求全之毀(きゅうぜんのそしり)
→ 自分が完璧にやったつもりでも非難を受けることがあるということ。
どの立場に立つかによって、どこかで非難する人は必ず出てくる。
若かりし頃の私は完璧主義に近い考え方だったと思う。
ただ、スタートアップでの経験はそれではいけないと気付かさせてくれる。
100%の賛同を受けることなど不可能だということで、むしろ10%の熱狂的なファンをつけることができれば、十分にビジネスとして成り立つということである。
要するに、どの立場であっても心無い言葉を浴びせられることはあるし、非難されることはあるので、気にするなということである。
同時に時代が変われば正が誤になるし、逆もまた然りなのである。
変化する需要予測オペレーション
(出典:東洋経済オンライン)
まずはこの記事を一読いただきたい。
冒頭に結論が書かれているが、新型コロナウイルスのパンデミックのような大きな環境変化のが起きた際の需要予測は、急にはできないということだ。
とはいえ、全てのビジネスにおいてギャンブルをするわけにもいかない。
予測というか目標があって初めて人は動くし、そもそもの指標がなければ無法地帯となってしまうのは理解できるだろう。
例えその指標が根拠のないものであったとしても、組織としてビジネスを展開する上では、需要予測というのは非常に重要なのである。
この需要予測オペレーションの見直しが始まっているという。
従来の需要予測は、1944年に考案されたといわれる指数平滑法をベースとしており、高度な時系列モデルで行われるのが主だった。
時系列モデル
- 水準(規模)
- トレンド(水準変化の方向性)
- 季節性(くり返されるパターン)
この1〜3の需要予測を可視化するというのが、時系列モデルの定義である。
需要の実績、つまり売上はこれらが組み合わさったものであり、人が目で見て分解するのは簡単ではない。
未来の需要を予測するためには、こうした要素ごとの特徴を把握し、過去からの推移とその背景を解釈することが有効なのである。
記事内にはわかりやすい例が載っている。
日焼け止めの需要が4月〜5月にかけて増えていっても、それは水準の変化ではなく、季節性によるものである可能性が高いということだ。
この需要の分解を人の判断よりも客観的に行うのが時系列モデルと捉えればいいという。
ただし、時系列モデルで精度の高い予測を行うには、下記の事項を適切に更新していく必要がある。
- どれくらい過去のデータから分析するか(初期値の決定)
- 直近のデータをどれくらい重視するか(パラメーターの設定)
10年前などの古いデータを使うと、季節性が変わっている可能性がある。
というか、そもそも、そんなに長く売り続けている、売れ続けている商品は多くない。
一方で、1年分もデータがないとすると、その季節性を把握することはできない。
直近のデータを重視し過ぎると、たまたま誤発注で上がった売上を水準の変化と捉えてしまう危険性もある。
逆に過去のデータを重視するほど、直近のトレンドの変化に気づくのが遅くなってしまう。
本当に価値のあるデータとは?
ビッグデータというバズワードに惑わされている人が多い。
かくいう私も、このビッグデータという言葉をstakの営業で頻発させていた時期がある。
ただ、それはある時期を境に全く使わなくなった。
それはなぜか。
データを取れるようにしたいと言うけれども、どんなデータをどういった形で取りたいのかと主要メンバーの1人に言われたときに、明確に言い返すことができなかったからだ。
そして、単純にデータを集めるだけではゴミだといわれたことが今でも脳裏に焼き付いている。
確かにいうとおりで、ただただビッグデータという言葉を使いたいだけの自分がいたことは否定できなかった。
そのデータを使って具体的にどういうことがしたいのか、そこから逆算してデータを集計しなければ意味がないのである。
となると、上述した初期値の設定とパラメーターの設定というのが非常に重要なKPIとなることは明確だ。
要するに、過去と直近のデータのバランスが重要で、もちろん業界や商材によってそのバランスは全く異なるということである。
単に過去の実績と適合しているからと信じるのではなく、その背景を解釈して予測モデルを管理するスキルがないと、モデルが示す数字にふり回される。
中長期で高い予測精度を維持することはできないとは、まさにそのとおりである。
過去データを見直す重要性
過去データが必要だということは理解できるだろう。
なにかを予測する際に全くなにもない状況だと太刀打ちできない。
月や週単位くらいの需要予測では、少なくとも2年分以上が必要になるといわれている。
ただし、大きな環境変化があった場合には、初期値やパラメーターを大幅に見直す必要が出てくるということに注力しなければならない。
例えば、リモートワークやマスク生活が恒常的になった昨今、化粧品の需要が縮小したことは理解できるだろう。
また、訪日中国人が激減したことで、いわゆる爆買ニーズもなくなった今、新型コロナウイルス蔓延前のデータが使えないということは容易に想像がつく。
そんな中で注目されているのが、S&OPだ。
Sales and Operations Planningとは?
S&OPとは、Sales and Operations Planningの略称だ。
また、オペレーションとはSCM(サプライチェーンマネジメント)のことなので、直訳すると、販売計画とSCMといった意味になる。
とりわけ、メーカーにおいて重要になってきている概念で、経営戦略を売上の数字に落とし込んだ販売計画の実行をSCMで支援することを指している。
一般的に、扱うブランド数や商品数が多い大きな組織ほど、それらを横断する意思決定が難しくなり、決定スピードも遅くなる。
S&OPでは、意思決定を行うのは役員クラス(CxO)であるため、事業やエリア、ブランドを横断した大きな決定を行うことができるというのが1つの特徴だ。
その核となるのが、まさに需要予測なのである。
そこで重要になるのが、シナリオ分析ということになる。
シナリオ分析とは、複数のシナリオとして想定し、サプライチェーンマネジメントでリスクヘッジしておくことが有効だという考え方である。
例えば、新型ウイルスの感染拡大が早期に収まるのか、感染拡大をくり返すのかは、どんな専門機関や大企業でも精度高く予測できているとはいえない。
実際に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置がくり返し発令されており、将来のことは予測が難しい。
そこで、感染が収束するのであればこうしよう、長引くのであればこうしようというシナリオを複数準備して、サプライチェーンを動かすことが重要になるということだ。
サプライチェーンとは、商品や製品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった一連の流れのことで、そのマネジメントをするということである。
まとめ
IoT、AI、ビッグデータ、ノーコード、ブロックチェーン、このあたりはバズワードの最前線にあるものだといっても過言ではないだろう。
でも、注意しなければいけないのは、これらのバズワードはそのままでは全く機能しないということだ。
機能させるためには、需要予測を行うだけでなく、シナリオ分析もいくつも考慮しなければ、今の時代を勝ち抜くことなどできないということである。
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