【Day 38/365|1日1金融用語】預金金利の決まり方 ——「政策金利は土台で、そこから銀行が自分で決めてるんですね」と気づいたカナの話

【Day 38/365|1日1金融用語】預金金利の決まり方 ——「政策金利は土台で、そこから銀行が自分で決めてるんですね」と気づいたカナの話

昨日はDay 37で預金保険を見ました。 守られる範囲は、対象銀行ならどこでも同じ——合算して元本1,000万円まで。それなのに、預金金利は銀行によって違う。 0.400%の銀行もあれば、それより高い銀行もあります。 その手前、Day 36では「差の1.052ポイントの中に、幅を吸い込む取り分が入っている」まで見て、取りすぎか妥当かは判定しないまま止めました。 妥当かどうかを言うには、その銀行が何を見て数字を決めているかを知る必要がある——今日はそこに着きます。

預金金利の決まり方を学ぶカナの4コマ・起
カナ「政策金利が1.0%まで上がったなら、私の普通預金も1.0%になってもいいんじゃないですか?」

そうはなりません。 政策金利は、銀行が預金者に払う金利の天井ではなく、土台です。 銀行には、預金者に何も払わなくても手に入る選択肢があるからです。

預金金利の決まり方を学ぶカナの4コマ・承
カナ「銀行に、預金者に払わなくていい選択肢があるんですか?」

あります。日本銀行に置いておくことです。 銀行は決済のために日銀に口座(日銀当座預金)を持っていて、そこに置いてあるお金の一部には補完当座預金制度という仕組みで利息が付きます。 その適用利率は、いま年1.25%(2026年9月24日から)。預金者に0.4%しか払わなくても、銀行は日銀に置くだけで1.25%を得る選択肢を持っている——だから政策金利は、銀行がいちばん先に見ている土台になります。

預金金利の決まり方を学ぶカナの4コマ・転
カナ「じゃあ銀行は、預金者に払わず全部日銀に置いておけばいいんじゃないですか?」
サトル「それをやると、預金が逃げる。よその銀行が0.4%を出しているのに、うちが0%なら、お客はよそに移る。政策金利は土台で、そこから先——いくら払うか——は、法律でも日銀でもなく、銀行が自分で決めて店頭に掲示している数字だ。」

種明かしです。
預金金利は、政策金利がそのまま流れてくる数字ではありません。 政策金利は土台を作るだけで、土台の上にいくら積むかは、銀行ごとの判断です。 見ているのは、①土台(補完当座預金制度の適用利率)、②他行の動き(横並びの競争)、③Day 36で見た差の取り分(経費・利益)の3つ。この3つを見て、銀行が自分で数字を決め、店頭に掲示しています。

預金金利の決まり方を学ぶカナの4コマ・結
カナ「政策金利は土台で、そこから銀行が自分で決めてるんですね」

そういうことです。
ここからは、補完当座預金制度の中身、実際に預金金利が政策金利を追いかけた記録、銀行が0.400%を決めるときに見ているもの、そして私の100万円にもこの決め方があるのかを、順に見ます。

預金金利の決まり方とは?

日本銀行の統計には「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」という時系列データがあります(データコード IR02、月次)。「店頭表示」という言葉が、そのまま答えです。 法律や日本銀行が全国一律の預金金利を決めているのではなく、各銀行が自分の店頭(窓口・サイト)に、自分で決めた金利を掲示している——それを日銀が毎月、全国平均として集計しているのが、このデータです。
三菱UFJ銀行のサイトにも、同じ言葉が出てきます。普通預金の欄に年0.4000%、注記に「上記利率は変動金利です」「金融情勢等により、利率を変更する場合があります」(2026年9月15日現在)。確定した約束ではなく、銀行がいつでも見直せる数字だということが、この一文に表れています。

