらいずれるのか。 ここからは説明のための架空の例です。
カナが、画面に「1,000円」と出ている株を300株、成行で買うとします。 思っていた金額は 1,000円 × 300株 = 300,000円です。

例1:売り注文がたくさん出ている銘柄

  • 1,000円に100株/1,001円に100株/1,005円に100株の売り注文が出ている
  • 成行300株は、安い順に全部を買う:100,000円+100,100円+100,500円 = 300,600円
  • ずれは 600円(0.2%)。ラーメン1杯に届きません

例2:売り注文が少ない銘柄

  • 1,000円に100株/1,050円に100株/1,100円に100株しか出ていない
  • 成行300株:100,000円+105,000円+110,000円 = 315,000円
  • ずれは 15,000円(5%)。ラーメン16杯分です

ここが今日いちばん大事なところです。
画面に出ている「1,000円」は、いちばん安い100株分の値段でしかありません。 買う株数が、その値段に出ている株数より多ければ、残りは次の値段、その次の値段と、上へ上へと買っていきます。
どこまで上がるかは、その銘柄に売り注文がどれだけ並んでいるかで決まります。 並び方そのものは、Day 50「板情報」で正面から扱います。

それでも、上限は決まっている

「いくらでもいい」と言っても、本当に青天井になるわけではありません。
JPXは「一日の売買における値動きの幅を価格水準に応じて一定に制限しており、この値幅を制限値幅といいます」と書いています。 基準になるのは、前日の終値などです。

  • 基準値段が500円以上700円未満:100円
  • 700円以上1,000円未満:150円
  • 1,000円以上1,500円未満:300円

ほかの価格帯は、JPXの表で確認できます。

前日の終値も1,000円だったとすると、「1,000円以上1,500円未満」の段に入るので、制限値幅は300円。 その日に成立しうる値段は700円〜1,300円の間です。
カナの例2で、もし売り注文がもっと少なく、1,300円まで買い上がったとしても、原則として、それより上では成立しません。 どの株も1,300円でしか成立しなかったとしても、300株で最大 1,300円 × 300株 = 390,000円。 思っていた30万円より9万円(30%)多い、というのが、ルール上の「最悪」です。

この上限にぶつかったときに何が起きるかは、Day 76「ストップ高・ストップ安」で扱います。

実際の数字で見る:値段の刻み、売買の単位、15時30分の締め方

ここまでは架空の例でした。 ここからは、東証のいまのルールそのものの数字です。

1つ目は、値段の刻み(呼値の単位)です。 株の値段は、決まった刻みでしか付けられません。

  • TOPIX500以外の銘柄:3,000円以下は 1円刻み、3,000円を超えて5,000円以下は 5円刻み
  • TOPIX500の銘柄(大きく、よく売買される500銘柄):1,000円以下は 0.1円刻み、1,000円を超えて3,000円以下は 0.5円刻み

例1の「1,000円・1,001円・1,005円」は、1円刻みの銘柄を想定した並びです。 刻みが細かい銘柄ほど、売り注文が細かい値段で並びやすく、成行のずれも小さく収まりやすくなります。

2つ目は、売買の単位です。 東証の株は、原則として100株が1単位です。 1,000円の株を取引所で買うなら、最低でも 1,000円 × 100株 = 10万円が要ります。 カナの例の300株は、その3単位分です。

3つ目は、取引の時間です。 東証で売買できるのは、午前が 9時〜11時30分、午後が 12時30分〜15時30分です。 午後の終わりは2024年11月5日に30分延び、最後の5分(15時25分〜15時30分)は、その日の終わりの値段をまとめて決める時間になりました。
この時間の外、たとえば夜に成行注文を出すと、成立するのは次の営業日の朝、最初に付く値段(寄付き)です。 夜に画面で見た値段は前の日の値段で、朝の値段はそれと違うことがよくあります。「速さを買う」成行でも、市場が閉まっている間は待つしかありません。

そして制限値幅は、値段が高い株ほど幅も大きくなります。

  • 1,500円以上2,000円未満:400円
  • 2,000円以上3,000円未満:500円

前日の終値が2,500円の株を100株、成行で買うと、ルール上の最悪は 3,000円 × 100株 = 30万円。 思っていた25万円より5万円(20%)多い計算です。 前日1,000円の株の30%より、割合では少し小さくなります。

私の100万円と、成行注文

この連載では、私が実際に100万円を1年間運用しています。

昨日、記録に足したのは「使う日」の欄でした。 答えは「使う日:2027年9月(答え合わせの日)。60歳より前に使う日が決まっている=iDeCoではなく、出せる側のお金。」
今日足すのは、「注文ごとに、成行か指値か、成行ならずれがいくらだったか」を書く決まりです。

これまでの欄は、口座や制度の「状態」を書くものでした。今日からは、1回ごとの「注文」を書く欄が始まります。
成行で注文したときは、次の2つを並べて書きます。

  • 注文を出した瞬間に画面に出ていた値段
  • 実際に成立した値段(複数の値段に分かれたら、その平均)

