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2021年12月12日 投稿:swing16o

アウトドア業界を牽引するモンベルのブランディング

佳人薄命(かじんはくめい)
→ 美人は幸薄く、また命も短いことから、運がよくないということ。

美しいものでもしっかりと長続きしているブランドがある。

昨今のアウトドアブームで瞬間的に盛り上がっているブランドも多くある中で、しっかりとファンを獲得しているブランドだ。

mont-bell(モンベル)

このモンベルが実は日本のブランドであることをご存知だろうか。

そして、このモンベルが仕掛けるブランディングについても紹介していこう。

モンベルの歴史とブランディング

モンベルは、1975年に辰野勇氏が創業。

Function is Beauty(機能美)とLight & Fast(軽量と迅速)をテーマに開発された商品が多くのアウトドアファンを虜にしている。

そんなモンベルがアウトドア愛好家のために役立ちたいと発足した制度がある。

それが、モンベルクラブである。

発足以来成長を続け、今年2021年4月には、ついに登録者数が100万人を超えたという。

このモンベルクラブの成功がモンベルの今の地位を築いているといっても過言ではない。

 

モンベルの「年会費1,500円」ポイントカードに100万人が登録する理由

(出典:Forbes)

こちらの記事を一読すれば一目瞭然だが、モンベルクラブの魅力が書かれている。

まずは、モンベルクラブの様々な特典の魅力についてた。

入会すればポイントカードの付与やオリジナルカタログや会報誌である、OUTWARDの送付、提携施設での優待などが受けられる。

また入会および継続特典で500ポイントが進呈されるほか、初年度は購入ごとにポイントが5%加算される。

つまり、初年度であっても2万円分買い物をすれば、入会特典と購入時のポイントを合わせて1,500ポイントとなり、入会金の1,500円分を回収できることになる。

その後、継続年数や累計買い物金額に応じて加算率はアップし、20年以上継続または累計買い物金額100万円(税込)以上で9%に達する。

要するに、長年継続すればするだけ、モンベル商品を買うとお得になるということだ。

モンベルクラブ発足の目的

こうやって書いていくと、モンベルクラブは顧客の囲い込みを目的として発足したと思うかもしれない。

ただ、物語はそんなに単純ではない。

モンベルクラブの発足は1985年、モンベル創業11年目のことだ。

当時のモンベルは通信販売によるBtoCビジネスの取り組みを開始し、消費者へのダイレクトなアプローチを探っていた。

1,500円という年会費は発足時から変わっておらず、そこにはモンベル独自のブランディングの秘密がある。

単なる顧客の囲い込みを狙うなら年会費を無料にする選択肢を取るのが一般的ではないだろうか。

無料だからと会員になったことがあるサービスが1つはあるという人が大多数ではないだろうか。

ところが、モンベルの意図は違った。

単なる営業目的の会員獲得ではなく、自然を愛するモンベルファンと企業の理念や価値観を分かち合うというのがモンベルクラブの第一の目的とした。

会員一人ひとりにモンベルの思いを伝えるには、会報誌の制作と発送などの費用がかかる。

その費用を捻出し、会員制度をサステナブルなものにしていくには、年会費がどうしても必要になると考えたのである。

つまり、今の時代のサブスクに近いカタチを35年以上前から実行していたということだ。

 

先述した会員限定の会報誌である、OUTWARDには、モンベルが支援する冒険や被災地支援に代表される社会活動など、多面的な活動を会員に届ける目的がある。

コンテンツとしては、創業者の対談記事、アウトドアの達人による連載、素材や機能性など商品の詳細、イベントや新商品の告知、支援活動の報告など多岐に渡っている。

読み物として楽しめることはもちろん、会員がよりモンベルの理念を深く理解できるようにと工夫して編集されているのである。

会員のモチベーションについて

とはいえ、会員から継続して1,500円の年会費をもらうということは簡単ではない。

会員でいることのモチベーションを維持してもらわなければいけないからだ。

そんなモンベルクラブの会員に向き合っている取り組みを紹介していこう。

1986年には全国のフレンドショップでの優待をスタートさせた。

会員カードを提示すると山小屋やキャンプ場、アウトドアスクールなど全国1,900カ所(2021年9月現在)を超える提携施設のフレンドショップで割引などの優待が受けられる。

当初は個別の店舗や施設の登録が主だったが、次第に地方自治体や観光協会の協力もあり、町、島、村ぐるみで優待サービスが得られる、フレンドエリアも増えてより魅力が高まった。

全国区に成長したモンベルだからこそ、全国各地の地域経済の活性化に協力し、エコツーリズムの促進をしていくという考えがこのサービスに込められているのだ。

会員限定のイベント開催にも精力的だ。

モンベルクラブ会員のための大規模イベントである、モンベルクラブ・フレンドフェアでは、全国のフレンドショップやフレンドエリアが一堂に会する。

また、カヤックやアスレチック体験が家族ぐるみで楽しめたり、普段割引を行わないモンベルのアウトレットセールがあったりと会員との交流を図る多くのコンテンツが提供されている。

ただし、2020年、2021年は中止またはオンライン開催となっている。

 

他にも、会員とのつながりを強くする活動の1つに独自の基金制度である、モンベルクラブファンドがある。

年間1,500円の会費のうち50円がモンベルクラブファンドに算入され、それを原資に災害支援や自然保護活動などが行われるのである。

100万人の会員から集められるとなると、ファンド基金は年間およそ5,000万円になる計算だ。

企業の同様のCSR活動は、一般的に企業の収益から捻出されることが多いため、その仕組みだと収益が上がらなくなるとその原資も絶たれる。

一方で、モンベルクラブファンドの仕組みなら、モンベルクラブ会員が存在する限り原資は確保されるため、恒常的な支援活動を行うことができるというメリットがある。

昨今、環境問題がより注目される中で、会員にとっても会員であること自体が大切な自然や社会貢献につながるとなれば、会員のモチベーション向上に繋がるだろう。

まとめ

モンベルの魅力について書いたが、ユーザ目線に立って、それを実直に続けていることが全てだろう。

瞬間の売上や利益を追求するのではなく、絶対的なファンを着々と増やしていき、そんなファンが100万人を突破したという結果に繋がっている。

企業がどういう方向で進むべきなのか示唆しているようにも思う。

とりわけ、会員獲得を目指すというサービスを展開する場合には参考にしてもらいたい。

 

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植田 振一郎 Twitter

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