着眼大局(ちゃくがんたいきょく)
→ 物事の細部にとらわれず、全体を見て判断し対処すること。
着眼大局とは、物事の細部にとらわれず全体を見渡して判断することを指す言葉だ。
この概念は古くから東洋思想に見られ、中国の兵法書「孫子」にも、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」と、全体を見渡す重要性が説かれている。
孫子の教えは、戦略だけでなく人生哲学としても広く応用されてきた。
現代社会でも、経営やIT、マーケティングなどあらゆる分野で着眼大局は重要だ。
細部に執着せず大局観を持つことで、柔軟な判断と適切な対処が可能になる。
激変する社会情勢の中で、目先の利益や課題に振り回されず、長期的視点で物事を捉える力が求められている。
モノの大きさを測る単位を知ることは、私たちの思考の視野を広げ、着眼大局の良い練習になるだろう。
小さいモノを測る単位の紹介
モノの大きさを測る単位は、メートル(m)が国際単位系(SI)の基本単位だ。
1メートルは、真空中の光が1/299,792,458秒の時間に進む距離と定義されている。
かつては地球の子午線の長さを基準にしていたが、1983年からは光の速さを基にした現在の定義が採用された。
メートルよりも小さな単位としては、1,000分の1がミリメートル(mm)、100万分の1がマイクロメートル(μm)だ。
ミリメートルは、定規などでおなじみの単位だろう。
マイクロメートルは、ミクロンとも呼ばれ、細胞のサイズを表すのによく使われる。
さらに小さくなると、ナノメートル(nm)は10億分の1、ピコメートル(pm)は1兆分の1、フェムトメートル(fm)は1,000兆分の1となる。
原子1個は大体100ピコメートル程度で、原子核はフェムトメートルのスケールだ。
サブアトミックな粒子の世界では、断面積の単位として、バーン(b)やヤクトバーン(yb)も用いられる。
小さいモノの具体例と実際のサイズ感
私たちの身の回りには、目に見えないほど小さな存在がたくさんある。
ウイルスは、直径が20〜300ナノメートル程度だ。
新型コロナウイルスの場合、100ナノメートル前後だと言われている。
一方、細菌は大きめで、大腸菌は長さ2マイクロメートル、幅0.5マイクロメートル程度ある。
髪の毛の太さは個人差があるが、大体50〜100マイクロメートルだ。
ウイルスのサイズは髪の毛の1,000分の1以下、細菌は100分の1程度という計算になる。
人間のミクロな世界は、肉眼では捉えきれない小ささなのだ。
可視光の波長は、400〜800ナノメートル。
人間の目に見える光の世界も、ウイルスと同じナノスケールなのだ。
光の波長の違いが、物の色の違いとして私たちの目に映る。
赤い光は650ナノメートル前後、青い光は450ナノメートル前後の波長を持つ。
原子は、もっと小さな世界の住人だ。
水素原子の直径は大体100ピコメートル、炭素原子は140ピコメートル程度と言われる。
分子は、そんな原子が集まってできている。
水分子の直径は大体275ピコメートルだ。
原子や分子のスケールは、ナノよりもさらに3桁小さいのだ。
半導体チップの小ささについて
現代社会を支える半導体チップは、そのサイズの小ささが勝負を分ける。
チップ上の微細な回路パターンの幅は、「プロセスルール」や「テクノロジーノード」と呼ばれる単位で表される。
2022年時点で最先端とされる5ナノメートルのプロセスでは、回路線幅がウイルスの20分の1ほどだ。
半導体の微細化競争は、「ムーアの法則」と呼ばれる経験則に従って進んできた。
ムーアの法則とは、集積回路の素子数が2年ごとに2倍になるという予測で、1965年にインテルの共同創業者ゴードン・ムーアが提唱した。
50年以上たった今でも、おおむねこの法則は健在だ。
2020年には、IBMが2ナノメートルの製造技術を発表した。
この技術では、チップ上のトランジスタを50億個も集積できるという。
2nmのプロセスでは、トランジスタのゲート長は大体12ナノメートル。
窒化ガリウムなど新材料の活用により、微細化の限界に挑んでいる。
半導体の進歩は、スマートフォンやコンピュータの性能向上を支えてきた。
