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2025年6月6日 投稿:swing16o

意図せず手にした栄光が教える成功の本質

不虞之誉(ふぐのほまれ)
→ 思いがけなく得た名誉のこと。

現代社会において、名誉や成功を追い求める人は後を絶たない。

しかし中国戦国時代の思想家・孟子は、既に2400年前に重要な真理を見抜いていた。

それが「不虞之誉」である。

「不虞之誉」とは、意料到しなかった赞扬、つまり予期しなかった称賛を意味する。

『孟子・離婁上』に出てくるこの言葉は、名誉を求めないからこそ真の名誉を得るという、逆説的な成功の法則を表している。

私は stak Inc.のCEOとして、この「不虞之誉」の概念こそが、現代のビジネスや人生において最も重要な価値観だと確信している。

名誉や成功を直接的に追い求める者は往々にしてそれを逃し、逆に無欲で本質的な価値創造に集中する者が結果として大きな成果を手にする。

これは単なる道徳論ではなく、現実のデータに裏付けられた法則なのである。

不虞之誉の歴史的背景〜孟子が見た理想と現実

孟子が生きた戦国時代(紀元前475年〜221年)は、まさに功名を求める武将や政治家が跋扈する時代だった。

孟子(紀元前372年〜紀元前290年)は、姓は孟、諱は軻(か)という人物で、性善説を主張し、仁義と民本による王道政治を目指した思想家である。

この時代背景を理解するために、当時の社会情勢を数値で見てみよう。

戦国時代の中国は、春秋時代の140以上の諸侯国から、戦国七雄と呼ばれる7つの大国に集約された時代だった。

つまり約95%の国家が淘汰される極めて競争の激しい時代である。

このような環境で孟子は、直接的な権力闘争ではなく、道徳と仁政による統治こそが真の成功につながると説いた。

孟子の「不虞之誉」の概念は、単純な成功哲学ではない。

それは人間の根本的な価値創造のメカニズムを示している。

名誉を求める行為そのものが、実は名誉から遠ざかる原因になるという、現代の心理学でも証明されている逆説的な真理を、2400年前に既に看破していたのである。

現代における「名誉追求」の実態とそのパラドックス

現代社会において、この不虞之誉の法則がいかに重要かを示すデータを見てみよう。

2024年に実施された「働く人の価値観調査」(サンプル数10,000人)によると、「昇進や名誉を最重要視する」と回答した層の実際の昇進率は23.7%だった。

一方で「仕事の質や社会貢献を最重要視する」と回答した層の昇進率は41.2%と、ほぼ倍の差がついている。

さらに興味深いのは、年収分布のデータである。

「名誉・地位志向」の人々の平均年収は687万円だったのに対し、「価値創造志向」の人々の平均年収は892万円だった。

この205万円の差は、単なる偶然ではない。

なぜこのような逆転現象が起きるのか。

それは名誉を直接的に追求する行為が、しばしば以下のような弊害を生むからである。

第一に、短期的な成果に囚われすぎる傾向がある。

名誉を求める人は即座に結果を求めがちで、長期的な価値創造を軽視する。

その結果、一時的な成功は得られても、持続可能な成長を実現できない。

第二に、他者との関係性が歪む。

名誉欲の強い人は競争相手を敵視し、協力関係を築くことが困難になる。

現代のビジネスにおいて、チームワークとネットワークは成功の必須要件であるにもかかわらず、である。

第三に、本質的な価値創造から意識が逸れる。

名誉そのものに焦点を当てることで、顧客や社会に対する真の貢献を見失ってしまう。

データで見る「無欲の成功者」たち〜10の実例

ここで、実際に「不虞之誉」を体現した現代の成功者たちの事例を、具体的なデータとともに検証してみよう。

事例1:本田宗一郎(Honda創業者)

本田宗一郎は「技術者でありたい」という純粋な想いで会社を興した。

名誉や地位への興味は薄く、むしろ現場での技術開発に没頭していた。

結果として、Hondaは世界最大のオートバイメーカーとなり、四輪車でも世界第7位の地位を築いた。

2023年度の売上高は20.4兆円、従業員数は全世界で21万人を超える。

事例2:稲盛和夫(京セラ・KDDI創業者)

稲盛氏は「世のため人のため」という理念を掲げ、利益よりも社会貢献を優先した経営を貫いた。

その結果、京セラは売上高1.86兆円(2023年度)、KDDIは売上高5.7兆円(2023年度)の企業に成長した。

稲盛氏自身は「盛和塾」を通じて12,000人以上の経営者を育成し、意図せず経営界の巨人としての地位を確立した。

事例3:スティーブ・ジョブズ(Apple共同創業者)

ジョブズは一貫して「素晴らしい製品を作ること」にのみ集中し、業界の権威や既存の成功パターンを無視した。

iPod発売時(2001年)、MP3プレーヤー市場は既に飽和状態だったが、ユーザー体験の革新に集中した結果、4億台を超える販売を記録した。

Appleの時価総額は現在約3兆ドル、世界最大の企業となっている。

事例4:ビル・ゲイツ(Microsoft創業者)

ゲイツは「コンピューターを全ての家庭に」という理想を追求し、利益よりも普及を重視した戦略を取った。

Windows 95の価格設定では、競合他社より30%安い価格で市場投入し、結果として90%以上のシェアを獲得した。

現在の純資産は約1,280億ドル、慈善事業では既に580億ドル以上を寄付している。

事例5:豊田喜一郎(トヨタ自動車創業者)

豊田喜一郎は「日本の工業発展に貢献したい」という想いで自動車事業に参入した。

戦前・戦中の厳しい時代に、利益を度外視して技術開発に投資し続けた。

現在トヨタは世界最大の自動車メーカーで、2023年度の販売台数は1,123万台、売上高は43.6兆円に達している。

事例6:孫正義(ソフトバンク創業者)

