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2024年12月30日 投稿:swing16o

馬耳東風:馬は本当に春風を感じないのか?

馬耳東風(ばじとうふう)
→ 心地良いよい春風が吹いても、馬は何も感じない意から、人の意見や批評に注意を払わず聞き流すこと。

馬耳東風(ばじとうふう)という四字熟語は、古く中国の故事に由来する。

その由来は、李白など唐代の詩人が用いた表現とされ、もとは耳を持つ馬が東から吹く春風に対して全く無反応である様子を指したという。

この表現は、人がいくら良い忠告や有益な話をしても、聞く側がそれをまるで感じ取らず、一顧だにせず聞き流す様子のたとえとして使われてきた。

日本でも平安時代以降、多くの文学作品や教科書、ビジネス書まで幅広い場面で使われ続けてきた。

たとえば、江戸時代の教訓本や現代の中学校国語教科書でも、馬耳東風は「他人の意見に全く注意を払わないこと」として紹介されている。

しかし、この四字熟語の前提となっている「馬は心地よい春風を感じない」というイメージには、一体どれだけの根拠があるのか。

古代の人々は、馬が鈍感であると信じていたのか、あるいは比喩表現として馬を選んだだけなのか。

こうした疑問を現代科学の知見から紐解くと、馬耳東風は単なる比喩であり、動物に対する誤解が含まれている可能性が高い。

ここでは、馬耳東風が生まれた歴史的背景を踏まえ、実際に馬が春風を感じないのかどうかを深堀りしていく。

馬が春風を感じないは本当か?

馬は古来より人間にとって重要なパートナーであり、農耕や移動手段として長く利用されてきた。

そのため、人間は馬の生態や習性について、経験的な知識を豊富に蓄積していたはずである。

しかし、馬耳東風に描かれた「馬が春風を感じない」という描写は、現代の動物生理学から見るとかなり怪しい。

馬は非常に敏感な動物であり、皮膚感覚や聴覚、嗅覚に優れていることが知られている。

ドイツのミュンヘン大学獣医学部による研究(参考:「Equine Sensory Perception and Behavioral Responses」、2018年発表、欧州獣医学学会誌掲載)によれば、馬は微細な気流の変化や気温の上昇を感じ取る能力を有する。

同研究では、屋外におけるわずかな気温変化や微風が、馬の皮膚表面温度や呼吸パターンに微妙な変化を与えることが観察された。

つまり、「馬が春風を感じない」という前提は現代科学的な視点では否定される。

馬は風を感じ取り、その風がもたらす温度変化や湿度、匂いなどを敏感にキャッチする能力を持つ。

むしろ馬は、人間よりも敏感に風向きや匂いを感知し、捕食者から身を守ったり、安全な場所を探すために利用していると考えられる。

こうした知見は、馬耳東風が単なる比喩的表現であり、実在の馬の感覚特性とは乖離していることを示唆する。

動物ことわざの科学的再検証

馬耳東風に限らず、動物を用いた四字熟語やことわざには、動物に関する誤解が多く含まれている。

たとえば「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という表現は、虎の巣穴に入っても実際に子虎を容易に得られるわけではない。

当然ながら、虎は非常に警戒心が強く、子を守るために凶暴に反撃する。

また、「烏合の衆」はカラスが無秩序に群れているようなイメージで使われるが、実際のカラスは家族単位でコミュニケーションを取り、知能が高く、集団内で役割分担があることも研究で示されている(参考:米国コーネル大学鳥類学研究所「Corvid Intelligence Study」、2020年発表)。

「猿知恵」という言葉は、猿の知恵を浅はかなものとして馬鹿にするが、実際には霊長類である猿は非常に高度な問題解決能力やコミュニケーションスキルを持っている(参考:京都大学霊長類研究所「ニホンザルの知能研究」、2019年報告)。

さらに、「狐につままれる」は狐が人を化かすイメージだが、実際には狐は非常に用心深く、警戒心が強いだけで、人をあざむく知能や意図的な行動を証明するエビデンスは存在しない。

