不老長寿(ふろうちょうじゅ)
→ いつまでも老いることなく長生きすること。
古代中国の始皇帝が水銀を不老不死の薬として服用し50歳で亡くなった逸話から約2200年。
現代の我々は科学の力で、ついに老化の本質に迫る時代を迎えた。
肌の老化の8割は太陽光が原因という説が医学界で提唱される中、これは果たして真実なのか。
そして、老化とは一体何なのか。
ということで、徹底的なデータ分析を通じて不老長寿への道筋を科学的に解明していく。
不老長寿という概念が生まれた歴史的背景
人類が死への恐怖を抱き、永遠の生命を追い求めてきた歴史は古い。
司馬遷の『史記』によれば、徐福とは秦の始皇帝の命を受け、不老不死の仙薬を求めて童男童女各500人や各種技術者を含む総勢3,000人を伴い、五穀の種を携え、東方に船出した人物である。
古代中国「秦」の始皇帝が、水銀を飲んで死んだ、という話は有名だ。
知らずに毒を飲まされたのかと思う人も多いかもしれないが、実は不老不死の薬として自ら水銀を飲んでいたのである。
この欲求は東洋だけでなく、西洋では「elixir of life」(エリクサー)という錬金術の霊薬がある。
不老長寿への憧憬は、まさに人類共通の根源的欲求だったのだ。
興味深いのは、現代においても平均寿命は延び続けているという事実である。
日本人の平均寿命は男79.3歳、女86.05歳となり、男女ともに過去最高を更新したことが、平成21年の厚生労働省の統計により明らかになった。
しかし、今のところ、人間の寿命は最高でも120歳を超えないくらいが限度であろうと推測されている。
このブログで学べる老化研究の最前線
現代科学は、古代の皇帝たちが夢見た不老長寿に、データとエビデンスで挑んむことで、以下の核心的な知識を習得できる。
- 光老化8割説の科学的根拠と論争:医学界で語り継がれる「肌老化の8割は紫外線が原因」という説の真偽
- テロメア理論による細胞老化のメカニズム:命の回数券と呼ばれるテロメアの実態
- 活性酸素と老化の密接な関係:体内で起こる酸化ストレスの正体
- 生活習慣が老化速度に与える定量的影響:喫煙、肥満、運動不足の数値的インパクト
- 不老長寿実現への具体的アプローチ:現代科学が導き出した老化防止戦略
光老化8割説は本当に正しいのか?
医学界で広く語られる「肌老化の8割は光老化が原因」という説がある。
肌の老化は加齢よりも、そうした太陽光線による「光(ひかり)老化」の影響が8割を占めているという。
つまり、光老化 = 日焼けが約8割を占めているといわれている。
しかし、この「8割」という数字には疑問の声も上がっている。
「皮膚の老化の80%は光老化」というのは、根拠のない作り話ではないかという声も上がっている。
その理由は、いろんな論文に出てくるのに、参考文献を付けている論文を見たことがない、80%という数値を挙げながら参考文献がないなんて学術文献としてないというものだ。
この論争の真相を探ると、最終的にたどりついたのは、皮膚ガンの原因の80%は紫外線という文献だったことにある。
おそらくそれがまわりまわって、いつの間にやら皮膚ガンの話が老化の話になり、参考文献は行方不明になってしまったという可能性が指摘されている。
しかし、この数値の正確性に関わらず、光老化が肌に深刻な影響を与えることは間違いない。
お年寄りでも日光を浴びない太股の内側などは色が白く、柔らかで、細かいしわはあるものの、深いしわがないという観察的事実が、光老化の存在を裏付けている。
老化メカニズムの全貌
光老化のメカニズム
太陽光線は、波長の短い方から紫外線(UV)、可視光線、赤外線の3つに分かれる。
光老化に最も影響するのは紫外線で、紫外線にはC波(UVC=短波長)、B波(UVB=中波長)、A波(UVA=長波長)がある。
UV-Aが肌に侵入するとサンタンと呼ばれる皮膚が黒くなる状態がUV-Aの日焼けの特徴。天気が曇りの日でも、また屋内のガラス越しにも降り注ぐ。
UV-BはUV-Aよりも波長が短く、そのため肌の表面にしか届きませんが、皮膚に直接ダメージを与える。
サンバーンと呼ばれるもので、日焼けすると肌がヒリヒリして火傷のようになる状態だ。
テロメア短縮による細胞老化
テロメアはヒトではおよそ10,000塩基対 (10 kbps: 10 kilo base pairs:上記6塩基対が1700回ほどくり返して繋がっている計算になる) の長さでDNA鎖全長のごく一部である。
テロメアは通常の体細胞では細胞分裂(DNA複製をともなう)のたびに約50塩基対づつ短縮する。
この機序により、ヒト体細胞の分裂可能回数は約60~70回で、これを超えると増殖が停止し老化段階に入る。
興味深いデータとして、生活習慣でもテロメアの長さは変化する。
