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2022年4月9日 投稿:swing16o

ANAのTikTokが話題になっている理由と事例

虚実皮膜(きょじつひまく)
→ 事実と虚構との中間に芸術の真実があるとする、近松門左衛門が唱えた芸術論。

ちょっとわかりにくい表現なので、シンプルに説明すると、芸術は虚構と事実との微妙な間にあるという四字熟語だ。

虚構とは、つまりフィクションなので嘘ということで、浄瑠璃の作者である近松門左衛門が唱えた芸術論だ。

私なりに解釈すると、嘘に寄りすぎれば誰にも理解されない芸術作品になるし、事実をそのまま出しても誰も興味を持たないといったところだろうか。

この理論は、まさに現代にも当てはまると思う。

とりわけ、より事実に近いところに寄せた芸術作品というか、クリエイティブな作品が人気になる傾向がある。

遠い存在よりも近い存在に親近感が湧き、応援したくなるというわけだ。

遠すぎず近すぎずのマーケティング

ここ最近、マーケティングが上手くいって注目されている誰でも知っている企業がある。

私もよく使う会社なのだが、全日本空輸株式会社である。

ピンとこない人でもANAと書けば、なるほどとなるだろう。

そんなANAのTikTokが話題になっていることをご存知だろうか。

2021年7月にアカウント開設後、航空機や機内設備の紹介、機窓からの絶景といった動画を配信している。

そのあたりの想像は容易にできるだろうが、それ以外にも客室乗務員や整備士などによるダンス、日本航空(JAL)と共同開催したイベントの動画など幅広く発信が話題だ。

さらに、離陸や機体洗浄の様子をライブストリーミング機能であるTikTok LIVEを使って配信するなど、バリエーション豊かな投稿も注目を浴びている。

その結果、TikTokのアカウント開設から半年でフォロワーが6万5,000を超えている。

なぜ、こんなにも上手く話題をつくることができたのか。

それは、動画ネイティブの若年層にANAを知ってもらうことに絞ったマーケティングの成果だと分析している。

そのきっかけになったのは、コロナ禍で飛行機を利用する機会が圧倒的に減り、お客様との距離が空いてしまったので動画を通じて距離を縮めようとしたことにあるという。

その結果、遠すぎず近すぎずの絶妙な距離感のマーケティングに成功したのである。

具体的な投稿事例

ANA【公式】

ANA公式のTikTokを見てもらえたらそれまでなのだが、より具体的に事例を挙げていこうと思う。

まずは、フライトにおいて最たる重要なポイントであるシートの座り心地や、窓から景色といった投稿がある。

安全に目的地まで届けるというのは当たり前のことだが、芯となる部分の軸がここにある。

主役が飛行機にあるということはさておき、これだけでは飽きてしまう。

そこで、2021年12月には客室乗務員、パイロット、グランドスタッフ、貨物、整備士、IT、機内食工場といった地上で働く社員も総出演する動画を投稿した。

そういった投稿が5万9,000件のいいね、160万回以上再生と大きな注目を集めている。

いわゆる、裏側を見せるという手法である。

私も飛行機に乗る機会が他の人よりも多いが、裏側がどうなっているのか全くといっていいほど無知だ。

冷静に考えれば、あれだけ大きな機材を安全に当たり前に飛ばすことはかなりハードルが高い。

それをいとも簡単に毎日行うことができているのは、やはり裏方の力が素晴らしいのは明確だ。

普段はなかなかスポットの当たらないところを主役にすることで、親近感が湧くという心理を上手くついている。

機体の整備などの裏側を公開することは、結果として安全面をアピールすることにも繋がる。

他にも、旅行に行きたくてもなかなか行けない今に合った情報発信として観光地の情報などの投稿や有名TikTokerとのコラボを行ったりと積極的に動いている。

絶妙な距離感を保つポイント

ANAのTikTokでは施策の目標をいいね数や再生回数で定めず、定性的な観点である、共感に重きを置いている。

これが今の時代にはとても重要だということはくり返し述べているが、なにをもって共感を生ませるのか、そこにはいろいろと仕掛けが必要だ。

この仕掛けには正解がなく、常に変遷するものなので手数を打つしかないのだが、なかなかそれを持続して行うことが難しいのである。

そんな中、ANAが大切にしているのはユーザとの双方向コミュニケーションだという。

一方通行の発信にならないよう視聴者とのコミュニケーションを意識している。

動画に寄せられるコメントから、このように映した方がわかりやすかったと教えられることも多いく、それを次の動画に活かすようにしている。

これが絶妙な距離感をつくるポイントなのである。

仮に自分の意見が受け入れられたとしたらどうだろう。

無名な人の意見もしっかりと受け入れてくれる、その企業や組織に親近感が湧き、ファンになることは間違いないだろう。

この共感をつくるための手法の1つとして取り入れているのが、TikTok LIVEを活用したライブ配信なのである。

ANAはTikTokのアカウント開設当初から離陸や機体洗浄の様子など、ライブ配信を積極的に行っている。

航空ファンのみならず、ANAを知らないユーザとも交流ができたらという試みから生まれた施策である。

自分たちにとって当たり前のことであっても相手からしたら当たり前ではなく、興味を持ってもらえることも多い。

これがストーリーであり、結果よりも過程が重視される、そこに価値が生まれるという2022年時点の概念だ。

ANAの企画会議

では、投稿する内容をどうやって決めているのだろうか。

ANAの運用チームでは、週1回企画会議を行い、コンテンツ案や公開スケジュールを策定しているという。

ここで重要なのは、決め切らないことだそうだ。

その理由は、チームメンバー各々が会社のスマホで撮影を進めているが、実際に足を運んでみたら、こうした方がいいと思える感覚を大切にしてもらいたいからだそうだ。

つまり、決めきったものを撮るのではなく、テーマを決めてディテールの部分は現場に任せるといったところだ。

これはある意味でギャンブルだし、動画撮影をしたことがない人たちは最初は戸惑うだろう。

けれども、何度がやるうちに慣れてくるし、なによりも自分たちの動画にいいねがついたり再生回数が増えると嬉しいだろう。

他の部署ではどんな動画があがっているのかも気になるだろうし、そうなると自然にコミュニケーションが生まれたり、競争意識も芽生える。

こういった好循環をつくるという意味でも、マーケティングやブランディングに空中戦は欠かせないのである。

まとめ

知名度があるからということにあぐらをかいていては、必ず失速する。

知名度があるからといって、必ずしもマーケティングやブランディングに成功しているわけではない。

実直に研究して自分たちで高速でPDCAを回す。

これをとにかく続けること、自分たちにもしっかりと改めて言い聞かせたいと思う。

 

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植田 振一郎 Twitter

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