今日から新シリーズが始まります。
1日1金融用語、365日。
前シリーズ「1日1マーケ用語」を66日読んでくださった方、ありがとうございました。
今度はお金の話です。
そして今回は、ひとつ大きな違いがあります。
私(stak, Inc. 代表 植田振一郎)が、実際に自分の100万円を証券口座に入れて運用します。
増えた月も減った月も、月に1度、そのまま公開します。
1年後、100万円がいくらになっているか。
誰も答えを知りません。
私も知りません。
今日の主役は、前シリーズから引き続き、お得と流行に弱いふつうの会社員・カナ。
彼女が「銀行に預けているだけ」に疑問を持ちはじめた話から始めましょう。

カナ「貯金100万円たまった! えらい! ……で、これ銀行に置いといたら、1年でいくら増えるんですか?」
いい質問です。
普通預金の金利が年0.400%だとすると、100万円を1年預けて増えるのは——4,000円です。

カナ「よ、4千円!? 100万円あずけて、月333円ですか……」
そうなんです。
しかも利息には20.315%の税金がかかるので、手元に残るのは年3,187円。
月にすると265円です。
では、もし年5%で運用できたら? 1年で5万円増えます。12倍以上です。
でも複利の本当の怖さは「1年後」には見えません。
時間が経つほど効いてくるからです。

カナ「1年で差が出ないなら、別に急がなくてもよくないですか?」
サトル「それが複利の罠だよ。1年目の差はゼロ。5年目でも2万6千円。でも30年目には182万円になる。差がつかない時期に、いちばん差がついてるんだ。」
種明かしです。
増えた分が、次の年には元本と同じように働きはじめる。
だから時間が経つほど、手のつけられない差になっていくのです。