タバコを20本、10年間毎日吸う人は5歳分、肥満の人は8歳分、運動習慣なしの人は10歳分、テロメアが短いとの報告がある。
活性酸素による酸化ストレス
活性酸素を無毒化する代表的な抗酸化酵素であるSODの活性が高い動物ほど、長生きする傾向もあるという事実は、活性酸素と老化の密接な関係を示している。
活性酸素はカラダを構成するタンパク質や脂質、大事な遺伝情報を伝えるDNAなどを容赦なく傷つける。
自転車や十円玉がサビてしまうように、活性酸素による酸化でカラダもサビてしまうのだ。
酸素の1〜3%は完全に還元されないため、活性酸素が生じますという事実は、生きている限り活性酸素の発生は避けられないことを意味している。
最新科学が解き明かす新事実
テロメアと老化の複雑な関係
従来、テロメアの短縮が老化の主要因とされてきたが、最新研究では異なる見解も示されている。
遺伝子工学的手法で個体全体の細胞のテロメラーゼを強制発現させたマウスの寿命は伸びることはなかった。
そもそもマウスのテロメアはヒトよりも10倍長い上に成体の体細胞でもテロメラーゼが発現しているのに寿命は3年に過ぎない。
この事実は、テロメアの長さだけでは寿命は決まらないことを示している。
ヒトでは高齢でテロメアが短縮するのは、むしろメリットで、種々の突然変異によって生じたがん細胞候補の増殖に対する防御機構になっているとも考えられている。
光老化以外の老化要因
老化の原因として酸化ストレス説、糖化説、腸の老化説、テロメア説、遺伝子説等がある。
これらは互いに独立して作用するのではなく、複合的に老化を促進している。
細胞内に存在しており、私たちが活動するためのエネルギーを作り上げる「ミトコンドリア」の質が低下する。
それに伴い、活性酸素を消去する酵素である「スーパーオキシドディスムターゼ 2(SOD2)」という物質の量が減少し、活性酸素の除去が遅くなる。
細胞老化の防御機能
最新の研究では、細胞老化は細胞の異常な増殖を防ぎ、がんの発生を予防する、生体の防御機構のひとつだと考えられるようになった。
つまり、老化は必ずしも悪いものではなく、生体を守るために必要な現象でもあるのだ。
老化細胞を取り除くと、臓器や組織の機能改善が見られていますという研究結果は、老化細胞の蓄積が加齢性疾患の原因になることを示している。
まとめ
収集したデータを総合すると、不老長寿へのアプローチには明確な優先順位が存在する。
1. 紫外線対策の徹底 光老化8割説の真偽に関わらず、光老化について詳しい東京女子医科大学皮膚科学教室の川島眞教授をはじめとする専門家が、日焼け止めの日常使用を強く推奨している事実は重要だ。
2. 生活習慣の最適化 タバコを20本、10年間毎日吸う人は5歳分、肥満の人は8歳分、運動習慣なしの人は10歳分、テロメアが短いという定量的データは、生活習慣改善の重要性を数値で示している。
3. 抗酸化対策 高い抗酸化作用がある栄養素には、紫外線によって生じた活性酸素のはたらきを抑える効果があるため、日々の食事やサプリメントで積極的に摂取することを心がけよう。
4. 栄養素の戦略的摂取 「テロメア」を長持ちさせる栄養素として、葉酸、食物繊維、ビタミンEなどが挙げられる。特に葉酸は、遺伝子に直接必要なビタミンの1つだ。
また、英エクスター大学とブライトン大学の研究グループが、通常なら細胞分裂のたびに短くなる染色体の末端部であるテロメアを、若い細胞のように長くする方法を発見した。
文字通り、「老化した人間の細胞を若返らせる」ことに成功したのだ。
この画期的な研究成果は、赤ブドウ、赤ワイン、ダークチョコレートなどにも含有される「レスベラトロール類似体」を用いた細胞の若返りを実現している。
古代の始皇帝が水銀で命を落とした悲劇から2200年。
現代の我々は、科学的エビデンスに基づいた不老長寿への道筋を手に入れた。
光老化8割説の真偽は議論が続くが、紫外線対策、生活習慣の最適化、抗酸化対策、そして適切な栄養摂取という4つの柱が、確実に老化速度を遅らせることは間違いない。
重要なのは、完璧な不老不死を追求するのではなく、健康寿命を最大化することだ。
50代で同世代の人より1,000塩基分「テロメア」が短い人は、通常の人に比べ心筋梗塞や脳卒中のリスクが3倍高くなりますという事実は、老化対策が単なる美容問題ではなく、生死に関わる健康問題であることを示している。
不老長寿は夢物語ではない。
データと科学的手法により、我々は確実にその扉を開きつつある。
重要なのは、今日から実践することだ。
古代の皇帝たちが夢見た永遠の生命に、現代の我々は科学の力で着実に近づいている。
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