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2025年2月28日 投稿:swing16o

データで読み解く噂の拡散スピードの変化

飛短流長(ひたんりゅうちょう)
→ あれこれと噂を撒き散らすこと。

「飛短流長」という言葉は、文字通り「噂が飛ぶように短期間で広がり、そして長く流れ続ける」という意味合いが込められている。

語源をたどると古くは江戸時代にも「噂が飛ぶ」「尾ひれがついて長引く」といった表現が見受けられる。

このことから、人間社会のコミュニケーションにおいて、ある出来事が瞬く間に広まり、長い間話題となり続ける現象そのものが太古の昔から存在していたことがわかる。

日常生活においても、芸能人のゴシップや、政治家のスキャンダルなど、「悪いニュースほど早く伝わる」という経験則がある。

その背景には「ネガティブ情報へのバイアス(Negativity Bias)」が関係しているという研究も存在する(出典:Baumeister, Finkenauer)。

人は良い情報よりも悪い情報に対して警戒心を持つので、そのぶん注意を引きやすく、結果として情報伝達が加速する傾向がある。

このように「飛短流長」は噂やゴシップと密接に関わってきたが、その根幹には「他者とのコミュニケーション欲求」が常にあった。

人はコミュニティ内の最新情報を手に入れることで生存確率を高めてきたという社会生物学的な背景もある。

狩猟時代であれば危険な動物や敵の存在などが即座に共有されることで、共同体の危機回避が可能になった。

同様に現代でも、関心の高いテーマであればあるほど情報が集まりやすく、短期間で広がりやすい。

インターネットやスマートフォン以前にも、テレビや新聞、雑誌などのメディアが存在し、噂を広げる土壌は確かにあった。

だが紙媒体や口伝による広がりには物理的な限界があり、時間も労力もかかっていた。

現代ではデジタルメディアやSNSがそのプロセスを劇的に短縮している。その劇的な変化が「飛短流長」の概念をさらに鮮明にしている。

現代で加速する噂の実態

まず問題提起として、現代と10年前・20年前を比較したときに噂拡散のスピードが具体的にどれほど速くなっているのかを考察する。

2010年前後はガラケーの利用者がまだ多く、SNSと呼べるサービスも一部ユーザーに限られていた。

たとえばTwitterが国内で本格的に流行し始めたのは2008年〜2010年頃であり、Facebookが国内でも徐々に普及し始めたのは同時期だった。

実際に総務省の通信利用動向調査(2010年版)では、携帯端末によるインターネット利用率は約29%だった。

まだスマホよりもガラケーでWebサイトやメールを使うことが主流だった時代だ。

一方、2020年代に入った現在は、スマートフォンの普及率が日本国内で80%を超え(出典:総務省「令和3年版情報通信白書」)、SNSの利用率は全年代平均で約73%に達している(出典:LINEリサーチ調査などの複合データ)。

つまり、10年前と比較するとインターネットを介したコミュニケーションの母数そのものが倍以上になっている。

この数値だけでも、噂が広まる母数が圧倒的に増えていることがわかる。

スマートフォンの普及によって、誰もがいつでもどこでもSNSにアクセスできる環境が整った。

さらに5Gの登場により、動画コンテンツの閲覧やアップロードもストレスなく行えるようになった。

その結果、一度火がついた噂は数時間から数分、あるいは数十秒というオーダーで国内外に拡散し、フォロワー数の多いインフルエンサーや人気メディアが取り上げると一気に拡がる。

「10年前は週刊誌が売られるまで噂を半信半疑で待っていた」「20年前はテレビのワイドショーを見て翌日友人と話す」などの伝達サイクルが当たり前だったが、今ではSNS通知の音一つで瞬時に何万人もの人々に情報が飛ぶ。

これが現代の「噂の加速」であり、まさに飛短流長の縮図と言える。

数値で見るSNSとスマホ普及の影響

では、具体的にどの程度のスピードや規模で噂が拡散しているのか。

ここでいくつかの視覚的にわかりやすいデータを示す。

例えばTwitter上でのリツイート数に着目すると、ある著名人が発信したツイートが1万リツイートを超えるまでの時間が2012年頃は平均で12時間程度だったが、2022年以降は平均3時間以内というケースも珍しくない(出典:SNS分析ツールSocial Bladeなどからの独自集計)。

これはリツイートの機能がユーザー数の増加とともに、瞬発力を伴って拡散されるようになったことを意味する。

フォロワー数が1万人程度のアカウントであっても、魅力的なコンテンツであれば短時間で数万人、あるいは数十万人にリーチできる。

またInstagramではハッシュタグ検索機能の利用者が増え、特定のキーワードに関連する投稿が一気に集約・表示されるために、流行や噂の拡散がより可視化されやすくなった。

インフルエンサーが投稿した内容が1日で100万インプレッションを超えるケースも見られ、フォロワーが一気に数千単位で増加することも少なくない。

こうしたデータから、SNSの拡散力は指数関数的に伸びていることが明らかである。

スマホ普及のデータ面では、国内だけでなく世界規模を見ても、Statistaの報告によれば2010年には世界人口の約16%(約11億人)がスマホを利用していたが、2020年には約60%(約46億人)に増加している。

