豪放磊落(ごうほうらいらく)
→ 細かいことににこだわらない大らかなたとえ。
私と仕事をしたことがある人ならわかると思うが、私は細かい。
というよりも、これはもう仕方のないことだと思うが、どうしても細かいところまで自然と目がいってしまう。
とはいえ、常に細かいところばかり気にしているわけではない。
むしろ、大局を見ているからこそ細かいところまでわかるというのが私の主張である。
木を見て森を見ずでは経営者としては失格で、まずは細かいことにこだわらずに大きく構えるという姿勢は今も昔も変わらない。
このブログを書き続けているのもその一環であって、自分の興味があったけれども、今まで触れる機会がなかったもののインプットとアウトプットをする場だと割り切っている。
ということで、今回も一度は触れておきたかったテーマを書いていくことにする。
人類と感染症の戦いの歴史
未だに連日のように新型コロナウイルスの感染者数についての報道がされている。
私にとってはもはやどうでもいいと割り切っているものなのだが、人によっては未だに過剰なくらい感染対策をしているのが不思議で仕方ない。
正確な情報と的確な判断ができれば、もっと息苦しくない生活が送れるのに、なぜ無理に我慢をしようとするのか理解に苦しむというのが本音だ。
だからといって、そういった一定数の人が現れるのも理解できないわけではない。
ただただ不安なのがその理由なのだが、なぜ不安になるのかが重要だ。
その答えは、くり返しになるが正確な情報を入手できないこと、故に的確な判断が自分でできないからである。
そして、そのことは今に始まったことではなく、人類と感染症の戦いの歴史は長い。
史実に残っているもので、8世紀に遡る。
当時の主役になったのが、天然痘だ。
その後、ペストやコレラといった名前は聞いたことのある感染症が世界中で猛威を振るうわけだ。
転機が訪れたのは、19世紀後半で、今までは目に見えなかった敵の姿を発見するようになる。
それから、細菌を退治する抗生物質の発見がされ、ウイルス対策のワクチン開発が加速していくのである。
感染症の歴史
天然痘
病原体は、オルソポックス属のウイルスで、感染経路は感染者からの飛沫感染、8世紀に世界中で流行した感染症だ。
その症状と特徴は下記のとおりだ。
- 水疱症の発疹ができる
- 人にのみ感染
- 人類が唯一根絶に成功した感染症
日本でも奈良時代に流行し、737年平城京で政権を握っていた藤原氏の4兄弟が死亡するなど、日本社会が大混乱した。
当時は病気の原因もわからず、仏に祈るしか術がなかった。
そのため、日本各地に国分寺を建立し、現代では奈良の大仏として知られる東大寺の大仏が建てられたのもこのためだ。
その後、1796年にイギリスの医学者であるエドワード・ジェンナーが天然痘の予防接種である、種痘法(しゅとうほう)を完成させる。
この種痘法が世界中に拡がり、1977年にソマリアでの感染者を最後に1979年にWHO(世界保健機関)が、天然痘の根絶を宣言している。
ペスト
病原体は、細菌のペスト菌で、感染経路はノミを介して、あるいは感染者からの飛沫感染、14世紀にヨーロッパを中心に流行した感染症だ。
その症状と特徴は下記のとおりだ。
- 全身が黒いあざだらけになる
- 黒死病と呼ばれた
- 中世ヨーロッパを震撼させた感染症
- 大規模な流行は1910年ごろに終わった
1334年に中国の杭州でペストと見られる感染症が流行し、大量の死者が出たことに端を発している。
1347年にはイタリアおよびシチリア島に上陸し、1348年〜14世紀末までヨーロッパ全域で定期的に流行をくり返した。
その原因は、毛皮についたノミが媒介したといわれている。
中世ヨーロッパを震撼させたこの感染症は、当時、1億人程度いたヨーロッパの人口の約3割に当たる、3,000万人が死亡するというものだった。
ペストも対応する術がなく、罪に対する神の罰だとされていた。
その後、20世紀に入るとようやく克服ができるようになる。
1894年に細菌学者の北里柴三郎とフランスの医師であるアレクサンドル・エルサンがそれぞれペスト菌を発見した。
1987年にユダヤ人医師のヴァルデーマール・ハフキンがワクチンを開発すると、1910年ごろにペストの大規模な流行は終了した。
コレラ
病原体は、細菌のコレラ菌で、感染経路は汚染された飲料水、19世紀に世界中で流行した感染症だ。
その症状と特徴は下記のとおりだ。
- 激しい下痢や嘔吐に苦しむ
- 何度もパンデミックが起こった
- 現代でもアフリカや東南アジアで発生している
コレラは過去に6回もパンデミックが起きている。
- 1817〜1823年:ネパール、東南アジア、中国、ロシア、アフリカ、日本で流行
- 1826〜1837年:アメリカ、ヨーロッパ、エジプトで流行
- 1840〜1860年:ヨーロッパ、日本(安政コレラ)で流行
- 1863〜1879年:世界中で流行
- 1881〜1896年:世界中で流行
- 1899〜1923年:世界中で流行
いずれもインドで発生しており、死者の合計は数百万人におよぶ感染症だ。
1820年代の終わりごろに、ロシア、フランス、イギリスの医師たちがコレラの研究に着手するのだが、解明はできなかった。
予防策としては、寝室のドアを明けて寝る、タバコや大麻を吸う、ゴム靴を履くといった情報が飛び交い、冷静に考えるとなんの根拠もないことに気づかされる。
