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2023年2月26日 投稿:swing16o

ロシアによるウクライナ侵攻から1年経った今

死屍累累(ししるいるい)
→ 死体があたり一面に重なりあっているさま。

ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めて、1年という月日が流れた。

対岸の火事だという人がほとんどだと思うし、かくいう私もそこまで気にしながら日々を過ごしているのかと問われると答えは否だろう。

開戦当初は3ヶ月程度でロシアがウクライナを制圧するという声が大きかったように思うが、あっという間に1年が経ったように思う。

ということで、改めてロシアとウクライナの今について書いてみようと思う。

プーチン大統領の当初の目的は?

そもそも、なぜロシアのプーチン大統領はウクライナへ軍事侵攻を決めたのか。

2022年2月24日にウクライナの北部、南部、東部へ兵を派遣したプーチン大統領は、目標はウクライナの非軍事化と非ナチス化だと自国民に説明した。

英文だが、全文は下記のとおりなので、興味がある人は読んでみるといいだろう。

Address by the President of the Russian Federation

プーチン大統領によると、ウクライナ政府に8年にわたり威圧され、ジェノサイド、つまり大量虐殺行為をくり返されてきた現地の人々を保護することがこの度の軍事侵攻の目的だということだ。

他にも、NATO(北大西洋条約機構)がウクライナに足掛かりを得るのを防ぐことも目的の1つに挙げていた。

さらに、ウクライナの中立確保も目的に付け加えられた。

また、プーチン大統領は公言こそしていないが、ロシアにとって特に優先順位が高かったのは、ウクライナ国民が選挙で選んだ大統領を失脚させることだったと言われている。

その大統領の名前は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻のニュースで誰もが一度は聞いたことがあるはずのウォロディミル・ゼレンスキー大統領だ。

実際、ゼレンスキー大統領は、敵は私を標的その1に、家族を標的その2に指定したと述べている。

また、ゼレンスキー大統領顧問は、ロシア軍が2度に渡って首都キーウの大統領府を急襲しようとしたと主張している。

プーチン大統領の主張に対する見解

上述した、プーチン大統領のウクライナ政府に8年にわたり威圧され、ジェノサイド、つまり大量虐殺行為をくり返してきたという主張やその他の目的については、いずれも客観的証拠の裏付けはない。

ところが、ロシア国営リア・ノヴォスチ通信は2022年4月初めの論考で、非ナチス化とはすなわち、否応なく非ウクライナ化でもあると書いている。

つまり、ロシアの目標は、現代ウクライナ国家の抹消だというわけだ。

また、プーチン大統領は、もう何年も前からウクライナについて、独自の国家ではないと主張してきた。

2021年7月に発表した長文では、9世紀末に遡り、ロシア人とウクライナ人は1つの民だったと論じている。

ウクライナへの軍事侵攻1ヶ月後のプーチン大統領

そんなこんなでウクライナへの軍事侵攻を開始したプーチン大統領だが、侵攻開始から1ヶ月経つころには、ロシアの戦役が予定どおりに進んでいないのは誰の目から見ても明らかだった。

すると、プーチン大統領は第一段階の完了を宣言し、その野望を劇的に縮小してみせた。

ロシア軍はキーウとチェルニヒウの周辺から後退し、北東部で勢力を再編したのである。

そして、ウクライナへの軍事侵攻の主な目標は、ドンバス解放にすり替えられた。

ドンバスとは、ウクライナの東部ルハンスクとドネツク両州にまたがる工業地帯を漠然と指しており、そのエリアの制圧が目標になったというわけだ。

さらにロシア軍は2022年9月初めには北東部ハルキウ州から、2022年11月には南部ヘルソンからも撤退した。

ロシア軍の目標は変わっていないものの、ほとんど実現できずにいる中、2022年9月21日にプーチン大統領は、国民向けのビデオ演説で部分的な動員令の発動を宣言した。

と同時に、ロシア国防省は、軍務経験がある予備役約30万人を段階的に招集すると明らかにしたのである。

ところが、この発表がされると、ウクライナへの軍事侵攻が戦争だという概念に昇格し、いよいよ危険が身近に迫ったロシア人の多くが次々と国を逃るという事態になった。

劣勢に立たされたプーチン大統領は、2022年9月30日、ウクライナ東部と南部の4州を一方的にロシアに併合すると宣言した。

東部のルハンスクとドネツク、そして南部のヘルソンとザポリッジャの各州がその対象だったが、いずれもロシアの支配は部分的にしか及んでいなかった。

それでもプーチン大統領は、4州は永遠にロシアだと宣言したのである。

2023年2月時点の現況

ウクライナ軍の攻勢により、2023年2月現在、長さ850キロにわたる戦線で消耗戦が続いている。

ロシア側の勝利は珍しく、勝っても小規模になっている。

あっという間に終わるはずの予定だった軍事作戦が、すっかり長期化した戦争となったのは誰もが感じているところだろう。

そして、西側諸国の首脳は、ウクライナがこの戦争に勝たなくてはならないと意を固めているのが現状だ。

ウクライナの中立確保など、とっくに現実的ではなくなっている。

実際、プーチン大統領は2022年12月に、長引くプロセスになるかもしれないと述べつつ、軍事紛争の円盤を回し続けることがロシアの目標ではなく、戦いを終わらせることこそ目標だと述べている。

