万古不易(ばんこふえき)
→ 永久に変わらないこと。
万古不易という言葉は、文字通り「万古(はるか昔から)不易(変わることがない)」という意味を示す。
古くは中国の思想や仏教の教えのなかでも「普遍的な真理」を指すものとして扱われてきた。
特に禅宗や儒教の思想においては、万物の本質は不変であるとする考えが繰り返し説かれてきた。
日本では、平安時代以降に漢語とともに万古不易という表現が取り入れられ、文学や思想の場面で使われた記録が残っている。
歴史を紐解くと、例えば鎌倉時代の禅の教えにおいては「世界の理は昔も今も変わらないものがある」という形で言及され、室町時代や江戸時代の武家社会においては「強い精神性や不動の信念」を表す言葉として用いられた。
江戸後期の学者・思想家の文献にも万古不易の語が散見され、変化し続ける社会のなかで見失ってはいけない根源的なもの、変わりゆく世界のなかでも変えてはならない精神性を指し示す意味を担っていた。
そもそも万古不易という概念は、古代中国に端を発する「万物は流転しながらも、その根本は不変である」という世界観を下敷きにしている。
それは孔子や孟子が説いた儒教思想、あるいは老荘思想などが複雑に絡み合って形作られた。
万物は絶え間なく移り変わるが、その背後には絶対不変の真理が存在すると考えたのである。
しかし、日本人はその考えを受容すると同時に、「移ろいと不変が共存する」という特有の感性を育んできた。
四季の巡りや自然との共生を大切にしてきた文化が、独自の形で万古不易を解釈してきたのである。
古来より短歌や俳句などで「変わらぬ美しさ」と「移ろう儚さ」の両方を表現してきたように、万古不易は決して堅苦しいだけの思想ではなく、人々にとっては「変わらないものに価値を見いだす」ための指針のような意味をもってきた。
過去には戻れない。
だからこそ、その過去を含めた積み重ねが今を、そして未来を作るというのが人間社会の真理であり、これはITやAI、IoTといった先端技術がどれだけ進歩しても動かない事実と言える。
stak, Inc.として、IoTやAIのテクノロジーを軸に革新的なプロダクトを世に問うている背景にも、「本質的に変わらないものは何か」を常に問い直す姿勢がある。
技術の流行はめまぐるしく変化するが、人々が抱える本質的なニーズは不変だという視点に立てば、「万古不易」という言葉の存在感は現代でも薄れることはない。
一方、万古不易と聞くと「保守的」「変化を拒む」というイメージを抱く人もいる。
しかし、本来の万古不易は変化そのものを否定しているわけではない。
変化とは別に、絶対に変わらない「軸」の存在を指し示す概念なのだ。
だからこそ過去を変えようとするのは無意味であり、それを受け止めたうえで「今」という瞬間に注目する必要がある。
経営やマーケティングの世界でも、変化が激しいトレンドに惑わされず、本質的な軸を保ちながらチャレンジする姿勢が重要だと多くの著名な経営者が説いている。
総務省が公表している令和三年度の社会動向調査によれば、技術の進歩に伴う働き方や暮らし方の変化は今後さらに加速する見通しがある一方、自己肯定感を高めるための「過去に対する捉え方」や「自分の軸」について再評価する動きも強まっているというデータがある。
まさに、激しい変化の荒波を乗り越えていくために、不変の軸としての万古不易が再注目されているといえる。
過去を変えることの無意味さを徹底解説
人間は誰しも「過去に戻ってやり直したい」と思う瞬間を経験する。
しかし、実際に過去を変えることはできない。
これは科学的にも証明されているとされる(一般相対性理論や量子力学などの解釈上で議論はあっても、実用的なタイムトラベルは現代では不可能とされる)。
過去の失敗や後悔に囚われてしまうと、今あるリソースを未来に向けることができず、生産性を大きく損なう原因にもなる。
過去が不変であるからこそ、人間は現在から未来へと進む動力を得るともいえる。
経営の世界でも、過去の失敗を修正するために余計なコストをかけすぎると、今打つべき手が後手後手に回ってしまうという話はよく耳にする。
失敗から学ぶことは重要だが、「失敗を無かったことにしよう」とか「過去を理想の形に書き換えよう」とする試みは時間の無駄だ。
反省の要点を素早く抽出して、未来へ向けた戦略に活かす方がはるかに建設的である。
IT業界の例で言えば、サービスのリリース時期を逃して市場のチャンスを逸してしまったケースにおいて、「あの時期に出しておけばよかった」と後悔しても何も変わらない。
それよりも、次のチャンスをどう捉えるかを考えたほうがいい。