銀行が見ている「土台」:補完当座預金制度

銀行は、決済のために日本銀行に当座預金口座(日銀当座預金)を持っています。この口座に置いてあるお金の一部に利息を付ける仕組みが、補完当座預金制度です。 2008年に導入されました。
いまの適用利率は年1.25%(2026年9月24日から)。 政策金利の誘導目標——「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、1.25%程度で推移するよう促す」——と同じ水準です。 この水準は、2026年9月17日から18日の金融政策決定会合で、1.0%程度から引き上げると決まりました(賛成7・反対2)。 金融政策決定会合は年8回開かれます(基準貸付利率は年1.5%、同じく2026年9月24日から)。
Day 12で見た「無担保コールレートを◯%程度で推移するよう促す」という形の方針は、この補完当座預金制度とセットで働きます。 銀行が日銀に置くお金を増やしたくなるよう利息を付け、逆に減らしたくなるときは利息を下げる。銀行から見れば、「日銀に置くだけで年1.25%」という選択肢の値段そのものが政策金利です。
⚠️ ただし、Day 12「政策金利」のQ3で見たとおり、銀行は預金で集めたお金をそのまま日銀に置いているわけではありません。 大部分は貸出や運用に回り、そこでの利ざやが銀行の収益になります(Day 36)。補完当座預金制度が作るのは、あくまで「置いておくだけで得られる下限」という土台であって、預金の全額がそこに眠っているわけではない——この2つは矛盾せず、両立します。 預金者への金利は、この土台より低いのがふつうです——0.4%しか払わなくても、銀行は日銀に置くだけで1.25%を得る選択肢を持っているからです。

実際に、遅れて追いかけている

土台が動いたとき、預金金利がどう動くかは、銀行によって速さが違います。三菱UFJ銀行は、政策決定のその日のうちに、預金金利を上げると発表しています。 ただし、実際に上がる日は回によって違います。

  • 2026年6月16日 政策金利1.0%程度に決定(実施は翌17日)→ 三菱UFJ銀行の普通預金 0.300% → 0.400%
  • 2026年9月18日 政策金利1.25%程度に決定(実施は24日)→ 三菱UFJ銀行の普通預金 0.400% → 0.500%(発表は決定当日、上がるのは11月2日から)

では、全国の銀行を平均するとどうか。 日銀のIR02(預金種類別店頭表示金利の平均年利率等)で追うと、動きはもっとゆっくりです。

  • 2024年3月 定期預金(1,000万円以上・1年)0.005%/普通預金 0.002%(マイナス金利解除の直前)
  • 2024年9月 定期 0.116%/普通 0.091%
  • 2025年3月 定期 0.212%/普通 0.162%
  • 2026年2月 定期 0.336%/普通 0.239%
  • 2026年8月(最新) 定期 0.447%/普通 0.306%

2026年6月に政策金利が1.0%になってから2ヶ月経った2026年8月時点でも、全国平均の普通預金はまだ0.306%。 三菱UFJ銀行が6月17日時点ですでに掲げていた0.400%に、平均はまだ追いついていません。同じ土台を見ていても、動く速さは銀行によって違う。 これが、Day 37で残した「同じ保護なのに、預金金利は銀行によって違う」の答えの半分です。

銀行が0.400%を決めるときに見ているもの

残り半分は、土台の上に何を積むかです。 三菱UFJ銀行のいまの店頭表示金利は、普通預金年0.4000%、1年もの定期預金年0.5000%(2026年9月15日現在、いずれも変動金利)。 土台の1.25%との差は、普通預金で0.85ポイント(11月2日に0.500%になれば0.75ポイント)。
この差の中に入っているのは、①他行の動きを見た競争(横並びで店頭に掲示される数字。 IR02が銀行ごとの数字を平均として集計しているのは、そもそも銀行ごとに違う数字を出しているからです)、②Day 36で見た差の取り分(額を集める手間、期間を変える備え、返ってこなかった分を埋める取り分、経費と銀行の利益。 内訳の数字は今日も出しません)の2つです。
「銀行が何を見て0.400%を決めているか」の答えは、①土台(補完当座預金制度の1.25%)、②他行の動き、③差の取り分の3つを見て、銀行が自分で決めている、ということです。 法律にも日銀にも、「普通預金は◯%にしなさい」という指示はありません。
⚠️ 普通預金の金利は変動金利(三菱UFJ銀行の注記どおり)です。 定期預金は預け入れ期間ごとに利率が決まり、預けている間は変わりません。この「変動」と「固定」の違いを正面から扱うのはDay 40「固定金利と変動金利」です。 今日は、変動金利である普通預金が動く「決め方」だけを見ました。

