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2022年6月1日 投稿:swing16o

Googleが発表したなんとなく購入し続ける消費者の心理とは?

君子豹変(くんしひょうへん)
→ 立派な人は、過去の悪い行いをきちんとを改めるという意味。

自分自身の行動を改めることは、なかなか難しい。

ついないがしろにしてしまったり、今すぐに改める必要もないと思ってしまうものだ。

私自身も律している方だとは思うが、それを徹底しているかと問われると面と向かって首を縦に振ることは難しいかもしれない。

そんな中、Googleの日本法人が2022年3月に発表したというリポートを目にした。

これがなかなか興味深いものだったので、自分なりに因数分解して共有していこうと思う。

Googleが過去に発表してきたリポート

Googleは過去にも様々なデジタルマーケティングに関わるリポートを発表している。

例えば、スマホ世代の購入の選択がどう行われるかを解き明かすという、パルス消費やその選択がなされるまでの情報探索行動である、バタフライ・サーキットについてなどだ。

パルス消費

パルス消費とは、スマホを操作しているときに突発的に買いたい気持ちが高まり、商材を発見した瞬間に購入の意思を固めるという消費行動を意味している。

そして、パルス消費は普段購入しているような商品に対しても見られるので、衝動買いとは一線を画した消費行動だというのである。

消費行動の1つに、ジャーニー型消費行動がある。

ジャーニー型消費行動とは、興味や関心から比較検討、購入へと至る過程で、段階的に買いたい気持ちが醸成されていくという消費行動のことだ。

パルス消費の大きな特徴として、このジャーニー型消費行動の購入決定プロセスが当てはまらない点も挙げられている。

Googleによると、現代の人々は買う直前まで知らなかった名前の商品を購入するのにためらわなくなっているという。

また、ECサイトにアクセスした時点で具体的にどの商品を買うか決めていなかったり、スマホ閲覧中に偶然知った商品を購入することに躊躇しなくなっていることも指摘している。

Googleが2018年末に実施した最初の調査では、パルス発生後、ユーザはすぐに消費行動を起こすと考えられていた。

ところが、2020年1月に発表した2019年実施の調査結果によると、パルス発生の瞬間と実際の消費行動との間には、時間差が生じる場合があることがわかった。

つまり、欲しくなってもその瞬間は買わず、ずっと後になってから購入することもあるというのである。

となると、そもそも発生と同時に行動に直結するという定義のパルス消費自体の概念が崩れてしまうのではないかと思った人は勘が鋭い人だろう。

実は、パルス消費で重要な指標は、いつ買うかではないということがわかったのである。

一度発生したパルスは消滅することなく、ずっと脈を打ち続けているというのがポイントで、いつか消費行動が起きるその瞬間まで、ジッとユーザの心に潜んでいるというのだ。

それから、バルス消費について知る前に、消費者がどういった情報探索行動を経て買い物をしているのかについても調査している。

その結果、情報探索行動と最終的に購入した商材との関係性が希薄だったことがわかった。

マーケターは通常、消費者行動を認知 → 興味 → 比較検討 → 購入意向の順番で落とし込み、それぞれに施策を行う。

ところが、実際の消費者の行動は、商材の認知から購入決定まで順番通りに進むことはほとんどなかったというのだ。

多くの場合、情報探索行動が現れては消え、期間を置いてから思い出したように現れる。

そして情報を探索しているときには全く考えていなかった別の物を突発的に買ってしまうというのが、日本だけでなく世界的に行われているというのである。

この無秩序な情報探索、消費行動を解き明かす鍵がパルス消費だということだ。

まとめると、消費者が商材の購入に向けて順序立てて情報を探すということはないというこが大前提にあることを忘れてはいけない。

消費者は常に情報収集を続けながら、パルスが発生するタイミングを待っている。

しかも、一度パルスが発生してしまうと、それを覆すのは難しい。

スマホネイティブに向けたパルス消費時代のマーケティングは、パルス発生前が重要なのだ。

パルス発生のヒントは、下記の6つの直感センサーにあるとしている。

  • セーフティ(安心安全か)
  • フォー・ミー(自分に合っているか)
  • コストセーブ(お買い得か)
  • フォロー(評判はいいか)
  • アドベンチャー(興味をそそるか)
  • パワーセーブ(手軽に買えるか)

