【Day 7/365|1日1金融用語】可処分所得 ——「聞いてた金額より少ない」と気づいたカナの話

【Day 7/365|1日1金融用語】可処分所得 ——「聞いてた金額より少ない」と気づいたカナの話

Day 6で購買力をやりました。
「その金額で何がどれだけ買えるか」という力の話です。

100万円で1,250杯だったラーメンが1,100杯になった、あの話です。

ただ、あそこには言い落としがありました。
購買力がかかるのは、額面ではありません。

給料30万円と言うとき、その30万円で買い物はできません。
実際に使えるのは、そこから何段階も引かれた後の金額です。

今日はその「引かれた後」に名前をつけます。
ここから Day 11 まで、手取りが削られていく過程を1つずつ見ていきます。

可処分所得を学ぶカナの4コマ・起
カナ「初任給の額を聞いたとき、けっこうもらえるじゃんって思ったんですよ」

多くの人がそう思います。

可処分所得を学ぶカナの4コマ・承
カナ「でも振り込まれた額を見たら、聞いてた数字より全然少なくて」

そこです。
提示された金額と、振り込まれる金額は違います。

可処分所得を学ぶカナの4コマ・転
カナ「あの差って、どこに行ってるんですか?」
サトル「税金と社会保険料だよ。口座に入る前に引かれてるから、減った実感がないだけなんだ。」

種明かしです。
私たちは払った覚えのないお金を、毎月かなりの額払っています。

可処分所得を学ぶカナの4コマ・結
カナ「使えるお金って、思ってたより少なかったんだ……」

そういうことです。
ここからは、その「使えるお金」の正体を見ていきます。

可処分所得とは?

可処分所得(disposable income)とは、収入から税金と社会保険料を差し引いた、自由に使えるお金のことです。

式にするとこうなります。

可処分所得 = 収入 −(税金 + 社会保険料)

引かれるものは、大きく2種類です。

  • 税金:所得税、住民税
  • 社会保険料:健康保険、厚生年金、雇用保険、(40歳以上は介護保険)

会社員の場合、この両方が給料から天引きされます。
だから「払った」という手ざわりがありません。気づかないうちに引かれ終わっているのが、この仕組みのいちばんの特徴です。

自営業やフリーランスなら、自分で計算して自分で納めます。

手ざわりは強烈ですが、金額の性質は同じです。

額面の何割が残るのか

正確な金額は、年齢・扶養・住んでいる自治体・加入している健康保険によって変わります。
ここでは幅で持っておくのが実用的です。

目安として、額面の75〜85%程度が手取りになります。

額面が月30万円なら、こうなります。

  • 手取り率85%:月25.5万円 / 年306万円
  • 手取り率80%:月24.0万円 / 年288万円
  • 手取り率75%:月22.5万円 / 年270万円

同じ額面30万円でも、年間で36万円の幅があります。
「年収いくら?」という会話が意外と噛み合わないのは、この幅を無視しているからです。

なぜこれだけ幅が出るのか、内訳は Day 8「手取りと額面」から Day 11「住民税」まで、1つずつ分解していきます。

今日は全体像だけ押さえます。

昨日の話とつなぐと

Day 6 で「額面30万円はラーメン330杯ぶん」と計算しました。

909円で割った数字です。

でも実際に食べられるのは330杯ではありません。
手取り率80%なら24万円なので、264杯ぶんです。

66杯、最初から存在していませんでした。

購買力は可処分所得にかかる、というのはこういうことです。
額面を見て生活設計をすると、必ず2割ぶんズレます。

三段構えで減っていく

ここが今日いちばん大事なところです。
私たちの「使える量」は、3段階で削られます。

  1. 額面 → 税と社会保険料が引かれて可処分所得
  2. 可処分所得 → 物価が上がって購買力
  3. 残ったものが、実際に買える量

だから昇給しても楽にならないことがあります。

数字で見ます。

額面が月30万円から30万3千円へ、1.0%の昇給があったとします。
同じ年に社会保険料率が少し上がって、手取り率が80%から79.5%になったとします。

  • 額面:30万円 → 30万3千円(+1.00%
  • 手取り:24万円 → 24万885円(+0.37%
  • 物価が1.7%上がると、実質:−1.31%

昇給したのに、使える量は1.3%減っています。

上がった率だけを見ると増えています。
手取りで見ると、ほとんど増えていません。
購買力で見ると、減っています。

同じ1年を、3通りに語れる。どれも嘘ではありません。 ただ、暮らしに効くのは3番目です。

「収入を増やす」より効くことがある

可処分所得を増やす方法は、実は2つあります。

  1. 収入そのものを増やす(昇給、転職、副業)
  2. 引かれる額を減らす(控除を使う)