私の100万円と、決める人

この連載では、私が実際に100万円を1年間運用しています。

昨日、記録に足したのは「倒れたときに前に出る人」の欄でした。 答えは「預金保険なし」。
今日足すのは、「決める人」の欄です。 私の100万円の値は、誰かが会議室で決めているのか。

Day 6で実質を併記、Day 7で税引後、Day 8で分母、Day 9で元手の出どころ、Day 10で自分の税率、Day 11で住民税10%込み、Day 12で預金の線、Day 13で変化の原因の切り分け、Day 14で通貨の内訳、Day 15でドル建て、Day 16で理論値だと断ること、Day 17で通貨自体が割安だと明記すること、Day 18で制度が動いた日付、Day 19で書く順番、Day 20で判定せず事実だけを残すこと、Day 21で残高と流れを分けること、Day 22で分子と分母のどちらが動いたかを書くこと、Day 23で実質を何で割ったかを書くこと、Day 24で引いた数字がどの版なのかを書くこと、Day 25で運用の成績を黒字の日数に換算すること、Day 26で「一度だけ決めたこと」と「その場で決めたこと」を分けること、Day 27で生活防衛資金を運用の口座に混ぜないこと、Day 28で現金になるまでの営業日数を書くこと、Day 29で諦めた1つを書くこと、Day 30で負債の側を書くこと、Day 31で想定した幅の中か外かを書くこと、Day 32で中身どうしの向きを書くこと、Day 33で約束の範囲を書くこと、Day 34で真ん中の欄を線の欄と分けること、Day 35で真ん中の根拠を書くこと、Day 36で間に立つ人を書くこと、Day 37で倒れたときに前に出る人を書くこと。
今日足すのは、決める人がいるかいないかを書くことです。

答えは、いません。 段1・段2(銀行の預金)の金利は、銀行が会議室で——今日見た3つを見て——決めた数字です。 でも段3(私の運用)の値は、誰かが決めているのではなく、市場が毎秒つけています。 記録には、こう書きます。「決める人:いません。値をつけているのは市場です。」
私が超えるべき線、1年定期の税引後3,984円は、銀行が会議室で決めた0.500%から出ている数字でした。 段3にはその会議室がありません。代わりにあるのは、毎秒動く値と、その値を自分の判断で売り買いする私自身です。

銀行が受け取る側にも、同じ「土台+積み増し」の決め方があります。借りる側から見た積み増しの総額は、どれだけの額になるのか。 明日Day 39「ローンと利息の総額」で見ます。

よくある質問(FAQ・全6問)

Q1. なぜ政策金利がそのまま預金金利にならないんですか?

銀行に、預金者に払わなくても手に入る選択肢があるからです。
日本銀行に置いておくだけで、補完当座預金制度の利息(いま年1.25%)が付きます。 預金者への金利は、この土台に、他行の動きと差の取り分を見て銀行が自分で積み増した数字なので、ふつうは土台より下に来ます。

Q2. 補完当座預金制度って何ですか?

銀行が日本銀行に置いているお金の一部に、日本銀行が利息を付ける仕組みです。 2008年に導入されました。 適用利率は日銀が決め、いまは年1.25%(2026年9月24日から)。 政策金利の誘導目標と同じ水準に置かれています。

Q3. 預金金利は、政策金利が動いてからどのくらいで動きますか?

