昨日はDay 13「中央銀行の役割」で、金利を決めているのが政策委員会の9人だと確かめました。
今日は、その9人が決めた1.0%を、世界の中に置いてみます。

カナ「昨日の宿題やりました。嬉しい側が貯金100万円、痛い側がリボの残りでした」
きちんと両方書き出せました。
ここからが大事です。

カナ「率で見たら37倍も違ったんですけど……日本が1.0%なら、アメリカとかはどうなんですか?」
いい方向に目が向きました。
リボ払いの年15%を普通預金の年0.400%で割ると37.5倍。同じ「金利」という言葉でも、桁がまるで違います。
そして金利は、国ごとにも違います。
違うこと自体が、お金を動かします。

カナ「アメリカのほうが高いんですよね? じゃあ、ドルで持ったほうが得なんですか?」
サトル「差は2.6ポイントある。でもアメリカは2024年の秋から下げて、日本は上げてる。差は両側から縮んでるんだ。」
種明かしです。
金利差は、水位の差のようなものです。
ただし水位は、両側から動きます。

カナ「差が縮んでるのに、円が強くなった感じは全然しないです……」
そこに気づけたなら、上出来です。
ここからは、その「縮んでいるのに」を見ていきます。
金利差とは?
金利差とは、通貨や国のあいだの金利の開きのことです。
いちばんよく使われるのが日米金利差。
日本とアメリカの金利を並べて、その差を見ます。
比べ方は2つあります。
- 政策金利どうしを比べる … Day 12で見た、いちばん短い金利
- 長期金利どうしを比べる … 10年物国債の利回り
短いほうは中央銀行が決めます。
長いほうは市場がつけます。同じ「日米金利差」でも、どちらの話をしているかで数字が変わります。
日本1.0%、アメリカ3.50〜3.75%
数字を並べます。
政策金利(2026年8月時点)
- 日本:1.0%程度(2026年6月16日決定)
- アメリカ:3.50〜3.75%(2025年12月10日の会合で決定・翌11日実施。2026年7月29日の会合まで据え置き)
アメリカの中心をとると3.625%。差は約2.6ポイントです。
10年物国債の利回り
- 日本:2.887%(2026年8月24日)
- アメリカ:4.64%(2026年8月25日)
こちらの差は約1.75ポイント。政策金利の差より、1ポイント近く小さい。
同じ「日米金利差」でも、短い金利で見れば2.6ポイント、長い金利で見れば1.75ポイント。
ニュースで「日米金利差」と聞いたら、どちらの話かを確かめてください。
なお、アメリカの政策金利にはレンジがあります。
日本のように「1.0%程度」と1点で示すのではなく、「3.50%から3.75%のあいだ」という幅で示す。
国によって、決め方の作法まで違います。
差は、両側から縮んでいる
いま起きていることの本体は、差の大きさではありません。差が縮んでいく向きです。
アメリカは下げてきました(日付は実施日。
決定はいずれもその前日の会合です)。
- 2024年9月19日:5.25〜5.50% → 4.75〜5.00%(0.5ポイント下げ)
- 2024年11月8日:4.50〜4.75%
- 2024年12月19日:4.25〜4.50%
- 2025年9月18日:4.00〜4.25%
- 2025年10月30日:3.75〜4.00%
- 2025年12月11日:3.50〜3.75%
2024年9月から1.75ポイント。 そこから2026年7月の会合まで、5回連続で据え置いています。
※この記事の金利は2026年8月時点の数字です。
2026年9月15〜16日のFOMCと9月17〜18日の日銀会合の結果は反映していません。
最新はFRBの声明文と日本銀行の「金融市場調節方針」で確認してください。
日本は上げてきました。
Day 12で見たとおり、2024年3月のマイナス金利解除から5段階で1.0%まで。
片方が下げ、片方が上げる。 だから金利差は、両側から縮みます。
2024年8月の時点なら、アメリカ5.25〜5.50%(中心5.375%)に対して日本は0.25%程度。
差は約5.1ポイントありました。
それがいまは約2.6ポイント。半分近くまで縮んでいます。
お金は、金利の高いほうへ流れると言われる。ただし条件がつく
金利差がなぜ話題になるのか。お金が動くからです。
同じお金を置くなら、0.4%より3%台のほうがいい。
だからドルを買って円を売る。
