蝸牛角上(かぎゅうかくじょう)
→ 取るに足らない争い。(蝸牛は、カタツムリのこと)
取るに足らないというのは、価値のない、議論に値しない、つまらないといったニュアンスだ。
つまり、争う価値のないものという意味なのだが、それでも戦わないといけないときがある。
追い込まれたとき、窮地に立ったとき、その状況を変えようと立ち上がる人たちが現れる。
逆にいうと、そういった状況にならないと、なかなか変えられないというのが人間の性なのかもしれない。
昨今、くり返し話題になっているのが、テレビ業界が危機だというものだ。
テレビを見る人が減って、それと同時に広告費で稼ぐというモデルが崩壊の一途をたどっているというのが、おおよその見解である。
日本のテレビ局の実態
日本のテレビ放送は5つの主要放送局から成り立っている。
- 日本テレビ:4ch
- テレビ朝日:5ch
- TBSテレビ:6ch
- テレビ東京:7ch
- フジテレビ:8ch
これらの本社は全て東京都港区にあり、ラジオ放送についてもほぼほぼ同様の位置づけになっている。
そういった背景から、在京キー局とか東京キー局と呼ばれ、キー局と省略されることもある。
首都圏以外になると、チャンネルも変わってくるので、あくまで首都圏のチャンネルを上記には書いている点は注意して欲しい。
例えば、広島だとTBS系列は3chだし、テレビ東京枠は基本的にはないといった具合だ。
そして、それぞれのキー局にはイメージがついていて、バラエティのフジ、ドラマのTBS、スポーツのテレ朝などといわれている。
キー局4社というカテゴリになると、テレビ東京がなくなって、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、フジテレビとなる。
そんな4社の2020年のスコアは下記のとおりだ。
- 日本テレビ:売上3,913億円(営業利益345億円)
- テレビ朝日:売上2,646億円(営業利益144億円)
- TBSテレビ:売上3,257億円(営業利益108億円)
- フジテレビ:売上5,199億円(営業利益163億円)
売上ではフジテレビが 他局を圧倒しているが、利益率は日本テレビが圧倒的に高い結果となっている。
ちなみに2019年のスコアは下記のとおりだ。
- 日本テレビ:売上4,265億円(経常利益492億円)
- テレビ朝日:売上2,936億円(経常利益320億円)
- TBSテレビ:売上3,567億円(経常利益212億円)
- フジテレビ:売上6,314億円(経常利益348億円)
全ての局で売上高が下がっていること、また経常利益が営業利益を圧倒的に上回っていた事実が鮮明になっている。
各局のテレビ離れ対策
スコアを見る限りでも、テレビ離れが進んでいるというのは、どうやら本当らしい。
もちろん、そんな状況を各局が黙ってみているわけもなく、対策を講じている。
時系列に並べていくと下記のとおりだ。
- 日本テレビ:2014年にHuluの日本事業を買収
- フジテレビ:2015年にNetflixと制作合意
- テレビ朝日:2016年にAbemaTVをサイバーエージェントと共同出資
- TBSテレビ:2017年にParaviを6社で共同出資
いずれも今まではテレビのみでの配信を行っていたが、動画配信サービスとの協調を始めている。
これがまさにインターネットの脅威だ。
上記の取り組み以外にも、在京民放キー局が2015年に立ち上げた民放公式テレビポータルのTVer(ティーバー)もある。
そんなTVerは、2021年8月に4,000万ダウンロードを突破して絶好調だ。
テレビ局のジレンマ
各局がネット配信に乗り出したことで、動画配信サービスは盛り上がっている。
一方で、勝者と敗者が少しずつ明暗を分け始めているのもまた事実だ。
キー局の中の1つ、TBSテレビを見てみよう。
先述したが、TBSといえばドラマが売りのテレビ局である。
その看板として掲げているのが、日曜劇場である。
その枠で放送されるドラマをNetflixやDisney+(ディズニープラス)でも配信するようにした。
テレビ局が地上波で放送中のドラマを、自社が運営参画する動画配信サービスへ展開することは一般的だ。
また、Netflix配信を前提にしたドラマ制作なども存在する。
ところが、日曜劇場のような看板ドラマを他社サービスへ放送と同時期に配信することは極めて異例なことなのである。
なぜ、こんな判断をしたのだろうか。
まず、なんといっても、Netflixは世界190ヶ国以上、2億1,360万人もの会員がいる。
自社コンテンツをNetflixで配信することで、日本国内だけではなく全世界へ一括して届けることが可能なわけだ。
韓国のコンテンツで日本でも大ヒットした、梨泰院クラス、愛の不時着、イカゲームなどの作品の中の1つでも見たという人は多いだろう。
Netflixを通じて配信を行えば、今までは各国のローカルのテレビ局や動画配信サービスへ1ヶ国ずつ売っていたといった手間も少なくなる。
Netflixは、2020年9月に日本国内の会員数が1年で約200万人増加し、会員数が500万人を突破したと発表している。
その一方で、TBSが主体となっている動画配信サービスのParavi(パラビ)は、依然として会員数100万に達していないという事実がある。
Paraviが順調に会員数を獲得できていれば、ライバルであるNetflixにキラーコンテンツをわざわざ流す必要はない。
自社の動画配信サービスが上手くいっていないという裏返しと取ることができるのである。
ディズニーが運営するDisney+に、2021年7〜9月に放送したTBSドラマである、TOKYO MER~走る緊急救命室~の配信を決めたのも同様の理由だ。
まとめ
注意したいのは、テレビ局はという形で業界全体を1つにまとめて話を進めてはいけないということだ。
Huluのように会員数が順調に増えている動画配信サービスもある。
ただ、やはりNetflixやDisney+といった資金力が潤沢にあるサービスとの真っ向勝負となると、激しい戦いとならざるを得ない。
そこで、動画配信サービスからコンテンツ提供を行うパートナーとしての立場へとピボットが始まっている傾向が見れる。
TBSだけでなく、フジテレビのコンテンツもいくつか配信が確定したものもある。
TBSに限っては、2022年3月には海外戦略の新会社を設立する予定で、300億円規模のコンテンツ制作予算を用意するという。
新会社が制作するコンテンツは、地上波テレビでの放送などを念頭におかず、当初から世界展開を想定して制作される見込みだ。
個人的には、日本のコンテンツも世界でヒットする可能性は十分にあると考えている。
韓国が大成功を収めたように、すぐに結果を求めるのではなく、何度も何度もトライして継続を心がけて欲しいと願っている。
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