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2026年3月8日 投稿:swing16o

欲望の正体:人生前半に貪欲であることが後半の豊かさを決める理由

羊很狼貪(ようこんろうどん)
→ 道理に背くこと、また欲張りなこと。

羊很狼貪(ようこんろうどん)という四字熟語を聞いたとき、何を思い浮かべるだろうか。

「欲張りで道理に背く人間」という否定的な印象を持つ人がほとんどのはずだ。

だが待ってほしい。

その解釈だけで終わらせてしまうのは、あまりにも惜しい。

この言葉の本質を掘り下げると、「欲望」というエンジンが人間をどう動かすか、そして若いうちの欲望がいかにして人生後半の財産になるかという、2000年以上の歴史が証明する普遍的な法則が見えてくる。

私は今も、欲望に正直に生きることを自分に課している。

stak, Inc.を立ち上げたのも、IoTという技術で地域の課題を解決したいという欲望があったからだ。

欲張りでなければ、あの決断は生まれなかった。

このブログでは、欲望をポジティブな力として再定義し、若いうちに燃やし尽くすことの重要性をデータとともに論証する。

このブログで学べること

「羊很狼貪」とはそもそも何か、その歴史的な成立背景。

欲張りという言葉がなぜネガティブに捉えられるようになったのか。

若いうちの欲望と行動力の相関関係をデータで示す。

年齢とともに欲望の輪郭が変化していく実態と、それが及ぼす影響。人生前半に欲望を全力で消費することが、後半の安定と豊かさにどう繋がるか。

羊很狼貪の誕生——紀元前の戦場から生まれた「欲望の言語化」

紀元前207年、中国の歴史書『史記』項羽本紀第七に記された場面にこの言葉の起源がある。

楚軍の大将・宋義(そうぎ)が秦に包囲された趙を救援しようとしながらも、一向に動こうとしなかった。

副将の項羽は焦りを隠せなかった。

今すぐ黄河を渡り、内外から挟撃すれば必ず秦を破れると進言したが、宋義はそれを退けた。

項羽はついに宋義を討ち、全軍に向けて命令を下す。

その令の中に刻まれた言葉が、「猛如虎、很如羊、貪如狼」——猛きこと虎の如く、激しきこと羊の如く、貪ること狼の如し——であった。

これが羊很狼貪の原典だ。

「很(こん)」は道理に従わず己の信念を押し通すこと、「貪(たん)」は飽くことなく求め続けることを意味する。

この文脈において、これらは罵倒の言葉ではなく、戦場での兵士に求められた精神の描写だ。

状況に流されず、欲望のまま突き進む力こそが、乱世の生存条件だったのである。

後に儒教的道徳観が広まる中で、この言葉は「わがままで欲深い」という否定的な意味合いへと変質していった。

だが元々の文脈では、欲望は制御の対象ではなく、動力の源だった。そこに着目すべきだと、僕は考えている。

「欲望」は今、日本の若者に最も不足しているものだというデータ

マイナビが毎年実施する「大学生就職意識調査」は、日本の若者の欲望指数を可視化する非常に重要なデータだ。

2026年卒の調査結果を見ると、就職観で最も多かった回答は「楽しく働きたい」で、次いで増加が目立ったのが「個人の生活と仕事を両立させたい」だった。

企業選択のポイントは「安定している会社」が6年連続で最多となり、「ノルマのきつそうな会社は嫌だ」という回答も年々増加している。

この数字は何を示しているか。若者が「守り」に入っているという事実だ。

もう一つデータを挙げる。

内閣府と消費者庁の調査(平成29年版消費者白書)によると、「将来に明るい希望を持っている」と答えた日本の若者(13歳〜29歳)はわずか12.2%だった。

アメリカやスウェーデンでは同様の回答が50%を超えているのに対して、日本の数値は6カ国中で最低水準だ。

希望を持てない若者が多い社会では、欲望が育ちにくい。

欲望は希望の上に成立するからだ。

「こうなりたい」という渇望がなければ、行動は生まれない。

行動が生まれなければ、結果もない。

日本の若者が静かに燃えない現象は、個人の問題ではなく、構造的な欲望不全と言ってもいいほどの社会問題だ。

欲望が行動を生み行動が結果を生むデータの存在

「欲望→熱量→行動→結果」というサイクルを、データで検証する。

日本経済新聞社が2024年に実施した「NEXTユニコーン調査」では、スタートアップ企業108社の起業時の年齢を聞いたところ、30代が45%で最多、20代が31%で続き、20〜30代で全体の約8割を占めた。