チップが小さくなるほど、高速化と省電力化が進む。
サイズの小ささが、デジタルテクノロジーのブレイクスルーを生んできたのだ。
着眼大局の重要性を理解する一方で、微細な技術革新の積み重ねが大きな変化を生むことにも気づかされる。
大きいモノを測る単位の紹介
一方、私たちの住む世界を超えた大きな単位もある。
1,000メートルがキロメートル(km)だ。
東京から大阪までは約500キロメートル。
新幹線なら2時間半ほどの距離だ。
さらに大きな単位だと、約1,600メートルがマイル(mile)。
こちらは、主にアメリカなどで使われている。
シカゴマラソンの距離は26.2マイル、つまり42.195キロメートルだ。
天文学の世界では、もっと途方もない単位が登場する。
天体間の距離を測るのに、天文単位(au)、光年(ly)、パーセク(pc)などが使われる。
地球と太陽の平均距離である1天文単位は、約1億5,000万キロメートル。
地球は、太陽のまわりを1年かけて公転している。
火星は太陽から1.5天文単位、木星は5.2天文単位のところにある。
私たちの太陽系の大きさは、天文単位で表現できる範囲に収まる。
もっと遠くの天体になると、光年が使われる。
1光年は、光が1年かけて進む距離で、約9.5兆キロメートル。
太陽系を飛び出し、恒星間の距離を測るのに適した単位だ。
太陽に最も近い恒星、ケンタウルス座アルファ星までは4.3光年。
天の川銀河の直径は10万光年に及ぶ。
光年と双璧をなすのが、パーセク(pc)だ。
1パーセクは約3.26光年で、恒星の年周視差が1秒角になる距離と定義されている。
つまり、地球の公転軌道の半径(1天文単位)を底辺とする二等辺三角形の頂点までの距離が1パーセクなのだ。
パーセクは、恒星までの距離を計る視差法で重宝される。
例えば、ある恒星の年周視差が0.1秒角なら、その星までは10パーセクと計算できる。
天文学では、キロパーセク(kpc)、メガパーセク(Mpc)という桁違いに大きな単位も用いられる。
小さいモノと大きいモノの単位の相関図
ナノメートルから光年まで、モノの大きさを測る単位を一覧にしてみよう。
・(pm)10^-12 — 原子、分子
・(nm)10^-9 — ウイルス、可視光、半導体
・(μm)10^-6 — 細菌、髪の毛
・(mm)10^-3 — 雨粒、アリ
・1 — 人間
・(km)10^3 — 都市、山脈
・(au)10^11 — 太陽系
・(ly)10^16 — 恒星間距離
・(pc)10^16 — 銀河系
・(kpc)10^19 — 銀河団
・(Mpc)10^22 — 宇宙の大規模構造
サイズの桁が15も違う原子と恒星、27も違う原子と銀河団。
しかし、宇宙のスケールからすれば、人間の存在も、地球も、太陽系も、ちりに等しい。
私たちは、無限に広がるスケールの中のほんの一点に過ぎないのだ。
着眼大局の視点を持つことで、人間の営みを相対化し、より広い視野で世界を見られるかもしれない。
宇宙の果てまで想像をめぐらすことは、日々の仕事や生活に新しい視点を与えてくれるだろう。
まとめ
小さなモノから大きなモノまで、さまざまな単位の世界を旅してきた。
femtoの世界の原子から、Megaの世界の銀河団まで、実に27桁ものスケールの違いがある。
しかし、サイズだけでは測れない価値もある。
ナノの半導体チップが、私たちの暮らしを大きく変えてきた。
原子がたくさん集まって、命が生まれ、文明が生まれた。
宇宙の営みの中で、一人一人の人生もかけがえのない意味を持つ。
着眼大局とは、スケールを行き来しながら、物事の本質を見抜く力なのかもしれない。
経営やマーケティング、研究開発など、あらゆる分野で求められているのは、視野の広さと同時に、鋭い洞察力だ。
大小のモノを知り、世界の広がりに想いを馳せることが、イノベーティブな発想を生むきっかけになる。
単位の世界に見る視点の切り替えが、私たちの思考と行動を助けてくれるだろう。
広い宇宙の中の一粒の塵でしかない自分と向き合うとき、真に大切なものが見えてくるのかもしれない。
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