活計歓楽(かっけいかんらく)
→ 喜び楽しんで暮らすこと。また、贅沢な暮らしのこと。
贅沢な暮らしとはどういったものなのか、人によって感覚は異なるだろう。
豪邸に住むこと、高級車に乗ること、豪華な食事をすることなどを思い浮かべる人が多いかもしれない。
そんな贅沢をすることは日本では悪とされる傾向が強いように思う。
嫉妬や妬みの対象になるということである。
また、日本のみならず世界中で格差が生まれているという事実もある。
そんな中、社会制度を充実させようと、とある概念が拡がろうとしている。
ベーシックインカムという制度とは?
タイトルにも付けたが、すべての人に無条件で現金を配る制度をベーシックインカムという。
このベーシックインカムについての議論がここ数年加熱している。
では、ベーシックインカムとはどういったものなのか、改めて学んでおこう。
まず、ベーシックとは基本、インカムとは所得という意味で、一般的には最低所得保障と訳されることが多い。
つまり、生きていくのに必要なお金を無条件にすべての人にに配るということだ。
通常、お金を配ると聞くと、貧しい層や低所得の人だけというイメージを持つと思うが、そんなこともない。
くり返すが、所得に関係なく全員にお金を配ることはしっかり覚えておこう。
日本だけを考えると、大人や子どもも関係なく、人口の約1億2,000万人みんなにお金を配るということだ。
これだけ聞くと、夢のような話だと思うかもしれないが、そんなに単純なことではないので注意が必要だ。
また、これだけを聞くと、働かなくてよくなる制度だと、期待と皮肉を込めて解釈をする人も多くいる。
けれども、多くの国で議論されたり、実際に実証実験が行われており、あくまで一定のお金を配るという話で、どれだけ配るかは、国によっても考え方が異なる点も覚えておこう。
その根底には、若者たちが働いても貧困から抜け出せないことが、世界的に問題となっていることがある。
働き続けることをどう支援するかという中で、ベーシックインカムの必要性が議論されてきているという背景だ。
ベーシックインカムの歴史
ベーシックインカムの概念はなにも最近出てきたものではない。
その歴史は古く、起源はイギリスの思想家トマス・モアが、16世紀に書いたユートピアという著書だといわれている。
ユートピアの中で描かれた世界は、みんなで食料を収穫して、みんなで保管して、必要なときに誰でも自由にそれを引き出せる理想郷だ。
食料、即ち富をみんなで分かち合うということが書かれていて、その考え方がベーシックインカムの起源というわけだ。
その後も18世紀後半の産業革命が起きて格差が拡大したときなどに形を変えながら、しばしば議論されてきたのがベーシックインカムという概念だ。
ベーシックインカムについての議論が再燃
ここ数年のパンデミックによって格差が拡がっている。
もはや個人の自助努力では耐えられない状況だということで、仕事がなくなった人や収入が激減したという人が世界中に溢れ始めている。
こういうときにこそ、政府が責任を持って困っている人にお金を出さなければという発想になるわけだ。
安倍政権のときに10万円の一律給付が行われたことを思い出して欲しい。
あの政策も一種のベーシックインカムとイメージすればいいだろう。
ただ、1回だけの給付だった点がベーシックインカムの根本にある考え方と異なり、ベーシックインカムの概念は毎月配られるというものだ。
日本以外にも、ベーシックインカム的な現金給付は行われた。
アメリカでは、1人に対して最大1,200ドルを配ったが、所得制限が付いていた。
それに比べると、日本は1回だけですが、多額のお金を外国人を含め、日本に住民票がある人すべてに配った点はベーシックインカムに近い。
ベーシックインカムの課題
こうやって書いていくと、多くの人は気づくと思うが、そもそもその財源はどこから出てくるのかという疑問が当然湧いてくる。
これこそが、ベーシックインカムの最大の課題ともいえる。
つまり、もらう側はありがたいけど、財源をどうするのかという議論が必ず出てくるわけだ。