このようにインターネット接続デバイスを常に持ち歩く人々が増えたことで、噂や情報がリアルタイムかつ広範囲に拡散するインフラが完全に整備された。

10年前や20年前は、テキスト情報が主流であり、拡散スピードにも一定の限界があった。

しかし今では、テキストだけでなく動画やライブ配信も盛んに行われている。

2020年代に入りショート動画が一般的なコンテンツの一形態として認知され、TikTokやYouTubeショートなどで1分に数百万回再生されるコンテンツが次々と出ている。

視覚的インパクトの強い情報はシェアされやすく、より多くの人が興味を持って二次拡散を起こすため、噂の加速に拍車がかかっているのが現状だ。

別視点から捉える噂の拡散力

噂が短時間で大量拡散する時代において、問題になりがちなのは「誤情報」や「フェイクニュース」の存在である。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究によれば、SNSにおいて誤情報が真実の情報よりも約6倍早く拡散されるというデータがある(出典:Science誌, 2018)。

さらにフェイクニュースほど人々の好奇心を強く刺激し、SNSのアルゴリズムはエンゲージメント率が高い投稿を優先的に表示するので、誤情報であっても瞬時に膨大なユーザーにリーチするリスクがある。

こうした事態が生まれる背景には、SNSが本来は個人間のコミュニケーションツールであるという側面が強いことが挙げられる。

友人同士の会話や趣味のコミュニティでのやり取りなど、信頼関係を基盤とした情報に誤情報が紛れ込むと、批判的思考を通さずに受け入れてしまうケースがある。

結果として短期間に多くの人が「嘘か本当か」を吟味する前に噂を広めてしまう構図が出来上がる。

一方で企業やブランドにとっては、この「噂の拡散力」を上手に活かすことが戦略上の大きな鍵になる。

炎上リスクと背中合わせではあるが、ユーザー同士が自主的に情報を拡散してくれる構造を作れれば、広告費や宣伝費を抑えつつ認知度を高めることが可能になる。

SNSでいかにバズらせるか、またバズったときにどのようにイメージコントロールやブランドメッセージを伝えるかが、現代のマーケティングでは重要な課題となっている。

しかし、それでも企業や個人がコントロールできない噂が広まるリスクは常につきまとう。

誤情報が拡散された場合、当事者は素早い訂正と情報発信が求められるが、それさえも「燃料」として扱われてしまう危険性もある。

こうした時代背景を踏まえ、噂の拡散スピードは「諸刃の剣」であり、企業であっても個人であっても、対処法を学ぶことが避けられない課題になった。

データから導く未来への展望

あらためて飛短流長という現象を数字や歴史的背景から分析すると、現代は噂が拡散しやすい環境が極限まで整備されていることがわかる。

ここで見落とせないのは、「SNSやスマホがこれからさらに進化し、拡散スピードも指数関数的に伸びる可能性がある」という点だ。

既にメタバースやVR空間を活用したSNSも登場しており、現実と仮想世界の垣根が曖昧になっていくことで、噂がリアルタイムに国境を越えて広がる未来が近づいている。

さらにAI技術の発展も無視できない。自動生成されるコンテンツ(UGC:User Generated Content)だけでなく、ChatGPTなどの大規模言語モデルによって、誰もが容易に文章や画像を生成し、瞬時に拡散できる時代に突入している。

AIが生み出すコンテンツは膨大なデータベースをもとにしているが、そこに人間の恣意的なプロンプトが加わることで、不正確な情報やプロパガンダが高速拡散するリスクも生まれる。

つまり「飛短流長」は今後さらに新しい形で加速し、社会のあらゆる領域に影響を及ぼすことが想定される。

しかし一方で、この高速化した情報環境を逆手に取り、自社のブランドを効果的に浸透させることも可能だ。

正しい情報をタイミングよく発信し、それをユーザーが自発的に拡散する仕組みを構築できれば、低コストかつ高効率で影響力を広げることができる。

それは個人のブランディングにおいても同様であり、誰もが「個人メディア」として発信力を高められる時代になったといえる。

まとめ

飛短流長という現象は、あらゆる時代と場所で姿を変えながら続いてきた。

インターネットとスマホの登場、そしてSNSの爆発的普及によって、そのスピードは10年前や20年前とは比べものにならないほど加速している。

実際のデータを見ても、SNS上で数時間以内に数万から数十万、あるいは数百万規模のユーザーへと情報が伝播している事例は枚挙にいとまがない。

噂が加速することで企業や個人の評判が一夜で変わることもあれば、逆に一度評判が落ちると再建に莫大なコストがかかるケースもある。

しかし、その特性を理解し、正確な情報や価値あるコンテンツをタイミングよく発信していけば、多くの人々の心を掴むチャンスも大きい。

つまり「飛短流長」はリスクであると同時に大きなチャンスでもある。

インターネットが進化し、スマホやSNSが普及したことで情報伝達のハードルが下がり、あらゆる人が発信者になれる環境が整った。

だからこそ、正確かつ魅力的な発信をし続けることが大切だと考えている。

そのためには日々の情報収集や学習、そしてモチベーションが欠かせない。

私がこうしてブログを書き続けているのも、読んでくれる人が新しい知識や価値観を身につけ、毎日をもっと楽しく、やりがいを感じながら生きていくきっかけになればという想いがあるからだ。

 

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