News

お知らせ

2025年2月2日 投稿:swing16o

ダイバーシティ社会に残る課題と解決策

万緑一紅(ばんりょくいっこう)
→ 多くの男性の中に、ただ一人女性がまじっていること。

万緑一紅の語源は中国の唐代の詩から来ているとされている。

杜甫や李白といった詩人たちが自然美を詠んだ詩の一節に「緑の葉が生い茂る中に鮮やかに咲く赤い花」という意味合いが登場し、それが日本に伝わり「多数の中のたった一つの目立つ存在」を表す言葉として定着したと言われる。

この言葉がいつしか女性一人を指す表現へと変化した背景には、歴史的に男性社会が圧倒的主導権を握っていた事実がある。

日本においても古代から武家社会、江戸時代、明治維新を経て高度経済成長期に至るまで、社会の中心は常に男性だった。

政治、経済、軍事、産業のいずれの場面でも「男が外で働き、女は家を守る」という構造が当然のように受け入れられてきた。

その中で「紅一点」は、世間の中心が男性だという前提がないと成立しない表現でもある。

つまりこの言葉自体が、暗に男性優位の世界観を反映しているわけだ。

そもそも万緑一紅は「女性が男性集団の中に一人だけいる」という状態を美的に捉えている面もある。

しかし一方で、女性を飾りや華のように扱い、本質的な活躍の場を与えないというニュアンスも伴うため、これを男尊女卑の象徴と見る意見は根強い。

実際に国際連合や世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数を見ても、日本は先進国の中でも低い順位を推移しており、この現状が今なお「男性だらけの集団に女性が一人」という構造を生んでいる現実を裏付ける。

2023年に発表された世界経済フォーラム(WEF)のGlobal Gender Gap Reportでは、日本は146カ国中125位という評価が下された。

政治分野の女性進出や経済分野での管理職比率が極端に低いことが主な要因とされている(2021年は156カ国中120位)。

先進国の中ではかなり下位に位置し、いまだ「紅一点」の状況が当たり前にある社会であることを示すデータと言える。

男尊女卑の文化

男尊女卑とは文字通り「男性を尊び、女性を卑しむ」という考え方であり、日本に限らず世界中で根強く存在した文化でもある。

中国の儒教思想には「男が外で功を立て、女が家を守る」という考えが早くから見られ、それが江戸時代の日本に取り入れられた結果、儒教的道徳観や封建制度と相まって男尊女卑が定着したとされる。

こうした男尊女卑の価値観は明治維新後の文明開化を経ても、完全には消え去らなかった。

大日本帝国憲法の時代には、女性の参政権は認められなかったし、第二次世界大戦が終わって日本国憲法が施行されてからも、社会構造全体をひっくり返すには至らなかった。

戦後の高度成長期においても「男は仕事、女は家事や育児」という役割分担が一般的であり、学校教育や企業の雇用制度にもその意識が色濃く反映された。

現代においては男女雇用機会均等法や女性活躍推進法といった法整備は進んだものの、依然として仕事や昇進の機会において女性が不利になっている場面は多く報告されている。

総務省が公表している就業構造基本調査(令和2年)によると、管理職に占める女性の割合は約14%と、他の先進国と比べ低い水準にとどまる。

米国では30%前後、北欧諸国では40%を超えることも珍しくない点を踏まえると、依然として日本の男女間格差は大きい状況だ。

ダイバーシティが叫ばれる現代社会における男尊女卑の実情

ダイバーシティとは単に女性比率を上げるだけでなく、人種や性的指向、年齢、国籍など多様なバックグラウンドを尊重する考え方を指す。

本来であれば、企業経営や政策決定においても多様な視点を取り入れることでイノベーションを促進し、組織全体の競争力を高める効果が期待できる。

事実、コンサルティング大手のマッキンゼーが2015年に発表したレポート「Diversity Matters」によると、ジェンダーダイバーシティが高い企業は低い企業に比べて財務パフォーマンスが15%以上高いというデータが示された。

しかし日本では、表面的にはダイバーシティを推進する動きが強まっているにもかかわらず、男尊女卑の残滓が各所で見受けられる。

具体例としては、会議の席で意思決定権を持つ男性が圧倒的に多く、女性は事務作業や議事録係に回されるだけというケースが依然としてある。

また、スタートアップの世界でも投資家とのやり取りやメディアへの露出が男性中心になりがちで、女性起業家に対して「珍しい」「紅一点」といった目で見られることが多い。

あたかも女性が特別な存在かのように扱う時点で、まだまだ真のダイバーシティとは程遠い状況だ。

さらにITやIoT、AIといった技術分野でも、大学や大学院の理工系に進む女性比率が低いことが指摘されている。

文部科学省の令和3年度学校基本調査によれば、理工系の学部で学ぶ女子学生の比率は全体の15%前後にとどまる。

欧米の有名大学では30〜40%ほどの例もあることを考えると、技術分野においても「紅一点」にならざるを得ない環境が生み出されている。

結果として、企業の研究開発部署やスタートアップのCTO職においても男性が圧倒的に多数を占める構造は変わらない。

形骸化しているダイバーシティの取り組みへの批判と本質

ここ数年、日本企業でも「女性取締役を増やす」「女性社員の割合を一定にする」といった取り組みが散見される。

だが、その多くは制度やルールを表面的に整えただけの形骸化したダイバーシティになっているケースがある。

例えば上場企業が女性取締役を1名置いていても、実質的な意思決定権を持たないポジションだったり、重要な会議には呼ばれないといった事例が報告されている。

こうした「数合わせ」「見せかけ」のダイバーシティでは、組織の意識も変わらず、結果的に経営パフォーマンスの向上にもつながりにくい。

実際に経済産業省がまとめた企業ヒアリング調査(令和2年度)では、女性リーダーの登用を行った企業のうち、「経営層や既存組織の理解が追いつかず混乱が生じた」と答えた企業が一定数あったとの報告がある。

