酒は百薬の長をベースにした新しいビジネスの形

2022-11-25 投稿: 植田 振一郎

採薪之憂(さいしんのうれい)
→ 病気になってタキギも採りに行けない意から、自分が病気を患っていることを謙遜していう言葉。

歳を重ねていくと、ちょっとした話題が健康の話になるというのは、私がまだ若者だというカテゴリにいたころからよく聞いていた話だ。

それが、いつの間にか自分たちも健康や美容の話が出てくる世代になったことを痛感する。

その内容は、疲れが取れにくくなったとか、筋肉痛が遅れてくるとか、健康診断で引っかかったとか、老けてきたことに対する対応策など、とにかくネガティブなものが多い。

そんな健康や美容に関する話題をするよりもポジティブな話の方がいい。

ということで、健康に関しては昔から酒は百薬の長というが、このことわざにまつわるポジティブな話題にスポットライトを当ててみようと思う。

CHOYA梅酒づくりの新たなEC戦略

お酒をたしなむという人の中には、梅酒を飲むという人も少なからずいるだろう。

そんな梅酒の中でも最上位のブランディングに成功しているのが、CHOYA(チョーヤ)ではないだろうか。

テレビCMなどで一度は見たことがあるという企業の1つだと思う。

そんな、CHOYA(チョーヤ)が社内ベンチャーとして2018年4月にスタートさせた新規事業がある。

それが、自宅でつくれる梅酒キットで、梅一粒から梅シロップや梅酒づくりが楽しめる体験型ショップの蝶矢だ。

2022年11月現在、直営店2店舗とECサイトの展開をしている。

事業が軌道に乗ったことを受け、2021年4月には、CHOYA shopsとして分社化しており、顧客の65%以上は20~30代、女性が全体の90%以上を占めるという。

そんな、梅体験専門店、蝶矢事業は、下記の2つの約束事のもと、誕生した。

  • 1人で事業を立ち上げること
  • 事業単体で収益を上げること

この新たな仕掛けはどのようにして生まれてきたのか、要点をまとめていこうと思う。

新規事業が生まれた経緯

社内ベンチャーという考え方というか、新規事業を社内で起こそうとする動きはそんなに珍しいことではなく、多くの企業が取り込もうとしている。

けれども、既存の主軸になっているビジネスがある企業ほど、社内ベンチャーを起こすということは難しい傾向がある。

そもそも、起業しようという発想がある人が集まっている可能性が著しく低く、

新規事業の発起人は、上述した2021年4月に分社化したCHOYA shopsの現社長だ。

15年以上チョーヤ梅酒の工場で勤務していて、長年、次世代の若い人たちに梅の魅力を伝えていきたいと考えていたという。

そこで、実際に梅を使って梅シロップや梅酒をつくり、若い世代や梅に親しみのない外国人に日本の手作り文化を伝えていく場をつくれないかと、事業計画を書いて社長に直訴したそうだ。

こういった行動力のある人が社内にいることはとても強みだといえる。

というのも、事業計画を直訴したタイミングは、社内で特に新規事業を公募していたわけではなかったときだという。

それにも関わらず、直訴するということは、よっぽど好きだしやってみたいという情熱を感じることができる。

そんな人を新規事業で起用しない会社は伸びるはずもないし、もし断られていたとしたら辞めるべきだっただろう。

ということで、先に述べたの2つの約束事を守るという前提で、2018年に京都に1号店をオープンしたという経緯だ。

梅体験専門店の蝶矢が軌道に乗るまで

2018年に京都に1号店をオープンしてからは、あっという間に収益を上げ、2020年には神奈川の鎌倉に2号店をオープンさせた。

2020年といえば、新型コロナウイルスによるパンデミックで様々な業界にダメージが見られた年だ。

そのタイミングで、ECサイトもオープンしているのだが、2022年現在では、全体の売上の15%ほどまでに成長しているという。

と簡単に書いてみたが、ここにたどり着くまで、ECサイトやSNSアカウントの開設、広報PR、マーケティング施策など事業に関わるものは、約束どおり全て1人で行ったそうだ。

