春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)
→ 春の風が穏やかに吹いている様子や人柄が温厚なこと。
春の風はとにかく心地よいものだ。
いや、春の風に限らずとも心地よい風はある。
ということで、自然現象である風についてまとめてみた。
風が吹く原理
そもそも、なぜ地球上で風が吹くのか。
結論から言うと、風は大気の移動だ。
大気は地球を取り巻いており、温度や圧力の違いによって動き始める。
より具体的に風が吹く原理をわかりやすく説明すると下記のとおりだ。
1)日射による温度差
太陽からの日射により、地球の表面は不均一に加熱される。
地表面は日光を吸収しやすく、時間をかけて温まるが、大気は比較的短時間で温まるという性質がある。
その結果、地表面と大気の間に温度差が生じる。
2)地球の自転
地球は自転しているため、地表面の温度が均一ではない。
赤道付近では地表面がより暖かくなるが、極地域では寒冷になる。
この温度差によって、大気が動き始める。
3)地形の影響
山脈や海洋などの地形は風の形成に影響を与える。
山脈の風は山の斜面を上昇したり下降したりすることで形成され、海洋では海陸の温度差による海陸風が発生する。
4)圧力の差
温暖な空気は軽く、冷たい空気は重い。
その結果、温かい空気は上昇し、冷たい空気は下降する。
この上昇と下降により、圧力の差が発生し、風が形成される。
つまり、風は温度差や圧力差、地球の自転などの要素によって引き起こされる大気の移動だということになる。
これらの要素が組み合わさることで、地球上でさまざまな風のパターンが生まれるというわけだ。
世界中で吹いている風の種類
ということで、世界中で吹いている風について紹介していこう。
Trade Winds(トレードウィンド)
Trade Winds(トレードウィンド)は、熱帯地域で吹く一定の方向からの風のことを指す。
その名前は、かつて帆船の航海に利用され、貿易(trade)航路の安定した風として重要視されたことに由来している。
そんなトレードウィンドは、赤道近くの低緯度地域で形成される。
地球の赤道付近では太陽からの日射が強く、大気が暖められる。
この暖かく膨張した空気は上昇し、高い大気圧を形成する。
上昇した空気は赤道から高緯度地域へと流れ、緯度30度付近で冷却されて下降する。
下降した空気は地表面に向かって流れ、低い大気圧を形成する。
この下降する空気の流れがトレードウィンドとなるのである。
トレードウィンドは一般的に東から吹き、北半球では北東貿易風、南半球では南東貿易風として知られている。
この風は比較的安定しており、風速は穏やかから強まることがある。
Westerlies(ウェスタリーズ)
Westerlies(ウェスタリーズ)は、中緯度地域で吹く一定の方向からの風のことを指す。
名前の由来は、一般的に西から吹く特徴的な風向きにある。
ウェスタリーズは、トレードウィンドと極東風(Polar Easterlies)の間に位置し、北半球では西風帯、南半球では東風帯としても知られている。
ウェスタリーズは、中緯度地域で形成される。
地球の中緯度地域では、熱帯と極域の気圧差によって大気が流れる特徴がある。
ウェスタリーズは、高緯度地域の極東風からの空気と、低緯度地域のトレードウィンドからの空気が出会う領域で形成される。
ウェスタリーズは一般的に西から吹き、風速は比較的強く、一定の方向を保ちながら吹き続ける特徴がある。
これは地球の自転によるコリオリ効果と関連している。
北半球ではウェスタリーズは北東から南西の方向に向かい、南半球では南東から北西の方向に向かう。
Polar Winds(ポーラーウィンド)
Polar Winds(ポーラーウィンド)は、極地域で吹く風のことを指す。
北極付近では北極ウィンド(Polar Easterlies)、南極付近では南極ウィンド(Polar Easterlies)とも呼ばれる。
これらの風は、極域の高気圧から低気圧へと向かう空気の流れを表している。
ポーラーウィンドは、極地域の高気圧から低気圧へと向かう空気の流れによって形成される。
