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2026年3月19日 投稿:swing16o

現代の逞しさ:昭和・平成・令和の逞しさの変遷を全データで解剖

容貌魁偉(ようぼうかいい)

→ 顔つきや体格が人並み外れて大きく、逞しく堂々としているさま。

容貌魁偉(ようぼうかいい)→ 顔つきや体格が、逞しく堂々として立派なさまを指す。

「逞しさ」とは何か。
この問いを、私はここ数年ずっと考えてきた。

身体の大きさなのか。
精神の強さなのか。
それとも、時代が要請する何かなのか。

『後漢書』の「郭太伝」に記された「容貌魁偉」という四字熟語は、約1900年前に書かれた言葉だ。
それが今もなお使われる理由は、人間が「逞しさ」という概念を、脈々と求め続けているからに他ならない。

しかし令和の今、その「逞しさ」の定義は、男女ともに劇的に変わっている。
データで追うと、その変化の速さに驚く。

容貌魁偉の誕生 : 後漢書に刻まれた「逞しさ」の起源

容貌魁偉という言葉は、中国後漢時代(25年〜220年)に書かれた正史『後漢書』の「郭太伝」が出典だ。
そこには「身長八尺、容貌魁偉」と記されており、儒学者・郭太の見た目の堂々たる風格を賛美している。

◆ビジュアルデータ①
後漢時代の「身長八尺」の換算
 後漢時代の1尺 ≒ 23cm
 「身長八尺」 ≒ 約184cm
 当時の平均身長(推定)≒ 162〜165cm前後
 → 郭太は当時の平均より約20cm高い大男だった

「魁」は大きな様子を、「偉」は大きく立派な様子をそれぞれ意味する。
この2文字が組み合わさることで、「単に体が大きいだけでなく、その存在感が人を圧倒するほど立派だ」という意味が生まれた。

コトバンク所収の「四字熟語を知る辞典」によれば、日本語としての初出実例は1768年(安永・孔雀楼筆記)で「年七十余、容貌魁偉、甚威厳あり」という文章だ。
江戸後期にはすでに武士や儒者の格を表す言葉として定着していたことがわかる。

注意すべきは、容貌魁偉は「容貌怪異(ようぼうかいい)」=醜怪な見た目、と混同されやすいという事実だ。
読み方は同じだが意味は正反対で、「魁偉」=逞しく立派、「怪異」=奇異で不気味、というまったく別の言葉だ。
これは知識として押さえておく価値がある。

この四字熟語が示すように、古来「逞しさ」は外見的な大きさと内面的な風格の両立によって語られてきた。
ところが現代では、その定義が男女別に、時代別に、大きく分岐しはじめている。

令和の「逞しさ」は昭和の常識とまるで違う

まず現代日本人が「逞しさ」をどう定義しているか、データで確認する。

◆ビジュアルデータ② 女性が選ぶ「理想の男性の体型」
(anan調査、2019年2月、対象:20〜30代女性)
 細マッチョ  55%
 ほっそり系  13%
 ガチマッチョ  8%
 ぽっちゃり   7%
 その他    17%
出典:anan「女性が求める理想の男性体型調査」2019年

約6割の女性が「細マッチョ」を選ぶ。
これは「筋骨隆々の大男」ではなく、「引き締まった中に筋肉の輪郭が見える体」だ。
昭和の高度成長期に理想とされた「どっしりした大男」とは明らかに異なる。

◆ビジュアルデータ③ 男性が選ぶ「理想のボディ」(芸能人ランキング)
(オリコン・モニターリサーチ、2024年7月、対象:10〜50代男性500名)
 1位:鈴木亮平(俳優)
 2位:岡田准一(俳優)
 3位:稲葉浩志(B’z)

鈴木亮平が選ばれた理由として「役に合わせていつも体を鍛えているイメージ」という回答が集まった。
岡田准一については「格闘技など実用性を追求した末に作られたボディ」という声が多数を占めた。
単に「大きい」のではなく、「目的のために鍛え抜かれた機能美」が現代男性の逞しさの理想像だ。

さらに、男性自身の「理想の体型」に関する調査でも、U26世代(26歳以下)の平成男子が目指すのは圧倒的に「細マッチョ」であることがリサーチ&ディベロプメントの調査(2017年)から確認されている。
「マッチョにはなりたくない」という10代男性が約2割存在するというデータも示されており、昭和の「男らしさ=筋骨隆々」という方程式は令和ではもはや多数派ではない。