全く経験がなかったにも関わらず、軌道に乗せることができた理由を冷静に分析している。

スピード重視

くり返しになるが、事業開始から2年ほどたった2020年は新型コロナウイルスによるパンデミックが大いに影響を与えた年だ。

2店舗目のオープンを控えるなど、順調に事業規模を拡大していた矢先、店舗は休業を余儀なくされた。

とはいえ、従業員の雇用は守らないといけないとなった際に、即座にECサイトの開設を決めたという。

休業している店舗を出荷拠点として商品を発送するという構想だったのだが、サイト制作のノウハウはない。

そんなときに使ったのが、Shopifyだ。

CHOYA shopsにはメール、LINE、Instagramなどの各種SNSでつながった実店舗の顧客基盤がある。

加えて、ECサイトオープン時にプレスリリースを発信した。

こうして、コロナ禍のバズワードになった、おうち時間に梅シロップや梅酒づくりを楽しみたいという潜在顧客の目にも留まり、EC売り上げを順調に伸ばしていったのである。

その後、2ヶ月ほどして実店舗の営業を再開すると、ECサイトはいったん閉鎖した。

ただ、テストローンチ時点である程度の受注量が見込めたことにより、そこから約半年かけて、ECサイトの本ローンチに向けて体制を整えることになったというフローだ。

Shopifyアプリの活用

ECサイトを本ローンチしたのは、2021年1月だ。

テストローンチ時は実店舗から商品を発送していたが、外部に物流拠点を構えて本格展開に備えた。

そこで選ばれたのが、Shopifyアプリだ。

そして、2022年11月現在利用しているアプリのうち、特に売り上げへの貢献度合いが大きいのが、次の3つだ。

  • 配送日時指定.amp
  • Product Recommendation Quiz(プロダクト・レコメンデーション・クイズ)
  • Klaviyo(クラヴィヨ)

それぞれ簡単に説明すると、配送日時の自動設定ができて、組み合わせのレコメンドをしてくれて、顧客に対してステップメールを配信するという仕組みを整えているというわけだ。

オンボーディング

オンボーディングとは、新しい仲間の順応を促進する取り組みを指す言葉だ。

購入の入口が実店舗であれECであれ、繰り返し梅シロップや梅酒をつくりたいと思ってもらうための施策が重要になるということだ。

つまり、ユーザが手作りするときに失敗しがちなポイントを回避し、おいしい梅シロップや梅酒が完成したという、成功体験を積んでもらうことが重要になるというわけだ。

そこでCHOYA shopsは、ShopifyアプリのKlaviyo(クラヴィヨ)を活用して、完成までの間、週に2回ほど、つくり方のポイントを案内するサポートメールを配信している。

週に2回案内するメールで、先回りしてメールで失敗要因となるポイントを伝えることで、成功体験に至るサポートを行っているのである。

個別に質問がある場合には、LINEアカウントを通じて今の梅酒の状態を写真で送ってもらい、アドバイスを送るというフローになっている。

こうした細かなサポートにより、現在リピート率は35%程度となっていて、今後はリピート率を50%にまで引き上げることが目標だという。

PR戦略

CHOYA shopsでは、Instagram、Facebook、Twitter、TikTokという4つのSNSを活用している。

4つのうち、最もECサイトの来訪に寄与しているのが、Instagramだ。

フィード投稿は、私たちのブランドのコンセプトを伝える、いわば雑誌のような役割として使っている。

そして、ストーリーズはどちらかというと、数秒のコマーシャルのような宣伝効果を目指しているという使い分けを行っている。

また、Twitterに関しては口コミなどの拡散狙い、Facebookは広告配信時に必要となるためにアカウントを開設しているという位置づけだ。

それから、TikTokにも力を入れ始めている。

まとめ

順調に拡大している、CHOYA shopsのECサイトだが、まだまだ道半ばということで、今後のEC運営における目標は大きく2つある。

1つ目はECでの売上比率15%を2025年までに40%に引き上げることで、もう1つは体験価値の向上だ。

こうして振り返ってみると、確実に現代社会のマーケティングでやるべきことを実直にやっていて、そこにはコンテンツが重要になるという王道のパターンだともいえる。

そのコンテンツが成功体験ということで、成果を出すための近道はなく、ユーザ目線で1つずつしっかりと形をつくっていくことが、いかに大切かがよくわかる事例だ。

そして、この事例は他業種であっても当てはめることができる部分も大きいはずだ。

 

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