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2025年9月28日 投稿:swing16o

真のギブアンドギブ精神が生み出す企業成功の新方程式

摩頂放踵(まちょうほうしょう)
→ 自分を顧みず、他人のために努力すること。

現代のビジネス界では、利益至上主義から持続可能な経営へのパラダイムシフトが進んでいる。

だが本当に必要なのは、もっと根本的な意識変革だ。

私がstak, Inc.を経営する中で確信したのは、真の成功は「ギブアンドテイク」ではなく「ギブアンドギブ」の精神から生まれるということだ。

摩頂放踵とは、孟子が墨子を評した言葉で、「頭の先から足のかかとまですり減らすほど、自分を顧みず、他人のために努力すること」を意味する。

この古典的概念が、なぜ現代の経営において重要なのか。それは、データが明確に示している。

摩頂放踵の歴史的背景と現代的意義

摩頂放踵の語源は『孟子』尽心章句上にあり、孟子が楊子と墨子を評価する文脈で登場する。

楊子は極端な個人主義者として「拔一毛而利天下、不爲也(一毛を抜きて天下を利するも、為さざるなり)」と表現され、一方で墨子は「墨子兼愛、摩頂放踵、利天下爲之(墨子は兼ね愛す、頂を摩して踵に放とも、天下を利することは之を為す)」として、無差別の博愛主義者として描かれた。

この対比が示すのは、2400年前から既に「利己主義 vs 利他主義」の議論が存在していたということだ。

興味深いのは、孟子が墨子の極端な利他主義を必ずしも推奨していたわけではないという点だ。

しかし現代において、この「極端な利他主義」こそが企業成功の鍵となっている。

ニッセイ基礎研究所の研究によると、世界各国で寄付のように他人に利益を与える行動をする人は、幸福度が高い傾向があることが示されている。

また、効果的利他主義という21世紀の哲学的社会運動では、「証拠と理性を用いて他者にできる限り利益をもたらす方法を見出し、その基盤に基づいて行動すること」が提唱されている。

実際に、2019年には推定4億1,600万ドルがこの運動で特定された効果的な慈善団体に寄付された。

ギブアンドテイクからギブアンドギブへ

現代のビジネス界で最も注目すべき研究の一つが、組織心理学者アダム・グラントによる「GIVE & TAKE」だ。

グラントは人間を「ギバー(与える人)」「テイカー(受け取る人)」「マッチャー(バランスをとる人)」の3つに分類し、ギバーは全体の25%、マッチャーは55%、テイカーは20%の割合で存在することを明らかにした。

そして、驚くべき発見は、最も成功から遠いのがギバーである一方、最も成功しているのもギバーだったことだ。

カリフォルニア州のプロのエンジニアの協力性を評価した調査では、最も評価の低いエンジニアはギバーとされる一人だった。

他の人の仕事を手伝っているせいで自分の仕事を終えられず、生産性の点で最低点をつけられたのだ。

ところが、もっとも生産性が高いとされたエンジニアもまた、ギバーだった。

この二極化現象こそが、現代の経営に重要な示唆を与える。

成功するギバーと失敗するギバーの違いは何なのか。

成功するギバーは「他者思考型」であり、他者利益と自己利益の双方に興味関心がある。

受け取るより多く与えるが、自分の利益も損なわない。

一方、失敗するギバーは「自己犠牲型」で、他者利益には興味があるが自分の利益には無頓着で、人に与える一方で自分の利益を損なってしまう。

企業エンゲージメントとギブアンドギブの相関関係

ギブアンドギブの精神は、従業員エンゲージメントという形で具現化される。

リンクアンドモチベーションと慶應義塾大学の共同研究による66万人のデータ分析は、驚くべき結果を示している。

エンゲージメントスコア1ポイントの上昇につき、当期の営業利益率が0.35%上昇し、翌四半期の営業利益率が0.38%上昇することが判明した。

また、エンゲージメントスコア1ポイントの上昇につき、労働生産性指数が0.035上昇することも分かった。

さらに注目すべきは長期的影響だ。エンゲージメントスコアが高い企業の売上伸長率を見ると、Dランク以下の企業では4.2%だったのに対し、Bランク以上では19.8%に上った。

純利益伸長率では、Dランク以下では-56.7%だったのに対し、Bランク以上では+67.1%となった。

ギャラップ社の2024年調査によると、OECD加盟国において日本のエンゲージメント率は最低の7%となった。

一方で、エンゲージメントが高い上位25%の企業は下位25%と比較して、売上が18%、利益性が23%高いという結果が出ている。

これは何を意味するのか。

日本企業の多くが、まだ真の「ギブアンドギブ」を理解していないということだ。

世界の先進企業に学ぶ摩頂放踵の実践

パタゴニア:「地球が私たちの唯一の株主」

摩頂放踵の現代的実践として最も象徴的なのがパタゴニアだ。

パタゴニアは単なるアパレル製品を販売するメーカーではなく、地球を救うことに強くコミットした事業を展開している。

2022年には創業者イヴォン・シュイナードが全株式を環境NPO「ホールドファスト・コレクティブ」と信託「パタゴニア・パーパス・トラスト」に譲渡し、「地球が私たちの唯一の株主」と宣言した。

パタゴニアは「CSR(企業の社会的責任)」が概念として社会に浸透する以前から、地球環境の保全と従業員の幸せな暮らしにコミットすると宣言していた。

利益と環境保全活動を切り離さない「レスポンシブル・カンパニー(責任ある企業)」としての姿勢を貫いている。

世界経済フォーラムの報告では、「社会的価値を生み出すことを無条件に重視し、その結果として経済的な成功を手に入れる」利他主義的企業が、経済的価値よりも社会的価値を優先することが最終的な収益増加につながることが示されている。

