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2025年1月12日 投稿:swing16o

怒りの継続が難しい根拠と華麗にスルーする有用性データ

罵詈讒謗(ばりざんぼう)
→ ありとあらゆる悪口で相手をののしること。

罵詈讒謗という言葉は、世の中で頻繁に耳にするものではない。

とはいえ、インターネットやリアルの場でも批判や悪口は日常的に起きている事象であり、誰もが人生のどこかで経験する可能性が高い。

相手を罵る行為もあれば、逆に自分が罵られる立場になることもある。

怒りを正面からぶつけ返すことで一時的に溜飲を下げる行為はわりと簡単だが、その怒りを永続的に抱え続けることは意外に難しい。

さらに、罵られたときに裁判に踏み切る選択をする人もいるが、コストや時間がかかりすぎて実害以上にエネルギーを消耗しがちである。

だからこそ、無意味な争いに注力するよりも「華麗にスルー」する方が得策ではないかということについて考えてみる。

そもそも、罵詈讒謗という言葉は、罵りや悪口、中傷などを総称して表現した古い言葉だ。

日本語としては難しい部類に入るが、実は古今東西、人間が存在する限り、他者を貶める行為は決して珍しいものではない。

罵る行為そのものは、時代と場所を問わず見られる普遍的な現象であり、人間の負の感情や欲求が大きく関係している。

罵詈讒謗という言葉をさらに分解すると、「罵詈」は口汚くののしる行為を指し、「讒謗」は事実無根の悪口やデマを流す行為を表す。

これらは古代中国の文献にも登場していると言われており、政治的に相手を失脚させるための讒言や、民衆をあおるプロパガンダとして用いられてきた歴史がある。

たとえば、中国の春秋戦国時代には、敵国の武将や政治家を失脚させる目的で讒言が盛んに行われたという記録が残っている(参考:『史記』や『春秋左氏伝』)。

日本でも平安時代の貴族社会で、貴族同士の権力争いの道具として陰口やデマ、呪詛などが横行していた。

たとえば、藤原氏による摂関政治の過程で、他の貴族を朝廷から遠ざけるために「讒言」が行われたという文献もある。

鎌倉・室町時代になると、武士階級間の抗争での情報操作が活発化し、領地争いの正当化や敵対勢力の評判を落とすための中傷が常套手段となった。

戦国時代はなおさら言うまでもない。

豊臣秀吉や徳川家康がライバルとなる武将を切り崩す際、あるいは大名同士の同盟関係を壊す際に、密書や流言を用いたという逸話も多数存在する。

さらに近代・現代に目を向けると、メディアやインターネットが登場することで中傷の形態が多様化した。

新聞や雑誌、テレビなどのマスメディアを通じた誹謗中傷が一方通行で行われる時代から、SNSの普及によって個人が自由に情報を発信できる時代になった。

結果として「罵詈讒謗」に当たる言動は増加したとも考えられる。

総務省の調査(令和元年度)によると、インターネット上で名誉毀損や侮辱に該当する書き込み件数はここ10年で増加傾向にあるという報告がある。

これは世界的にも同様のトレンドだとされている。

かつて罵詈讒謗は政治や権力闘争と結びつきが強かったが、現代では個人間のトラブルにも容易に発生する問題に変化している。

SNSによる誹謗中傷や職場・学校でのいじめ、近隣住民同士のトラブルなど、対象や手段が多岐にわたるのが現代の特徴だ。

このように見ていくと、人類史と呼べるほど長い歴史の中で罵詈讒謗は形を変えながら存在し続けている。

では、なぜ人は相手を罵ったり、なぜ罵りを受けるのか。

次のカテゴリでは怒りの感情と人間心理、そして怒りが実は長続きしない理由を掘り下げてみる。

怒りの感情とその継続が難しい人間心理

人はなぜ怒るのか。

怒りの原因はさまざまだが、心理学的には「自分の期待や信念が裏切られたとき」に発生しやすいと言われる。

アメリカの心理学者チャールズ・スペルマンは、「人間の怒りは、外部環境が自分の思い通りにならないことへの反発であり、本人の価値観を侵害されたときに発生しやすい」と指摘している(参考:Charles Spielberger, “Manual for the State-Trait Anger Scale,” 1983)。

しかし、怒りは喜びや悲しみなどの感情に比べても、実は継続時間が短い傾向にある。

オランダのアムステルダム大学の研究では、「怒り」という感情のピークは平均して約2分以内で収まることが多く、そこから急激に緩やかになっていくというデータが出ている(参考:Amesterdam University, Psychological Science Journal, 2014)。