例えば、以前から日本では、1人月7万円ぐらいは出せないだろうか、出したらどうなるだろうかという議論がある。
なぜ7万円なのかというと、国民年金を念頭にしているからだ。
満額だと、月額6万5,000円ぐらい支給される国民年金を鑑みて、7万円に設定してはどうかという議論になるわけだ。
ただ、1人に対して7万円を日本にいる約1億2,000万人全員に支給するとなると、約100兆円かかる計算になる。
ちなみに100兆円というと日本の年間国家予算とほぼイコールという巨額なものだ。
これだけ聞くと実現不可能だと思うかもしれない。
でも、社会保障などのお金をまわせば、なんとかなるのではという考え方もある。
というのも、社会保障に使っているお金は、年間国家予算をはるかに上回る約120兆円になる。
社会保障には、国家予算の税金とは別に個人や企業が負担する多額の保険料が使われているからである。
税金50兆円と保険料70兆円というお金を、そのまま現金で配ればいいではないかという考え方だ。
そもそも、年⾦だけでも税と保険料で60兆円が使われている。
けれども、年金は払った保険料に応じて年⾦もらえるわけで、全員が⼀律の⾦をもらってるわけじゃないという不平等も生じている。
要するに、年金をコツコツ払っている人は納得がいかないとなるわけだ。
そして、医療費として捻出されている40兆円も、ベーシックインカムに置き換えたとしよう。
体が丈夫でほとんど病院行かないという人はいいけれども、病院に頻繁にお世話になっている人たちには、しわ寄せがいく。
全体を一気に置き換えることはハードルが高く、財源が巨額になるところが最大の課題といったところだ。
ベーシックインカムに期待されること
上述したが、ベーシックインカムを導入すると、お金がもらえるので働かない人が増えるのではないかという懸念が出てくる。
実際に、北欧のフィンランドでは、2017年から2年間、失業者2,000人を対象に月7万円を給付する実験を行っている。
その実験を始めたとき、当時のフィンランドの駐日大使が、これは貧困対策ではなく、みんなに働いてもらうための制度だと発言したことが注目された。
実際にリストラされた人たちの中には、ベーシックインカムで月7万円入ってくることで、時間をかけて納得のいく仕事を探せるようになったという声があった。
毎月決まった収入があること、つまり低賃金を補填する仕組みが、いい仕事をするのにいかに必要かということに気づいたという。
また、実際に仕事についていてもより勉強してレベルの高い仕事をするための、ゆとりになる財源になるという声もあったという。
この検証結果報告は、ベーシックインカムを受けた失業者2,000人は、2年間に78日働いたというものだ。
一方で、ベーシックインカムではない、従来からの制度である失業手当を受けていた人が働いた日数は73日という結果だったことが発表されている。
失業手当は、仕事をして収入があれば、その分、額が減らされる。
そのため、低賃金なら働かない方がましという人が出てくるので、失業の罠といわれる。
対して、ベーシックインカムは、仕事をしようがしまいが、支給額は同じだ。
1ヶ月に約7万円くらいの収入だとギリギリなので、もう少し働いて稼ごうということになるという理論だ。
つまり、低賃金でも働く意欲を持ってもらうための、事実上の賃金補填の仕組みというわけだ。
まとめ
ベーシックインカムの概念について、あなたはどう思うだろうか。
2016年にスイスの国民投票では、完全ベーシックインカムが注目された。
最大の特徴は給付の額で、推進派が提案していたのは、大人と子供で差をつけるという前提があったものの、その額は日本円で約27万円というものだった。
結果は増税に繋がるということで否決されたが、それもそのタイミングだったからという可能性もある。
実際にヨーロッパを中心に様々な国で実証実験が始まっている。
時代が変われば社会制度も変わってもおかしくないわけで、今後の動きに注目していきたいと思う。
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