直感センサーは、買い物という行動に反応する根源的なセンサーであり、誰もが持っているものを指している。

多くの消費者はその商材を見たとき、言葉を超えた6つの感覚を受け取っていて、どのセンサーが大きく反応するかは商材、状況によって様々に変化するというのだ。

バタフライ・サーキット

パルス消費を掘り下げていくために、Googleが2019年末の調査を行った。

その結果、消費者に情報探索行動をとらせる複数の潜在的な動機が存在し、消費者はそれぞれの動機の間を揺れ動いているということがわかった。

この潜在的な動機を8つに分類した。

  • 気晴らしさせて(さぐる)
  • 学ばせて(さぐる)
  • みんなの教えて(さぐる)
  • にんまりさせて(さぐる)
  • 納得させて(かためる)
  • 解決させて(かためる)
  • 心づもりさせて(かためる)
  • 答え合わせさせて(かためる)

さらに、上記の8つの動機を気になった商材の情報を集めている状態である、さぐると、収集した情報を絞り込もうとしている状態、かためるの大きく2つに分けた。

このさぐるとかためるの状態だが、一般的にはさぐるの後でかためるに進むと思われがちだ。

ところが、実際は消費者はさぐるとかためるという2つのモードの間を、行きつ戻りつするような情報探索行動をとっているという。

こうした行動の構造を、蝶の形に例えて、バタフライ・サーキットと名付けたのである。

例えば、ハワイに新婚旅行をした人の検索遍歴を見てみると、旅行前はさぐるが多く、航空券を予約してからはかためる検索が増えているのが分かる。

ただし、さぐるに含まれる検索ワードが減っているわけではないことに注意しないといけない。

それから、1つのバタフライ・サーキットが完了するタイミングで、関連する次のバタフライ・サーキットが発生することも多くあったという。

旅に対する情報探査の過程で、美白や日傘といった検索ワードにした新しいバタフライ・サーキットが始まったというのだ。

そして、Googleではどの程度の消費行動がバタフライ・サーキットの結果として起きているのか、定量調査も実施している。

その結果、従来型の認知 → 興味 → 比較検討 → 購入意向といった段階を踏む従来型の消費行動をとった消費者は比較的高齢だったことがわかった。

さらに、情報探索行動の手段がスマートフォンではなくパソコンだという。

つまり、バタフライ・サーキットを起こさない人たちは、情報探索の目的が、知らないことを調べるにほぼ限定されるのである。

この結果は、まだ2~3割の消費者に対しては従来型の広告が効くという証明になっている。

一方で、7~8割の消費者には別の広告の打ち方を模索すべき時代に突入したということも明確になった。

とはいえ、こうした一見すると無作為に思える情報探索行動にも、一定の法則が存在するという。

バタフライ・サーキットの特性を理解すれば、消費者に対して有効なレコメンドを提示しやすくなるのだ。

  1. バタフライ・サーキットは並行して複数のカテゴリーで起こる
  2. バタフライ・サーキットが完了しようとするとき、それに関連した別のバタフライ・サーキットが始まる
  3. 消費者がその商品やサービスに対してどのような感情を持っているかによって違う
  4. バタフライ・サーキットを完了させると思わぬ達成感が得られ、その瞬間にその商品やカテゴリーを少し好きになる
  5. 別の商品を購入した場合は、購買行動の過程で当初考えていた商品に関連してネガティブな体験があった可能性がある

この5つの特徴をしっかり捉えることで、レコメンド能力が上がるというのである。

オンラインショッピングの7~8割はスマホを起点に発生しており、それは面白い情報をなんとなく探すという暇潰しから始まる。

当初は特定の商材を買う意識はなく、直感に訴えかけてきた商材を購入するという流れがあるので、それを踏まえたマーケティングを考えていく必要があるのだ。

なんとなく購入し続ける消費者の心理

ここでようやく冒頭の2022年3月に発表したGoogleのレポートの内容についてだ。

今回Googleが着目したのは、特にこだわりがあるわけではないにもかかわらず、特定の商品をなんとなく購入し続ける生活者の心理だ。

1回の購入ではなく継続購入の心理を知ることで、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目標としたマーケティング施策を打ち出すことに寄与する。

