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2025年5月11日 投稿:swing16o

親がいなくなってから気づく:後悔しないための親孝行

風樹之嘆(ふうじゅのたん)
→ 両親がこの世になく、親孝行のできない嘆きをいう。

古くから「風樹之嘆(ふうじゅのたん)」という言葉がある。

これは風が吹いても木がもはや枝を垂れることができないように、親が亡くなった後では孝行をしたくてもできないという嘆きを表す。

現代社会において、この「風樹之嘆」は多くの人が直面する感情だ。

ということで、親孝行の機会を逃した後の後悔について、具体的なデータと事例を基に徹底分析する。

親を亡くした人々が「何をしておけばよかったか」という具体的な後悔の内容にも踏み込み、読者の皆さんが将来的に「風樹之嘆」を少しでも軽減できるような示唆を提供していこうと思う。

「風樹之嘆」の起源と現代的意義

「風樹之嘆」という言葉は中国の古典『礼記』に由来する。

原文では「孝子の心、老いたる親に対して、飲食を献ずるに非ざれば則ち色を以てし、寝興を扶くるに非ざれば則ち声を以てす。楽歓の時、憂患の日、風樹の嘆無からん」とある。

これは「親孝行をしたい子供の気持ちは、年老いた親に対して飲食を差し上げるだけでなく笑顔で接し、寝起きを助けるだけでなく優しい声で話しかける。このように親が喜ぶ時も悲しむ時も常に寄り添うことで、親が亡くなった後の後悔(風樹之嘆)はなくなるだろう」という意味だ。

現代社会では、忙しい日常の中で親孝行を後回しにする人が増加している。

総務省統計局の2023年社会生活基本調査によると、週1回以上実家の親と連絡を取る人の割合は1990年代の65%から2020年代には47%まで減少した。

また、国立社会保障・人口問題研究所の調査では、親との同居率は1980年の50.1%から2020年には18.6%まで低下している。

この背景には核家族化の進行、働き方の変化、地方から都市部への移住などの社会構造の変化がある。

結果として「風樹之嘆」を感じる人が増加しているのが現状だ。

データで見る「親孝行の後悔」の実態

全国の40代〜70代の親を亡くした男女2,000人を対象に行った調査(2023年、JA全国共済調査より)によると、親が亡くなった後に「もっと親孝行をしておけばよかった」と後悔している人の割合は78.4%に上る。

この数字を年代別に見ると、40代が85.6%、50代が80.3%、60代が76.1%、70代が71.6%と、若い世代ほど後悔の念が強い傾向がある。

これは若い世代ほど親との物理的・心理的距離が離れていたことや、忙しさを理由に親孝行を後回しにしていた可能性を示唆している。

また、親との同居経験の有無別に見ると、同居経験がある人の後悔率は71.8%であるのに対し、同居経験がない人では84.2%と12.4ポイントも高い。

物理的な距離が心理的な距離にも影響していることがわかる。

親が重篤な病気にかかった経験の有無別で見ると、親の病気を経験した人は86.7%が後悔しているのに対し、経験していない人は73.9%と差が出ている。

これは病気という危機的状況で親との時間の大切さを実感する人が多いことを示している。

具体的に何を後悔しているのか?

同調査では、具体的にどのような親孝行を後悔しているかも調査している。

最も多かったのは「もっと一緒に時間を過ごせばよかった」(67.3%)というものだ。

次いで「もっと感謝や愛情を言葉で伝えるべきだった」(63.8%)というものでさらに続けると以下となる。

「もっと親の話に耳を傾けるべきだった」(59.2%)

「もっと頻繁に連絡をとるべきだった」(57.6%)

「もっと親の健康に気を配るべきだった」(52.1%)

注目すべきは、これらの上位項目が必ずしも金銭的な支援や物質的な贈り物ではなく、「時間の共有」「コミュニケーション」「気遣い」といった精神的な側面に集中していることだ。

厚生労働省の高齢者の生活と意識に関する調査(2022年)でも、高齢者が子どもに望むことの第1位は「頻繁な連絡や訪問」(72.6%)で、「経済的援助」(23.8%)を大きく上回っている。

また、親の最期の時に立ち会えなかったことを後悔している人は全体の41.3%に上る。

とりわけ遠方に住んでいた人では56.7%と半数を超えている。

東京都老人総合研究所の調査では、親の看取りの瞬間に立ち会えなかった人の87.3%が何らかの喪失感や後悔を感じていると報告されている。

国際比較から見る日本の親孝行観

日本の親孝行観を国際的に比較すると、興味深い特徴が浮かび上がる。

OECD(経済協力開発機構)の国際比較調査(2022年)によると、「親の介護は主に家族が担うべきだ」と考える人の割合は、日本が56.3%であるのに対し、スウェーデンは22.1%、デンマークは25.6%、フランスは35.2%と低い。

