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2026年4月8日 投稿:swing16o

PL脳を持てない人が損をする時代:日本人の金融リテラシーが低い本当の理由

利害得失(りがいとくしつ)

→ 利益と損失、得ることと失うことを指す言葉

日本では今も、お金の話をすることは「はしたない」という空気が漂っている。
学校でも家庭でもお金のことはろくに教わらず、社会に出てから初めて給与明細を手にして、控除の意味すら分からないままキャリアを歩んでいく人が圧倒的に多い。
その結果、何が起きているか。
利益と損失という最も基本的な概念を数字で把握できないまま仕事をし、会社の数字が見えないまま経営判断に参加するという状況が、この国では当たり前になっている。
利害得失という言葉は、何を得て何を失うかを冷静に見極めることを指す。
ビジネスの世界において、これを数字で把握する道具がPL(損益計算書)だ。
このブログでは、なぜすべての人がPL脳を持つべきなのか、そして日本の金融リテラシーが低いことがどれほど深刻な問題なのかを、エビデンスベースで徹底的に解説していく。

「利害得失」の歴史と、荀子が2,300年前に残した教え

利害得失という四字熟語の出典は、古代中国の思想家・荀子(紀元前313年頃〜紀元前238年頃)が著した『荀子』にある。
「利」も「害」も、「得」も「失」も、それぞれが似た意味を持つ漢字だ。
同じ意味の語を重ねることで、「損と得を両面から徹底的に考え抜く」という思想の重さを強調している。
荀子は性悪説で知られる儒家の思想家で、人間の本性をそのままにしておくと悪に向かうから、礼と知識によって矯正すべきだと説いた。
利害を冷静に見極めるという発想は、荀子の合理主義的な思想の核心にある。
「得られるものと失うものを正確に把握すること」は、今でいうファイナンシャルリテラシーの本質と完全に重なる。

◆ビジュアルデータ① 利害得失の語源

【読み】りがいとくしつ
【出典】中国・荀子(紀元前313年頃〜紀元前238年頃)著『荀子』
【構造】利害(得ることと損すること)+得失(得ることと失うこと)
【強調】類義語を重ねて意味を強める表現形式
【現代的意味】ビジネスにおけるコスト・ベネフィット分析の原型

2,300年前の東洋の思想家が「利と害をセットで考えよ」と言っていたにもかかわらず、現代の日本では利益だけを語ってコストを見ない、あるいはコストを恐れて利益を取りにいかないという極端な行動パターンが後を絶たない。
その根っこにあるのは、金融教育の圧倒的な遅れだ。

日本の金融教育とその衝撃的な空白地帯

まず現実のデータを直視する必要がある。
金融広報中央委員会が2022年に実施した「金融リテラシー調査」の結果は、この国の金融教育の実態を白日の下にさらしている。

◆ビジュアルデータ② 日本の金融教育 受講経験・意識データ

【学校等で金融教育を受けた割合】日本:7% / 米国:20%
【金融知識に自信がある割合】日本:12% / 米国:71%
【学校・職場で金融教育を受けたことがない】75.7%
【家庭でも金融教育を受けたことがない】64.7%
【学校での金融教育は行うべきという意見】71.8%
【学校で金融教育を実際に受けたと認識している割合】7.9%

出典:金融広報中央委員会「金融リテラシー調査2022年」

この数字をどう読むか。
学校での金融教育を「行うべき」と思っている人が71.8%いる一方で、実際に受けたと認識している人はたった7.9%だ。
「必要だと思っているのに、誰も教えてくれなかった」という矛盾が、この国の現実を物語っている。
学校でも職場でも受けたことがない人が75.7%、家庭でも教わっていない人が64.7%。
つまり大半の日本人は、正式な金融教育を受けることなく社会人になり、お金を稼ぎ、使い、老後を迎えているということになる。
さらに2023年の野村アセットマネジメントの調査では、金融リテラシーテストの正答率の平均が39%(前年は43%)にとどまり、OECD加盟国平均の65%と比べて26ポイントも低い実態が明らかになった。

◆ビジュアルデータ③ 金融リテラシーテスト正答率の国際比較

【日本(野村AM調査2025年)】39%(前年43%から低下)
【OECD加盟国平均】65%
【差異】約26ポイント

出典:野村アセットマネジメント「投資信託に関する意識調査2025年」

この格差は偶然ではない。
構造的・文化的な背景がある。

なぜ日本人はお金が「わからない」のか?