まずGoogleが着目したのは、初回購入時と継続購入時での心理や行動の違いだ。

継続購入している物でも、初めてその商品を手に取ったときにはなにかしらのきっかけや、事前の情報収集プロセスがあったはずだ。

そうした仮説を基に調査分析を行った結果、わかったことがある。

自信がないまま商品を初回購入する人もいる一方で、初回購入時、つまりまだその商品を実際には利用したことがない状態でも、自信を持って購入する人がいるということだ。

直感的な買い物行動が増えている現代において、継続購入に至るまでの鍵として、商品選択時の自信の強度を肯定度と名付けた。

肯定度は、直感で選んだ商品やサービスに関する情報を集め、本当にこれでいいかを再確認することで高まっていく。

言い換えると、商品選択への自信が強まっていく。

重要なのは、肯定度が高いと購入後の商品への満足度が上がり、再購入の意向も強くなるということだ。

では、継続購入を促進する肯定度を高めるには、企業はどのようなアプローチを考えることができるのか。

そのためには、まずより肯定度を高める情報探索行動の特徴を知っておく必要がある。

そして、前提として言えるのは、生活者が自発的に探した情報は、意図せずに触れる情報よりも肯定度を高めるということだ。

肯定度を高める情報探索の特徴として、3点が挙げられるという。

  • 自分が求める価値を軸に検索する
  • あえてネガティブな情報を検索する
  • 頼れる情報は複数回閲覧する

自分が求める価値を軸に検索する

肯定度が高い状態においては低い状態に比べて、検索ワードが具体的でその商品を購入する際に重視する点や、他商品との比較軸が明確に定まっていることがわかった。

例えば、肯定度が高い状態でシャンプーを購入した人は、シャンプーの商品名と共に、髪のきしみといったキーワードを打ち込むことで、よりピンポイントな検索を行っているのである。

あえてネガティブな情報を検索する

先に不安を消しておいたり、自分の中での期待値をコントロールするため、選んだ商品について、あえてネガティブな情報を検索するというわけだ。

頼れる情報は複数回閲覧する

情報を確認するだけでなく、時間をおいて複数回同じ検索をすることで、自分の購入への意思が変わらないことを確認するための働きもあると考えられる。

このように、生活者自らが積極的に情報を求めにいった場合は、肯定度が高まることがわかったが、日常生活の中で無意識に触れている情報も、ある程度肯定度に影響することがあるという。

ここで重要なのは、すでに肯定度が高い状態、すなわち特定の商品を習慣的に買い続けている状態においては、その商品に関する情報探索意欲は減退するということだ。

自分の選択に自信がある状態においては情報探索の必要性は少なく、むしろ第三者の情報を探しにいくことは自信を揺らがせるリスクにもなり得るからだ。

ところが、肯定度は情報のアップデートによって維持される。

従って、すでに高い肯定度を持って継続購入している顧客を維持するためには、企業側からの積極的なコミュニケーションが必要になるというわけだ。

例えば、シャンプーなどの日用品は、購入頻度が高い上に製品の更新周期が短いので、新しい広告やキャンペーンに触れる機会が多い。

そして、こうした商品では、初回購入時より継続購入時の方が肯定度が高い。

一方で、自動車や家電など買い替えのスパンが長く、新たな情報に触れる機会が少ない商品カテゴリーでは、初回購入時と継続購入時の肯定度はあまり変わらない。

ということは、商品において肯定度を持続させるために企業のコミュニケーションが重要になるというわけだ。

それまであまり知られていなかった利点や特長を伝えることやユニークセリングポイントを改めて強調することが大切だということである。

自動車や家電などのハードウエアとソフトウエアが分かれている商品では、ソフトウエア更新などで定期的な改善をすることで新しさを感じさせ、肯定度を維持させる方法もある。

まとめ

肯定度と情報探索意欲の相関に目を向けることは、自社商品と顧客の関係性を表し、企業が次のアクションを考えるためのものとして役立つ。

商品に関する情報収集が多いということは新規需要があることを示すとともに、既存顧客の肯定度が低くなっている可能性がある。

反対に、情報収集が少ないということは、新規需要はあまり見えないものの、既存顧客の肯定度は維持されていて、その商品の購入が継続される傾向にあることを示す。

また、現代の消費者は自分が頼れる商品や企業を求めているということを知るべきである。

肯定度を基盤にした継続購入は、複雑で膨大な選択肢に囲まれている現代の消費者の反応だということだ。

 

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植田 振一郎 Twitter

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