急転直下(きゅうてんちょっか)
→ 事態が急に変化して解決に向かうこと。
世の中は常に変化する。
その変化についていかないことは悪いことではないと私は何度も主張している。
ただ、変化についていかなかったり、いけなかったりすると損をする機会が増えることは改めて断言しておきたい。
そしてまた1つの変化が不動産業界で起きている。
三極化する不動産市場
(出典:東洋経済オンライン)
不動産に興味のある人は一読してもらいたいが、首都圏1都3県の新築マンションの平均価格が6,260万円で過去最高を更新したという。
また、東京23区の新築マンションの平均価格は8,293万円となった。
都心の好立地マンションの価格上昇は止まることがない一方で、都市郊外は駅前や駅近を除けば下落している。
不動産市場は1990年バブル崩壊以降、三極化が続いている状況だ。
1)価格維持あるいは上昇する地域:10〜15%
局地的なバブルとして、都心、駅前、駅近、大規模、タワーといったワードに代表される価値が上昇し続けているエリアで、一極集中している地域。
2)なだらかに下落を続ける地域:70%
都心から30~40kmほど離れているかつてのベッドタウンで、これから人口が減少していき、徐々に価値が下がっていくエリアで、日本国内の大多数の地域がここに当てはまる。
3)限りなく無価値あるいはマイナスの地域:10~15%
かつてのベッドタウンで人気のエリアだったが、現在は人が減り、売れ残るケースが増えているエリアで、今後も下降の一途をたどっていくとされる地域。
この三極化は今後も加速すると予測されている。
不動産価格の変化
過去10年の不動産価格がどのように変化しているのか、簡単に振り返ってみる。
民主党から自民党に政権交代した2012年12月、期待感もあって株価や不動産価格は大きく盛り上がった。
そして、翌年の2013年4月以降、アベノミクス、黒田バズーカが打ち出され、不動産価格は大幅な上昇局面を迎えた。
そこから約10年後の2021年7月までに、都心3~5区あたりの成約平米単価は実に2倍近くまで跳ね上がっている。
つまり、5,000万円だったマンションが1億円になっているということだ。
参考までに、東京平均では1.7倍程度となっている。
一方で、神奈川、埼玉、千葉では1.3~1.4倍程度に留まっている。
これが1990年の不動産バブルやリーマンショック前のプチバブルと大きく異なるところなのである。
かつては、東京を中心とした都心部に火がつくと、その波は外縁部に波及し、より郊外へ、地方都市へと広がった。
ところが、昨今ではそうした動きは限定的になっている。
要するに、都心、大都市部、駅前、駅近、大規模、タワーのワードが示す好立地で起きた大波が、郊外や地方都市に与える影響が限定的なのである。
いうなれば、局地バブル、部分バブルといった状況だということだ。
都心部の不動産に生まれ始めた格差
それから、同じ大都市部であっても格差が広がっているのが昨今の特徴の1つだ。
2021年7月1日時点の基準地価では、東京23区の住宅地における下落率の上位10位を世田谷区内の地点が独占した。
352ある23区の住宅地の調査対象のうち、世田谷区には45地点ある。
そして、23区全体のマイナス28地点のうちの実に半数の14地点が世田谷区だったのである。
下落率が2.0%と23区最大となった世田谷区岡本3丁目は砧公園に近く閑静な住宅街ですが、最寄りの東急田園都市線用賀駅まで1.8kmある。
不動産広告表示に合わせて、80m/分で換算すると22.5分かかる計算になる。
ここに信号待ちなどを含めた実質的な所要時間は25分程度、あるいはそれ以上かかるはずだ。
そうなると、通勤や通学などの交通利便性の点で難しいといった評価になるわけだ。
実際に鑑定評価書には、利便性に難点があり、需要は減速傾向、画地細分化の傾向もあると表記されている。
異質な新築マンション市場
ちなみに、新築マンション市場は全く指標として当てにならないといわれている。
首都圏新築マンション市場では、2001年には首都圏でおよそ8万9,000戸だった発売戸数は2020年に約2万9,000戸と30%程度の水準にまで減少している。
販売時価総額は、2001年の3兆6,000億円から2020年の1兆6.000億円と減少し、市場全体としてはそのパイを大きく減らしてきた。
これは、駅前、駅近、駅直結、大規模、タワーといったワードに代表される高額物件が主流となる一方で、都心から遠い、駅から遠いといった相対的に価格が割安な物件が激減しているからである。
新築マンションの販売価格は、マンションデベロッパーがコントロールでき、売り出し価格しか公表されず、体力さえあれば売らずに保有することもできる。
そのため、より市場性を鑑みた成約価格が見えにくいところがあるのだ。
株式市場でいわれるところの官製相場ならぬ民製相場といったところだろうか。
一方で、中古マンション市場は、ほとんどの売り主が個人であるため価格コントロール機能があるわけではなく、成約価格や成約平米単価は、市場をリアルに反映しているといえる。
利便性追求の傾向
利便性追求の傾向は、都市郊外でも同様に起きている。
首都圏で言いば東京都心から30~40km圏内で、ドアツードアで1~1.5時間。
イメージとしては国道16号内外の相模原、町田、さいたま、柏、船橋といった、かつて団塊世代と呼ばれた人たちが大挙して住宅を求めた、いわゆるベッドタウンだ。
ベッドタウンとは文字どおり、寝に帰るだけの場所で毎日満員電車に揺られて通勤する人が住むところと揶揄される表現だ。
高度経済成長期かつ住宅神話の中で、都市郊外に住宅を求める動きのなかで生まれた言葉だ。
かつてのベッドタウンといえば、1947~1949年に生まれた子育て期の団塊世代が中心で子供であふれていた。
団塊世代とは極端な人口の塊で、2022年現在時点で200万人程度、その前後世代より20~30%多く、住宅、家電や自動車などを代表として個人消費を牽引してきた世代だ。
ただ、現在の住宅購入ボリュームゾーンである30代中盤世代は120~130万人程度と団塊世代の60%程度しかいない。
しかも、その世代の多くは、団塊世代のほとんどが専業主婦世帯であったのとは対象的に共働き世帯だ。
こうなると通勤は2人分になるので、必然的により都心に、より駅近に、より会社に近く、より生活利便性高くといった傾向になる。
また、生活利便性に重要なのは通勤、通学だけではない。
日々の買い物や病院、行政手続きなどの施設はより中心部に集積している。
加えて、乗用車保有率も若年層になるほど低下していて、多くの世帯が空間や居住快適性より、時間を大切にする傾向にある。
そのイメージは駅徒歩15分の100平米より、徒歩2~3分の70平米というものだ。
まとめ
これが2022年の現在の不動産の考え方なのだ。
主軸になっているのは時間という概念なのである。
少しでも利便性を求めるのであれば、時間を上手く使うという概念が人々の生活を変えているという事実をしっかりと受け止めていくべきだ。
そして、それに合わせた動きをすることがビジネスチャンスになるということだ。
【Twitterのフォローをお願いします】