怨敵退散(おんてきたいさん)
→ 怨みに思っている敵よ退散せよという、悪霊を押さえる降伏の祈願などにいう語。
多くの経営者が新型コロナウイルスに対して、怨念にも近い想いをしているのではないだろうか。
あからさまにそんな顔をしたり声に出すことはないとはいえ、私ですら影響があったのは事実だから、多くの優秀な経営者の頭も悩ましたに違いない。
槍玉に挙げられた飲食業界が打撃を受けていることは、多くのメディアが取り上げていることから周知の事実だが、当然その周りの業界も大打撃を受けている。
他にも観光業界も壊滅的だということもよく知られている。
細かいところまで挙げていくと本当に切りがないし、そんなことをしてもなんの意味もない。
それよりも、逆境を乗り切るためにポジティブに策を講じて、実際に動いている企業を参考にしたいと思う。
そんな中、こんな記事を目にした。
(出典:東洋経済オンライン)
オリエンタルランドの直近のスコア分析
オリエンタルランドといえば、国内テーマパーク最大手でディズニーランドやディズニーシーを運営していることは誰もが知っているはずだ。
そんなオリエンタルランドの決算発表があった。
昨年のような長期休園はないにせよ、本来の実力値からは程遠く、厳しい決算だった。
2021年4~9月期の売上高は前年同期比65%増の975億円、営業損益は193億円の赤字(前年同期は241億円の赤字)というスコアだった。
予想外にコロナ影響が大きく、各種の入園制限で赤字やむなしという結果になってしまった。
パーク入園者数は390万人で、前年同期の269万人から増加したが、前期の4~6月は臨時休園期間に当たる。
営業していた7~9月期で比較すると30%超の減少し、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が思い切り影響した結果といわざるを得ない。
ゲスト1人当たり売上高は1,752円増の1万4,877円で、チケット収入は3月に高価格帯チケットを導入したことなどで増加した。
また、キャラクターのダッフィー関連商品や東京ディズニーシー20周年関連商品が貢献し、グッズ販売収入も増加。
新メニュー投入などで飲食販売収入も伸ばした。
そして、今回は決算発表と同時に通期業績予想も発表した。
売上高は前期比40%増の2,390億円、営業損益は242億円の赤字(前期は459億円の赤字)とした。
赤字は2期連続となる。
ちなみに、新型コロナウイルスが蔓延する前の2019年3月期のスコアは売上高が5,256億円に対して、営業利益は1,292億円、純利益も902億円とまさに無双状態だった。
翌年の2020年3月期のスコアも、売上高は4,644億円、営業利益は968億円、純利益は622億円という向かうところ敵なしといった立派なものだ。
2期連続の大きな赤字であっても、まだまだ十分に余力のある超絶優良企業であることは間違いない。
ディズニーの2021年下半期の戦略
下期計画の入園者数は、前年同期比172万人増の660万人。
11月までは各パークでの上限を1万人とし、12月から状況を見て引き上げるとしている。
業界団体のガイドラインはソーシャルディスタンスについて、1メートル以上確保することが望ましいとしており、これがネックとなっている。
アトラクションの待機列やショップはどうしても密になりやすいため、慎重に引き上げなければいけない。
となると、ファンにとっては厳しいチケット争奪戦が当面続くことになりそうだ。
それから、イベントも徐々に平常化させるとしている。
名物である夜のパレードを11月から再開した。
ディズニーホテルに泊まるゲスト向けに午前8時からシーに入園できる、アーリーエントリーチケットも販売を再開する。
重点施策としているデジタル戦略も着々と進めている。
現在のフードは各施設に並んで注文することになっているが、スマホで注文できる、モバイルオーダーを実験済みで、相応の効果が得られたため本格導入することになっている。
待ち時間の解消に加え、人員配置も効率化でき、同時に全体的な業務システムの効率化も進める。
ディズニーの高付加価値路線
オリエンタルランドは、持続的な成長を実現するために、入園者数と単価のバランスについて検討を進めているとしている。
つまり、入園者数に比重を置いた収益構造から転換する可能性も含め、議論をしている。
これは、一段と高付加価値路線に舵を切る宣言とも受け取れる。
オリエンタルランドは幾度も1デーパスポートを値上げし、強気の値上げと指摘されてきた。
2021年10月にも価格帯の幅を広げ、最大9,400円と700円の値上げを実施したばかりだ。
値上げだけでなく、設備投資も進めてきた。
2022年4月には、トイ・ストーリーがテーマの新ホテルを開業した。
ディズニーシーでは23年開業を目指し、追加投資として過去最高額の2,500億円を投じる新エリアのファンタジースプリングスが建設中だ。
国内で比較対象となるユニバーサル・スタジオ・ジャパンも毎年のように値上げを実施してきた。
同施設も3月には任天堂と組んだ新エリアを開業している。
2021年10月にはポケモンと戦略的アライアンスを結び、複数のプロジェクトが進行中であるとも発表している。
このように、テーマパークでは大規模な投資が行われ、それをパスポート(入場料)で回収するのが基本モデルだ。
パーク内だけでなく、ホテルも含めたリゾート全体で単価向上を考えることが大切ということで、より長い期間の滞在を楽しむ客を中心とした、高付加価値型リゾートを目指している。
とはいえ、毎日のように訪れる熱心なリピーターが多く存在するのが日本のディズニーリゾートの強みでもある。
このあたりのバランスの取り方は重要な課題ともいえる。
まとめ
東京ディズニーランドが誕生して38年間。
コンテンツ開発に巨額投資をして、入園者数を増やす。
その上でパスポート料金を値上げして回収して、さらに開発するというサイクルは今もなお変わっていない。
今後は入園者数など規模を追わない高付加価値路線の経営にシフトするのか、その舵取りに注目が集まっている。
米カリフォルニアのディズニーリゾートは1日最大159ドル(1パークの券、10歳以上)で、日本円にすると1万8,000円を超える。
これは、日本のディズニーリゾートのパスポートの倍近い水準にある。
そして、今後の流れの鍵を握っているのは、デジタル戦略の部分であると思っているし、どういったテクノロジーと融合していくのか楽しみである。
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