2022年1月現在の円安が進む日本に対する危惧

2022-01-11 投稿: 植田 振一郎

苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)
→ 税金や借金などを情け容赦無く取り立てること。

税金や借金を取り立てることに関しては状況にもよると思っている。

税金に関しては、その使い道がしっかりしていれば、高い税率をかけて運用して特段問題ないと思うし、借金についてはどういった借金なのかその種類にも寄るといったところだ。

こと税金に関しては国策であり、最近気になっていたことに対して、とてもわかりやすくかつ考えさせられる記事を見つけたので、今回はそのことについて書いていこう。

私が最近気になっていたのは、円安が進んでいることについてだ。

2022年1月10日時点で、日本円の価値はUSドルに対して115円後半となっている。

円安や円高とはどういう状態なのか

円安とか円高という言葉を聞いただけでアレルギーを感じてしまう人も案外多い。

私個人的な円安や円高に関する考え方はあれど、経済学者でもなければ国策を担う政治家や役人でもないので、円安と円高のどちらがいいかといった議論は置いておいて、簡単に説明しておこう。

円安とは輸入品が高くなる状況で、円高は逆に輸入品が安く買える状況だと覚えておくといいだろう。

反対に輸出の側面を考えると、円安の方が安い価格で商品を輸出できるので、海外での競争力は上がるということになる。

ただ、あくまでも海外で競争力のある商品やサービスがあればという話なのだが、このあたりからは私見も入ってくるので、フラットに円安と円高の状況を覚えておくといい。

円安に対する危機感

前置きが長くなったが、せっかくなので是非読んで欲しい記事がこちらである。

日本人は「円安」がもたらした惨状をわかってない

(出典:東洋経済オンライン)

著者の野口悠紀雄氏は一橋大学の名誉教授という立場の方なのだが、私が情報収集するときに少なからず勝手にお世話になっている人の1人である。

偏見かもしれないが、教授という立場にある人の多くは難しいことを難しく解説する傾向にある中で、野口悠紀雄教授の経済学やファイナンス的な解説は非常にわかりやすい。

今回の記事についても全くその印象は変わらず、今の日本の状況が端的に捉えられており、僭越ながらまとめがてら要約してみようと思う。

日本では失われた20年から失われた30年という言葉が出てきている。

単純にグローバルでの競争力を失っていることを意味している言葉なのだが、その根本にあるのが円安政策で、その政策がもたらした惨状だというものだ。

日本が円安政策に踏み切ったきっかけ

日本のGDPは世界第3位ということはよく知られている。

このGDPという指標は国内総生産のことで、一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値のことを指している。