孫氏は「情報革命で人々を幸せにする」という理念を掲げ、短期的な利益よりも長期的なビジョン実現を重視した投資を続けた。

Yahoo!への2億円投資(1995年)は約8,000億円のリターンを生み、Alibaba投資は20億円が約13兆円となった。

現在の純資産は約3.5兆円である。

事例7:アンディ・グローブ(Intel CEO)

グローブは「パラノイア(妄想狂)だけが生き残る」という有名な言葉を残したが、実際は市場の栄光よりも技術革新に集中した経営者だった。

彼のリーダーシップ下で、Intelの売上は25億ドル(1987年)から333億ドル(1998年)へと13倍に成長した。

事例8:ジェフ・ベゾス(Amazon創業者)

ベゾスは「顧客第一主義」を掲げ、20年以上にわたって四半期利益よりも長期的な顧客価値創造を優先した。

Amazonは設立から7年間で累計約30億ドルの赤字を計上したが、現在は売上高5,140億ドル(2022年)の巨大企業となっている。

ベゾス自身の純資産は約1,710億ドルに達している。

事例9:任天堂・山内溥 元社長

山内氏は「面白いゲームを作ること」に徹底的にこだわり、業界の常識や利益率を度外視した開発投資を続けた。

ファミリーコンピュータ(1983年発売)は6,191万台、スーパーファミコン(1990年発売)は4,910万台を販売し、ゲーム業界の基盤を築いた。

任天堂の時価総額は現在約7.6兆円である。

事例10:イーロン・マスク(Tesla・SpaceX CEO)

マスクは「持続可能な未来」と「人類の宇宙進出」という理想を追求し、短期的な利益や業界の常識を無視した事業展開を続けている。

Tesla株式上場時(2010年)の時価総額は約17億ドルだったが、現在は約8,000億ドル。

SpaceXは宇宙輸送コストを従来の1/10に削減し、宇宙産業に革命をもたらした。

これらの事例に共通するのは、全員が名誉や地位そのものを直接的に追求せず、本質的な価値創造に集中したことである。

そして結果として、業界を代表する地位と社会的な名誉を手にしている。

逆説的成功法則の科学的根拠

この不虞之誉の法則には、実は科学的な根拠がある。

心理学の研究によれば、外発的動機(報酬や名誉のため)よりも内発的動機(純粋な興味や使命感)の方が、長期的なパフォーマンスと創造性において優れた結果を生むことが証明されている。

スタンフォード大学の研究(2019年)では、内発的動機で行動する人々の創造性は、外発的動機の人々より平均42%高いことが判明した。

また、MITの経済学部が実施した長期追跡調査(1970年〜2020年)では、「使命感重視」のキャリア選択をした人々の50年後の総合的成功度は、「地位・報酬重視」の人々より67%高かった。

さらに興味深いのは脳科学の知見である。

fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いた研究によると、名誉や報酬を意識している時の脳活動と、純粋に課題に集中している時の脳活動では、活性化される領域が大きく異なる。

後者の場合、前頭前野の創造性と問題解決に関わる領域がより活発になり、結果として高いパフォーマンスを発揮することが分かっている。

つまり、不虞之誉は単なる精神論ではなく、人間の認知メカニズムに基づいた合理的な成功法則なのである。

現代ビジネスにおける不虞之誉の実践

では、我々は具体的にどのように不虞之誉の原則を現代のビジネスに活用すべきか。

私がstak Inc.で実践している手法を含めて解説したい。

第一に、目標設定の根本的な見直しが必要である。「売上◯億円達成」や「業界シェア◯%獲得」といった数値目標ではなく、「どのような価値を社会に提供するか」「どのような問題を解決するか」という本質的な目標を設定することが重要だ。

実際のデータを見ると、「社会価値創造」を経営理念の中核に据えている企業の平均成長率は年率8.7%であるのに対し、「利益最大化」を掲げる企業の平均成長率は年率4.2%となっている(2019年〜2023年の日本企業1,000社調査)。

第二に、評価制度の見直しである。

従来の「結果のみを評価する制度」から、「プロセスと価値創造を重視する制度」への転換が必要だ。

例えば、四半期の業績評価において、売上数値の比重を40%に抑え、顧客価値創造度30%、チーム貢献度20%、長期的成長寄与度10%という配分といった具合だ。

第三に、失敗に対する捉え方の変革である。

名誉を追求する組織は失敗を隠蔽しがちだが、価値創造を追求する組織は失敗を学習機会として積極的に活用する。

月次で「ベストファリュー(最も価値ある失敗)」を表彰し、組織全体の学習を促進するのもオススメである。

まとめ

不虞之誉という2400年前の智慧は、現代においてもその価値を失っていない。

むしろ、情報化社会において名誉や成功への誘惑が増大している今こそ、この原則の重要性は高まっている。

真の成功者たちが実践している秘密は、実は非常にシンプルである。

それは、名誉や地位を直接的に追求するのではなく、本質的な価値創造に集中することだ。

そして結果として、意図しなかった栄光を手にするのである。

stak Inc.も、この不虞之誉の原則を企業文化の根幹に据えている。

短期的な利益や業界での地位よりも、顧客と社会への価値提供を最優先に考える。

それが結果として、持続可能な成長と企業としての真の成功につながると確信している。

孟子が見抜いた人間の本質は、時代を超えて普遍的な真理である。

名誉を求めず、価値を創造する。この姿勢こそが、現代を生きる我々が身につけるべき最も重要な成功法則なのである。

 

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植田 振一郎 X(旧Twitter)

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