この変化はどこから来たのか。
次のセクションで、逞しさの「定義崩壊」を引き起こした構造的問題を解剖する。

「逞しさ」の定義が崩壊した3つの理由

現代日本で「逞しさの定義」が揺れている背景には、3つの構造的変化がある。

◆ビジュアルデータ④ 日本人男性の体型実態
(厚生労働省「令和5年(2023年)国民健康・栄養調査」)
 肥満者(BMI≧25)の割合:男性 31.5% / 女性 21.1%
 やせ(BMI<18.5)の割合 :男性 4.4% / 女性 12.0%
              (うち20〜30代女性は 20.2%)

男性の約3人に1人が肥満であり、かつ若い女性の5人に1人が「やせ」の状態にある。
これは「逞しさ」とは何かという問いに、現実の数字が突きつける回答だ。
平均的な日本人男性の体型は、容貌魁偉が賛美した「逞しく立派な体格」からはほど遠い地点にある。

理由① 肉体労働の激減

農業従事者数の推移を見ると、1960年(昭和35年)時点で約1460万人いた農業就業人口は、2023年時点で約116万人まで減少している(農林水産省)。
肉体を酷使する機会が社会全体として激減したことで、「生きていくための逞しさ」という概念が成立しなくなった。
逞しさは「必要条件」から「選択肢」に変わった。

理由② フィットネス市場の爆発的拡大

◆ビジュアルデータ⑤ 日本のフィットネス市場規模推移
(帝国データバンク、ホットペッパービューティーアカデミー各調査)
 2019年度:7,085億円(コロナ前ピーク)
 2020年度:3,196億円(コロナ禍で急落・前年比35%減)
 2022年度:5,835億円(回復軌道)
 2023年度:6,500億円(前年比10%超増)
 2024年度:6,661億円(前年比4.6%増)

さらに2024年8月時点での全国フィットネス施設数は12,543施設に達している(矢野経済研究所)。
10年前と比べると店舗数は2.3倍以上に拡大した(帝国データバンク)。

この市場拡大を牽引したのは「chocoZAP」に代表される月額3,000円前後の低価格24時間型ジムだ。
「逞しくなること」が、特別なアスリートではなく日常的な選択肢として大衆化した証拠だ。

理由③ 「逞しさ」の内面化

リサーチ&ディベロプメントの調査では、10〜50代男性に理想の体型を目指す「理由」を尋ねたところ、「スーツをカッコよく着こなしたい」「顔を小さく見せたい」という自己満足的な動機が上位に入った。
かつての「女性にモテるため」や「仕事で威圧するため」という外向きの動機から、「自分の理想の姿になりたい」という内向きの動機へのシフトが起きている。

逞しさは、他者評価のためではなく自己実現のための行為に変わりつつある。

女性の「逞しさ」はもはや外見の話ではない

ここで視点を変える。
女性における「逞しさ」の変遷は、男性のそれとは全く別の文脈で進んでいる。

◆ビジュアルデータ⑥ 逞しさのベクトル比較
 男性の逞しさ(令和):外見→内面化(細マッチョ・機能美・自己実現)
 女性の逞しさ(令和):外見外→社会的強さ・経済的自立・精神的余裕

資生堂マキアージュが25〜34歳の働く女性500人に行った調査では、「20代前半の頃と比べて今の自分の魅力は変わったか」という質問に64%がYESと回答した。
その内実は「知識や経験が魅力になった」「大人の余裕が出た」という内面の成長を指している。
身体的な「逞しさ」ではなく、「生き方の逞しさ」が現代女性の理想像だ。

一方で体型の実態はどうか。
女性の「やせ(BMI<18.5)」は12.0%、とりわけ20〜30代女性では20.2%に達している(厚生労働省、令和5年)。
約5人に1人が低体重という状況は、「外見的な逞しさ」と「現実の女性の体」の乖離が深刻であることを示す。

◆ビジュアルデータ⑦ 女性の社会的逞しさ・管理職比率の変化
(経団連「女性活躍推進に関するアンケート調査」2025年1月)
 女性係長級:20.8%(2016年の女性活躍推進法施行比 +5.7ポイント)
 女性課長級:10.6%(同比 +4.3ポイント)
 女性部長級: 7.8%(同比 +2.3ポイント)

