進取果敢(しんしゅかかん)
→ 物事に積極的に取り組み決断力に富んでいること。
生きている以上、いくつも決断をしなければいけない場面が出てくる。
以前、こんなブログを公開したが、非常にたくさんの方に読んでいただいた。
要約すると、人間は日々多くの決断を下していて、ケンブリッジ大学の研究によれば、1日に最大で3万5,000回もの決断を下しているという。
これは言語、食事、交通などの一般的な選択から、身体の動きや日常生活の様々な行動に至るまで含まれる。
一方で、これだけ多くの決断をすることは、脳に負担を与え、決断の質を低下させる、決断疲れを引き起こす。
決断疲れの対策として、クネビンフレームワークという考え方を紹介している。
いずれにせよ、即決できる人も、優柔不断な人も決断をする場面が1日の中でも必ずあるということだ。
人が決断するときのメカニズム
それでは、人が決断するときの脳のメカニズムはどのようになっているのか。
脳での意思決定は主に前頭葉という部分で行われ、その中でも特に前帯状皮質と呼ばれる領域が重要になる。
この部分は他の脳領域から情報を収集し、それに基づいて決定を行うのである。
そして、決断過程は下記のステップで進行していく。
1)問題認識
問題や決断が必要な状況に気づく。
これは主に大脳皮質の各部分で行われ、情報は前頭葉に送られる。
2)選択肢の生成
次に脳は可能な行動の選択肢を生成する。
これも前頭葉が関与している。
3)予測と評価
各選択肢がもたらす結果を予測し、それぞれの価値を評価する。
この過程は前帯状皮質と前頭葉が関与し、ドーパミンという神経伝達物質が重要な役割を果たしている。
ドーパミンは報酬予測エラーと呼ばれる信号を生成し、予測した報酬と実際の報酬の差を学習することで意思決定を調節する。
4)選択
最終的に1つの選択肢が選ばれ、それに基づいた行動が取られる。
これは前帯状皮質と運動野が関与している。
決断 = 意思決定に関する論文
決断する脳のメカニズムについては様々な論文が出されている。
ここでは決断することを意思決定と同意と捉えて、代表的な論文を紹介していこう。
Rushworth, M. F., Noonan, M. A., Boorman, E. D., Walton, M. E., & Behrens, T. E. (2011). Frontal cortex and reward-guided learning and decision-making. Neuron, 70(6), 1054-1069.
この研究では、前頭葉が報酬に基づく学習や意思決定にどのように関与しているかについて調査した。
特にサルを用いた実験で、報酬予測エラー(予測した報酬と実際の報酬の差)が意思決定に影響を与えることを示した。
また、このエラー信号は、前頭葉が新しい情報に基づいて行動を更新するために重要であると結論付けている。
Heekeren, H. R., Marrett, S., & Ungerleider, L. G. (2008). The neural systems that mediate human perceptual decision making. Nature reviews. Neuroscience, 9(6), 467-479.
この論文では、視覚的な情報に基づく人間の意思決定が、脳内でどのように処理されるかについて述べている。
具体的には、視覚的な刺激を評価し、それに基づいて行動を選択する過程がどのように脳内で行われるかを解説している。
それぞれの意思決定には、刺激を知覚する領域、情報を統合して評価する領域、最終的な行動を決定する領域が関与すると述べられている。
Lee, D., Conroy, M. L., McGreevy, B. P., & Barraclough, D. J. (2004). Reinforcement learning and decision making in monkeys during a competitive game. Cognitive brain research, 22(1), 45-58.
この論文では、研究者たちはサルが競争的なゲームをする際の行動を観察した。
ゲームではサルは他のサルと交互に行動を選択し、その選択によって報酬を獲得することができた。
研究者たちは、サルが最初はランダムに行動を選択していたが、次第に他のサルの行動パターンを学習し、より多くの報酬を獲得する選択をするようになったことを発見した。
これは強化学習の一例であり、サルが報酬予測エラーに基づいて自身の行動を更新していたことを示している。
Shenhav, A., Cohen, J. D., & Botvinick, M. M. (2016). Dorsal anterior cingulate cortex and the value of control. Nature neuroscience, 19(10), 1286-1291.
この論文では、人間が自己制御の価値を評価する際に前帯状皮質(一部は前頭葉に位置する)が重要な役割を果たすことを示した。
研究者たちはfMRIを用いて被験者の脳活動を観察し、被験者が自分で行動を選択するタスクと他人によって行動が指示されるタスクを行った時の脳活動の違いを比較した。
その結果、自己制御の価値が高まると前帯状皮質の活動が増えることが見つかった。
Rangel, A., Camerer, C., & Montague, P. R. (2008). A framework for studying the neurobiology of value-based decision making. Nature reviews. Neuroscience, 9(7), 545-556.
この論文では、価値に基づく意思決定の神経生物学を研究するためのフレームワークを提案した。
価値に基づく意思決定は選択肢を評価し、それに基づいて行動を選択する過程を指している。
著者たちは、この過程が複数の脳領域によって実行される分散型のネットワークとして機能すると提唱した。
具体的には、前頭葉、前帯状皮質、側頭葉、背内側前頭皮質などが重要な役割を果たしている。
問題解決や意思決定のフレームワーク
冒頭に紹介したブログでは、クネビンフレームワークについて書いている。
クネビンフレームワークは、問題解決や意思決定のためのフレームワークとして広く使用されているものだ。
これと同じようなフレームワークやモデルを知っておくことで問題解決や意思決定を助けることに繋がる可能性がある。
つまり、決断するときの助けになるということで、同様のフレームワークをいくつか紹介しておこう。
SWOT分析
SWOT分析は、個々のプロジェクトや組織全体の意思決定を支援するためのフレームワークだ。
SWOTはStrengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字を取ったもので、これら4つの観点から状況分析を行う。
PDCAサイクル
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の頭文字を取ったPDCAサイクルは、問題解決や改善活動のフレームワークとして広く知られている。
これは継続的な改善を目指す手法で、一連のステップを何度もくり返し行うのが特徴だ。
フィッシュボーンダイアグラム(石川図)
フィッシュボーンダイアグラムは、問題の原因を探求し、解決策を見つけるためのフレームワークだ。
これは「骨」に見立てたラインに沿って、問題の可能性のある原因を「魚の骨」のように描き出していくのが特徴だ。
ボストンコンサルティンググループ(BCG)マトリックス
BCGマトリックスは、製品ポートフォリオの管理と戦略的意思決定を支援するためのフレームワークだ。
このマトリックスは、製品の市場成長率と市場占有率を軸に、製品を「星」、「金の雄牛」、「問題児」、「負け犬」の4つのカテゴリに分類する。
まとめ
このブログをここまで読んでもらえたのも1つの決断だ。
私からしたら非常にありがたい決断でしかないのだが、決断を多くしていく上では当然疲弊することもある。
そんなときは、上述したフレームワークなどを上手く活用して、できる限り効率のいい決断をしてもらえると嬉しい限りだ。
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