「お金の話はみっともない」という日本特有の空気はどこから来るのか。
その答えは江戸時代にある。
士農工商という身分制度のもと、商人はもっとも地位が低い存在とされ、お金を扱う行為そのものが「卑しい」という価値観が国民に根付かされた。
武士道精神を礼賛する文化と合わさり、「お金よりも精神」という考え方は、数百年の歳月をかけて日本人のDNAに刷り込まれた。
その結果、現代においてもこの傾向は現れる。

◆ビジュアルデータ④ 日本と米国の家計金融資産構成(2024年)

日本:現金・預金 50.9%
日本:株式等・投資信託合計 19.6%
米国:現金・預金 13.4%
米国:株式等 40.5% / 投資信託11.0% 合計53.3%
ユーロエリア:現金・預金 34.1% 投資信託・株式等合計 32.1%

出典:日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」2024年、日銀2024年8月末発表データ

日本の個人金融資産は2024年9月末時点で2,179兆円に達している。
しかしその半分以上が現預金だ。
この「寝ているお金」の問題は、個人の損失にとどまらない。
米国の家計金融資産は2000年代初頭から2024年にかけて約3.5倍に増加した。
同期間の日本は約1.6倍にとどまる。
この差は、お金に働いてもらうことへの理解度の差が長期にわたって複利で積み上がった結果だ。
「貯金は美徳」という価値観が、実は長期的な資産形成において「最大のリスク」になっているという逆説を、多くの日本人はまだ直感的に受け入れられていない。
その根本にあるのは、PL的な思考回路の欠如だ。

全員が持つべき「数字で考える習慣」:PL脳とは何か?

PL(Profit and Loss Statement)とは損益計算書のことで、一定期間における企業の収益・費用・利益をまとめたものだ。
経営者だけが読む書類ではない。
すべてのビジネスパーソンが理解すべき、利害得失を数字で可視化するための最強のツールだ。
PLが教えてくれるのは、シンプルな事実だ。
どれだけ売り上げても、コストが上回れば利益はゼロどころかマイナスになる。
逆に売上が少なくても、コストを抑えれば利益は残る。
この構造を頭に入れている人と入れていない人では、日常の意思決定が根本から変わる。

◆ビジュアルデータ⑤ PLの5つの利益と計算の流れ

①売上高 (本業で得た収入の総額)
↓ マイナス 売上原価
②売上総利益(粗利)
↓ マイナス 販売費及び一般管理費
③営業利益 (本業での稼ぎ力)
↓ プラスマイナス 営業外損益(受取利息・支払利息等)
④経常利益 (通常の事業活動での収益力)
↓ プラスマイナス 特別損益
⑤税引前当期純利益
↓ マイナス 法人税等
最終:当期純利益(純利益)

出典:弥生株式会社、INVOY・各種会計資料

この流れを知っているだけで、「うちの会社は売上は高いのに、なぜ利益が出ないのか」という疑問に自分なりの仮説を持てるようになる。
粗利率が低いのか。
人件費や広告費などの販管費が膨らんでいるのか。
借入金の利息が営業利益を食いつぶしているのか。
PL脳を持つとは、こういう問いを日常的に立てられるようになることだ。
経営者でなくても、この思考回路は武器になる。
自分の給与・残業代・交通費・社用スマートフォンのコスト、すべてが会社のPLに乗っているという事実を知るだけで、仕事への向き合い方は変わる。
自分が生み出す価値がコストを超えているかどうかを常に意識できる人材は、組織にとって圧倒的に価値が高い。
私がstak で採用活動をするときに重視することの一つが、まさにこの「数字で考えられるか」という点だ。
業種や職種に関係なく、PLの構造を理解しているかどうかが、その人の仕事の深さを映している。

まとめ

日本の金融リテラシーの低さは、文化的背景・制度的空白・教育投資の不足が複合した構造問題だ。
学校で金融教育を受けたと認識している日本人はわずか7%。
金融知識に自信があると答える人は12%。
これが2025年の現実だ。

◆ビジュアルデータ⑥ PL脳が生む変化 :持つ人と持たない人の差

PL脳を持つ人
→ コストと利益を常にセットで考える
→ 行動の利害得失を数字で判断できる
→ 自分がどれだけの価値を生み出しているか把握している
→ 金融・投資の意思決定を根拠を持って行える

PL脳を持たない人
→ 売上・収入だけを見て費用・コストを無視しがち
→ 感覚と感情で損得を判断する
→ 会社の数字への関心が薄く成長機会を逃す
→ 資産形成も「なんとなく預金」に留まる

利害得失を正確に把握する力は、人生の質を決定的に左右する。
お金の話を避けてきたこの国の文化は、江戸時代の残滓だ。
2025年を生きる私たちにはもはや通用しない。
PLの構造を理解し、収入と費用と利益の関係を日常の言語にすること。
それだけで、仕事の質も、資産形成の方向性も、人生の選択肢の数も変わっていく。
荀子が2,300年前に「利と害をセットで考えよ」と言い残した本質は、現代のビジネスパーソンにとって今も変わらない真理だ。
数字を恐れる必要はない。
まずPLを一枚、手元に置くことから始めればいい。
それが、すべての変化の起点になる。

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植田 振一郎 X(旧Twitter)

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