IoT分野にしても、リリースタイミングを謝ったとして、その事実は変えられない。
にもかかわらず、過去の出来事にいつまでも囚われていれば、将来的に来る波の察知が遅れ、また同じ失敗を繰り返してしまう。
さらに、もし過去を自由に書き換えられるとしたらどうなるか。
想像上の話だが、過去の失敗をなかったことにできる世界に慣れてしまうと、人間は常にリセットボタンがあると思い、どこかで適当に生きるようになってしまう。
AIやIoT技術がどれだけ進歩しても、時間を逆戻りさせることは現実的ではないからこそ、人々は必死に今を生きる。
それが成長や革新へとつながり、最終的に大きな成果を生む原動力になる。
心理学の研究でも「カウンターファクチュアル・シンキング」という概念がある。
もしもあのとき別の行動をとっていたらどうなっていただろう、という仮定の思考は、人間が失敗や後悔から学びを得るのにはある程度効果的とされている。
しかし、その思考に執着しすぎると、動けなくなってしまう弊害が指摘されている。
過去の取り返しがつかないことを延々と悔やむのは、前進のエネルギーを削ぎ落とす要因にしかならない。
ITやAI、IoTの分野では日進月歩の変化が起きており、過去を振り返るヒマすら惜しんで新しいチャレンジをする組織が最終的に勝ち残る。
データを一つ挙げると、経済産業省の「未来投資戦略2021」によると、デジタル技術への迅速な投資がGDP成長率に直結するという報告がなされている。
つまり、過去の失敗や企業体質の古さに固執して改善に時間をかけすぎるよりも、新しい技術や市場に積極的に乗り出す企業のほうが成長しやすい傾向があることが示唆されている。
過去は過去として受け止め、今やるべきことに投資を集中させることで未来を大きく変えられるという証左ともいえる。
過去に固執するとどうなるか
過去への執着が強いと、イノベーションは起きにくい。
特に、経営やクリエイティブの現場では、過去の成功体験に縛られてしまうと新しいアイデアが生まれにくくなる。
たとえば一度ヒットした商品モデルやマーケティング手法に固執してしまうと、市場が変化しているにもかかわらず同じパターンを繰り返し、結果的に機会損失を生むことが多い。
過去を学ぶことは必要だが、それを無条件に絶対視してしまうと未来へ進む障害になる。
心理学者ロイ・バウマイスターの研究によれば、人間は「マイナスの感情や失敗体験を過度に引きずる傾向がある」という指摘がある。
ネガティブな感情は脳に強烈に刻まれやすく、そのため「後悔」や「恥」「罪悪感」などに囚われやすい。
この囚われが続くほど、人間はチャレンジを避け、リスクを取らなくなってしまう。
ITスタートアップなどはイノベーションにリスクがつきものだが、過去の失敗体験がトラウマ化して前に進めなくなるケースも少なくない。
具体的なデータとして、内閣府の調査「日本人の新規事業チャレンジ意欲」に関する統計では、過去に起業に失敗した人ほど再チャレンジ率が低いという数字が出ている。
ただし、シリコンバレーでは逆に過去に起業に失敗した人ほど投資家からの注目度が高まる場合がある。
失敗は次の成功のための糧であるという考え方が浸透しているためだ。これは文化やマインドセットの違いとも言えるが、過去に固執して前に進めない人と、過去を糧にして未来へ活かす人で結果が大きく分かれる好例である。
ブランド戦略やマーケティングの観点でも、過去に固執する企業は衰退するリスクを抱える。
たとえば、一度成功した広告キャンペーンに固執して、時代や顧客ニーズの変化に対応できずにシェアを奪われる事例は少なくない。
エンタメ業界でも、古いシリーズ作品の成功体験に縛られて大胆なリブートを拒否した結果、ファンを徐々に失うケースがある。
何十年も続く人気シリーズであっても、新しいファンを獲得するためには変化に挑戦しなければならない。
ユーザー行動や市場ニーズは常に変わり続けるからだ。
AI技術が進化するスピードも加速しており、過去と同じ手法を踏襲するだけでは取り残される危険が高い。
だからこそ、過去の実績は参考程度に留めて「今どうするか」「これから何ができるか」を常に考える。
過去を振り返る時間を最小化し、未来に向けて意思決定を加速させる組織こそが成長を続けられる。
過去に固執することの問題は、個人レベルでも社会レベルでも指摘できる。
個人の人生において、学生時代の失敗や人間関係のトラブルを引きずりすぎると、自己評価が下がって行動が委縮してしまう。
社会においては、高齢化や産業構造の変化に対して過去に構築した制度を守り続けるばかりでは、やがて停滞に陥る。