数字は着実に改善している。
しかし「部長」に女性が占める割合はいまだ7.8%にすぎない。

昭和の「逞しい女性」は、耐えることだった。
平成の「逞しい女性」は、男性並みに働くことだった。
令和の「逞しい女性」は、自分のペースで社会を動かすことだ。

この変遷は、「逞しさ」の定義が時代とともに本質を変えてきた証拠でもある。

逞しさの変遷を時代軸で読む:昭和・平成・令和の比較解剖

ここで逞しさの歴史的変遷を男女別に整理する。

◆ビジュアルデータ⑧ 男性の「逞しさ」変遷(昭和→令和)

昭和前期(1945〜1970年代)
 理想像:石原裕次郎、三船敏郎
 逞しさの定義:寡黙で決断力がある・守ってくれる男
 キーワード:高度経済成長、肉体労働、家長権威

昭和後期〜バブル期(1980〜1991年)
 理想像:郷ひろみ、田原俊彦
 逞しさの定義:セクシー、経済力、女性をエスコートできる力
 キーワード:バブル、エスコート文化、消費社会

平成(1991〜2019年)
 理想像:木村拓哉→小栗旬
 逞しさの定義:感情表現ができる・寄り添える・おうちに居られる
 キーワード:バブル崩壊、男性の自信喪失、草食系男子

令和(2019年〜現在)
 理想像:鈴木亮平、岡田准一
 逞しさの定義:目的のために体を鍛えた機能美・細マッチョ・自己管理力
 キーワード:フィットネス大衆化、SNS時代、自己実現

◆ビジュアルデータ⑨ 女性の「逞しさ」変遷(昭和→令和)

昭和:耐えること・家庭を守ること・男性を立てること
平成:男女雇用機会均等法・キャリアウーマン・「男並みに頑張る」逞しさ
令和:ワークライフバランス・自分らしくある・精神的に揺るぎない逞しさ

LEON誌の取材でジェンダー・世代論が専門の牛窪恵氏は、IT起業家ブームが到来した2000年代から「女性が男性に求めるものが経済力から知識・インテリジェンスへとシフトした」と指摘している。
「逞しさ」の中心軸が「筋肉・経済力」から「知性・自己管理力」へと移行したという分析だ。

さらに見逃せないのが「体型の理想と現実の乖離」だ。

◆ビジュアルデータ⑩ 体型理想と現実の乖離
(厚生労働省「令和5年(2023年)国民健康・栄養調査」)
 男性:肥満率 31.5% ⬆ VS 理想:細マッチョ(アンケートで55〜60%が支持)
 女性:やせ率 12.0%(20〜30代は20.2%)⬆ VS 理想:引き締まったグラマー体型

「理想の逞しさ」を頭で知りながら、現実の体型はそこから大きく離れている。
これが令和の「逞しさ格差」の実態だ。

まとめ

容貌魁偉が生まれた1900年前の後漢から、令和の日本まで。
「逞しさ」は常に時代の要請に応えて形を変えてきた。

そのなかでいくつかの事実が明確になった。

第一に、男性の逞しさは「大きさ・権威・経済力」から「機能美・自己管理力・目的意識」へと移行した。
令和男性の約55〜60%が「細マッチョ」を理想とする以上、昭和的な「容貌魁偉=大男」のイメージは過去のものだ。

第二に、女性の逞しさは外見から内面へ完全に軸を移した。
しかし現実には約20%の若い女性が低体重という状況があり、外見的逞しさから逃げ続けた末の体型格差が社会問題として顕在化している。

第三に、フィットネス市場が2024年度6,661億円規模まで拡大し、逞しさを「手に入れる行動」が大衆化した。
逞しさはもはや天賦のものではなく、意志と投資によって設計するものに変わった。

私が「容貌魁偉」という四字熟語に惹かれるのは、それが単なる外見の話ではなく、「存在感」の話だからだ。
身長八尺の郭太が賛美されたのは、大きかったからではない。
その大きさの中に「人を動かす何か」があったからだ。

令和の「逞しさ」を定義するとすれば、私はこう言いたい。
「自分の目的のために、自分を意図的に設計できる人間が、令和の容貌魁偉だ」と。

外見であれ、内面であれ、精神であれ。
逞しさとは結局、「自分という存在に対して本気でいること」だと思う。

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