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2023年2月7日 投稿:swing16o

2つの物差しがある食料自給率と品目別の食料自給率

自給自足(じきゅうじそく)
→ 自分で自分に供給する意から、必要なものを自分でまかない足りるようにすること。

自給自足という言葉と切り離せないのが、食料自給率というワードだろう。

そして、日本の食料自給率と聞くと、低いと思っている人が世の中の大半なのではないだろうか。

ただ、この食料自給率という言葉は、2つの意味で使われているということは、あまり知られていない。

ということで、まずは、この食料自給率という言葉をしっかりと理解して、実際の野菜の生産収穫量がどんなものなのかを紹介していこう。

今さら聞けない食料自給率ってなぁに?

食料自給率とは、その名のとおり、我々が食べる食料を自給している割合のことをいう。

自給している割合という点がいまいちピンと来ないと思うが、日本全体に供給された食料に占める日本で生産した食料の割合のことだ。

具体的にいうと、食料には、米、麦、肉、魚介類、野菜、果物などがある。

つまり、これらを品目毎に分類して、国内で生産している量や輸入している量を把握し、自給率を計算して算出しているのが、食料自給率というわけだ。

参考までに、食料には日本人が口にする全ての食べ物が含まる。

例えば、スーパーや商店等で売られている生鮮品や加工食品、レストランなど外食の場面で使用される食材、輸入される原料や加工食品、お菓子類やジュースといった具合いだ。

つまり、日本で流通している全ての食料を対象にしている点には留意が必要だ。

ただし、お酒だけは嗜好品なので対象外とし、食料自給率の計算に含まれていないという点も知っておくといいだろう。

日本酒の消費が増えると、その原料である米の消費が増えて国内の生産基盤の強化には繋がるというロジックが導き出されそうだが、自給率には反映されないということだ。

2種類ある食料自給率

実際に食料自給率を算出する際に最も簡便なのは、生産量や輸入量に使われる重さを用いる方法、つまり重量ベースでの算出方法だ。

ところが、食料全体の自給率を算出する場合、米や麦、肉や魚介類、野菜や果実など全ての食料を足し合わせる必要が出てくる。

となると、重量を用いることでの弊害も生まれる。

例えば、米であれば玄米なのか、精米なのか、炊飯したご飯なのか、小麦であれば、原料の小麦なのか、小麦粉なのか、焼きあがったパンの重さなのか、品目毎に考え方が異なるというわけだ。

そのため、全ての食料を共通の物差しに換算し、足し合わせて計算する方法を用いることにしている。

その物差しが2つあるというわけだ。

カロリーベースの食料自給率

1つの物差しが、カロリーを基準とした食料自給率だ。

安全な食料の確保は、人が生きていくために欠かすことのできないものだということは誰しもが理解できるだろう。

この食料安全保障の観点から、最も基礎的な栄養価である熱量である、カロリーに着目したものが、カロリーベースの食料自給率というわけだ。

2019年度(令和元年度)のカロリーベースの食料自給率は、約38%となっている。

その根拠は、国民1人1日当たりに供給している全品目の熱量の合計、供給熱量が2,426kcal。

供給熱量に占める国産の熱量、国産熱量が918kcalなので、その割合は37.84%なので、約38%だというものだ。

生産額ベースの食料自給率

もう1つの物差しが、金額を基準とした食料自給率だ。

食料の生産、輸入、加工、流通、販売は経済活動であり、全てお金に換算することが可能だという考え方に基づいている。

つまり、経済活動を評価する観点から、生産額や輸入額を基に計算した自給率が、生産額ベースの食料自給率ということだ。

2019年度(令和元年度)の生産額ベースの食料自給率は、約66%となっている。

その根拠は、食料全体の供給に要する金額の合計である15.7兆円に占める国内生産額は10.3兆円なので、その割合は65.60%なので、約66%だというものだ。

2つの食料自給率の違い

上述したとおり、2つの食料自給率があるわけだが、約38%と約66%と大きく差が生まれてしまう。

その理由は、カロリーベースの食料自給率は、単位重量当たりのカロリーが高い、米、小麦や油脂類の影響が大きくなるからだ

一方で、生産額ベースの自給率は、単価の高い畜産物や野菜、魚介類の影響が大きくなるというわけだ。

また、総じて輸入品より国産品の方が高いので、国内生産額は高くなり、結果として生産額ベースの自給率はカロリーベースより高くなる。

なぜ、このように食料自給率において2つの基準が生まれたりするのかというと、その理由の1つには日本人の食生活が変わってきたことが挙げられるだろう。

上述したとおり、2019年度(令和元年度)カロリーベースの食料自給率は約38%だが、1965年度(昭和40年度)だと約73%になる。

食生活が変われば、当然生産するものや輸入するものに変化が生じる。

こういった変数を加味して、食料自給率というデータを捉えていく必要があるということだ。

品目別の食料自給率

それでは、生産量や輸入量に使われる重さを用いる方法、つまり重量ベースで、農林水産省が発表している2019年度(平成元年度)の品目別の食料自給率を紹介していこう。

参考数値として、約55年前の1965年度(昭和40年度)の国民1人1年あたりの消費量の変化も記載しておく。

  • 食料自給率:97%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:111.7kg(1965年度)→ 53.0kg

小麦

  • 食料自給率:16%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:29.0kg(1965年度)→ 32.3kg

牛肉

  • 食料自給率:35%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:1.5kg(1965年度)→ 6.5kg

豚肉

  • 食料自給率:49%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:3.0kg(1965年度)→ 12.8kg

鶏肉

  • 食料自給率:64%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:1.9kg(1965年度)→ 13.9kg

鶏卵

  • 食料自給率:96%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:11.3kg(1965年度)→ 17.5kg

牛乳・乳製品

  • 食料自給率:59%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:37.5kg(1965年度)→ 95.4kg

魚介類

  • 食料自給率:52%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:28.1kg(1965年度)→ 23.8kg

野菜

  • 食料自給率:79%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:108.1kg(1965年度)→ 90.0kg

果実

  • 食料自給率:38%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:28.5kg(1965年度)→ 34.2kg

大豆

  • 食料自給率:6%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:4.7kg(1965年度)→ 6.7kg

砂糖類

  • 食料自給率:34%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:18.7kg(1965年度)→ 17.9kg

油脂類

  • 食料自給率:13%
  • 国民1人1年あたり消費量の変化:6.3kg(1965年度)→ 14.4kg

食べ方の変化

約55年前の1965年度(昭和40年度)の国民1人1年あたり消費量を比べると、大きく食生活が変化していることは明確だ。

その背景には、第二次世界大戦の日本が急激な経済成長と共に生活様式も様々な変化があったことは誰もが想像がつくところだ。

ファミリーレストランやファストフードなどの外食形態の増加、スーパーやコンビニでの弁当やお総菜などの中食の普及、冷凍技術の進歩による加工食品の多様化など、多くの変数が生まれている。

このように生活様式の変化に合わせて、食べ方も大きく変わってきたという点も切り離せないだろう。

まとめ

食料自給率についてまとめてみたが、変数が多いので過去と現在を全体で捉えることが難しいというか、あまり意味のないことだということは理解してもらえたと思う。

それよりも、食生活や食べ方の変化によって、品目別にどういった変化が起きているのかを比較していくことの方が有意義だというわけだ。

また、単純に食料自給率が低いから国内回帰だとか農業に力を入れなければいけないといった極端な主張には疑問を覚えた方がいいということも理解できたと思う。

どの業界でも同じだが、ポジショントークと実態には乖離があるということも忘れてはいけない。

 

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植田 振一郎 Twitter

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