第57話
ずっと協力してくれているブレイブリッジ社とも、そういう話でいろいろとスケジュールをタイトに設定してもらっていた。
そこにはプレゼント概念の啓蒙戦略もあったが、やはりとにかく1日でもはやく世に出したいという気持ちもあった。
ただ、やはりなかなか上手くいかないところもある。
検証期間が短く、中途半端なままの商品をファンに届けるのは、せっかく興味を持ってくれた人がすぐに離れる結果になる。
そして、第一印象が悪くて離れて人が戻ってくることは、様々な商品が登場しているIoTの世界では特に難しい。
つまり、最優先は発売日ではなく、完璧な状態でなくてもいいから、最低限使ってもらったときに納得してもらえることだ。
ということで、クリスマスイブの発売というのは不本意ながらも諦めた。
そして、次の候補がバレンタインデーになった。
こちらが勝手に決めたこととはいえ、二度も延期はできない。
ましてや、クラウドファンディングも実施していて、1ヶ月後にはしっかりstakを届けるという宣言もしていた。
そのスケジュールも何度も何度も確認しながら決めたことだった。
それなのに、2019年2月14日の発売開始も延期を余儀なくされた。
第58話
完全に言い訳になるが、開発のスケジュールが甘かった。
二度目の延期を余儀なくされた。
第1話からちょいちょい披露しているが、俺の根本には「ノリ」がある。
もちろん、ある程度は戦略や戦法を考えている。
けれども、いつもどこか細かく考えすぎても仕方ないというところに行き着いてしまう。
それがいいか悪いかは正直わからない。
二度も発売日が延期になっているのだから、悪いことだという声が多いのも理解できる。
ただ、二度の延期を経て得たものもある。
そのあたりは、別途書いていくとして、とにかく2月14日のバレンタインデーをstakの販売開始日にするという計画もズレ込んだ。
Makuakeで支援してくれたファンの方々へは全員に謝罪のメッセージを送った。
その内容は、「こちらの完全なる不手際でリターン品の配送が2019年4月1日に延期せざるを得なくなり、本当に申し訳ありません」というものだ。
と同時に、完全にこちらの都合なので、返金対応も受け付けるということも述べた。
すると、中には詐欺師呼ばわりする人がいたり、罵声とともにすぐに返金しなさいと強い口調で返信してくる人もいた。
第59話
このあたりのクラウドファンディングの支援者についても少々誤解していたところがあったことも書いておこう。
クラウドファンディングとは、プロジェクトの起案者に共感した人が支援するという応援という側面が強く、基本的にはリターンを求めるよりも寄付に近い概念があるという理解だった。
そして、それは俺だけでなく世間一般的にもいわれている概念だと思う。
ただ、これだけ急速に世の中に浸透したのもあってか、必ずしもそういった支援者ばかりではないということだ。
もちろん、スケジュールを守れないプロジェクトおよび起案者に一番問題があって、その責任転嫁をするつもりはない。
ただ、初めてやることが多いプロジェクトは、スケジュールどおりにいかず、結果リターンが遅延する場合は比較的あるあるだ。
以前も同様のことを書いたが、特にデバイスやガジェット系のプロジェクトになるとそういった傾向が高くなる。
くり返すが、だからといって言い訳して遅延していいわけではない。
とはいえ、Makuakeだけでなく、他のクラウドファンディングのプラットフォームでもクレームとなっていることが多いのもまた事実だ。
そして、支援者も様々だ。
第60話
2019年2月14日のバレンタインデーの販売を断念し、Makuake支援者にその意図を伝え、返金キャンセルを受け付けた結果、約1割の支援者が離れた。
そして、その1割の多くは、なかなか強烈な言葉を残して去っていった。
あまり思い出したくない過去だが、一部紹介しておこう。
「本当にできるんですか?」、「できない約束は最初からしない方がいいと思います」、「私には関係のない理由なので大至急返金を希望します」など、割とオブラートに包んで書いてみた。
もっと強烈なのもあったが、無名な人がクラウドファンディングをする段階ではファンというよりもアンチに近いギリギリのファンという意識を持っていた方がいい。
他の人から聞くと1割というのはまだいい方だという意見もあった。
もう1つ、支援すらしていないアンチも現れる。
「最初からできないと思っていた」とか「始まる前から終わった」といったスレッドが勝手に立っているのを知ったときには、なんともいえない気持ちになった。
ただ、ここが延期せざるを得なくなり、身に沁みて味わったいいところでもある。