昨日はDay 49「指値注文」で、「この値段より不利なら成立させない」という線を自分で引く注文を見ました。 1,000円の指値で300株を買おうとして、成立したのは100株だけでした。
今日は、その「100株だけ」が、なぜ注文を出す前から分かっていたのかを見ます。 答えは、注文画面にずっと出ていた数字の表、板情報です。
カナは昨日の例の「1,000円に100株」という書き方が、どこから来た数字なのか気になっていました。

カナ「「板」ってよく聞くけど、あの数字の並びは一体何なんですか?」
昨日と一昨日の例は、全部あの並びから取った数字です。 「1,000円に100株/1,050円に100株」というのは、板の1行1行のことでした。
ただ、並んでいる数字が何を意味しているのかは、パッと見ただけでは分かりません。

カナ「今までに売買が成立した記録の一覧、ってことですか?」
そこが今日の分かれ道です。 値段と株数が細かく並んでいると、取引の履歴に見えます。
でも、そこに並んでいるのは「もう済んだこと」ではありません。

カナ「「注文が成立した順番」が分かる一覧なんですよね?」
サトル「実は違う。『板情報』は、今出ている買い注文・売り注文が、価格ごとにどれだけあるかを一覧にしたものだ。まだ成立していない注文の状況を表していて、すでに成立した売買の記録とは別のものだ。」
種明かしです。 板に並んでいるのは、まだ相手が見つかっていない注文だけです。 相手が見つかって成立した分は、その瞬間に板から消えます(一部だけ成立した注文なら、残りの株数は板に残ります)。
だから板は、過去の記録ではなく、「今この値段なら、これだけの株数が取引できる」という在庫表のようなものです。

カナ「「もう終わったこと」じゃなくて、「これから起こりそうなこと」を表す一覧なんですね」
そういうことです。
ひとつだけ補足すると、板は値段がこれからどう動くかの予想ではありません。「これから成立しうる取引の候補」が並んでいる、という意味での「これから」です。
ここからは、板の読み方、売りと買いのすき間(スプレッド)がいくらかかるか、Day 48の「ずれ」を板から先に計算する方法、板が教えてくれないこと、そして私の100万円で注文前に書くことを、順に見ます。
板情報とは?
板情報とは、ある銘柄について、まだ成立していない売り注文と買い注文を、値段ごとに株数で並べた一覧です。 証券会社の注文画面に表示されます。
一般的な並び方は、真ん中の値段の列をはさんで、上半分が売り注文、下半分が買い注文です。 ここからは説明のための架空の板です。
- 売り 1,100円:100株
- 売り 1,050円:100株
- 売り 1,000円:100株 ← いちばん安い売り(最良の売り気配)
- 買い 990円:200株 ← いちばん高い買い(最良の買い気配)
- 買い 980円:300株
- 買い 970円:500株
上の3行は、Day 48の例2と同じ売り注文です。 Day 48で「画面に出ている1,000円は、いちばん安い100株分の値段でしかない」と書いたのは、この1行のことでした。
ここで大事なのは、1,000円と990円のあいだには、どちらの注文も出ていないことです。
「1,000円なら売ってもいい」人と「990円なら買ってもいい」人がいて、まだ折り合っていない。 だから成立していない。板は、折り合っていない注文の一覧です。
売りと買いのすき間は、いくらかかるか
いちばん安い売り(1,000円)と、いちばん高い買い(990円)の差を、スプレッドと呼びます。 この例では10円。 1,000円に対して1%です。
このすき間は、成行で買って成行で売る往復で払う値段になります。
- 成行で100株買う:いちばん安い売りの1,000円で成立 → 100,000円
- その直後に、成行で100株売る:いちばん高い買いの990円で成立 → 99,000円
- 値段が1円も動いていないのに、1,000円減る(ラーメン1杯と少し)
ここが今日いちばん大事なところです。
板の上では、「買う値段」と「売る値段」が最初から違います。 買った瞬間に売っても元の値段には戻りません。 成行で入って成行で出ると、その往復でスプレッドを1回払います。
Day 16で、両替には買うときと売るときで違うレートがあり、往復でその差を払うという話をしました。 株の板でも、同じことが起きています。違うのは、その差を決めているのが銀行ではなく、そのとき並んでいる注文だという点です。
実際の数字で見る:スプレッドのいちばん狭い形は「刻み1つ分」
架空の板のスプレッドは10円でした。 では、現実の板で、スプレッドはどこまで狭くなれるのか。
答えは、Day 49で見た値段の刻み(呼値の単位)1つ分です。 売りと買いが同じ値段に並べば、その場で成立して板から消えるので、すき間が0円のまま残ることはありません。 いちばん狭くても、刻み1つ分は開いています。