今日のようにAIやIoTが次々と新しい価値を生み出す時代には、古い前提を一掃し、新しい視点で再構築しなければならない。
繰り返しになるが、過去を無駄にする必要はない。そこに得られたデータや経験は今後の決断のための貴重な財産だ。
ただし、それを使って明日をよりよいものにするのか、それとも「あのときこうしておけばよかった」と過去に留まり続けるのかは大きな違いである。
データドリブンな経営を掲げる企業にとって、過去のKPIや業績推移は重要な指標になるが、そこから導き出される意思決定が常に未来に向かっていないと、結局は過去の延長線上でしか戦えなくなる。
未来は予測不能だからこそ今を生きる重要性
では、過去を変えることが無意味だとして、未来をどう捉えればいいのか。
結論として、未来は無数の変数に左右されるため完璧に予測することはほぼ不可能だといえる。
先の読めない時代だからこそ、今この瞬間を精一杯生き抜くことが結果的に未来をいい方向に導いてくれる可能性を高める。
近年、ビッグデータやAIを活用することで予測分析の精度は高まりつつあるが、天候や経済、国際関係、人々の嗜好といった多様な要因が絡む現実世界を完全に見通すのは難しい。
金融市場を例にとってみても、過去のデータだけをもとに完璧な投資戦略を組み立てることはできない。
想定外の出来事や人々の感情が大きく作用して相場が乱高下することは珍しくないからだ。
IoTやAI技術がどれだけ進んでも、未来の出来事を完全にコントロールすることは不可能に近い。
であれば、なおさら「今」を大切にするほうが合理的だ。
スタートアップ企業の成功例を見ると、未来の市場を厳密に読み切ったというよりは、今ある問題を素早く捉えて解決策を出し、それを継続的にアップデートしてきた結果として成功に至っているケースがほとんどである。
一分単位で状況が変わるIT業界では、とにかくスピードを重視してリリースを繰り返すことが重要になる。
大企業が長期計画を策定している間に、スモールスタートで素早く市場に投入したベンチャーがユーザーを獲得する例は数多い。
そうやってサービスの質を高めていくサイクルが、結果として大きな成果や独自のポジションを獲得する。
stak, Inc.においても、完璧な未来予測を目指すのではなく「今やるべき最優先事項は何か」という問いを常に自問している。
プロトタイプを早期に投入し、ユーザーのフィードバックを最速で得る。
そこで出た課題はすぐに解決し、次のバージョンに反映させる。
過去に学んで失敗を繰り返さないようにしつつも、未来を過度にシミュレートしすぎず、今の行動を最大化するという考え方だ。
このやり方はブランディングやマーケティングの分野でも応用できる。
将来のトレンドを占うよりも、今の顧客が何を求めているかを徹底して調べ、小さくても試作・テストを繰り返すことでブランド価値を高めていく。
大きな博打を打つのではなく、着実に今を積み重ねるほうが結果的に未来の成功確率を高める。
人間の心理面でも「今に集中する」ことは大きなメリットをもたらす。マインドフルネスの研究などで示されているように、過去の失敗や未来への不安を和らげ、ストレスを減らす効果があるとされる。
脳科学の観点からも、今にフォーカスすることは集中力とパフォーマンスを高め、生産性をアップさせることにつながるという報告がある(ハーバード大学の研究)。
もう少し具体的なデータとして、ハーバード・ビジネス・レビューがまとめた調査結果によると、経営者やリーダーが過去の振り返りに余計な時間を割くよりも、現在のプロセスを最適化することに注力した場合のほうが、チーム全体の生産性が15%以上向上する傾向が見られたという。
これは「いま直面している課題をどう解決するか」に集中したほうが成果を出しやすいという事例を裏づけるものだ。
徹底調査 今を生き抜くロジックと具体的な思考法
では、どうすれば「今を生き抜く」ことを徹底できるのか。ここでは具体的な思考法や実践法について掘り下げる。
過去に固執しないためには、まず過去と未来の両面から適切な距離感を保つ必要がある。
一つ目のアプローチは、デジタルツールを使った「過去との向き合い方」を管理するやり方だ。
例えば過去のプロジェクトデータや業績データを一定期間ごとに振り返る仕組みをシステム化することで、必要以上に後悔や反省に没頭しなくて済むようにする。
週に一回、数字をチェックしてすぐに次の計画を立てる。ダラダラと過去を振り返らないのがポイントだ。
IoT技術やBIツールなどを活用すれば、リアルタイムで現状を把握しながら素早く意思決定ができるようになる。
