保革伯仲(ほかくはくちゅう)
→ 政治などで保守系と革新系の議員数がほぼ同じであること。
2024年10月27日の衆院選は、予想外に劇的なものとなった。
自民党は200議席を切り、公明党も大敗して、与党は過半数割れ(18議席の不足)。
これは見覚えのある景色である。
当時「保革伯仲」と呼ばれた、1970年代の政治状況のきっかけは、皮肉にも石破首相が師と仰ぐ田中角栄が、総理総裁として仕切った1972年12月の総選挙だった。
半世紀の時を経て、日本政治に再び「保革伯仲」の時代が到来した。
しかし現代の政治状況は、1970年代とは根本的に異なる様相を呈している。
従来の「保守対革新」の構図から「保守対リベラル」へと移行し、さらに昨今では従来の政治的カテゴリーそのものが揺らいでいる。
この変化を理解することは、現代社会を読み解く上で不可欠だ。
このブログで学べること
本稿では、保革伯仲という概念が生まれた歴史と背景から始まり、現代における保守とリベラルの概念がいかに変容しているかを、具体的なデータと視覚的な分析をもって詳細に解説する。
特に注目すべきは、市場の自由を重視する新自由主義を認めるのが保守、新自由主義を認めず、政府の介入を主張するのがリベラルという経済軸による分類と、従来の社会保守・社会革新軸がどのように組み合わさって複雑な政治地図を形成しているかという点だ。
また、右翼・左翼、タカ派・ハト派といった基本概念の歴史的起源から現代的意味まで、小学生にも理解できるよう分かりやすく解説していく。
保革伯仲という政治現象の誕生とその歴史的背景
伯仲国会(はくちゅうこっかい)とは、国会の議席が与野党で伯仲している状況のことをいう。
55年体制では「保革伯仲」「保革伯仲国会」とも呼ばれた。
この概念は、単なる数的バランスを超えた政治的な緊張状態を表している。
1970年代の保革伯仲時代を数値で見ると、1974年7月の第10回参院選では過半数の議席を維持したものの、与野党の議席数の差がわずかとなり、「保革伯仲(伯仲国会)」状況が生まれた。
具体的には、参議院では1974年参院選から1980年参議院まで、衆議院では1976年衆院選から1980年衆院選までと1983年衆院選から1986年衆院選までが伯仲国会と呼ばれた。
この時代の特徴は、野党議員が国会委員長に就任する逆転委員会が多くなったり、与党の少数の造反で与党案が否決される情勢になるなど、議会運営が不安定になりやすくなるという状況だった。
政治的スペクトラムの基礎となる「右翼・左翼」概念の起源を理解することは重要だ。
左右の語源は、かつてのフランス議会からだ。
議長席から見て、「右側に保守勢力」が陣取り、「左側に革新勢力」が陣取っていた事が由来だ。
これが、「右翼・左翼」の語源である。
現代でもこの基本構造は維持されているが、その内容は時代とともに大きく変化している。
左翼、左派、リベラル、右翼、右派、保守の違いは、「左翼」と、「左派」では同じ左側だが、「左翼」の方が、強めのニュアンスとなる。
同じく、「右翼」と、「右派」では、同じ右側だが、「右翼」の方が、強めのニュアンスとなる。
外交・安全保障分野における分類として、タカ派・ハト派の概念も重要だ。
タカ派(タカは、英語:War Hawk, hawk, bellicist)とは、政治思想の傾向の分類であり、好戦的で戦争など武力を辞さない姿勢を持つ集団や人物を指す政治用語である。
強硬派(きょうこうは、Hard liner)ともいう。
対義語はハト派である。
タカ派は武力行使も辞さない強硬路線派、ハト派は何とか話し合いで収めようとする穏健路線派といったところです。
この分類は、保守・リベラルの軸とは独立した次元の政治的立場を表している。
現代政治における保守とリベラルの変質
日本政治の対立軸として戦後長く用いられた「保守対革新」が、1990年代以降には「保守対リベラル」に取って代わられたことは、しばしば指摘される。