現代における摩頂放踵は、文字通り身を粉にして働くことではない。

それは「他者思考型ギバー」として、以下の原則に基づいて行動することだ。

  1. ステークホルダー全員の利益を考える:株主、従業員、顧客、社会、環境すべてを含む
  2. 短期的な損失を恐れない:長期的価値創造のための投資を躊躇しない
  3. 透明性と真正性を保つ:偽りのないコミュニケーションを徹底する
  4. 持続可能性を優先する:一時的な成功よりも継続的な価値創造を選ぶ

利他主義がもたらす経済的リターンの科学

従業員エンゲージメントと投資指標の関係を調査した結果、エンゲージメントスコアが高い企業ほどROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本利益率)が高いことが示唆された。

また、エンゲージメント・レーティングが「A」の企業の80%はPBR(株価純資産倍率)が1を上回っていた。

タワーズワトソンの調査によると、高エンゲージメントを持続できる企業では、1年間の業績成長率(収益)が、エンゲージメントの低い企業の8.2%に対し18.3%と、2倍以上の成長率となった。

これらのデータが示すのは、摩頂放踵の精神に基づく経営が、単なる理想論ではなく、極めて実践的で収益性の高いアプローチだということだ。

なぜギブアンドテイクではダメなのか?

ギブアンドテイクは「これだけしてあげるんだから、その分返してね」という心があるが、ギブアンドギブは見返りを期待せず与える一方だ。

しかし、返報性の法則により、ギブアンドギブで与えると、後で大きなテイクとなって返ってくる。

コミュニティ内では「ギブアンドテイク」ではなく、「ギブアンドギブ」の精神を根付かせることが重要だ。

全員が情報を受け取るだけで終わってしまえば、コミュニティは成熟していかない。

濃密なコミュニケーションが起こる場では、全員が自然とここにいたいと思うはずなので、一生懸命にバットを振るし、アウトプットをするようになる。

テイカーの存在とその対処法

アダム・グラント氏の調査によると、テイカーを見抜く方法として、「あなたの人生を劇的に変えた人を4人挙げてください」という質問が有効だ。

テイカーは4人全て「自分より地位の高い人」や「影響力のある人」を挙げる傾向がある。

自分より弱い立場の人を軽視する傾向があるからだ。

他者思考型のギバーは、自分の利益のみを追求するテイカーとは距離を置くように上手く行動する。

テイカーとの付き合いでは、与えてもらう姿勢も持ち、損益を考慮した関係へと変化させる必要がある。

グローバル化する利他主義経済

2019年には推定4億1,600万ドルが効果的利他主義の原因に特定された慈善団体に寄付され、2015年以降の年間成長率は37%を表している。

フェイスブック共同創設者ダスティン・モスコヴィッツと妻カーリー・ツナは、110億ドル以上の純資産のほとんどを効果的利他主義の原因のために寄付することを望んでいる。

統計数理研究所の「日本人の国民性調査」2014年版では、日本人はどんどん利他的になっているというデータが示された。

これは日本企業にとって大きなチャンスを意味する。

日本人の利他的な性質を活かした「他者思考型ギバー」中心の経営モデルは、グローバル市場で独自の競争優位性を発揮できるはずだ。

摩頂放踵を実践するための具体的ステップ

Step 1: 大義名分の明確化

大義名分を明確にすることから始める。

リーダーシップチームは、ワークショップやブレインストーミングセッションを通じて、組織の核となる価値観やビジョンについて議論し、共通の理解を形成する。

全ての意見を聞き、多様性を尊重することが重要だ。最終的に、全員が共感できる、鮮明でインパクトのある大義名分を定義する。

Step 2: 組織全体への浸透

大義名分を組織全体に浸透させるためには、コミュニケーションが鍵となる。

大義名分を組織のウェブサイト、社内報、会議の議題など、あらゆる媒体を通じて繰り返し伝える。

従業員が大義名分に基づいて行動できるように、トレーニングプログラムやワークショップを実施することも有効だ。

Step 3: 測定と改善

大義名分を活用した取り組みの効果を測定し、その成果を組織内外に共有することも大切だ。

これにより、大義名分に対するコミットメントを再確認し、従業員のモチベーションを高めることができる。

成功事例を広く共有することで、大義名分への共感と参加意欲を促進する。

まとめ

データは明確だ。

従業員エンゲージメントが高い企業は、低い企業と比較して:

  • 売上が18%高い
  • 利益性が23%高い
  • エンゲージメント1ポイント向上で営業利益率0.35%上昇
  • 高エンゲージメント企業の成長率は低エンゲージメント企業の2倍以上

これらの数字が示すのは、摩頂放踵の精神に基づく「ギブアンドギブ」経営が、単なる理想論ではなく、極めて実践的で収益性の高いビジネスモデルだということだ。

私たちstak, Inc.も、この哲学を貫くことで、IoTデバイス「stak」を通じて社会に真の価値を提供し続けている。

それは決して楽な道ではない。時には短期的な利益を犠牲にし、時には理解されないこともある。

しかし、長期的に見れば、これこそが持続可能で意義のある成功への確実な道なのだ。

摩頂放踵は2400年前の概念だが、その真理は現代においてさらに輝きを増している。

テクノロジーが進化し、社会が複雑化する中で、真に人々のために尽くす企業だけが生き残り、繁栄することができる。

ギブアンドテイクの時代は終わった。これからはギブアンドギブ、そして摩頂放踵の時代だ。

あなたの会社は、頭の先から足のかかとまですり減らしても、顧客、従業員、社会のために尽くす覚悟があるだろうか。

その覚悟こそが、次の時代の勝者を決める分水嶺となるのだ。

 

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植田 振一郎 X(旧Twitter)

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