東証のいまの刻みで、いちばん狭いスプレッドと、100株を成行で往復したときに払う額を出すと、こうなります。
- ふつうの銘柄・1,000円:刻み1円 = 0.1%。 100株の往復で 100円
- ふつうの銘柄・3,005円:刻み5円 = 約0.17%。 100株の往復で 500円
- TOPIX500の銘柄・1,000円:刻み0.1円 = 0.01%。 100株の往復で 10円
架空の板の10円(1%)は、ふつうの銘柄の最小の10倍のすき間です。 刻み1つ分まで詰まっている板もあれば、何十円も開いている板もある。同じ1,000円の株でも、往復で払う額は10円から1,000円以上まで開きます。
比べるために、Day 16の両替も同じ形で出してみます。 銀行の外貨預金では、ドルを買うときと売るときにそれぞれ1ドルあたり1円の手数料がかかることがあり、仮に1ドル150円なら片道約0.67%、往復で約1.3%です。 刻み1つ分まで詰まった株の板は、それよりずっと狭いすき間で取引できる、ということです。
もう2つ、板を見るときの数字があります。
- 注文の受付は朝8時から:東証は売買が始まる9時より前から注文を受け付けます。 8時〜9時の板には注文が積み上がっていきますが、売買はまだ成立していません。 この時間のすき間は、9時に最初の値段が決まるまで「仮の姿」です
- 画面の外の注文:多くの証券会社の画面では、表示されている段より上の売りの合計を「OVER」、下の買いの合計を「UNDER」として1行で出しています。 何段目まで見えるかは画面ごとに違いますが、見えない段にも注文は並んでいます
Day 48の「ずれ」は、板から先に計算できる
Day 48の例2で、300株を成行で買うと315,000円になりました。 この数字は、板を見れば注文を出す前に出せます。
- 1,000円の100株 → 100,000円
- 1,050円の100株 → 105,000円
- 1,100円の100株 → 110,000円
- 合計 315,000円。いちばん安い売りだけで考えた30万円より 15,000円多い
逆に、100株だけなら、いちばん安い売りの1,000円に100株並んでいるので、ずれは0円です。
つまり、ずれの大きさは「自分の株数」と「いちばん良い値段に並んでいる株数」の比べっこと、その次の値段までの間隔で決まります。 自分の株数がそこに収まれば、ずれは小さい。 はみ出せば、はみ出した分だけ次の値段で買うことになります。
昨日のDay 49で、1,000円の指値が「100株だけ」成立したのも同じ理由です。 1,000円以下の売りが、板に100株しか並んでいなかったからです。
板が教えてくれないこと
板は便利ですが、分からないこともあります。
- 次の瞬間の板:注文は出されたり取り消されたりするので、板はずっと動いています。見えているのは、その一瞬の姿です
- 値段がどちらに動くか:買い注文が多く並んでいても、値段が上がるとは限りません。並んでいる注文は、取り消すこともできるからです
- 表示されていない注文:画面に出るのは、いちばん良い値段の近くの何段かだけ、ということが多く、どこまで表示されるかは証券会社によって違います(その外側は「OVER」「UNDER」の合計でしか見えないことがあります)
板は予報ではなく、在庫表です。 「今この値段で、何株まで取引できるか」を確かめるのには使えますが、「これから上がるか下がるか」を当てる道具ではありません。
私の100万円と、板情報
この連載では、私が実際に100万円を1年間運用しています。
昨日、記録に足したのは指値のときに書く4つの項目でした(値段・出した日・成立株数と日数・不成立の株数と終わった日)。
今日足すのは、成行で出す前に板を見て書く2つの項目です。
- いちばん良い値段と、そこに並んでいる株数(買うなら売りの最良、売るなら買いの最良)
- そのときのスプレッド(円と%)
Day 48で決めた「成行のずれ」は、注文を出したあとに書くものでした。 今日の2つは、注文を出す前に書くものです。
前と後を並べると、「板から予想したずれ」と「実際のずれ」が同じだったかどうかが分かります。 違っていたら、注文を出すまでのあいだに板が動いたということです。
記録には、こう書きます。「成行の前:最良気配の値段と株数、スプレッド(円・%)。約定のあと:Day 48のずれと並べて、板から予想した額と比べる。」 実際の数字は、月1回の運用記録で出します。
カナの欄は、まだ空欄です。でも、最初の注文の日に「ボタンを押す前に見るもの」が1つ増えました。
よくある質問(FAQ・全6問)
Q1. 朝9時より前に見る板は、昼間の板と何が違いますか?
