公序良俗(こうじょりょうぞく)
→ 公の秩序と善良の風俗のことで、国家や社会の公共の秩序と普遍的道徳。
公序良俗という言葉を聞くと、風俗という言葉を連想する人は多いだろう。
私もその1人で、風俗という言葉を聞くとさらにそこから、風営法という言葉を連想するという人も多いはずだ。
そして、風営法という言葉はなんとなく聞いたことはあるけれども、詳しくは知らないというのが実態ではないだろうか。
ということで、風営法について書いてみようと思う。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
まず、風営法とは略称で、正式名称は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」である。
それから、風営法と聞くと、いわゆる性風俗店といったダークサイド側にある業界に対する法律というイメージが強いように思う。
けれども、実際は飲食店を営む方にも適用される場合があったりと、割と身近に適用されることもあるので、知っておいて損はない法律だということを冒頭に述べておきたい。
ということで、風営法の概要について列挙していこう。
風営法の規則
風営法は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することを目的に、風俗営業と性風俗店関連特殊営業等に対して規制を加えている。
ここで注意したいのは、前述したとおり、飲食店営業をしている場合に風俗営業にあたることがある。
その場合には、各種許認可が必要であったり、規制の対象になるので要注意だ。
風俗営業とは?
それでは、風俗営業とはどのようなものをいうのだろうか。
これについては、風営法2条1項の各号に明記してあり、下記のように5つの類型に定義されている。
- 風営法第2条第1項第1号
1つ目は、キャバレー、待合い、料理店、カフェ、その他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業が対象となっている。
明確に法律の条文に料理店という記載がされており、客の接待をして飲食をさせるような場合には、風俗営業に該当することになる。
つまり、基本的に飲食店は風営法の対象になる可能性があるという認識を持っておいた方が無難だろう。
- 風営法第2条第1項第2号
2つ目は、喫茶店、バー、その他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計った営業所内の照度を10ルクス以下として営むものを対象としている。
この条文からも、喫茶店やバーなどであっても、風俗営業に該当する場合があることがわかる。
店内の明るさが、10ルクス以下の飲食店は風俗営業にあたるというわけだ。
ちなみに、10ルクスは、ろうそく1本程度、あるいは上映前の映画館と同等の明るさだと例えられることが多い。
- 風営法第2条第1項第3号
3つ目は、喫茶店、バー、その他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつその広さが5平方メートル以下である客席を設けて営むものを対象としている。
風営法第2条第1項第1号や2号と同様に、喫茶店やバーであっても、他からの見通しができない5平方メートル以下の席を設けた形で営業する場合には風俗営業に該当するということだ。
- 風営法第2条第1項第4号
4号では、麻雀屋、パチンコ屋、その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業をする場合には、風俗営業に該当するという条文だ。
このあたりは、イメージどおりだと思うので特段問題だろう。
- 風営法第2条第1項第5号
スロットマシン、テレビゲーム機などの本来の用途以外の用途で射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるものを備える店舗などを利用させ、客に遊技をさせる営業は風俗営業に該当する。
4号と同様に5号も、特段違和感のない条文だろう。
注意しないといけないのは、飲食店において、2〜4号に当てはまらないとしても、スロットマシンやテレビゲーム機などを備えて営業する場合には、風営法が適用される可能性が高いということだ。
そして、一般的なイメージの強い性風俗に関する条文は、第2条第2項以降および第4章に詳しく規定されているので、興味のある方は下記を参考にしてほしい。
(出典:e-GOV 法令検索)
風営法におけるよくある違法行為
それでは、風営法が適用された場合の違法行為とは具体的にどういった事例があるのか列挙していこう。
無許可営業
まずは、無許可での営業だ。
風営法第3条第1項では、風俗営業を行おうとしている者は風俗営業の種類に応じて、その営業所ごとに管轄の都道府県公安委員会の許可を得なければならないとしている。
上述したように、飲食店であっても風俗営業に該当してしまう場合があるが、風俗営業を行っているのに許可を受けていない場合、つまり無許可の場合には風営法違反ということになる。
そして、営業を行っている者が風俗営業であることを知っている場合はもちろん、知らなかったとしても風営法違反として刑事罰の対象になるという強い規定なので十分な注意が必要だ。
無許可営業を行った場合には、風営法第49条第1号にて、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはこれを併科するとされており、風営法の刑罰の中で最も重い処罰を受ける可能性がある。
なお、この風俗営業は、いわゆる性風俗店のことをいうものではない。
性風俗店が無許可で営業を行った場合には、風営法第52条第4号に別に定められているとおり、6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科することとされている。
名義貸し
風営法第11条には、名義貸しが風営法違反となる旨が明記されている。
名義貸しとは、風営法の許可を受けた場合であっても、自分の名義を他人に貸して風俗営業を行わせる行為のことをいう。
名義貸しが許されると、実際には許可を受けていない他人が代わって営業することになるため、実態を把握することができなくなる。
そもそも許可制であるのに破綻してしまうので、風営法では名義貸しを明確に禁止している。
そして、名義貸しも風営法第49条第3号で刑事罰の対象になることが明記されており、営業許可の取り消しや営業停止といった処分の対象にもなる。
名義貸しの場合は、風営法第49条第3号に無許可営業と同じく2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはこれを併科するとされている。
したがって、名義貸しも無許可営業と同様に重い処罰を受ける類型となることは認識しておきたいところだ。
客引きやつきまとい
風営法第22条第1項第1号および2号には、風俗営業を営むものが客引きをした場合や客引きをするために立ちふさがったり、つきまとったりする行為も風営法違反だと明記されている。
いわゆる、キャッチのような行為も営業のために当たり前に行われているエリアもあるが、こういった行為は禁止されており、刑事罰の対象になる。
この客引きつきまとい行為は、風営法第52条第1号により、6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科するとされている。
無許可営業や名義貸しよりは軽いとはいえ、罰金刑だけではなく懲役刑があり、重い処罰を受ける可能性がある行為だという認識をしておこう。
18歳未満の接待
少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止すること目的としているため、このような年齢制限に関する規制もある。
具体的には、下記の2つが禁止されている。
18歳未満の者に客の接待をさせることや午後10時から翌日の午前6時までの時間において18歳未満の者に接客させること、20歳未満の者に酒類またはたばこを提供することだ。
こういった違法行為をした場合には、風営法第50条第1項第4号により1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金またはこれを併科すると定められている。
まとめ
知っているようで知らない風営法についてまとめてみたがいかがだろうか。
もう少しディープな部分を期待していた人からすると肩透かしかもしれないが、実はディープな部分についても多少なりとも書ける部分はあると自負している。
このあたりについては少々長くなるので、また機会があれば書いていこうと思う。
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