手がかりの掴めないものを探し求める状況。
暗い中を模索するというまさにそのままなのだが、人間が暗闇に追い込んでいる可能性があるらしい。
学術誌「Science」に掲載された研究データは世界中の63種類の大型哺乳類を調べたものだ。
研究者たちは世界中の研究を網羅し、人間の影響がある場合とない場合のどちらにおいても行動パターンが分かっているケースのみを対象にメタ分析を行っている。
狩猟シーズンとそうでない場合のシカの行動や、登山シーズンとそうでない場合のクマの行動パターンなどを綿密に分析している。
夜行性の定義を日の入りから日の出までに活動している時間として、動物たちの行動に人間の存在がどのように影響しているかという調査だ。
その結果、人間を避けるために夜間に活動する傾向が平均で1.36倍増えていたという。
これがどれくらいのインパクトなのかといえば、昼と夜とで五分五分に時間を分けて活動していた動物がいたとしよう。
その動物が夜間の活動を68%まで増やして、昼間の活動を32%に抑えるイメージだ。
動物たちにとって人類は脅威だ。
動物たちの生息環境を破壊し、食べ物を奪い、空気や水を汚染し、生態系を乱し、ときには乱獲する存在だ。
ただ、そんな人類についてもこんな興味深いデータがある。
霊長類が他の哺乳類に比べると昼の生活に適応力が高い理由が説明されている。
哺乳類2,415種を対象として行動様式を分析している。
最初期の哺乳類の祖先が出現したのは2億2000万~1億6000万年前で、爬虫類の祖先から分かれて進化したそうだ。
その頃から哺乳類の祖先は夜行性だったとされている。
一方、最盛期だった恐竜は昼行性で、現代の爬虫類のように体を温めるために日光を必要としていた可能性が高い。
この分析データは、哺乳類が中生代末まで夜行性のままだったと示している。
そして、今から約6600万年前中生代の終わりに地球の歴史の節目となる出来事が起こる。
小惑星が衝突して、恐竜をはじめとする地球上の生命の4分の3が死滅した。
そんな中、地球上には哺乳類が繁栄していく。
その後、完全な昼行性に移行した最初の哺乳類の一種が霊長類の祖先とされている。
移行時期は約5200万年も前ということが驚きだ。
つまり、人類を含む霊長類が他の動物たちに比べて、昼の生活に適応できているのは、かなりの長い期間をかけて進化をしてきたからとする説だ。
なぜ夜行性から昼行性に移行していったかは不明とされているが、捕食リスクが減ったことが最大の理由ということは納得できるように思う。
つまり、恐竜という絶対的な強者がいなくなったことで、ヒエラルキーのトップに立った哺乳類の中でも特に霊長類が堂々とお日さまのあたる場を得たということだろう。
そんな人類が大きく括れば同種となる他の哺乳類を暗闇に追いやっているというデータがあることが皮肉なものである。
人類もまたヒエラルキーのトップから落とされる日が来るのかも知れない。
その後に全く違う生物が登場することもあり得るだろう。
まさにこんな世界を描いたのが、手塚治虫の火の鳥でとても好きな漫画である。
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