極地域では、寒冷な空気が下降し、地表に沿って走りながら南方または北方に向かう。
北極ウィンド(Polar Easterlies)は、北極から緯度60度付近までの範囲で吹き、南極ウィンド(Polar Easterlies)は、南極から緯度60度付近までの範囲で吹く。
これらの風は一般的に強く、寒冷で乾燥した特徴を持っている。
Monsoon(モンスーン)
Monsoon(モンスーン)は、季節風の一種であり、特にアジア大陸を中心に起こる気候現象だ。
モンスーンは、風の向きや強さ、降水量などの気象パターンの大きな変化を特徴としている。
モンスーンは、大陸と海洋の熱差によって引き起こされる。
一般的に、夏季には陸地が急速に暖まり、海洋よりも高い気温を持つ。
この結果、陸地上の暖かい空気が上昇し、低気圧が形成される。
一方、海洋は比較的低温であり、高気圧が形成される。
この気圧の差によって、海から陸への湿潤な風が吹き込む。
これが夏季モンスーンだ。
夏季モンスーンは通常、海から陸に向かって湿気をもたらし、大量の降水をもたらす特徴がある。
一方で、冬季には逆の現象が起こる。
陸地は急速に冷え、海洋よりも低い気温となる。
この結果、陸地上の気圧が高くなる。
海洋から陸へと乾燥した風が吹き込むため、冬季モンスーンでは乾燥した気候が主に支配するのである。
Sirocco(シロッコ)
Sirocco(シロッコ)は、地中海地域や北アフリカを中心に起こる乾燥した砂塵を含んだ暖かい風のことを指す。
シロッコは主に東南東から吹き込み、その強度や影響は地域によって異なる。
シロッコは、北アフリカやサハラ砂漠などの乾燥地帯で形成される。
この風は、高温地域で暖められた空気が上昇し、大気中に砂塵を巻き上げることで形成される。
シロッコは通常、海から陸へと吹き込む乾燥した風だ。
この風は非常に暖かく、時には高温となることがある。
また、シロッコには大量の砂塵が含まれており、視界の低下や航空交通の乱れなどの影響をもたらすこともある。
Mistral(ミストラル)
Mistral(ミストラル)は、フランス南部を中心に起こる寒冷で強い風のことを指す。
特にローヌ渓谷周辺でよく観測される。
ミストラルは地形的な要因によって形成され、乾燥した空気をもたらす。
ミストラルは、地中海地域での特定の気象条件によって形成される。
この風は、高圧地帯が北方から南方へと強い勢力で流れ込むことによって発生する。
ローヌ渓谷は、フランスアルプスとマスィフ・セントラルの間に位置し、南北に伸びた形状をしている。
この地形は、ミストラルの形成に重要な役割を果たしている。
ミストラルは一般的に北西から吹き込み、非常に強い風速を持つ。
冬季には特に強くなり、夏季にも観測されることがある。
ミストラルは寒冷な風であり、寒気をもたらすため、気温が急激に下がることがある。
Shamal(シャムシン)
Shamal(シャムシン)は、主に中東地域で観測される乾燥した風のことを指す。
特にアラビア半島や近隣の国々でよく経験される。
シャムシンは乾燥した砂埃を巻き上げることがあり、その強さと持続時間が特徴だ。
シャムシンは、特定の気象条件によって形成される。
一般的に、高圧地帯が北方から南方へと流れ込むことによって発生する。
これにより、アラビア半島の内陸地域から乾燥した風が吹き込むことがある。
シャムシンは一般的に北西から吹き込むが、地域によって風の方向や強度は異なる。
この風は非常に乾燥しており、湿度を低下させる。
また、シャムシンには砂埃や微粒子が含まれていることがあり、視界の低下や航空交通の乱れを引き起こすことがある。
Foehn(フーン)
Foehn(フーン)は、特定の地形条件によって形成される乾燥した風のことを指す。
フーンは一般的に山岳地帯で発生し、山を越える風が下降する際に温まることで乾燥した特性を持つ風となる。
この現象は、世界各地の山岳地帯で観測される。
フーンは、風が山を越える際に起こる現象だ。
一般的に、湿った風が山地に向かって上昇し、山頂を越えると下降する。
この下降過程で風は加熱され、気温が上昇する。