カナ「早く始めた人が勝つってこと…!? 私、まだ間に合う?」
そういうことです。
ここからは、この「複利」をもう少しくわしく解きほぐしていきます。
複利とは?
複利とは、元本だけでなく「増えた利息」にも利息がつく仕組みのことです。
対になる言葉が「単利」。
こちらは元本にだけ利息がつきます。
単利は毎年きっかり同じ額が増えるので、グラフにするとまっすぐな直線になります。
複利は増えた分が翌年の元本に加わるので、だんだん急になる曲線を描きます。
100万円を年5%で運用した場合、単利なら毎年5万円ずつ。
複利なら1年目5万円、2年目5万2,500円、3年目5万5,125円と、増える額そのものが増えていきます。
2年目の差は、たった2,500円です。
「なんだ、大したことないな」と思いますよね。
その感覚こそが、複利のいちばんおそろしいところです。
なぜ“最初は差がつかない”のに、あとで爆発するの?
実際の数字を並べます。
100万円を年5%で運用した場合です。
- 1年後:単利105万円/複利105万円(差0円)
- 3年後:単利115万円/複利115万7,625円(差7,625円)
- 5年後:単利125万円/複利127万6,282円(差2万6,282円)
- 10年後:単利150万円/複利162万8,895円(差12万8,895円)
- 20年後:単利200万円/複利265万3,298円(差65万3,298円)
- 30年後:単利250万円/複利432万1,942円(差182万1,942円)
1年目の差はゼロ。
5年経ってもたった2万6千円。
ところが30年後には、182万円もの差になります。
元本の1.8倍です。
理由はシンプルで、利息が次の年の“働き手”になるからです。
1年目に増えた5万円は、2年目からは元本と同じように働きはじめます。
2年目に増えた5万2,500円も、3年目からは働き手に加わる。
働き手が働き手を連れてくる。
この連鎖が、後半で急カーブを描きます。
アインシュタインが複利を「人類最大の発明」と呼んだという逸話があります。
本当に言ったかは定かではありませんが、言いたくなる気持ちはわかります。
「じゃあ早く始めた方がいいの?」と思いますよね。
そのとおりです。
複利で最も効くのは、利率でも元本でもなく、時間です。
何年で2倍になる?「72の法則」
複利には、便利な計算方法があります。
72の法則です。
「72 ÷ 年利(%)= 資産が2倍になるまでのおよその年数」。
これだけです。
- 年3%なら、72÷3=24年(実際は23.4年・誤差0.6年)
- 年5%なら、72÷5=14.4年(実際は14.2年・誤差0.2年)
- 年7%なら、72÷7=10.3年(実際は10.2年・誤差0.04年)
- 年10%なら、72÷10=7.2年(実際は7.3年・誤差0.07年)
驚くほど正確です。
暗算でここまで当たる法則は、なかなかありません。
では、普通預金の年0.400%で計算するとどうなるか。
72 ÷ 0.4 = 180年。
江戸時代の終わりごろに預けていて、やっと今ごろ倍になる計算です。
180年。
人ひとりの一生では、どうやっても届きません。
この法則は Day 3 でもう一度、じっくり扱います。
複利は、借金にも同じように効く
ここが今日いちばん大事なところです。
複利は味方にもなりますが、そのまま敵にもなります。
そして敵に回ったときの方が、たいてい進行が速い。
クレジットカードのリボ払いは、年15%前後の金利がかかることがあります。
10万円を返さずに放置すると、どうなるか。
- 1年後:11万5,000円
- 3年後:15万2,087円
- 5年後:20万1,136円
5年で借金が2倍になります。
72の法則で確かめると、72 ÷ 15 = 4.8年。
ぴったり合います。
投資で年15%を安定して出すのは至難の業です。
でも借金の年15%は、何もしなくても確実にやってきます。
だから順番があります。
高金利の借金があるなら、投資より先に返す。
これは「返済も立派な資産運用」だからです。
年15%の借金を返すことは、年15%のリターンを確定で得るのと同じ意味を持ちます。
しかもノーリスクで。
実際に、100万円でやってみます
さて、ここからがこのシリーズの本題です。
私は今日から、自分の100万円を証券口座に入れて運用します。
- 資金:100万円(植田個人の資金です)
- 期間:2026年9月〜2027年9月(1年間)
- 口座:三菱UFJ eスマート証券(特定口座)
- 公開:月に1回、その月の全記録
- 方針:守りに入りません。リスクを取ります
なぜ守りに入らないのか。
堅実なインデックス積立を1年間見せられても、正直おもしろくないからです。
それに、教科書どおりにやって教科書どおりになる話には、学びが少ない。
失敗も含めて全部見せます。
負けた月こそ、詳しく書きます。
ここで正直にお伝えしておくことがあります。
1年という期間は、複利を実感するにはあまりに短いのです。
さきほど並べた数字のとおり、複利と単利の差は1年目にはゼロ。
複利が本領を発揮するのは10年、20年の世界です。
それでも1年やる意味は、別のところにあります。
「増えた分を再投資に回すかどうか」という判断を、実際に何度も迫られることです。
配当が入ったとき、それを使うか再投資するか。
含み益が出たとき、利益確定するか複利に乗せ続けるか。
複利は数式ではなく、判断の積み重ねです。
その判断を1年分、全部お見せします。
ただし、私がやるのは「複利の王道」ではありません
ここは、はっきりさせてください。
私がこれからやるのは、この記事で説明したような堅実な複利運用ではありません。
年5%を30年積み上げるのが複利の王道です。
でも私は1年で答えを出します。
しかも守りに入らない。
教科書で言えば、むしろ「やってはいけない」と書かれている側に近いことをやります。
なぜそんなことをするのか。
理由は2つあります。
ひとつは、教科書どおりの話には学びが少ないからです。
年5%で淡々と積み立てる1年を見せられても、読む側に残るものはほとんどありません。
もうひとつは、リスクの意味は張ってみないと分からないからです。
「ボラティリティ」も「ドローダウン」も、記事で読めば3分で分かった気になります。
でも、自分の100万円が20万円減った日に何を感じるかは、読んでも分かりません。
だから私が張ります。
そして、読者のみなさんは真似しないでください。
これは推奨ではなく、実験です。
堅実な方法が知りたい方は、この連載の用語解説のほうを読んでください。
そちらは365日、教科書どおりに書きます。
複利を知った上で、あえて違う道を選ぶ。
その結果がどうなるかを、1年かけて見てもらいます。
よくある質問(FAQ・全6問)
Q1. 複利と単利、どちらで運用されるかはどう決まる?
金融商品によって決まっています。
定期預金や個人向け国債には単利型と複利型があり、契約時に選ぶものもあります。
株式投資の場合は「配当を再投資するかどうか」で、自分で複利にできます。
投資信託なら「分配金再投資型」を選ぶと自動的に複利になります。
Q2. 毎月コツコツ積み立てる場合も複利は効く?
効きます。
むしろ積立のほうが複利の恩恵を受けやすい面もあります。
ただし積立の場合、後から入れたお金ほど運用期間が短くなるため、単純に「元本合計 × 年利」では計算できません。
積立の計算方法は Day 186「ドルコスト平均法」で詳しく扱います。
Q3. 年5%は現実的な数字なの?
過去の実績として、米国株の主要指数は長期平均で年7%前後(インフレ調整後)とされることが多いです。
ただしこれはあくまで平均であって、毎年5%ずつきれいに増えるわけではありません。
40%下がる年もあれば、30%上がる年もある。
この振れ幅そのものについては Day 153「ボラティリティ」で扱います。
Q4. 複利の効果を最大化するには何が一番大事?
時間です。
利率を1%上げるより、5年早く始めるほうが効くケースは珍しくありません。
年5%・元本100万円なら、20年運用で265万円。
25年なら339万円です。
5年の違いで74万円の差。
「いつか始めよう」の“いつか”が、いちばん高くつきます。
Q5. 手数料は複利にどう影響する?
同じように複利で効きます。
しかもマイナス方向に。
年5%で30年運用すると432万円ですが、手数料1%を引いた年4%だと324万円。
その差、108万円です。
手数料は「毎年確実にマイナスの複利がかかるもの」と考えてください。
Day 86「信託報酬」で詳しく扱います。
Q6. 複利を実感するまでどのくらいかかる?
正直なところ、10年は必要です。
5年目の時点で単利との差はまだ2万6千円しかありません。
だからこそ多くの人が途中でやめてしまいます。
複利のいちばん難しい部分は計算ではなく、効き始めるまで続けることです。
まとめ
複利は、増えた分にも利息がつく仕組みです。
最初の数年はほとんど差がつきませんが、時間が経つほど加速し、30年後には元本の1.8倍もの差を生みます。
そして同じ力が借金にも働きます。
年15%のリボ払いは、5年で借金を2倍にします。
複利を味方につける第一歩は、敵に回さないことです。
🎯 今日の1手(実践)
今日、自分が持っている「金利のつくもの」を、ひとつだけ確認してみてください。
銀行預金の金利でも、住宅ローンでも、クレジットカードのリボ残高でもかまいません。
そして「72 ÷ その金利」を計算してみる。
何年で倍になるのか。
増える側なのか、増やされる側なのか。
数字が自分の味方か敵かを、今日1回だけ確かめる。
これが365日の1日目です。
⚠️ ご注意
本記事は筆者個人の投資記録および一般的な金融知識の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
記載の運用実績は筆者個人の資金によるものです。
投資判断はご自身の責任において行ってください。
なおコンプライアンス上、当社の取引先に関連する銘柄は取引対象外としています。