だが、「保守」も「リベラル」も明確に定義されておらず、多用されるうちに意味はますます曖昧になり、非建設的な二項対立を煽(あお)るレッテルになっている印象は拭えない。
この変化の背景には、冷戦終結という国際情勢の大転換があった。
戦後日本では、長らく「保守」と「革新」が対として論じられてきたのであり、「保守」と「リベラル」が言われるようになったのは、冷戦終焉後の1990年代になってのことに過ぎない。
もっともシンプルな本来の区分は「経済体制による分け方」だ。
つまり、「市場の自由」と「政府の介入」のどちらを重視するか、ということ。市場の自由を重視する新自由主義を認めるのが保守、新自由主義を認めず、政府の介入を主張するのがリベラルだ。
この視点から見ると、従来の日本的な分類とは異なる構図が見えてくる。
欧米、特に米国では、保守=「小さな政府」(減税、規制緩和、市場原理主義)、リベラル=「大きな政府」(福祉、社会保障、再分配)という経済的な対立軸が非常に明快です。
2024年衆院選の結果は、この概念の変化を如実に示している。
自民、公明両党が215議席におわり過半数割れした。野党は立憲民主党が148議席、国民民主党が28議席とそれぞれ躍進し、日本維新の会は38議席と伸び悩んだ。
この結果が示すのは、従来の保守・リベラルという二分法では説明しきれない複雑な有権者の意識である。
米国では、民主党がやさしい党で、共和党がたくましい党といえばわかりやすいかもしれない。
共和党のトランプ大統領も、「たくましさ」や「力強さ」の姿勢を示す。
民主党(リベラル) ⇔ 共和党(保守)、民主党(左派) ⇔ 共和党(右派)。
しかし日本では、保守とリベラルの意味をまず確認してみたい。
岩波書店の広辞苑第7版によると「保守」は「旧来の風習・伝統を重んじ、それを保存しようとすること」を指すというように、より複雑な様相を呈している。
若年層の政治意識変化と保守化現象の検証
日本が「右傾化」しているという指摘は、1970年代終わりにはすでに存在したが、とくに2012年の第2次安倍晋三内発足後、多くなった。
この現象を詳細に分析することで、現代の保革概念の変化を理解できる。
特に注目すべきは若年層の政治意識の変化だ。
従来のイデオロギー的な対立軸から、より実用的・現実的な政策選択へのシフトが見られる。
日本では「強い日本を創る」というのがはやっているが、明らかに国家主義が前面に出始めている。
日本の社会保障制度や教育制度、市場活動など全般を見渡すと、経済も成熟期に達して豊かな世の中になっている。
このことから、確かに弱者救済主義、広くあまねく公平にという理念からは徐々に競争、勝ち組と負け組に選別される貧富の差の拡大、中級階級意識の浸透が進んでいると感じる。
現代の政治状況は、単純な保守・リベラルの二極対立ではなく、より複雑な多極化が進んでいる。
角栄は9月に日中国交回復をなし遂げ、圧勝を見込んでの解散だったが、むしろ自民党は苦戦した(過半数ラインまでの余裕が半減し、25に)。
野党第一党は社会党のままだが、共産38・公明29・民社19と諸勢力が拮抗しつつ台頭し、多党化の時代を開いた選挙として知られる。
1970年代の多党化と現代の状況を比較すると、その類似性は驚くべきものがある。
現在の国民民主党の躍進、れいわ新選組や参政党の台頭、日本保守党の新規参入など、まさに多様な政治勢力の拮抗状態が再現されている。
保守:家族や地域といった共同体の秩序や伝統を尊重し、社会の安定を重視します。
リベラル(日本):個人の多様な生き方や価値観を尊重し、ジェンダー平等や選択的夫婦別姓の導入などに積極的です。
この対立軸は、経済政策よりもむしろ社会的価値観の違いを反映している。
現代社会では、この価値観軸と経済政策軸が複雑に組み合わさって、従来の政治的カテゴリーでは捉えきれない多様な立場が生まれている。
グローバル化と情報社会が生み出す新たな政治軸