欲望と行動力が最も旺盛なこの時期に、多くの起業家が動き出している事実がそこに示されている。

一方で別の角度から見ると、ハーバード・ビジネス・レビューがアメリカの国勢調査データを分析した研究では、創業後5年間の成長率でトップ0.1%に入ったスタートアップの創業者の創業時平均年齢は45歳だったと報告されている。

さらにMIT(マサチューセッツ工科大学)のピエール・アズレイ教授らが、2007年から2014年にかけて企業を設立した270万人を分析したところ、50歳で起業した人は30歳で起業した人に比べて「Successful Exit(買収・株式公開)」を経験する確率が約2倍だという結果が出た。

ここに重要な洞察がある。

20〜30代で欲望のまま動いた人間が、失敗と経験を積み重ね、40〜50代で最大の果実を手にするというパターンだ。

若いうちの欲望と行動は「最終的な成果」ではなく、「土台の構築」に機能している。

つまり、欲望は最初から正しい方向に向かわなくてもいい。

貪欲に動き続けることで蓄積される経験値と人脈と失敗知識が、後半戦を圧倒的に有利にする。これが欲望の本当の役割だ。

年齢とともに欲望の炎は静かに小さくなっていく

問題はここからだ。

人間の欲望は自然に縮小していく。

これもデータが裏付けている。

内閣府の男女共同参画白書(令和5年版)では、「管理職につきたい」「昇進したい」という意欲が、20代と40〜60代の間で10%ポイント以上の差があることが示されている。

若い世代ほど上昇志向が強く、年齢とともにその傾向が弱まるのは、日本においても明確な傾向だ。

また、リクルートの調査では、Z世代(26歳以下)の転職は5年前の約2倍のペースで増加している一方で、その志向は「スペシャリスト」ではなく「ゼネラリスト」への傾きを見せている。

どんな環境でも生き残れる汎用的な安全を求める方向に欲望が向かい始めているのだ。

欲望が小さくなるのには生物学的な理由もある。

人間の脳内でドーパミン(報酬系の神経伝達物質)の受容体密度は、20代をピークに徐々に減少し始めるという研究がある。

新しいことへの興奮反応が鈍くなり、冒険よりも安定に傾く神経的な傾向が生まれる。

これは意志の問題ではなく、加齢に伴う自然なプロセスだ。

だからこそ逆説的に言える——欲望が最も強烈に燃えているうちに、使い切る必要があると。

炎がある間に、できるだけ多くのものを燃やしておく。

それが若いうちの欲望の正しい使い方ではないか。

マイナビの就職意識調査を時系列で見ると、「収入さえあればよい」という回答が5年連続で増加している。

欲望がお金という安全網の確保にシフトし始めている。

この変化が大学入学直後から始まっているとしたら、燃やすべき時間を最初から諦めているということになる。

それはあまりにも惜しい。

まとめ

ここで改めて問いたい。

「欲張り」は本当に悪いことだろうか。

項羽が宋義に刃を向けたとき、彼は自分の欲望に正直だった。

戦略的に考えれば、宋義のように慎重を期すことが合理的だったかもしれない。

だが項羽は待てなかった。

その「待てない欲望」こそが、楚軍を動かし、歴史を動かした。欲望には、論理では生まれない推進力がある。

これを現代に置き換える。

20代で欲望のまま会社を辞めて独立し、30代で失敗して再挑戦し、40代でようやく結果が出始める——そういうキャリアを歩んだ人間が、「安定志向」のまま40代を迎えた同期よりも豊かな後半戦を送ることは、先に示したデータが示す通りだ。

日本政策金融公庫の「2021年度新規開業実態調査」によると、起業者の平均年齢は43.7歳で、1991年の調査開始時の38.9歳から約5歳上昇している。

これは、若い頃に欲望に従って動いた人間が、経験と資本を積み上げた末に起業という形で結実させる年齢が後ろにシフトしてきているともいえる。

欲望の種まきをいつ始めるかが、収穫の時期に直結する。

私自身のことを言えば、事業の構想はいつも欲望から始まっている。

「なぜこんな不便が放置されているのか」「この技術でもっとできることがあるはずだ」という、道理に背くような欲求が出発点だ。

それを合理的に整理していくのが後の作業であり、整理ができたときに初めてビジネスの形になる。

欲望なき合理性は、結局のところ大きなものを生まない。

羊很狼貪を本来の意味で捉え直せば、「道理に背いても諦めず、欲深く求め続ける姿勢」は批判されるべきものではなく、動かぬ時代を打ち破る原動力だ。

その姿勢を人生の前半に全力で発揮した人間だけが、後半に本当の意味で「豊か」になれると確信している。

若いうちの欲望は、未来への投資だ。使い惜しまないことが、最善の戦略である。

 

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植田 振一郎 X(旧Twitter)

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