傾盆大雨(けいぼんのたいう)
→ 盆をひっくり返したような大雨。
2022年6月下旬時点、全国的に猛暑が続いている状況だ。
猛暑になると、必ずといっていいほどワンセットで昔はここまで暑くなかったという話になる。
それともう1つワンセットになるのが、ゲリラ豪雨が増えたという話題だ。
もっというと日本が亜熱帯化しているということまで拡がる。
そして、このあたりをざっくり異常気象とひとくくりにすることもあるわけだ。
というわけで、今回は大雨というテーマなので、ゲリラ豪雨の実態と推移について書いていこう。
日本が亜熱帯化しているといわれている理由
と、その前にゲリラ豪雨のことだけを切り取るわけにもいかない実態に触れておこう。
後に書いていくのだが、実際にゲリラ豪雨は増えている。
ただ、その背景には日本が亜熱帯化していると言われていることをスルーできない実態がある。
つまり、日本が亜熱帯化しているという実態の1つにゲリラ豪雨の増加も含まれるというわけだ。
では、どんな状況から日本が亜熱帯化しているといわれているのだろうか。
気温の上昇
まず、欠かせないのが気温の上昇だろう。
地球温暖化による気候変動で、世界中の平均気温が100年あたり0.75℃上昇しているといわれている。
しかも日本だけに限定すると、100年あたり1.24℃という上昇値になっているのである。
このままの状態が続けば、21世紀の終わりごろには世界的に3.7℃、日本は4.5℃ほど年平均気温が上昇するという試算もあるほどだ。
このあたりの実態について、気象庁のデータから読み解くことができる。
例えば、日本の3月の気温偏差を見たければこんな感じだ。
ゲリラ豪雨の増加
次に今回のテーマにしたゲリラ豪雨の増加も日本が亜熱帯化しているといわれている理由の1つだ。
ゲリラ豪雨とは、限られた地域で時間雨量が50mmを超えるような大雨が短時間に降ることを指す。
この現象が熱帯地域、あるいは亜熱帯地域に見られるスコールを想定されるというわけだ。
このあたりは後ほど触れていくが、気象庁の観測においても、時間雨量50mm以上の年間発生数は増加の傾向にある。
実際、2012~2021年の年間発生数を観測開始当初の1976~1985年と比較すると、約1.4倍に増加しているというデータが取れている。
生態系の変化
最後に気温上昇による生態系の変化も日本が亜熱帯化しているといわれている所以だ。
例えば、熱帯や亜熱帯地域に多く見られる病気である、デング熱を媒介するとされるヒトスジシマカという蚊がいる。
この蚊は年平均気温11℃上の場所に生息するのだが、日本では1990年代を境に急速に分布域が広がっている。
また、植物の世界でも稲の生育に変化が見られている。
気温上昇の影響で、出穂期が通常よりはやくなったり、品質が劣化したりといった問題が発生しているのである。
このあたりは、亜熱帯化に対応すべく、品種改良されたブランド米も開発されるほどになっている。
他にも、漁獲量の変化が起きたり、桜の開花時期がはやまったりという生態系の変化も起きている。
ゲリラ豪雨の実態と推移
ということで、本題のゲリラ豪雨について書いていこう。
ウェザーニュースによる2021年の夏のゲリラ豪雨のトピックスは下記のとおりとなっている。
- ゲリラ豪雨の発生回数は全国で合計63,515回
- 7月中旬〜8月上旬に全体の約半数が発生
- 全国の2人に1人がゲリラ豪雨に遭遇
まず、ゲリラ豪雨の回数だが、これは2020年は73,878回だったので、約8割くらいだったということになる。
つまり、2割程度減で都道府県別に見ると、全国的に昨年並〜やや少ない結果となった。
ゲリラ豪雨の発生回数が最も多かった都道府県は、北海道が4,869回、次いで沖縄の4,678回という結果だった。
ちなみに、2021年の東京でのゲリラ豪雨の回数は807回で、1,561回発生した昨年に比べると約半分の発生回数だった。
また、月別に見ると、全国のゲリラ豪雨の発生回数は、7月が28,051回、8月が21,854回、9月が13,610回となっている。
くり返しになるが、7月中旬〜8月上旬にかけての1ヶ月で全体の63,515回の約半数のゲリラ豪雨が発生したという結果だ。
それから、全体で発生したゲリラ豪雨の回数は2020年に比べると2割ほど少なかったのだが、7月だけを比べると約1.2倍となっている。