下降する風が温かく乾燥した特性を持つため、フーンとして知られている。
フーンは一般的に山を越える風の風下側において観測される。
風が山を下降するときに加熱され、気温が上昇するため、フーンはしばしば乾燥した風となる。
この結果、湿度が低下し、空気が乾燥する。
Hurricane(ハリケーン)
Hurricane(ハリケーン)は、強力な熱帯低気圧(tropical cyclone)の一種であり、強風と豪雨をもたらす自然災害だ。
ハリケーンは海上で形成され、暖かく湿った海洋上のエネルギーを利用して成長し、破壊的な力を持つ巨大な嵐となる。
ハリケーンの形成には特定の気象条件が必要だ。
- 温かく湿った海洋
ハリケーンは暖かく湿った海水が必要だ。
通常、海水の温度は26℃以上である必要がある。
暖かい海洋上では、水蒸気が上昇し、ハリケーンのエネルギー源となる。
- 熱帯低気圧の形成
ハリケーンは熱帯低気圧として始まる。
低気圧は、水蒸気を含んだ暖かく湿った空気が上昇することで形成される。
- コリオリ効果
ハリケーンは地球の回転によるコリオリ効果の影響を受ける。
この効果により、風が時計回り(北半球)または反時計回り(南半球)に曲がる傾向がある。
Cyclone(サイクロン)
Cyclone(サイクロン)は、大気の回転する低気圧システムの一種であり、強風と大雨をもたらす気象現象だ。
サイクロンは、異なる地域や国で様々な名前で呼ばれることがある。
北半球ではハリケーン(Hurricane)、南半球ではタイフーン(Typhoon)やトロピカルサイクロン(Tropical Cyclone)と呼ばれることが一般的だ。
サイクロンは特定の気象条件によって形成される。
- 温かく湿った海洋
サイクロンは温かく湿った海水が存在する熱帯および亜熱帯の海域で形成される。
海水の温度が26℃以上であることが必要だ。
暖かい海水から蒸発した水蒸気が上昇し、低気圧システムの形成を促す。
- コリオリ効果
サイクロンは地球の回転によるコリオリ効果の影響を受ける。
この効果により、風が時計回り(北半球)または反時計回り(南半球)に曲がる傾向がある。
これにより、低気圧の中心周辺で風が旋回する。
Teewinot(ティワ)
アメリカのロッキー山脈周辺で吹く強風で、急峻な山岳地帯から吹き下ろす。
風速が非常に強くなることがある風だ。
Helios(ヘリオス)
ギリシャ語で太陽を意味し、エーゲ海周辺で吹く熱風だ。
夏季に吹くことが多く、暑く乾燥した特徴を持つ。
Cinnamon(シナモン)
スリランカやインドなどの南アジアで吹く風で、シナモンの香りを伴う。
乾燥した風で、シナモンの産地では重要な風だ。
Shelok(シェルコック)
ロシアのシベリア地域で吹く極寒の風だ。
シベリアの大陸性気候により、非常に低い気温と強風が特徴だ。
Ghibli(ギブリ)
リビアやチュニジアなど北アフリカ地域で吹く暖かく乾燥した風で、砂埃を巻き上げる。
Karim(カリマ)
アラビア半島で吹く乾燥した風で、砂埃を含んでいる。
Etéor(エトワール)
セーシェル諸島周辺で吹く季節風で、乾燥していて熱い風だ。
Jebel(ジェベル)
中東や北アフリカで吹く山岳風で、山脈を越える際に形成される強風だ。
Sangokor(サンゴーコール)
モロッコやアルジェリアなど北アフリカで吹く砂嵐の風だ。
Bora(ボラ)
アドリア海沿岸地域で吹く強風で、バルカン半島の山脈から吹き下ろす。
まとめ
今さら聞けない風の原理と世界中に吹いている風についてまとめてみたが、いかがだろうか。
中には学生時代に学んだ風の名前もあったと思うが、ほとんどが初めて聞いたという風の名前だったのではないだろうか。
それだけ世界は広く、気候や地形によって違う場所があるということに興味を抱いた人も少なからずいるはずだ。
かくいう私もその1人で、その理由は風が運ぶ匂いにある。
風は匂いを運んでくれて、そのときどきの季節や場所を想い出として刻んでくれる。
だからこそ、少しでも多く世界中で吹いている心地よい風に当たりたい。
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