二つ目のアプローチは、未来予測との付き合い方だ。
AIを使った予測分析やシミュレーションは今後ますます進化するが、その結果に固執しすぎないことが大切である。
あくまでも参考情報として捉えて、実際に起きる出来事を受け止めながら最適解を見つける柔軟性を持つべきだ。
人間は完全無欠の予測を求めたがるが、予想外の出来事が起きたときこそ真価が問われる。
三つ目は「今ここに集中するためのマインドセット作り」だ。
先に挙げたマインドフルネスだけでなく、経営コンサルタントやスポーツ選手の間で実践される集中法などを取り入れるのも有効となる。
呼吸法や短い瞑想、あるいはルーティンを組み込むことで、一日の始めや大事な場面で最高のパフォーマンスを出せるようになる。
過去の反省や未来の不安に心を持っていかれそうになったら、「いま、自分ができることは何か」を問い直すように習慣づける。
四つ目はチームや組織での仕組み作りだ。
ミーティングやプロジェクト管理の場で、「過去の失敗談」のみに焦点を当てる時間は必要最小限にとどめる。
失敗を洗い出してすぐに教訓化し、その日のうちに次のプランを作るというサイクルを可能な限り短く回す。
これにより組織全体が未来志向になり、過去からの呪縛を断ち切りやすくなる。
実際に、アジャイル開発やスクラム開発を導入している企業の生産性が高いというデータも複数存在し、こうした方法論は「今」に力を注ぐために適している。
五つ目は小さな成功体験を積み重ねることだろう。
スタートアップの世界では、MVP(Minimum Viable Product)の概念に代表されるように、まず小さなプロトタイプを作り、市場やユーザーの反応を確かめる。
大きな一発逆転を狙うのではなく、小さな成功を何度も積み上げることで自信が深まり、今を大切にしながらも自然と未来を切り開いていけるようになる。
こうしたアプローチを組み合わせることで、過去に囚われず、未来の不確実性に過度に振り回されることもなく、「今やるべきこと」を淡々とこなしていく。
万古不易という概念を背景に持ちながら、時代の変化を受け入れ、今の瞬間を活かすという二つの軸を常に意識することが、結果的に自己成長と事業成長を加速させるカギとなる。
実際に、海外の研究機関がまとめた「高速成長企業の意思決定プロセスに関するメタ分析」でも、成功企業ほど「過去を断ち切るスピード」と「変化へ適応するフットワーク」の両方が高いという共通点が示されている。
これこそ、過去を変えようと躍起になるのではなく、今に集中する企業文化が競争力に直結している証拠とも言えるだろう。
まとめ
万古不易は「永遠に変わらない」ことを意味し、古代から数多くの思想家がその大切さを説いてきた。
しかし、それは決して「何も変えずに停滞する」ことを推奨するわけではない。
大事なのは、変わり続ける世界のなかでも絶対に揺るがない核を持ちつつ、今この瞬間に集中して行動し、未来を少しずつでも変えていくことだ。
過去を変えることはできないし、変える意味もない。
むしろ、過去が不変であるという事実が、人間に前を向く力を与える。
もし過去を自由に変えられるのなら、いつでもリセットできると思い、真剣に生きなくなるかもしれない。
だからこそ、今できることに力を注ぐ価値がある。
過去の失敗や後悔は決してムダにはならないが、それを悔やむためにあるのではなく、未来をより良くするためのヒントとしてだけ活用すればいい。
そして未来は多くの変数に左右され、完全な予測は不可能だ。
そのためには、瞬間瞬間の決断と行動が重要になる。経営やマーケティング、IoTやAIの領域でも、未来を見据えるよりも今ある課題をどう解決し、改善を回していくかに焦点を当てたほうが結果的に大きな成功につながりやすい。
万古不易が示す不変の価値を踏まえつつ、絶え間ない行動と挑戦を継続することで未来は開ける。
私自身、stak, Inc.のCEOとして「過去にこうしておけばよかった」と思う瞬間は無数にある。
それでも過去をやり直すことはできないし、やり直す必要もない。
失敗があるから今を必死に生きるし、そこから得た学びを活かして未来を変えられると確信している。
大事なのは、過去の呪縛から自由になり、変化の先にあるチャンスを掴みにいく姿勢だ。
IoTの技術やAIのアルゴリズムは進化し続けるが、人間の本質的な欲求や思いはそう簡単には変わらない。だからこそ、万古不易の概念がいま改めて求められているのだろう。
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