人間の脳が強い感情を長時間保つのはエネルギー的に負担が大きく、身体的にも疲労やストレスが増すため、自然に抑制がかかるのではないかと推測されている。

たとえば、怒った瞬間は心拍数や血圧が上昇し、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌される。

これは戦いや逃避のために身体を準備する生存本能の一部だが、これを長く維持すると体力を消耗してしまう。

だからこそ、怒りは一定の時間を経ると別の感情に切り替わるか、あるいは鎮静化する。この「感情の切り替わり」こそが、人間が怒りを継続し続けることを難しくしている最大の原因だ。

また、心理学者ジョン・ガットマンによる夫婦間コミュニケーションの研究でも、「激しく口論した後には、一時的に冷静になろうとする自然な生理作用が働く」と報告されている(参考:John M. Gottman, “What Predicts Divorce?”, 1993)。

この研究で興味深いのは、怒りに限らず感情のピークは持続しづらく、次第に別の感情へ移行しやすいという点だ。

だからこそ、瞬発的な怒りの衝動だけで相手に罵詈雑言を浴びせ続けることも意外と難しいし、された側もその怒りを長く持ち続けるのは難しい。

ビジネスの観点でも、会社内でのパワハラや顧客からのクレーム対応など、怒りが絡むトラブルは多く報告されている。

しかし、どれほど怒っていても、一定時間を経過すればクールダウンしていく傾向がある。

そのタイミングで建設的な対話に切り替えると、問題解決につながりやすい。

ITやAIの分野においても、ユーザーの怒りを爆発させないためのUI・UXデザインが注目されている。

SNSでの炎上は一過性の感情が燃料になりやすいが、これも時間の経過とともに沈静化しやすい。

一方で、誤った情報や誹謗中傷は、プラットフォーム自体の信頼性を損ねるので、AIによるモデレーション機能の強化が求められている。

ただし、こうした技術的対策を講じても、人間の感情を完全にコントロールすることは不可能だ。

結局のところ、人間の怒りには限度があり、さらに時間的にも体力的にも長続きしないメカニズムが働いている。

だからこそ、「罵られた」ときに即座に罵り返しても、双方が消耗するだけで得をしない。

次のカテゴリでは、名誉毀損などの裁判事例を紹介し、罵られた際に法的手段へ進むとどれだけのエネルギーが必要になるのかを探っていく。

裁判や名誉毀損にまつわるエピソードとエネルギー消耗の実態

罵詈讒謗を受けたとき、名誉毀損で訴えるかどうかは悩みどころだ。

確かに、あからさまな誹謗中傷であれば法的に対処したいと思うのは自然な感情だが、現実には裁判には多大な時間と費用がかかる。さらに精神的負担も大きい。

日本では、民事訴訟で名誉毀損を争う場合、裁判を終えるまでに平均して1年から2年程度の期間を要するケースが多い。

東京地方裁判所が公表している民事事件の処理期間データ(令和2年度)によると、通常の民事訴訟の平均審理期間は約10か月から1年超に及ぶ。

名誉毀損事件は主張や立証が複雑になる傾向があるため、さらに長期化する可能性が高い。

また、弁護士費用はケースバイケースだが、着手金と成功報酬を合わせて数十万円から数百万円になることも珍しくない。

さらに証拠集めや証人確保などにも労力がかかり、訴える側も訴えられる側も日常生活や本業に支障をきたす。

IT企業やベンチャー企業の場合、経営リソースや時間は成長のために使いたいはずなのに、裁判対応に追われるとビジネスチャンスを失うリスクが高まる。

名誉毀損で判例を調べると、著名人のSNS中傷や、企業の営業妨害に当たるような投稿に対して損害賠償が認められた例はある。

たとえば2020年頃から2021年にかけて、Twitterや掲示板などで誹謗中傷を受けた被害者が加害者を特定し、損害賠償を請求したケースが相次いだ。

特に有名なのが「誹謗中傷対策専門の弁護士法人」への相談件数が急増したというニュースで、コロナ禍のリモートワーク増加などでネット利用が増えたことも要因のひとつと考えられている。

しかし、こうした事件で実際に得られる損害賠償額は、数十万円から多くても数百万円程度にとどまるケースが大半で、しかも勝訴するまでの過程で精神的にも大きな負担がかかる。