つまり、日本のGDPというと、日本企業が国外で生産した付加価値は含まれないということだ。

国力全体を判断する上では大切な指標ではあるが、個人的により大切な指標だと思っているのが、1人あたり名目GDPという指標だ。

こちらはその名のとおり、GDPを人口で割った数字で、こちらが国の平均的な豊かさを表す指標だとされている。

そして、韓国や台湾の1人あたり名目GDPや賃金が、日本に近づき、あるいは日本を追い越そうとしているのである。

20年以上にわたる日本経済の停滞と、韓国や台湾の顕著な経済成長が、この結果をもたらすことになった。

その原因がどこにあったのか。

そのきっかけは、1980年頃から始まった中国の工業化で、1990年代に本格化した。

安い労働力を使って、それまで先進国の製造業が作っていた製品をはるかに安い価格で作り、輸出を増大させたのである。

先進国の製造業は極めて大きな打撃を受けたのだが、これに対して、どのように国策を取ったかが明暗を分けたと指摘されている。

対応できる国策には大きく2つあり、1つ目は輸出品の価格を切り下げて、中国の低価格製品に対抗すること。

もう1つは、中国が作れないもの、あるいは中国製品より品質が高いものを輸出することだ。

著者は前者を安売り戦略と呼び、差別化戦略と呼ぶとしているが、ここに関しては結果論も含まれていると思うので、割愛しよう。

日本の戦略と韓国および台湾の戦略の違い

中国の工業化に対して、日本は2000年頃以降、国内の賃金を円ベースで固定し、かつ円安にするという方向へ舵を切った。

これによって、ドル表示での輸出価格を低下させて輸出を増大させようとしたのである。

十分に円安にすれば輸出が増えるだけでなく、企業の利益を増やすこともできるという、いわゆるボリュームゾーンと呼ばれた政策だ。

新興国の中間層を対象に、安価な製品を大量に販売しようとするもので、結果として1990年代前半までは上昇していた賃金が頭打ちとなったり、現在の日本の姿がある。

これを揶揄する意味でも、安売り戦略とされているのだろう。

一方で、この間の韓国や台湾を見てみると、国内の賃金は上昇し、また為替レートが傾向的に減価することもなかった。

その根底にあったのが、品質を向上させ、あるいは中国が生産できないものを輸出するか、新しいビジネスモデルを開発するという、いわゆる差別化戦略が取られたことにあると結論づけている。

実際、韓国の場合、製造業輸出品に占めるハイテク製品の比率は30%程度であり、最近では35%程度に上昇しているが、日本の場合は20%程度と大きく差が開いている。

 

日本では、2000年頃から輸出が増えたが、輸入額も増大した。

輸入品の中には、原油など、価格弾力性の低いものがあるため、輸入価格が上昇しても輸入量を減らすことができない。

つまり、通貨が安くなれば、輸入額がさらに増えるので、貿易黒字は減少する。

結果、日本の貿易黒字は2005年頃から減少に転じ、さらに貿易収支が赤字化した。

これは、家計で言えば、退職後の人々と同じパターンだと野口悠紀雄教授は指摘している。

給料を得られないので、それまで蓄積した資産の収益で生活を支えるパターンとな同様だというのである。

反対に、韓国、台湾では、輸出の増加が輸入増加を超えたので、貿易収支の黒字が拡大した。

また、韓国企業の韓国企業の成長は、時価総額の増加に現れているという。

2000年から2020年の間に、日本の時価総額の合計は、3.157兆ドルから6.718兆ドルの2.13倍。

これに対して、韓国企業の時価総額合計額は、同期間中に、0.171兆ドルから2.176兆ドルへと、実に12.7倍になっている。

巨大時価総額企業の台頭

韓国にはSamsung(サムスン)、台湾にはTSMCというグローバルでも存在感の大きい巨大時価総額企業が台頭している。

Samsungの時価総額は、2021年12月末時点で4,419億ドルの世界第16位。

TSMCの時価総額は、2021年12月末時点で6,239億ドルでの世界第10位だ。

ちなみに、日本で時価総額トップの企業であるトヨタ自動車の時価総額が、2,568億ドルで世界第41位なので、どれほど差が出ているのかよくわかる。

また、ソニーが1,567億ドル、日立が516億ドル、富士通が340億ドル、三菱電機が271億ドル、東芝が178億ドル、NECが126億ドル、パナソニックが110億ドルという時価総額だ。

これら全ての日本を代表する総合電機メーカー7社を合わせても3,108億ドルということは、Samsungの7割にしか及ばない。

さらに、トヨタ自動車を加えて8社の時価総額を総計しても5,676億ドルなので、TSMC1社に及ばないのである。

まとめ

もちろん、韓国や台湾の国策に近い戦略が今後も同様に成長路線を維持できるかは不透明だ。

米中貿易戦争の影響も大きいだろうし、実際に韓国の貿易収支黒字は、2018年ごろから頭打ちになっていることから、経済成長も頭打ち気味だ。

それから、TSMCの急成長も、自動車のEVシフトが進んでいることが牽引して半導体不足という短期的現象で増幅されている側面もある。

ただ、根本的な考え方として通貨安となる円安に対する意識が韓国とは全く異なるという野口悠紀雄氏の主張は確かに一理あると感じるのである。

ではどうすればいいのかといった具体案が記されていないし、私レベルの人間がマクロ視点で考えること自体がナンセンスかもしれないが、やはり国力が弱まっていることは明確だ。

それを目の当たりにして、このまま大人しくただただ行きていければいいという閉塞感のある生き方はしたくない。

だから、1つずつできることからやっていくしかない。

 

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