苦爪楽髪(くづめらくがみ)
→ 人の世の苦楽の様子で、苦労しているときは爪がよく伸び、楽をしているときは髪がよく伸びるということからきている。
少し前に、四字熟語をテーマに書き始めて、初めてといっていいくらい意味不明な言葉に出会ったことを書いた。
LINEのことを書いたのだが、そのときの四字熟語は、苦髪楽爪(くがみらくづめ)だった。
苦労の多いときは髪の毛が伸びやすく、楽をしているときは爪が伸びやすいというのが、苦髪楽爪の四字熟語の意味なのだが、全くぎゃくの意味となるのが、苦爪楽髪ということになる。
この言葉にもおそらく科学的根拠はないので、調べることすらしなかったが、実にいい加減な言葉が溢れているというエビデンスの1つだろう。
エビデンスというか、浸透させていくべきものはちゃんと根拠のあるものでなければならない。
そんな中、つい先日とある人と話をしていたのだが、ビッグマック指数の話になった。
その人はかなりのやり手なのだが、このビッグマック指数という言葉を知らなかったのが意外だった。
ということで、知ってて損はない、ビッグマック指数のことについて書いていこう。
ビッグマック指数ってなぁに?
ビッグマック指数(The Big Mac Index:BMI)とは、世界的なイギリスの経済誌エコノミストが、年に2回発表している経済指標のことだ。
マクドナルドというハンバーガーショップを知らないという人は皆無といっていいだろう。
そのマクドナルドの代表的なメニューの1つにビッグマックがある。
まさに、このビッグマックに関わる指標が、ビッグマック指標なのである。
ビッグマックは世界の多くの国のマクドナルド販売されており、材料や調理法はほぼほぼ世界共通で基本的に同じ商品だ。
ということで、ビッグマックを基準にして、世界各国の物価水準や為替相場を比較しようというのがビッグマック指数の概念である。
つまり、ビッグマック指数は立派な経済指標の1つだといえる。
ビッグマック指数の事例
ビッグマック指数の基準となるのは、もちろんマクドナルドの発祥の地であるアメリカだ。
ということで、2020年7月のビッグマック指数を見てみよう。
調査時点でのアメリカでのビッグマックの販売価格は5.71USドル、日本の販売価格は390円、ドル円相場は1USドル = 107円28銭だった。
ということは、アメリカでビッグマックを食べようとすると、5.71USドル × 107.28円なので、約613円支払うということになる。
このように、その国の物価の基準を知るのにビッグマック指数が役に立つということになる。
ちなみに、2020年7月時点でのビッグマック価格がアメリカよりも高い国は下記のとおりだ。
- スイス:741円(ビッグマック指数:20.94%)
- レバノン:639円(ビッグマック指数:4.24%)
- スウェーデン:617円(ビッグマック指数:0.8%)
また、フィリピンでは308円、インドネシアとマレーシアでは250円と比較的安価になっている一方で、タイでは438円と割高に感じる価格となっている。
もちろん、ビッグマックがその国の物価全体を正確に示すものではない。
とはいえ、ビッグマック指数のランキングの高い国ほど割高で、低い国ほどより安く旅行や買い物ができるという傾向にあるといっていいだろう。
なぜビッグマックに価格差が生じるのか
では、なぜ同じビッグマックなのに価格差が生じるのだろうか。
自由に売買ができて、価格の情報が十分提供されている状態であれば、同じ物の価格は同じ価格で取り引きされるという、一物一価の法則が作用するはずだ。
例えば、とある駅に2つのマクドナルドがあったとしよう。
そして、北口店ではビッグマックを500円で販売、南口店ではビッグマックを300円で売っていたとする。
この状態で北口店でビッグマックを買おうとする人はいないだろう。
あるいは、南口店で300円で仕入れたものを北口店で400円で売って100円の利ざやを稼ごうという考え方をする人もいるかもしれない。
こういった状況が続くと、とどのつまり、2つのお店のビッグマックは同じ価格に収束していくというのが、一物一価の法則だ。
それから、この一物一価の法則は、国境を越えても通用すると考えられている。
輸送費用や関税などを無視できるとすれば、アメリカのNY店でも日本の渋谷店でも、理論上はビッグマックの価格は同じになるはずなのである。
これを実現するのが、為替相場ということになる。
上記の例と同様に、アメリカのビッグマックが割高なら日本のビッグマックを買おうとするアメリカ人が出てくる。
すると、ビッグマックの輸入ということで購入代金を支払うために、ドルを円に替えるアメリカ人が増えるということになる。
一方で、日本からはアメリカでビッグマックを売ろうという輸出が活発になり、売上代金のドルを円に替える動きが強まる。
この結果、外国為替市場で円買いドル売りが増えて、為替相場は円高ドル安に動いていくということになるわけだ。
そして、為替相場がどこまで動いていくのかというと、日本とアメリカのビッグマックの価格が同じになるまでだ。
先の事例に挙げた2020年7月時点だと、為替相場は390円 / 5.71USドルなので、68円30銭となる。
これなら日米のビッグマック価格が同じになり、一物一価の法則が成立することになる。
このときの為替相場の水準を購買力平価(Purchasing Power Parity:PPP)という。
くり返しになるが、関税や非関税障壁などが存在せず、自由な貿易が行われていれば、為替相場は自動的に購買力平価の水準に収束していき、各国の価格差も解消されるという概念だ。
つまり、アメリカのNY店でも日本の渋谷店でもビッグマックの価格は同じになるはずだ。
それにも関わらず、価格差が生じるのはなぜだろうか。
価格差が生じる為替相場の歪み
結論からいうと、現実の為替相場が購買力平価から乖離して歪んだままだからである。
その度合いが示されているのが、まさにビッグマック指数(BMI)ということになる。
現実の為替相場が購買力平価からどのくらい乖離しているのかを示しており、上述した例からいうと、スイスは+20.94%となっている。
ということは、購買力平価よりも為替相場が2割以上もも過大評価されていて、これがスイスでのビッグマック価格を割高にしていると考えられるのである。
これに対して日本のビッグマック指数(BMI)は-36.33%なので、円相場が本来の水準である購買力平価に比べて、3割以上も過小評価されているということになる。
円が本来の実力を発揮できずにいる結果、スイスやアメリカでビッグマックを食べようとすると割高になるということだ。
こちらも上述したが、実際には輸送費も関税も影響するし、様々な経済要因も作用するので、為替相場と購買力平価が完全に一致することはない。
とはいえ、2020年7月時点での購買力平価は68円30銭なので、過小評価されている円相場と言わざるを得ない状況だったということだ。
まとめ
2020年7月以降のビッグマック指数(BMI)はどうなっているのか気になった人も多いだろう。
2022年2月の最新のビッグマック指数は、基準となるアメリカは5.81USドルで、当時のドル円相場は1USドル = 115円23銭。
ということは、アメリカでビッグマックを食べようと思うと、約669円ということになる。
2020年7月時点では約613円だったので、約56円ほど割高になっている。
日本のビッグマックの販売価格は390円で、ビッグマック指数は-41.74%という結果だ。
2020年7月と比較して、さらに円の評価は安く拡大している。
そして本日、2022年5月21日時点でのドル円相場は、1USドルドル = 127円94銭だ。
これがどういうことを意味しているかわかるだろうか。
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