それほどまでに人類をパニックに陥れる感染症だったともいえるわけだ。
そんなコレラだが、1854年にイギリスの医師であるジョン・スノウが死者が感染者の分布図から感染源を井戸水だと特定した。
また、イタリアの医師であるフィリッポ・パチーニがコレラ菌を発見する。
だが、これは当初は病原体を認識されることなく、30年後の1884年にドイツの医師であるロベルト・コッホがコレラ菌が病原体であることを証明した。
こうして、下水道の整備、抗生物質、経口補水液の普及が進み、現代の先進国ではコレラはほとんど姿を消した。
とはいえ、アフリカなどの途上国では現在も収束しておらず、7度目のパンデミックが起きていることは忘れてはいけない事実だ。
結核
病原体は、細菌の結核菌で、感染経路は空気感染、18〜19世紀に欧米や日本で流行した感染症だ。
その症状と特徴は下記のとおりだ。
- 昭和初期まで日本で大流行した
- 世界中でまだ感染者数が多い
- 耐性菌の出現が問題となっている
昭和初期まで日本で大流行したと書いたとおり、国を滅ぼしかねない亡国病として恐れられていた。
石川啄木、正岡子規、樋口一葉といった多くの文学者もその犠牲になっている。
1882年にコレラ菌も発見したドイツの医師であるロベルト・コッホが結核菌を発見し、20世紀初頭にワクチンが開発されている。
1944年には結核菌に効果のある抗生物質である、ストレプトマイシンが発見され、日本でも1949年から生産が開始された。
栄養状態の改善も大きく寄与し、日本での死亡率は大幅に減少している。
一方で、途上国を中心に未だに患者数は多く、耐性菌の存在など新たな問題も出てきている感染症である。
HIV
病原体は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)で、感染経路は性交渉、注射器の共用などによる血液感染、母子感染、20世紀に世界中で流行した感染症だ。
その症状と特徴は下記のとおりだ。
- チンパンジーに感染する
- アフリカから世界へ伝染した
- 最初に治療薬を開発したのは日本人
HIVは1910〜1950年にチンパンジーから人に感染したといわれている。
1959年に初めてコンゴ民主共和国の男性からHIVウイルスを検出した。
その後、アフリカでは1960年代までに約200人の感染者がいた可能性があるとされているが、世界ではあまり知られていなかった。
1960年ごろからコンゴ民主共和国や西アフリカのフランス語圏だった国々が独立し、中南米のハイチに約4,500人が移住した。
すると瞬く間に北米、南米、ヨーロッパ、オーストラリアなどに拡がり、1980年時点で10〜30万人の感染者がいたとされている。
1983年にウイルスが発見されると、1985年には日本のウイルス学者である満屋裕明がHIV治療薬のAZTの開発に成功した。
1987年にAZTが製品化されて依頼、多くの抗HIV薬が開発され死病ではなくなった。
エボラウイルス
病原体は、エボラウイルスで、感染経路は感染者の血液、体液、排泄物、唾液、20世紀にアフリカを中心に流行した感染症だ。
その症状と特徴は下記のとおりだ。
- 致死率が約50%
- 1976年以降のアフリカで頻繁に発生
- 治療薬の実用化が急ピッチで進められている
1976年にアフリカの2ヶ国で同時発生した最強ウイルスがエボラウイルスだ。
スーダン南部(南スーダン)で1976年6月に綿工場で男性3人が感染すると、感染者数284人に対して死者数は151人と、その致死率は53.9%だ。
また、もう1ヶ国のザイール(コンゴ民主共和国)で1976年9月に感染者が現れると、感染者数318人に対して死者数は280人と、その致死率は驚異の88.1%を記録している。
その後、アフリカを中心に感染者数が多いため、世界的に治療薬の開発は進まない状況となっていた。
ところが、2014年に西アフリカから欧米にも定期的に流行するようになった。
これをきっかけに抗ウイルス薬やワクチンの開発が進められるようになり、2019年8月にはアメリカで2種類の新薬が臨床実験で9割の生存率を示している。
はやい実用化が期待されているところだ。
まとめ
他にも身近になっている感染症として、インフルエンザやコロナウイルスがある。
これらについては多少の知識があるはずなので、ここでは割愛させてもらうが、新たな感染症が登場する可能性はいくらでもあるということだ。
そして、新型コロナウイルスが引き起こしたパンデミックが証明したとおり、一度こういった事態に陥ると人々はパニックになる。
また、いくら抗菌薬やワクチンを開発しても、それらに耐性を持つ細菌が新たに登場するということもしばしば起きている。
新型コロナウイルスの株が増え続けているのもまさにその典型例で、ウイルスも勝ち残っていくために必死なわけだ。
いずれにせよ、こういった感染症の歴史を知ることで、間違った知識を入れ込まないようにすることはできる。
これもよくいうことだが、知らないことは悪いことではないけれども、知らないことは損をするということに繋がるということをしっかりと理解していただきたい。
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