銀行によって違います。 三菱UFJ銀行は、2026年6月16日の政策決定を受けて、実施日の翌17日にはもう普通預金を0.400%へ引き上げていました。 9月18日の決定(1.25%へ)では、同じ日に、普通預金を11月2日から0.500%へ上げると発表しました。 一方、日銀のIR02(全国平均)で見ると、2026年8月時点でもまだ0.306%です。大手行がすぐ動いても、全国平均はもっとゆっくり動きます。

Q4. 銀行によって預金金利が違うのはなぜですか?

土台は同じでも、積み増す数字を銀行が自分で決めているからです。 法律や日本銀行が「普通預金は◯%」と一律に決めているわけではありません。 日銀のIR02が「平均」を計算しているのは、そもそも銀行ごとに違う数字を店頭に掲示しているからです。

Q5. 普通預金と定期預金で、決め方は違いますか?

土台の見方は同じですが、動き方が違います。 普通預金は変動金利で、銀行の判断でいつでも変わります。 定期預金は預け入れ時の利率が満期まで固定されます。 この「変動」と「固定」の違いを正面から扱うのはDay 40「固定金利と変動金利」です。

Q6. 私の100万円にも、この「決め方」はあるんですか?

ありません。 段1・段2の金利は銀行が会議室で決めますが、段3の値は市場が毎秒つけます。 決める人がいない代わりに、その値を見て売り買いを判断するのは私自身です。

まとめ

預金金利の決まり方とは、銀行が、政策金利という土台の上に、自分で数字を決めて店頭に掲示することです。 土台は補完当座預金制度の適用利率(いま年1.25%)。 その上に、他行の動きとDay 36で見た差の取り分を見て、銀行が自分で数字を決めます。同じ土台を見ていても、動く速さも、積み増す幅も、銀行によって違う——それが、預金金利が銀行ごとに違う理由です。

🎯 今日の1手(実践)

昨日は、私の100万円に「決める人」がいるかを書きました。今日は、自分の預金に「決める人」がどう動いているかを、自分の目で確かめます。 手順は2つです。

1つ目。 自分が口座を持つ銀行の「円預金金利」のページを、実際に開きます。 普通預金と1年もの定期預金の利率を、今日の日付と一緒に控えてください。 銀行のサイトには「◯年◯月◯日現在」という日付が必ず書いてあります——私が見た三菱UFJ銀行のページには「2026年9月15日現在」とありました。日付のない金利は、あとで比べられません。

2つ目。 控えた数字を、政策金利1.25%と比べます。 差が0.85ポイント(三菱UFJ銀行の普通預金の差)より大きいか小さいかだけで構いません。差が大きいほど、銀行が土台の上に積んでいる幅が大きいということです。 妥当かどうかの判定は、今日もしません(Day 36のまま)。まずは、自分の銀行の数字を、自分で控えることから。

Day 7で手取り率、Day 8で基本給比率、Day 9で標準報酬月額、Day 10で実効税率、Day 11で住民税倍率、Day 12で何もしなかった場合の額、Day 13で金利感応度、Day 14で外貨比率、Day 15でドル建て換算、Day 16で往復コスト率、Day 17で割安率、Day 18で会合の日付、Day 19で7つの棚卸し、Day 20で自分DI、Day 21でGDP比率、Day 22で分母を替えて確かめること、Day 23で引く相手を書くこと、Day 24で実質の昇給率、Day 25で自分の1枚、Day 26で固定費率、Day 27で3行の並べ方、Day 28で段ごとの日数、Day 29ですぐ出せる状態の値段、Day 30で純資産、Day 31で段3の振れ幅、Day 32で中身どうしの向き、Day 33で約束の範囲、Day 34で段3の真ん中、Day 35で真ん中の出どころ、Day 36で間に立つ人、Day 37で前に出る人の線。
今日の「自分の銀行の金利を、日付つきで控えること」で32個目です。

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⚠️ ご注意

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