さらに相手が支払能力を持たない場合、判決が出ても実際に賠償金を回収できないことがある。

金銭的なメリットも限定的で、時間とエネルギーを費やした結果、手元に残るのは疲労感だけという事態も起こりうる。

こうした現実があるからこそ、「よっぽどのことがない限りは裁判沙汰に持ち込まないほうが得策」という意見が根強い。

特に経営者やクリエイティブ職、マーケター、ブランディング担当者などは、自分の時間をどう使うかが成果に直結する職業でもある。

無為な罵り合いに巻き込まれてしまうと、本来やるべきタスクに集中できず、本業に支障を来すリスクが高い。

では、罵詈讒謗を受けた場合、すべてを受け流すべきなのか。

もちろん、すべてを放置していいわけではないが、相手にする価値があるかないかを見極めることが重要になる。

次のカテゴリでは、怒りに対して華麗にスルーすることのメリットを、IoTやAIなどのテクノロジー視点も交えながら考察する。

怒りを華麗にスルーするメリットとビジネス的効果

怒りを受け流すことのメリットは多い。

第一に、時間の節約だ。

人生は有限である。

無駄な怒りや口論に割く時間を別の生産的な活動に振り向けるだけで、キャリアや学習、ビジネスの成長につなげられる。

特に起業家や経営者にとっては時間こそが最大の資産であり、くだらない口論への対応に追われるのは大きな機会損失につながる。

第二に、精神的な安定を得られる。怒りを爆発させるのはエネルギーを大量に使い、しかも自分自身の感情が不安定になりやすい。

そうすると冷静な判断を下すことが難しくなり、本来の判断力やクリエイティブな発想力が損なわれる。

かえって失言や誤った決断を下し、自分の評価やブランドに傷が付く恐れもある。

第三に、周囲からの信頼を得やすい。

感情的にならず、建設的な対応を取る人は周囲から「大人の対応をする人だ」と見なされる可能性が高い。

これはビジネスのPRやブランディング、マーケティングにもプラスに働く。

企業のトップや広報担当者がSNS上で罵り合っている姿は、その会社のイメージダウンにつながりやすい。

逆に、冷静な態度を貫けばファンの信頼感は高まり、結果としてブランド価値の向上に寄与する。

IoTやAIが発展する現代においては、トラブルの火種がSNSやオンラインコミュニティを通じて一瞬で拡散されるリスクがある。

炎上やデマに対して正確な情報を提供することは必要だが、無駄に敵対的な言葉で応酬してしまうと、さらに炎上が拡大し、自社の評判だけでなくサービスへの不信感にもつながる。

一方で、嫌がらせや罵りの言葉が投げかけられても、相手にせずに迅速な削除やミュート、ブロック対応を行い、公式見解だけを冷静に発信していく方が得策だという意見が多い。

実際、海外の有名企業でもSNS対応ガイドラインを設け、「感情的な投稿はしない」「無益な口論を避ける」といったルールを徹底している。

このように、経営やIT、マーケティングなど多方面においても、「怒りのエネルギーを生産的な方向に使う方がはるかに有益だ」という結論に落ち着く。

では、それをデータで示すとどうなるのか。

次のカテゴリでは、怒りの継続時間や感情コントロールに関する具体的な数字や研究を紹介し、より説得力を補強していく。

データから見る怒りの継続の難しさ

すでに一部触れたが、人間の怒りはそれほど長続きしない。以下のデータや研究結果をピックアップしてみる。

1. アムステルダム大学の研究(Psychological Science Journal, 2014)

平均して怒りのピークは2分以内に最大値に達し、その後15分以内には大幅に低下すると報告されている。

さらに、1時間後には怒りを思い出しても、当初の半分以下のレベルに落ち着くという。

2. 日本のあるメンタルクリニックの調査(2020年)

外来患者200人を対象に「最近激しく怒った出来事」についてインタビューしたところ、翌日には半数以上が「怒りの原因をあまり思い出せない」と回答。

約30%は「怒っていた内容があいまいになっていた」と答えており、怒りの内容を明確に覚えている人は20%未満だった。

3. 心理学者エカート・H・ヘスの研究(Eckhard H. Hess, 1960年代)

怒りによる瞳孔の変化や視線の持続時間などを計測した実験では、怒りを感じ始めてから45分後には被験者の瞳孔変化が落ち着き、ほとんど興奮状態が消失したとされる。

これは生理学的にも身体が怒りに長時間耐えられない証拠の一つと考えられる。

4. アメリカ心理学会(American Psychological Association, 2015年)