現代の政治環境は、情報技術の発達によって根本的に変化している。
SNSやインターネットの普及により、従来のマスメディアによる情報統制が困難になり、より多様な政治的意見が表面化している。
デジタル経済の発展は、従来の労働概念や社会保障制度の前提を大きく変えている。
この変化は、保守・リベラルという従来の枠組みでは説明できない新たな政治課題を生み出している。
例えば、デジタルプラットフォーム経済における労働者の権利、AI技術による雇用への影響、デジタル格差の問題などは、従来の「市場の自由」対「政府の介入」という軸だけでは議論しきれない複雑さを持っている。
現代社会では、年齢による政治意識の違いが顕著になっている。
高齢者層は既存の社会保障制度の維持を重視する傾向があり、若年層はより柔軟な制度設計を求める傾向がある。
この世代間対立は、従来の保守・リベラルの枠組みを横断する形で存在し、政治的議論をより複雑にしている。
まとめ
2024年衆院選の結果を詳細に分析すると、従来の政治カテゴリーの限界が明確に見える。
2024年には衆院選が行われ自民党が単独過半数割れの大敗。
自公あわせても議席が過半数に満たない「少数与党」となった。
一方で野党では国民民主党・れいわ新選組・参政党がそれぞれ3倍近く議席を伸ばしたほか、日本保守党が新たに国政政党入りするなど、政治の状況に大きな変化が起きている。
この結果が示すのは、有権者が従来の保守・リベラルという枠組みを超えて、より複雑で多様な政治的選択を行っているということだ。
現代政治を理解するためには、少なくとも以下の4つの軸を考慮する必要があると考えている。
- 経済政策軸: 市場重視 vs 政府介入重視
- 社会価値観軸: 伝統重視 vs 多様性重視
- 世代軸: 既存制度維持 vs 制度改革
- グローバル化軸: 国際協調 vs 自国優先
これらの軸は独立して存在し、個人や政党は各軸において異なる立場を取ることができる。
例えば、経済政策では市場重視の立場を取りながら、社会価値観では多様性を重視する立場も可能だ。
与野党の議席数が接近し、国会に緊張感が生まれるのは望ましいが、ひとつまちがうと不まじめな目立ちたがりが政治をかき回す事態になる。
実際に、70年代の「保革伯仲」では欲得ずくの政局ばかりが頻発し、統治のパフォーマンスがよかったという人はあまりいない。
この教訓を踏まえ、現代の保革伯仲時代においては、より建設的な政治的対話の枠組みが必要だ。
私たちstak, Inc.のような企業にとって、この政治的変化は大きな意味を持つ。
従来の政治的カテゴリーが機能しなくなる中で、企業はより柔軟で多角的な政治的環境への対応が求められる。
技術革新を推進する企業として、私たちは政治的イデオロギーに左右されることなく、社会全体の利益を考慮した事業展開を心がけている。
政治的分極化が進む中でも、技術によって社会課題を解決し、すべての人々にとってより良い未来を創造することが私たちの使命だと考えている。
現代の「保革伯仲」は、単なる政治的バランスの問題ではない。
それは社会全体のパラダイムシフトを示している。
従来の保守・リベラルという二分法的思考を超えて、より多元的で柔軟な政治的理解が求められている。
データが示すように、日本社会は新たな政治的秩序の模索期に入っている。
この変化の時代において、私たち一人ひとりが従来の固定的な政治観念から脱却し、より複雑で多様な現実に対応できる思考力を身につけることが重要だ。
stak, Inc.として、私たちは技術革新を通じてこの社会変化に貢献していく。
政治的立場を超えて、すべての人々にとってより良い社会の実現を目指し、データと論理に基づいた建設的な議論に参加していきたい。
未来は、古い対立軸に囚われることなく、新たな可能性を追求する者たちによって切り開かれるのだ。
【X(旧Twitter)のフォローをお願いします】