一方で、少なからず、プーチン大統領が主張できる成果もあるという見方もある。

それは、ロシアからクリミアまで陸路を確保したことだ。

2014年にロシアが違法に併合したクリミア半島まで、以前はケルチ海峡にかけた橋を利用しなくてはいけなかったが、2023年2月時点では陸路でクリミアに往来できるようになった。

つまり、ウクライナ南部のマリウポリやメリトポリといった都市を制圧したことで、ロシアはこの陸路を確保したというわけだ。

プーチン大統領はロシアにとって重要な結果だと主張し、ケルチ海峡内のアゾフ海はロシアの内海になったと宣言している。

また、ロシア帝国のピョートル大帝にさえできなかったことだとも主張している。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻は失敗なのか?

とはいえ、やはり大方の見解は、ロシアのウクライナへの軍事侵攻は失敗だったというものだろう。

ロシアが一方的に引き起こしたこの戦争は、ロシア自らとその相手となった国に悲惨な流血の事態をもたらしたといえる。

マリウポリなどの都市は廃墟と化し、キーウ近郊ブチャなどでは民間人に対する戦争犯罪の詳細が明らかになっている。

こうした事態を受けて、ロシア国家そのものが国家的なジェノサイド、つまり民族虐殺を画策あるいは扇動したと糾弾する第三者報告も出ている。

そして、ロシアは西側に対して、ウクライナに武器を提供しないように再三警告しているにも関わらず、西側は構わずウクライナを支援し続けている。

むしろ、必要な限りずっと支援し続けると欧米諸国はくり返しているのが現状だ。

その結果、ウクライナは攻撃力に優れたハイマースという高機動ロケット砲システムを入手した。

さらに、ドイツ製のレオパルト2戦車の供与約束もとりつけている。

ただ、この戦争はまだ終わっておらず、ドンバスをめぐる攻防は続く。

ロシアは2023年に入って、東部ソレダルの街を制圧すると、東部バフムートも抑えようとしている。

バフムートを掌握し、さらに西の主要都市への足がかりにして、2022年秋に失った地域を再び奪おうという目論見を立てている。

プーチン大統領が2022年4月に併合を宣言した4州全てを支配しようとするはずだと見ており、そこにはドンバス地域だけでなく、主要都市ザポリッジャも含まれているという。

必要あれば、プーチン大統領は動員対象を拡大し、戦争を引き延ばすことも可能だ。

また、忘れてはいけないのは、ロシアは核保有国だということだ。

プーチン大統領は必要に迫られると核兵器を使ってロシアを守り、すでに占領したウクライナの領土にしがみつく用意があるという姿勢を示している。

事実、2022年9月にプーチン大統領は、下記のように警告している。

ロシアと国民を守るため、我々は持てるあらゆる手段を使う。これは、はったりではない。

プーチン大統領の現在地

70歳になったプーチン大統領は、ロシア軍の失敗から距離を置こうとしている。

ところが、少なくともロシア国外では、その権威は完全に失墜しており、大統領が国外に出ることはほとんどなくなった。

国内では、ロシア経済は表向きは西側の相次ぐ経済制裁にも耐えたかのように見えるが、財政赤字は急拡大し、主要産業ともいえる石油と天然ガスの売上は激減している。

こうした中でロシア国民がどれだけプーチン大統領を支持しているのか、実態を把握するのは極めて困難な状況だ。

というのも、ロシアで政府に異を唱えるのは、とても危険な行為だ。

ロシア軍に関する偽情報を拡めたとされれば、誰でも刑務所に入れられる。

ロシア政府に反対しようとする人は国外に逃れるか、あるいは野党指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏のように投獄されているのが実態だ。

まとめ

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した当初は連日メディアも大きく取り上げていたこともあり、注目度が高かったが、1年経った今は、まだやってるのという感じの人も多いだろう。
その気持ちはわからなくもないが、とはいえ、2023年2月現在に起きている事実であるということもしっかりと受け止めるべきだろう。
少なからず、エネルギーや物資の価格高騰に繋がっている部分もあり、今後どうなっていくのか定期的に追いかけていこうと思っている。

 

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植田 振一郎 Twitter

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