その差が、私が速さのために払った値段です。手数料のように明細には載りませんが、確かに払っています。 載らないからこそ、自分で書きます。
記録には、こう書きます。「注文方法:成行/指値の別。成行なら、注文時の表示値段と約定の平均値段の差を円で書く。」 実際の数字は、月1回の運用記録で出します。

カナはまだ証券口座を持っていないので、この欄を書く日はもう少し先です。でも、昨日書いた順番(①リボ ②生活防衛資金)が済んで最初の注文を出すとき、この1行があれば、見えない値段を見落とさずに済みます。

よくある質問(FAQ・全6問)

Q1. 夜や休日に成行注文を出すと、どうなりますか?

次の営業日の朝、最初に付いた値段(寄付き)で成立します。 東証で売買できるのは9時〜11時30分と12時30分〜15時30分なので、その外で出した注文は、市場が開くまで待つことになります。 夜に画面で見ていたのは前の日の値段なので、朝に成立する値段とはずれることがあります。 「すぐ」が効くのは、市場が開いている間だけです。

Q2. 成行注文を出したのに、成立しないことはありますか?

あります。 成行注文は「相手がいれば」すぐ成立する注文なので、相手の注文がなければ成立しません。 たとえば、買いたい人ばかりで売り注文がほとんど出ていないときです。 その場合、注文は成立しないまま残り、その日のうちに成立しなければ、証券会社の設定によっては夕方に取り消されます。 成立したかどうかは、注文を出したあとに必ず確かめます。

Q3. 成行注文で、値段はどこまでずれる可能性がありますか?

原則として、その日の制限値幅までです。 前日の終値が1,000円の株なら制限値幅は300円なので、その日に成立しうる値段は700円〜1,300円の間です。 原則として、それを超えて成立することはありません。 前日の終値が2,500円なら制限値幅は500円で、上限は3,000円です。 幅は値段の段ごとに決まっているので、自分の株がどの段かを先に確かめておきます。

Q4. 成行注文は取り消せますか?

成立する前なら取り消せます。 ただ、成行注文は相手がいればすぐに成立するので、取り消しが間に合わないことがほとんどです。 「出したら成立する」と考えて出すほうが安全です。

Q5. 成行注文が向いているのは、どんなときですか?

値段の小さなずれより、今すぐ成立させることのほうが大事なときです。 たとえば、売ると決めた株を確実に売りたいときなどです。 逆に、売り注文・買い注文が少ない銘柄で、まとまった株数を一度に成行で出すのは、ずれが大きくなりやすい組み合わせです。

Q6. 成行注文の「ずれ」は、どこかに記録されますか?

明細には「ずれ」という項目はありません。 取引報告書に載るのは、実際に成立した値段です。 注文を出したときに画面で見えていた値段との差を知りたければ、自分で書き留めておく必要があります。

まとめ

成行注文は、値段を指定しない代わりに、すぐ成立することを最優先にする注文です。 東京証券取引所のルールでも、成行注文は指値注文より先に扱われます。
そのかわり、成立する値段は成立するまで分かりません。 架空の例では、300株を成行で買ったときのずれは、売り注文が多い銘柄で600円、少ない銘柄で15,000円(ラーメン16杯)でした。
それでも上限はあり、前日1,000円の株ならその日の値段は原則として最大1,300円まで。 私の100万円では、成行で注文するたびに、表示の値段と成立した値段の差を書きます。

🎯 今日の1手(実践)

昨日は、自分のお金を「すぐ・60歳より前・60歳まで使わない」の3つに分けて、金額を控えました。今日は、気になる株を1つ選んで、成行で買ったときの「最悪の値段」を出します。 手順は2つです。

1つ目。 気になる会社の株を1つ選び、前日の終値を調べます。 証券会社のサイトやニュースサイトで見られます。 口座がなくても大丈夫です。今日の日付と一緒に控えてください。
2つ目。 制限値幅の表に当てて、その日に成立しうる値段の上限を出します。 500円以上700円未満なら+100円、700円以上1,000円未満なら+150円、1,000円以上1,500円未満なら+300円(それ以外の値段の株は、JPXの制限値幅の表で確認してください)。 そして「その値段で100株買ったらいくらか」まで計算します。 今日はここまでで、実際に注文はしません。

Day 44でNISA口座の有無、Day 45でつみたて投資枠の取扱本数と手取り比、Day 46でiDeCoの上限額と軽くなる税額、Day 47でお金を3つに分けた金額を控えてきました。
今日の「気になる株の前日終値と、制限値幅から出した成行の最悪の値段を、日付つきで控えること」で42個目です。

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⚠️ ご注意

本記事は筆者個人の投資記録および一般的な金融知識の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
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なおコンプライアンス上、当社の取引先に関連する銘柄は取引対象外としています。