三綱五常(さんこうごじょう)
→ 3つの基本的な道徳と常に行うべき5つの道のこと。
三綱五常とは、三綱は君臣、父子、夫婦の道徳、五常は仁、義、礼、智、信の道義のことを意味している。
簡単にいうと、儒教における人として常に踏み行い、重んずべき道のことを指している。
万人に適用する言葉にするならば、モラルとかマナーといったところだろうか。
いずれにせよ、共通の目的というか目指すべきものが明確にあるというところが一致している概念ではないだろうか。
このことから、複数人以上で組織を形成していく場合には、共通の目的や目標が必要になることを示しているといえる。
そんな中、企業経営をしていく中で注目されているのが、Purpose(パーパス)だ。
ここ最近で耳にする機会が増えたという人も多いのではないだろうか。
ということで、Purpose(パーパス)を経営に取り入れたパーパス経営について書いていこうと思う。
今さら聞けないパーパス経営とは?
Purpose(パーパス)とは直訳すると目的だが、企業経営においては、自社の存在意義を明確化し、社会に与える価値を示すという意味で用いられる。
企業経営においてパーパスが求められる背景には様々な要因があるが、共通しているものをまとめると下記の3つの変化に集約される。
- 社会の変化:地球環境へ配慮した環境意識や社会貢献意欲の高まり
- 個人の変化:物資的な豊かさを追い求める意識からコトへの消費等への意識の変化
- 企業の変化:SDGsやESG関連投資に取組む企業の増加やビジネスモデルの変化
この3つの変化の中でも、最も大きな要因は社会の変化にあるといわれている。
つまり、社会や個人の変化に対して、企業としての存在意義を示すためにパーパス経営が注目され、導入する企業が増えているのである。
そして、企業の存在意義を示すことができるパーパスを定義すると下記のとおりとなる。
各々の企業が社会の中でなんのために存在しているのかに答えるもの
この定義の中で重要なキーワードは社会という言葉だ。
社会という捉え方は、地域社会、日本社会、あるいは地球社会によって捉え方が変わってくる。
環境変化が激しい中で、社会に対して企業の存在意義を示すことが、より重要になるというわけだ。
パーパスは企業規模を問うことはない。
グローバル企業だけでなく、地域に根差した中小企業こそが、その存在意義を示すということができるという点で重要なのである。
また、パーパスは、単に言葉として明確にするだけでなく、経営の全てに浸透させていく必要がある。
それから、利害関係者、つまりステークホルダーと繋がるための共通言語であり、メッセージでもある点も忘れてはいけない。
具体例を挙げると下記のとおりだ。
- SONY(ソニー):クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす
- NISSAN(日産):人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。
- AJINOMOTO(味の素):食と健康の課題解決
ミッション、ビジョン、バリューとパーパスの関係
こうやって書いていくと、とあるワードとの違いが気になる人も出てくるのではないだろうか。
それは、ミッション、ビジョン、バリューといったワードの定義との違いで、実際に混同されがちなところだ。
パーパスの定義は上述したとおりだが、そもそもは目的、意図、意思などの意味を持ち、そこから存在意義や志などの考え方に拡がった。
ということで、言葉による大きな違いはないとか明確に分ける必要もないという議論はあるのだが、それぞれの関係を説明していこう。
まず、パーパスだが、企業の基盤となる、なぜそれをというWhyを定義し、全てのベースにあるイメージだ。
そして、ビジョンは、5年後、10年後に実現したい状態としてのWhere、つまりどこにいくかを定義する。
そのビジョン実現に向けて、なにを成すべきかであるミッション、つまりなにをすべきかというWhatを定める。
最後に、日々どのように行動していくかのバリューだが、どのようにというHowを定めるという関係にある。
くり返しになるが、パーパスを企業経営の中心に置くことによって、それぞれの関係性が明確化される。
これによって、中期経営計画書や事業戦略等から、一貫性のあるメッセージを発信することが可能になるというわけだ。
パーパスの定め方
ということで、パーパスはどうやって定めていくのかについて紹介していこう。
結論から言うと、パーパスはつくるものではなく発掘するものだということだ。
