英俊豪傑(えいしゅんごうけつ)
→ 武勇に優れ、度胸のすわった人。
2020年に世界で一番ダウンロードされたアプリがなにか即答できるだろうか。
ちなみに、全世界でのアプリの総ダウンロード数は1,430億弱といわれている。
その数が大きすぎて、いまいち想像できないが、前年の2019年は1,155億ダウンロードということなので、約24%増ということになる。
世界人口が70億人だとして、全員がスマホやタブレットを持っていたとしたら、約20のアプリを年間でダウンロードしたということだ。
まあ、実際は70億人全員がスマホやタブレットを持っているはずもなく、その半分だとしても約40のアプリをダウンロードしたという数字になる。
年間でどの程度のアプリを入れているか、自分と比較してみて欲しい。
世界のアプリダウンロード数ランキング
1,430億ダウンロードの内訳として、TOP10は気になるだろう。
- TikTok:8億5,000万DL
- WhatsApp:6億DL
- Facebook:5億4,000万DL
- Instagram:5億300万DL
- Zoom:4億7,700万DL
- Messenger:4億400万DL
- Snapchat:2億8,100万DL
- Telegram:2億5,600万DL
- Google Meet:2億5,400万DL
- Netflix:2億2,300万DL
(調査企業:Apptopia社)
こうやってみると、第10位の動画配信サービスのNetflix以外は、いわゆるSNS系のコミュニケーションを図るアプリであることがわかる。
そして、第1位に輝いたTikTok(ティックトック)と第2位のWhatsApp(ワッツアップ)との間には、2億以上のダウンロード数の開きがあることも注目したい。
なぜ、こんなにもTikTokは世界で受け入れられているのだろうか。
その理由をしるには、武勇に優れ、度胸のすわった創業者の張一鳴(ツァン・イーミン)氏に焦点を当てるといい。
TikTokのルーツとは?
張一鳴氏は、中国の南開大学卒業後、スタートアップへの参画や大企業での就業を経て、2012年にByteDance(バイトダンス)を設立した。
バイトダンスの設立前にも九九房という不動産情報検索サイトを立ち上げており、2009年には他社に先行してモバイルインターネット市場向けのサービスを導入していた。
いわゆる、PCからスマホなどのモバイルに移行していく世間の流れ、モバイルシフトの波に上手く乗って150万人のユーザを獲得していた。
そんな順調だった九九房のCEOを2011年に辞任する。
2011年といえば、スマホの出荷量が爆発的に増えて普及したタイミングだ。
張一鳴氏はある日、地下鉄で新聞を読んでいる人が激減していることに気づき、情報伝達の媒体が紙からスマホに移行することを確信した。
同時にリアルタイム性、双方向性、マルチモード機能といった様々なテーマの情報が伝達できるようになることも理解していた。
垂直統合型よりもプラットフォーム型のビジネスができるとても珍しいチャンスなので、起業を決意したという。
スマホのプラットフォームビジネスとは?
張一鳴氏がプラットフォームビジネスを考えたときに、まず思いついたのはニュース配信アプリだった。
ニュースであれば、毎日多くの人が見るし、朝夕と適切なタイミングで配信することができるということに着目した結果、今日頭条というサービスを開始した。
そう、いきなりTikTokをリリースしたわけではないのだ。
今日頭条は2012年8月にリリースされ、その後わずか1年余りで9,500万人にまでユーザを増やした。
大手のポータルサイトも同様にニュース配信アプリをリリースしていたのに、なぜそこまで爆発的にユーザの獲得ができたのか。
今でこそニュース配信アプリにとっては当たり前になっているが、利用者の好みに合わせてニュースが配信されることにあった。
独自のアルゴリズムによって、その人に合わせたニュースを集め、パーソナライズしてユーザに届けているのだ。
ByteDance(バイトダンス)では、ユーザの閲覧履歴や属性から利用習慣、好み、場所、読む時間帯に合わせたニュースを提供したのである。
これを可能にしたのが、コンテンツ情報、ユーザー情報、環境情報からなるビッグデータだ。
このビッグデータの活用をするアルゴリズムがバイトダンス社を急成長させていくのである。
プラットフォームビジネスの飛躍
アルゴリズムを活用してパーソナライズできるということは、当然広告にもビジネスは派生する。
ユーザに合わせた広告を選んで配信できるということは、それを見て購入してもらえるというコンバージョン率が高くなる。
そんな広告のアルゴリズムの開発も手がけた。
ただ、様々なアルゴリズムはプログラムできても、肝心のコンテンツが充実していなければならない。
当初はメディアに流れているものをそのまま流用していたけれども、それでは様々なメディアから訴えられるのは想像に難くない。
そこで、きちんとコンテンツが提供できるようにアライアンスを組み、一般ライターまで囲い込みを始めた。
ライターを育成するプログラムが当たり、2019年12月には投稿アカウントが180万を超え、1日平均60万件の記事が配信されている。
ByteDance(バイトダンス)社のビジネスモデルのストロングポイントが決まった瞬間でもある。
- 外部コンテンツの有効活用
- アルゴリズムを活用したコンテンツ配信
- アルゴリズムを活用した広告提供
このビジネスモデルが原型となっている。
ショートムービー業界に参入
そして、2016年にスマホ向けのショートムービーアプリを開発する。
10数秒から数分の動画を撮影、編集、共有できるもので、TikTok(ティックトック)の原型である抖音を発表する。
音楽機能に特化しており、そこにニュース配信アプリの今日頭条で開発したアルゴリズムを掛け合わせた。
その人の好みに応じて動画を次から次へと流すことができるので、ユーザは1曲だけのつもりが、気がつけば2曲、3曲とつい動画を見てしまうのである。
また、ユーザが関心を持ちそうな広告が短い動画のコンテンツとして流れるのでコンバージョン率も高くなる。
それから、知っておいてもらいたいのは、実は抖音はとある先行していたショートムービーサービスを徹底的に模倣することで今の地位を築き上げた。
そのサービスは、Musical.lyだ。
UIだけでなく機能もほとんど丸パクリして、Musical.lyがアメリカ市場を先に目指した間に中国国内での圧倒的な地位を確立したのである。
その後、2017年に海外向けにリリースしたのが、TikTok(ティックトック)というわけだ。
まとめ
今や世間の注目をこれでもかというほどに浴びているTikTok(ティックトック)。
その原点がニュース配信アプリだったということは意外だったかもしれない。
なによりも重視したのが、アルゴリズムとインフルエンサーを抱えるノウハウであることにも注目したい。
ByteDance(バイトダンス)社のビジネスモデルのおさらいをしておこう。
- ユーザの閲覧履歴などの行動情報を元にその人に合ったコンテンツをレコメンドするという技術を開発
- この独自技術を生かしてキラーアプリを開発して世界中に配信
- 自社のアプリの利用者を拡大し、できるだけ長い時間そこに留まらせて膨大なトラフィックを確保
- トラフィックが増えれば増えるほど、広告料収入も伸びていく
ということは、TikTok(ティックトック)の次のキラーアプリもいくつか準備しているに違いない。
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