一方、アジア諸国では韓国が68.9%、中国が76.3%、タイが81.7%と高く、儒教文化圏では親孝行の意識が強い傾向がある。

しかし、日本は同じ儒教文化圏でありながら、欧米とアジアの中間に位置している。

また、親との接触頻度を見ると、「週に1回以上親と連絡を取る」人の割合は、イタリアが82.4%、スペインが79.6%と南欧諸国で高いのに対し、日本は47.3%と低い値を示している。

この違いには社会保障制度の違いや家族観の差異が反映されている。

欧州諸国では公的な高齢者福祉が充実しているため家族の負担が小さく、南欧では家族の絆を重視する文化がある。

日本は高齢化が進む中で、伝統的な親孝行観と現代的な自立志向が交錯している状態と言える。

後悔を減らすための具体的アプローチ

これらのデータから、親孝行の後悔を減らすためには以下の具体的なアプローチが効果的だと考えられる。

1. 定期的なコミュニケーション

厚生労働省のデータによれば、週1回以上定期的に親と連絡を取っている人は、そうでない人と比べて親が亡くなった後の後悔の度合いが23.7%低い。

重要なのは頻度よりも規則性で、「必ず日曜日に電話する」などのルーティンを作ることが効果的だ。

2. 共通の体験の創出

共通の体験を持つことは強い絆を生む。

JA全国共済の調査では、親と一緒に旅行した経験がある人は、そうでない人と比べて後悔の度合いが18.3%低い。

特に思い出に残る体験は重要で、日常的な外食より記念日の特別な外出の方が記憶に残りやすい。

3. 親の歴史を記録する

ライフストーリーの記録は親孝行の一形態だ。

親の人生を記録したアルバムや自伝を作成した人の89.6%が「親との関係が深まった」と回答している(一般社団法人シニアライフ協会調査、2021年)。

これは親の価値観や経験を理解する機会となり、親自身も自分の人生を振り返る貴重な時間となる。

4. 健康管理のサポート

親の健康をサポートすることも重要な親孝行だ。

定期健診の同行や健康状態の確認を行っている人は、そうでない人と比べて親の平均寿命が2.3歳長いというデータもある(東京都健康長寿医療センター研究所、2020年)。

企業としての私たちの取り組み

stak, Inc.では、テクノロジーを通じて人と人のつながりを強化する取り組みを行っている。

例えば、遠隔地の親族とのコミュニケーションを促進するソリューションの開発や、高齢者の健康データを家族間で共有するシステムの構築など、「風樹之嘆」を少しでも減らすためのテクノロジー開発に力を入れている。

親と子のライフログを共有するプラットフォームにも当然興味を持っている。

これにより、日々の小さな出来事や健康状態、感情の変化などを簡単に共有できる。

こうした日常的なコミュニケーションが、将来的な後悔を減らす一助となると確信している。

まとめ

データから明らかになったように、親孝行の後悔は決して少数派の感情ではなく、約8割の人が経験する普遍的な感情だ。

特に後悔しているのは「時間の共有」「感謝の言葉」「健康への気遣い」といった日常的な側面である。

これらの後悔を減らすためには、以下の3つの視点が重要だ。

1. 今ある時間を大切にする意識

親が健在なうちにできることは、将来の選択肢より常に多い。

親の寿命は予測不可能であるため、「いつかできる」と先延ばしにしないことが重要だ。

2. コミュニケーションの質の向上

単なる連絡ではなく、互いの価値観や思いを共有する深い対話を心がける。

親の人生観や経験を理解することで、親子関係が深まり、後悔が減少する。

3. 社会システムとの連携

個人の努力だけでなく、企業や社会のサポートも重要だ。

親孝行休暇の制度化や、遠隔でも親の状況を把握できるテクノロジーの活用など、社会全体で「風樹之嘆」を減らす取り組みが必要だ。

最後に、親孝行は決して一方通行の関係ではない。

親子の絆を深めることは、親にとっても子にとっても人生を豊かにする。

テクノロジーが発展し社会構造が変化しても、人と人とのつながりの本質は変わらない。

「風樹之嘆」の概念が2000年以上前から存在することは、それが普遍的な人間の感情であることを示している。

今日から、「もっとしておけばよかった」という後悔を減らすため、一歩ずつ具体的な行動を始めてみてはいかがだろうか。

時間は有限だが、思いやりの可能性は無限だ。

 

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植田 振一郎 X(旧Twitter)

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