具体的に言えば、意思決定の場で女性役員が発言しても、他の男性役員が意図を汲み取らないまま議論を終わらせるなど、結局は従来の「男性中心の意思決定」が温存されているわけだ。

真のダイバーシティを実現するためには、企業文化そのものを変革し、組織内のコミュニケーションを再構築する必要がある。

単に「女性を増やす」だけではなく、個々のバックグラウンドや考え方を尊重し合う風土づくりが求められる。

さらに、女性側にも自分の意見を臆せず発信し、意思決定に関わっていく姿勢が不可欠だ。

そのためには教育や研修制度、メンタリングなど長期的かつ地道な取り組みが必要になる。

なぜ男尊女卑の文化がなくならないのか?

男尊女卑が依然として根強く残る背景には複数の要因がある。

まず家制度に由来する伝統的な価値観が無意識に受け継がれている点だ。

家父長制とも呼ばれる男中心の家族形態は日本の社会構造に深く浸透しており、明確に差別的発言をしなくても、その考えが行動や制度の端々に表れる。

保育や育児、家事の分担率が男性より女性に偏ることも、男尊女卑の残滓の一例といえる。

次に、教育やメディアの刷り込みも大きい。

小さい頃から絵本やテレビ番組で「男の子は活発、女の子は優しく控えめ」というステレオタイプを見せつけられることで、無意識に男女の役割分担を当たり前と思い込んでしまう。

大人になってからも、企業の広告やドラマなどで男性上司と女性部下という構図ばかりが描かれたり、家事をするのは女性というCMが多いといった事例がある。

さらに日本企業の構造上、年功序列で上に立つ層が依然として古い価値観を持った男性だという現実もある。

変革を進めるには、組織のトップが自ら意識を変え、必要な改革を断行するリーダーシップが欠かせない。

だが古参の男性層が「今さら考えを改める必要はない」と思ってしまうケースでは変化が進まない。

そういう意味では、男尊女卑がなぜなくならないのかと問われれば「社会全体で無意識に当たり前として受け入れているから」という答えになる。

男尊女卑解消へ向けた具体的アクション

形だけの女性登用やルール制定で終わらせないためには、まずトップダウンでの強いコミットが必要だ。

企業経営者として、自分自身が男尊女卑の構造を内面化していないかを自問自答し、必要であれば自ら意識と行動を改める決断を下す。これが社会全体に影響を与える出発点になると考えている。

IoTやAIなどの先端技術を活用して、透明性を高める仕組みを導入することも有効だ。

例えば社内コミュニケーションをデジタル化し、発言回数や意見の採用率を統計的に可視化すれば、男性ばかりが発言している実態や女性の意見が反映されていない状況を具体的に把握できる。

stak, Inc.でも、IoTデバイスと連携する形でミーティングの音声を解析し、誰がどのくらい発言したかを可視化するプロトタイプを検討中だ。

こうしたテクノロジーの導入は、無意識のバイアスをあぶり出す上で大きな武器になる。

教育現場でも、理系分野の女子学生を増やす仕組みづくりが求められる。

奨学金やインターンシップの優先枠を設けるなどして、女性がITやIoT、AIに興味を持ち、実践的スキルを身につける環境を整えることが重要だ。

これにより、将来的に研究開発やエンジニアリングの現場で女性が自然に増えていく好循環が生まれると思っている。

また、社内にメンター制度を設けることも有効策の一つだ。

特に女性社員が少数派の場合、孤立感を覚えやすい。

少人数であっても、先輩社員や役員クラスがメンターとなりスキルアップやキャリア形成をサポートすれば、女性の意欲や実力を引き出す可能性が広がる。

海外のテック企業ではメンタリングとスポンサーシップ制度が充実しており、そこにダイバーシティ推進の一つの成功要因があるという報告(マイクロソフトの事例など)もある。

まとめ

万緑一紅は元来、美しい自然や詩的な表現を象徴する言葉だったが、日本においては男性社会の中に「女性がたった一人」いる状況を示す言葉として根付いた。

この事実からもわかるように、ダイバーシティが求められる現代でもなお、男尊女卑の文化はさまざまなかたちで残っている。

法制度の整備や、女性の登用数を増やすだけでは問題は解決しない。

形骸化した取り組みではなく、企業のトップや社会全体が自らの無意識のバイアスに向き合い、真に多様性を受け入れる風土をつくることが何より重要だ。

stak, Inc.のCEOとして言えることは、AIやIoT、さらにはクリエイティブやマーケティングの力を駆使し、少人数でも大きな成果を出す組織づくりを実践していくということだ。

その中で、性別や年齢、国籍といった固定観念にとらわれない働き方を作り上げたいし、そこから得た知見を積極的に発信していきたいと考えている。

万緑一紅という概念を掘り下げると同時に、男尊女卑の現状を明らかにし、真のダイバーシティ実現のための一歩を一緒に踏み出してほしいと思う。

社会全体が変化に向けて動き出せば、万緑一紅という言葉がやがてその歴史的な役割を終え、真の意味で多様性が尊重される未来が訪れるはずだ。

 

【X(旧Twitter)のフォローをお願いします】

植田 振一郎 X(旧Twitter)

stakの最新情報を受け取ろう

stakはブログやSNSを通じて、製品やイベント情報など随時配信しています。
メールアドレスだけで簡単に登録できます。