パーパスが社会と企業の関係性を表したものという位置づけから、通常のブランディングやマーケティングとは異なる目線が必要だ。
消費者や株主だけでなく、企業に関わる幅広いステークホルダーに向けて発信していくことが重要になるわけだ。
また、受け手側にも発信したパーパスを理解してもらう必要があるため、共感、そして社会へ浸透し共鳴を呼ぶようになっていくことが望まれる。
そのステップは下記のとおりとなる。
1)発掘
上述したとおり、パーパスは策定というよりも発掘するという感覚で深堀りしていくことが重要になる。
他の企業でも通用するような借り物の言葉ではなく、自社の歴史や社風、これまでの取組みといったところを振り返りながら、パーパスを発掘していく。
2)共感
パーパスをただ暗記して、全員が暗唱できるようになることがゴールではない。
関係者からの共感も必要になるため、まずは社員個々人のパーパスとの重なりを確認し、企業パーパスに共感してもらうことが重要になる。
3)実装
パーパスを経営に織り交ぜていくことを実装という。
パーパスを経営の基軸にして、各事業戦略にパーパスを織り交ぜて実装させて統一されたメッセージを発信していく。
4)共鳴
パーパスを実装したメッセージは、単に共感を呼ぶだけなく、それが受け手のパーパスと響き合い、共鳴していく状態になる。
パーパスを経営に実装する方法
定めたパーパスは掲げるだけでは意味がなく、経営に実装していく必要がある。
これがいわゆる、パーパス経営というもので、パーパスを軸に戦略を策定し、各事業部においてもパーパスを意識して事業展開させていくことが求められるわけだ。
多様な視点や関係性の範囲を捉えてパーパスを経営に絡ませていくことが重要だということは理解できるだろう。
ただし、あまりにかけ離れていると絵に描いた餅になりかねない。
そこで、自社へ実装する際に切り口となるフレームを紹介していこう。
パーパス実装に向けた6つの領域がある。
- 経営のリーダーシップ:パーパスに基づく意思決定
- 事業およびサービス:提供している価値を再定義
- 人および組織:自らのパーパスも主体的に発揮
- 構造およびシステム:チャネル、業務フローへ組込み
- 慣習およびマインドセット:意識させ習慣へ、習慣から文化
- 社外との共創:外部への発信や地域連携
この6つの領域に対して、パーパスを経営の軸に置く前の現状から、実装され関係者に浸透した理想の状態がどうなるかを描いていくといい。
そのときのポイントは、パーパスの軸を通した理想の状態を明確に描き切ることだ。
その理想の状態に向けて、各領域での取組み事項やメッセージなどが具体化していくというイメージだ。
パーパス実装後に期待される3つの進化
パーパス経営に実装していくことで期待される成果は、3つの進化だといわれている。
1)従来型経営からの新化
1つ目の進化は、新しい経営への新化だ。
経営層だけでなく、従業員や社会を巻き込んだ経営が期待できる。
パーパスを基軸にした経営を行っていくと、社内から共感が生まれ、事業戦略や社内会議においてパーパスが意識される。
そして、社会からも共感、共鳴されると、それに応えようと経営努力がさらに進み、経営がより高度化していくのである。
2)自律型人材への進化
2つ目の進化は、社員が自立型人材から自律型人材へと進化していくことだ。
このとき、個のパーパ スとの共感ステップを経ていることが大切なポイントになる。
組織のパーパスと個のパーパスとの重なりがあるからこそ実現するというわけだ。
3)社会との関係の深化
3つ目の進化は、社会との関係の深化だ。
企業が発信するパーパス、そしてステークホルダーに届くメッセージとしての取組みが製品やサービスの購買行動だけでなく、社会での存在価値として評価されていくのである。
まとめ
以上、パーパスおよびパーパス経営について解説してきたが、いかがだろうか。
こういった共有概念のようなものは、私は個人的にはあまり興味のない分野だし、とどのつまり必要ないものとすら思っている部分がどこかにある。
けれども、やはり同じ目線を向くというときに人や関係者が増えれば増えるほどに統一性がなくなり、船頭多くして船山に上るといった状況にもなりかねない。
あるいは、そもそも人が集まる状況にすらならないということだってあり得る。
そうならないためにも、一定のルールは必要なタイミングで決めるべきだということに対しては全く同感である。
ということで、パーパス経営の実装に興味がある人は是非参考にしていただきたい。
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