円を売る人が増えれば、円は安くなる。
これが「金利差が開くと円安になる」と言われる筋道です。
ただし、この説明には条件がつきます。為替が動かなければ、の話です。
たとえば100万円をドルに換えて1年間置いたとします。
ここで注意が要ります。受け取れるのは、政策金利の3.50〜3.75%でも、その差の2.6ポイントでもありません。 Day 12で見たとおり、預金金利は政策金利より下に来ます。
仮に円の預金より2%ぶん有利だったとしても、そのあいだに円高が3%進めば、金利で得た分は消えて、まだ足りません。 為替の動きは、金利差より大きく振れることがあります。
金利の差は確実に入ってきます。
為替の差は、確実に読めません。
この非対称が、金利差の話でいちばん抜け落ちるところです。
差が縮んでも、円安は止まらなかった
ここが今日いちばん正直に書きたいところです。
金利差は縮んでいます。
それなのに、円は安いままです。
- 2026年8月25日17時のドル円は 159円44〜45銭(日本銀行の公表値)
- 同じ日のユーロ円は 185円88〜92銭
そして2026年、日本政府は円買いの介入をしています。
財務省の公表によると、2026年4〜6月期の外国為替平衡操作は合計11兆7,349億円。
すべて米ドル売り・日本円買いでした。
- 2026年4月30日:6兆2,787億円
- 2026年5月4日:7,802億円
- 2026年5月6日:4兆6,759億円
※内訳を足すと11兆7,348億円で、合計と1億円ずれます。
財務省の公表値の端数処理によるものです。
4月30日の1日で6兆円を超えています。
介入をするということは、放っておくと円安が進むと判断されたということです。
金利差が縮んでいる最中に、です。
だから今日の結論は、こうなります。
金利差は、円安を説明する要因のひとつです。
全部ではありません。
「金利差が縮むから円高になる」と読むと、事実と合わなくなります。
実際、差は半分近くまで縮みましたが、円は159円台にいます。
説明が1つしかないときは、たいてい何かを見落としています。
私の100万円と、円建て100%という選択
この連載では、私が実際に100万円を1年間運用しています。
今日、はっきり書いておくことがあります。
私の100万円は、100%円建てです。
これは「何もしていない」ではありません。円に全部賭けているという選択です。
日本円だけを持つことは、中立ではない。
円が安くなれば、私の100万円は世界の中で小さくなります。
Day 6「購買力」で、100万円が国内で1,250杯から1,100杯に減ったと書きました。あれは、日本の中だけで測った目減りです。
外から見た目減りは、それとは別に進んでいます。その話は明日 Day 15「円安と円高」で扱います。
だから運用記録に、今日から1つ足します。
Day 6で実質を併記、Day 7で税引後、Day 8で分母、Day 9で元手の出どころ、Day 10で自分の税率、Day 11で住民税10%込み、Day 12で預金の線、Day 13で変化の原因の切り分け。
今日足すのは、通貨の内訳を書くことです。
円建て何%、外貨建て何%。いまは円100%・外貨0%。
それを毎回書きます。
書かないと、選んでいないように見えます。 円だけを持つのも、立派なポジションです。
よくある質問(FAQ・全6問)
Q1. 金利差が縮めば、円高になるんですか?
そう説明されることが多いですが、そのとおりにはなっていません。
2024年9月からアメリカは1.75ポイント下げ、日本は0.25%程度から1.0%まで上げました。
差は約5.1ポイントから約2.6ポイントへ縮んでいます。
それでもドル円は159円台です。
金利差は要因の1つで、全部ではありません。 貿易の動き、投資の動き、市場の予想。
動かす力はほかにもあります。
Q2. アメリカの金利のほうが高いなら、ドル預金にすれば得ですか?
金利だけを見れば有利ですが、為替が動きます。
まず、受け取れるのは政策金利の差そのものではありません。
それより下に来るドル預金の金利です。
仮に2%ぶん有利でも、そのあいだに円高が3%進めば足が出ます。
しかも外貨預金には為替手数料もかかります。
金利は確実に入り、為替は読めない。 この非対称を勘定に入れずに比べると、必ず金利のほうが良く見えます。
Q3. なぜアメリカの政策金利は「レンジ」なんですか?