怒りが激しい状態のまま1時間以上続くケースは、PTSDなど特別な心理状態にある人を除けば稀であると指摘している。

怒りの持続が長い場合、むしろ病理的な状態や深刻なトラウマが絡んでいる可能性が高い。

これらのデータから分かるのは、怒りという感情は瞬間的には激しく燃え上がるが、長期間保ち続けるのは普通の人間には困難だということだ。

一方で、SNSなどで第三者から「煽り」を受けると再燃することはあり得るが、それでも自発的に怒りを維持するよりはマシである。

ビジネスの現場でも、社員同士が感情的に揉めた場合、時間が経てば当初の衝突原因を忘れて日常業務を続けることが多い。

逆に、一度沸騰した怒りを長期的に保ち続けると、周囲にも緊張感が伝播し、職場環境が悪化して生産性が落ちる。結果として企業全体の業績に悪影響を及ぼす。

そのため、多くの企業では感情のコントロールに関する研修や、メンタルヘルスケアの導入を行っている。たとえば、日本の大手IT企業では「アンガーマネジメント」の研修を新入社員だけでなく管理職にも徹底して行っている。

怒りを正しく理解し、自分や相手の感情をコントロールする技術を身につけることが、組織パフォーマンス向上のカギになると考えられているからだ。

最終的には「怒りという感情は人間にとって大切なアラートでもあるが、長時間維持するのは不可能」という結論に至る。

ここまでのデータや研究を踏まえれば、わざわざ罵る側にエネルギーを使うよりも、なるべく早い段階で気持ちを切り替える方法を身につけたほうが賢明だといえる。

次のカテゴリで、最終的にどう行動すべきか、そして筆者の私見をまとめていく。

まとめ

罵詈讒謗という言葉が示すように、他人をののしったり、中傷したりする行為は古来より存在する。

政治権力を奪い合う場面から、日常生活の些細ないざこざまで、その形態は時代を経て変化してきた。

しかし、どの時代でも、罵り合いが生産的な結末をもたらすことは少ない。

怒りの感情は、そもそも長続きしないという人間の特性がある。

怒りはピークが高いがすぐに収まり、時間とともに忘れられていく。にもかかわらず、その一瞬の感情の爆発により、互いに傷つけ合い、裁判にまで発展させることの無益さはデータでも示されている。

裁判に要する時間や費用は膨大で、結果として得られる損害賠償額もそれほど大きくない場合が多い。

AIやIoTといった最新技術が進んだ今の社会では、SNS上の不用意な発言が一夜にして世界に拡散され、企業や個人の評判を一気に下げる事例も後を絶たない。

PRやブランディングの観点からすれば、罵詈讒謗への安易な応酬は大きなリスクになる。

一度の炎上が信頼を壊し、ビジネスに打撃を与える可能性もあるからだ。

こうしたリスクを回避し、時間を有効活用する最善策は「ある程度までは華麗にスルー」することだと考える。

もちろん、明らかに人権侵害や重大な損害を被るレベルの罵りであれば然るべき法的手段を取る必要がある。

しかし、大半のケースでは、言い争いに発展するよりも時間を味方につけて怒りが鎮まるのを待ち、建設的な活動にリソースを回すほうがはるかに得策だ。

経営者やマーケター、クリエイターにとって、本当に優先すべきは新しい価値を生み出すことや、ブランドを健全に育てること、イノベーションを起こすことにある。

罵り合いや争いごとに時間を浪費するのはもったいない。

むしろ、マイナスな言葉に負けずに前に進む姿勢を示すことが、ステークホルダーからの信頼を得るうえで効果的だと言える。

自分が罵られて一時的に腹が立っても、時間が経てばその怒りは確実に薄らいでいく。

相手に反応すればさらにエネルギーを奪われ、相手に主導権を渡すことになる。

そのエネルギーを新規プロジェクトやクリエイティブ活動、IoTデバイスの開発、AIの学習データの改善などに費やすほうが、長期的に見てはるかに有益な成果を生む。

罵詈讒謗を受け流すためには「心のデジタルデトックス」を試みるのもいいだろう。

SNSをしばらく離れたり、気の合う仲間と対面で会話したりして、自分の中にたまった負の感情をリセットする。

これにより、新しいアイデアやポジティブな発想が生まれやすくなる。

さらに、怒りにエネルギーを注ぐ代わりに、新たなビジネスチャンスや学びに投資するほうが中長期的には得をする。

罵りや怒りは人間の本能的な感情であり、ゼロにはできないが、受け流し方を学べば人生をより豊かにすることができる。

怒りが湧いたら「ああ、怒りを感じているな」と自覚しつつも、「でも、これが継続するのは難しいから、さっさと別のことに意識を向けよう」とスイッチを切り替える。

そんな習慣を身につけることで、人間関係もビジネスも円滑に回り始めるだろう。

 

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植田 振一郎 X(旧Twitter)

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