まだ1株も成立していない板です。 東証は朝8時から注文を受け付けますが、売買が始まるのは9時です。 それまでの板には注文が積み上がるだけで、売りと買いが重なって見えても成立しません。 9時に最初の値段(寄付き)がまとめて決まり、そこから昼間の板になります。 朝の板は、取り消しや追加で9時までに大きく変わることがあります。
Q2. 板の上と下は、何が違いますか?
一般的には、上が売り注文、下が買い注文です。 真ん中に近いところに、いちばん安い売りと、いちばん高い買いが並びます。 ただし、表示の向きや段数は証券会社の画面によって違うので、自分の画面で確かめてください。
Q3. スプレッドは、いちばん狭いといくらですか?
値段の刻み(呼値の単位)1つ分です。 売りと買いが同じ値段に並ぶと、その場で成立して消えるので、0円にはなりません。 ふつうの銘柄の1,000円なら1円(0.1%)で、100株を成行で往復しても100円です。 TOPIX500の銘柄の1,000円なら0.1円(0.01%)まで狭くなります。 架空の例の10円(1%)は、その10倍から100倍のすき間でした。
Q4. 「板が厚い」「板が薄い」とは、どういう意味ですか?
それぞれの値段に並んでいる株数が多いか少ないかです。 厚ければ、まとまった株数を成行で出してもずれが小さく、薄ければ、少ない株数でもずれが大きくなりやすくなります。 ずれの大きさは株数だけでなく、値段がどれだけ詰まって並んでいるかでも変わります。 Day 48の例1と例2は、どの値段にも100株ずつで株数は同じでしたが、値段の間隔が違い(例1は1円・4円、例2は50円ずつ)、ずれは600円と15,000円でした。
Q5. 板を見れば、値段が上がるか下がるか分かりますか?
分かりません。 板は「今この値段で、何株まで取引できるか」を示すものです。 並んでいる注文は取り消されることもあるので、買い注文が多いからといって値段が上がるとは限りません。
Q6. 口座がなくても板は見られますか?
多くの場合、証券会社の口座にログインした画面で見ます。 どこまで詳しく見られるかは、証券会社やサービスによって違います。 見られない場合は、この記事の架空の板で計算の練習をしておけば、口座を開いた日にそのまま使えます。
まとめ
板情報は、まだ成立していない売り注文と買い注文を、値段ごとに株数で並べた一覧です。 過去の記録でも、値動きの予報でもなく、今この値段で何株まで取引できるかの在庫表です。
架空の板では、いちばん安い売り1,000円といちばん高い買い990円の差(スプレッド)は10円・1%。 値段が動いていなくても、成行で100株を買ってすぐ売ると、それだけで1,000円減ります。
Day 48の315,000円も、板を見れば注文の前に出せます。 私の100万円では、成行の前に「最良気配の値段と株数、スプレッド」を書き、あとで実際のずれと比べます。
🎯 今日の1手(実践)
昨日は、気になる株で、前日終値の3%下に引ける指値の値段を、呼値の刻みに合わせて控えました。今日は、その株の板を見て、スプレッドを出します。 手順は2つです。
1つ目。 同じ株の板で、いちばん安い売りの値段と株数、いちばん高い買いの値段と株数を書き写します。 今日の日付と時刻も一緒に控えてください(板は刻々と変わるからです)。 板が見られない場合は、この記事の架空の板(売り1,000円・100株/買い990円・200株)で進めてください。
2つ目。 スプレッドを円と%で出します。(いちばん安い売り − いちばん高い買い)÷ いちばん安い売り × 100 です。 そして、昨日の指値の値段が、いちばん高い買いより何円上か下かも書きます(架空の板で進める人は、970円の指値として比べてください)。 今日はここまでで、実際に注文はしません。
Day 46でiDeCoの上限額と軽くなる税額、Day 47でお金を3つに分けた金額、Day 48で成行の最悪の値段、Day 49で呼値の刻みに合わせた指値の値段を控えてきました。
今日の「同じ株の板で、最良の売り・買いの値段と株数、スプレッド(円と%)を、日付と時刻つきで控えること」で44個目です。
🔗 あわせて読みたい
- Day 49「指値注文」 — 1,000円の指値が「100株だけ」成立した話。その理由が今日の板
- Day 48「成行注文」 — 300株を成行で買うと15,000円ずれた架空の例。板から先に計算できる
- Day 16「為替レート」 — 買うときと売るときでレートが違い、往復でその差を払うという話
⚠️ ご注意
本記事は筆者個人の投資記録および一般的な金融知識の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
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