1は難しく、時間もかかります。
2は制度を知っているかどうかだけで決まる部分があります。

たとえば、こういうものが引かれる額に効きます。

  • ふるさと納税
  • iDeCo(掛金が所得控除になる)
  • 生命保険料控除
  • 医療費控除
  • 扶養控除

そして NISA はここには入りません。 NISAは「引かれる額を減らす」制度ではなく、「運用益に税金がかからない」制度だからです。

効く場所が違います。
この違いは第6章「制度と税金」で正面から扱います。

念のため書いておきます。私はここでどれかを勧めているわけではありません。 名前を挙げているのは、可処分所得という言葉が「収入の話」ではなく「引かれる額の話」でもあると示すためです。

私の100万円と可処分所得

この連載では、私が実際に100万円を1年間運用しています。

この100万円は、すでに引かれ終わったお金です。
税金と社会保険料を払ったあとの、私の可処分所得から出しています。

だから運用で増えた分には、また税金がかかります。
100万円が110万円になっても、10万円がまるごと手に入るわけではありません。

利益には20.315%かかるので、手取りベースの利益は約8万円です。

入るときに引かれ、出るときにも引かれる。 投資の話をするとき、この二重の関門を忘れると数字が甘くなります。

月1回の運用記録では、税引前と税引後の両方を書きます。
Day 6 で「物価を差し引いた実質も併記する」と書きましたが、それに税引後も足します。都合のいい数字だけを並べません。

よくある質問(FAQ・全6問)

Q1. 可処分所得と手取りは同じもの?

日常会話ではほぼ同じ意味で使われます。
厳密には、可処分所得は統計や経済の用語で「収入 −(税+社会保険料)」を指し、手取りは給与明細の「差引支給額」を指すことが多いです。
給与明細に出てくる言葉の違いは Day 8「手取りと額面」で扱います。

Q2. なぜ額面で提示されるの?

会社が負担する金額を示すのが額面だからです。
ただし会社は、額面に加えて社会保険料の会社負担分も払っています。あなたの給料に会社がかけているコストは、額面よりさらに大きいということです。
この構造は Day 9「社会保険料」で扱います。

Q3. ボーナスからも引かれる?

引かれます。
2003年以降、賞与からも社会保険料が徴収される仕組みになっています。

所得税もかかります。
「ボーナスは満額もらえる」という感覚があるとしたら、それはかなり昔の記憶か、思い込みです。

Q4. 年収が上がれば可処分所得も同じだけ増える?

同じ率では増えません。
所得税は累進課税なので、収入が増えるほど高い税率がかかる部分が出てきます。
年収が1割上がっても、可処分所得は1割は増えない。

この仕組みは Day 10「所得税の累進課税」で扱います。

Q5. 自分の可処分所得はどうやって知る?

いちばん確実なのは、実際に口座に振り込まれた額を12か月ぶん足すことです。
計算式を追う必要はありません。

振り込まれた実績が答えです。
ボーナスがあるなら、それも足す。

それが自分の年間の可処分所得です。

Q6. 引かれている額が大きすぎる気がするけど、減らせないの?

天引きされる社会保険料は、給与額で機械的に決まるので個人では動かせません。
動かせるのは税金のほうです。

控除を使えば課税される所得が減り、結果として税額が下がります。
ただし控除は「使えば得」ではなく「条件に当てはまれば使える」ものです。

制度ごとの条件は第6章「制度と税金」でまとめて扱います。

まとめ

可処分所得とは、収入から税金と社会保険料を引いた、実際に使えるお金です。
目安として額面の75〜85%。

額面30万円なら手取りは22.5万〜25.5万円で、年間36万円の幅があります。
Day 6 の購買力は、額面ではなくこの可処分所得にかかります。

額面330杯ぶんに見えても、実際は264杯ぶんです。

そして私たちの使える量は三段構えで削られます。
額面 → 引かれて可処分所得 → 物価で購買力。
昇給1.0%でも、手取り率が下がり物価が1.7%上がれば、実質は1.31%のマイナスになり得ます。

🎯 今日の1手(実践)

今日、先月の給与明細を1枚だけ開いて、2つの数字を見比べてください。

  1. 総支給額(額面)
  2. 差引支給額(実際に振り込まれた額)

そして2を1で割ってください。

それがあなたの手取り率です。

  • 0.85なら、額面の85%が使えるお金
  • 0.75なら、4分の1が口座に入る前に消えている

多くの人は、この割り算を一度もしないまま働き続けます。
自分の手取り率を数字で言えるかどうかが、今日の分かれ目です。
明細の各項目が何なのかは、明日から1つずつ解きます。

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⚠️ ご注意

本記事は筆者個人の投資記録および一般的な金融知識の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
記載の運用実績は筆者個人の資金によるものです。
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