一方で、8月と9月のゲリラ豪雨の発生回数は前年の2020年を下回り、8月は昨年の約0.9倍、9月は昨年の約0.6倍となっていることも知っておかないといけない。
というのも、毎年ゲリラ豪雨が増えているという主張は、2020年と2021年の7月だけを切り取るとそうなのだが、全体で見るとそうではないということになるからである。
ただ、だからといって数年だけを比較するのでは意味がない。
データというのは、長期で蓄積されて初めて効果を発揮するものであるからだ。
(出典:気象庁)
ということで、この気象庁のデータからゲリラ豪雨の発生回数の推移を読み取っていこう。
くり返しになるが、ゲリラ豪雨の定義は、限られた地域で時間雨量が50mmを超えるような大雨が短時間に降ることだ。
つまり、気象庁ではゲリラ豪雨という表現こそ使ってはいないが、まさにゲリラ豪雨の発生回数データそのものがこのデータになる。
そして、データを見てもらえれば、一目瞭然なのだが、統計期間1976~2021年で10年あたり27.5回の増加という結果が出ている。
また、直近の10年間(2012~2021年)の平均年間発生回数(約327回)は、統計期間当初の10年間(1976~1985年)の平均年間発生回数(約226回)と比べて約1.4倍に増加している。
ただし、注意書きにもある点にも留意しておきたい。
それは、こういった変化が地球温暖化に伴う変化と整合していると考えられる一方で、アメダスの観測期間は45年程度と比較的短いことに起因している。
結論、地球温暖化との因果関係については、確実に評価するため今後のさらなるデータの蓄積が必要だということである。
日本の気候変動の未来予測
また、日本の気候変動の未来予測についても、気象庁が発表している。
(出典:気象庁)
報告書によると、日本の気候変動の未来予測は2つにわかれるという。
1つ目はパリ協定の2°C目標が達成された世界で、もう1つは現時点を超える追加的な緩和策を取らなかった世界だ。
その世界を端的に、前者を2℃上昇シナリオ、後者を4℃上昇シナリオとしている。
参考までに、21世紀末の時点での2℃上昇シナリオと4℃上昇シナリオの比較をしてみよう。
2℃上昇シナリオ
- 年平均気温:約1.4℃上昇
- 猛暑日の年間日数:約2.8日増加
- 熱帯夜の年間日数:約9.0日増加
- 冬日の年間日数:約16.7日減少
- 日降水量200mm以上の年間日数:約1.5倍に増加
- ゲリラ豪雨の頻度:約1.6倍に増加
- 日降水量の年最大値:約12%(約15mm)増加
- 日本近海の平均海面水温:約1.14℃上昇
- 日本沿岸の平均海面水位:約0.39m上昇
- 3月のオホーツク海の海氷面積:約28%減少
4℃上昇シナリオ
- 年平均気温:約4.5℃上昇
- 猛暑日の年間日数:約19.1日増加
- 熱帯夜の年間日数:約40.6日増加
- 冬日の年間日数:約46.8日減少
- 日降水量200mm以上の年間日数:約2.3倍に増加
- ゲリラ豪雨の頻度:約2.3倍に増加
- 日降水量の年最大値:約27%(約33mm)増加
- 日本近海の平均海面水温:約3.58℃上昇
- 日本沿岸の平均海面水位:約0.71m上昇
- 3月のオホーツク海の海氷面積:約70%減少
2℃の差だと大したことがないようにも思うかもしれないが、なかなかのインパクトだということは理解できるだろう。
そして、2℃上昇シナリオになんとか留めようとするのは、結構難しいことも調べていけばすぐにわかる。
まとめ
サスティナブルという言葉が環境やエネルギーの分野で定着したり、SDGsという言葉がバズワードになっていることからも多くの人が意識しないといけないことは、十分にわかっているはずだ。
とはいえ、どこか他人事というかマクロでの目線になってしまうので、自分には関係ないと思ってしまう部分があることもまた事実だろう。
かくいう私も、日々そこまで環境やエネルギーの大切さを考えて過ごしているかと問われれば、素直に首を立てに振ることはできない気がする。
とはいえ、IoTなどのテクノロジーの分野を使えば、少なからず貢献できる部分があることも十分理解している。
ただ、そこにたどり着くには今のままでは力が及ばなすぎるので、一歩ずつ一歩ずつ着実に進んでいくしかない。
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