決め方の作法が違うからです。
日本銀行は「無担保コールレートを1.0%程度で推移するよう促す」と1点で示します。
アメリカのFOMCは「フェデラルファンド金利の目標レンジを3.50〜3.75%に維持する」と幅で示します。
どちらも市場でつく金利を誘導する点は同じです。「アメリカの金利は3.625%」と1点で書かれていたら、それはレンジの真ん中を取った数字です。
Q4. 政策金利の差と、10年国債の差はどちらを見ればいいですか?
目的によります。
短い金利の差(約2.6ポイント)は、いまの金融政策の差そのものです。
長い金利の差(約1.75ポイント)には、これから何が起きると市場が思っているかが混ざっています。
いま長いほうの差が小さいのは、この先さらに差が縮むと市場が見ていることの表れとも読めます。
ただしこれは解釈で、事実ではありません。
Q5. 為替介入は誰がやっているんですか?
日本では財務省の所管です。 財務省が「外国為替平衡操作の実施状況」として金額を公表しています。
2026年4〜6月期は合計11兆7,349億円で、すべて米ドル売り・日本円買いでした。
1日あたりでは4月30日の6兆2,787億円が最大です。
Day 13で見たとおり、日本銀行の役割は金融政策です。為替介入と金融政策は、決める人が違います。
Q6. 金利差はどこで確認できますか?
それぞれの中央銀行のサイトです。
日本は日本銀行の「金融市場調節方針」、アメリカは連邦準備制度理事会(FRB)が公表するFOMCの声明文。
どちらも会合の当日に出ます。
長期金利のほうは、日本は財務省の「国債金利情報」、アメリカは財務省のイールドカーブのデータで確認できます。
まとめ記事の「日米金利差」を鵜呑みにせず、2つの数字を自分で引き算するのがいちばん確実です。
まとめ
金利差とは、国と国のあいだの金利の開きのことです。
政策金利で見ると、日本1.0%程度に対してアメリカ3.50〜3.75%で、差は約2.6ポイント。
10年物国債で見ると日本2.887%、アメリカ4.64%で、差は約1.75ポイント。どちらの金利で比べるかで、数字が1ポイント近く変わります。
そしていま起きているのは、両側からの縮小です。
アメリカは2024年9月から累計1.75ポイント下げ(長期金利差の1.75ポイントとは別の数字です)、日本は2024年3月のマイナス金利解除から1.0%まで上げました。
2024年8月には約5.1ポイントあった差が、いまは約2.6ポイント。半分近くまで縮んでいます。
それでもドル円は159円44〜45銭(2026年8月25日17時)。
2026年4〜6月期には、財務省が11兆7,349億円の米ドル売り・日本円買いの介入を実施しました。差が縮んでいる最中に、です。
金利差は、円安を説明する要因のひとつ。
全部ではありません。
🎯 今日の1手(実践)
今日は、自分のお金の何%が円建てかを計算してください。
預金、投資信託、株式、保険、財形。
すべて足して、そのうち外貨建てのものがいくらかを出します。
外貨建ての金額 ÷ 資産の合計 = あなたの外貨比率。
- 0% → 円に100%賭けています。私と同じです。これは「何もしていない」ではなく、1つの選択です
- 10〜30% → 外貨をいくらか持っています。円安のとき、この部分だけが逆に働きます
- 50%以上 → 生活は円、資産は外貨。日々の支払いと資産の通貨がずれています
つみたてで全世界株や米国株のインデックスを買っている人は、気づかないうちに外貨建てを持っています。 投資信託の中身が外国の資産なら、それは実質的に外貨です。
正解の比率はありません。知らないまま持っているのが、いちばん危ないというだけです。
Day 7で手取り率、Day 8で基本給比率、Day 9で標準報酬月額、Day 10で実効税率、Day 11で住民税倍率、Day 12で何もしなかった場合の額、Day 13で金利感応度。
今日の外貨比率で8つ目です。
明日 Day 15「円安と円高」では、その円が世界の中でどれだけ小さくなったかを、数字で出します。
2020年末に1ドル103円だったものが、いま159円です。
🔗 あわせて読みたい
- Day 13「中央銀行の役割」 — 金利を決めている9人と、選んだあとは口を出せない仕組みの話
- Day 12「政策金利」 — 日本の政策金利1.0%が、通帳の0.400%に届くまで
- Day 6「購買力」 — 100万円が国内で1,250杯から1,100杯に減った話
- Day 1「複利」 — 年15%のリボ払いが4.8年で借金を2倍にする話
- Day 4「インフレーション」 — 物価が上がると、現金は静かに減っていく
⚠️ ご注意
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