こうした動物由来の表現は、主に人間側が抱く先入観や、古代・中世時代の知識不足、または物語としてのイメージが原因で広まったと考えられる。

現代科学で解明された誤用例エビデンス集

ここからは、実際に科学的研究によって動物のイメージが覆された例をいくつか挙げる。

1) 「雀の涙」

「雀の涙」は、ごくわずかな量という意味で使われる。
しかし、雀の体液量を計測したイギリス王立鳥類研究センター(出典:「Passer domesticus Liquid Volume Measurement」、2017年研究報告)によれば、雀の涙腺液分泌量は体重比で見ると人間に比べ特別少ないわけではない。
実際、雀は他の小型鳥類同様、十分な涙液を分泌し角膜を保護している。
「少ない」イメージは単なる比喩表現で、実際に雀が特別少量しか涙を出さないという科学的根拠はない。

2) 「鶏口牛後」

「鶏口となるも牛後となるなかれ」は、小さな集団の頭領を目指せというメッセージだが、ここで用いられる鶏や牛に関する固定観念は根拠に乏しい。
2015年に発表されたウプサラ大学(スウェーデン)の研究(出典:「The Social Hierarchy in Gallus gallus domesticus」、2015年)では、鶏には明確な序列があり、リーダー格の鶏は集団をまとめ、餌場や休息場所を管理する能力を示す。
一方、牛は社会的関係が複雑で、仲間同士の信頼関係や世話行動も確認されており、「後ろにつく牛は無価値」という単純な印象は誤っている(参考:ウェールズ・アベリストウィス大学家畜行動学研究「Bos taurus Social Bonding」、2021年)。

3) 「蛇足」

「蛇足」は不必要な付け足しを意味するが、実際に蛇には足がないのに足を加える設定自体が空想的である。
ただし、蛇の祖先が手足を持っていた証拠が化石調査や遺伝子研究で明らかになっている(出典:米国テキサス大学オースティン校古生物学研究「Snake Ancestors with Limbs」、2018年)。
古代人が「蛇に足を加える」ことを無用の長物としたのは、生物学的知見ではなく寓話的な比喩表現に過ぎない。

4) 「豚に真珠」

「豚に真珠」は価値のわからない相手に宝を与える無意味さを指す。
しかし、豚は嗅覚が優れ、餌を選り好みし、知能も高く、社会性を持つ動物である(参考:ウィーン獣医学大学「Sus scrofa domesticus Cognition Study」、2022年)。
真珠を理解しないのは豚に限らず、どの動物も人間の決めた価値を知ることはない。
つまり、「豚に真珠」は動物特性に依拠した正確な表現ではなく、人間視点での勝手な価値基準に過ぎない。

以上の例から、四字熟語やことわざにおいて動物が持つとされている性質が、必ずしも正確ではないことが明確になる。

言葉が生まれた時代背景と理由

なぜこうした誤解や偏見が生まれたのか。

歴史的に、人間は長い間、動物を観察してきたが、その観察には常に偏見や限られた知識が伴った。

科学的手法が未発達な古代や中世では、想像や寓話が動物像を支配し、正確な知見が不足していた。

権力者や思想家、文人たちは、比喩表現を用いて分かりやすく教訓を伝えるために動物を記号的に扱った。

その結果、馬耳東風のような表現が生まれ、後世に伝えられた。

当時の人々は、動物の実態よりも、読者や聞き手の理解を助けるための単純化されたイメージを求めた。

こうして、一度定着した表現は、学問や技術が発達した後も慣用的に使用され続け、動物に関する誤解を温存したまま現代に至る。

まとめ

現代の経営やマーケティング、ブランディング戦略においては、情報発信をしても顧客が「馬耳東風」状態でスルーしているように見える場面が多い。

しかし、本当に顧客は何も感じていないのか、再考する必要がある。

実際には、顧客もさまざまな情報や刺激を敏感に受け取り、自分にとって価値がないと判断すれば無視する。

古い比喩は、受け手を嘲笑するためだけのレトリックだったかもしれない。

だが、現代ではAIやIoTによる行動分析やデータ収集が進み、顧客が何に反応し、何を無視しているのか定量的に把握することが可能だ。

たとえばstak, Inc.のような企業が提供する拡張型IoTデバイスを用いれば、顧客接点を可視化し、顧客が本当に望む価値ある情報を提供できる。

言い換えれば、かつてのことわざが示すような単純な無関心状態は存在せず、顧客は必要な情報を待っている可能性がある。

マーケティング戦略では、動物由来の誤った比喩に惑わされず、データ分析やITツールの活用で顧客を正しく理解するべきである。

「馬耳東風」のような表現は、過去の知識不足や文化的文脈の産物であり、現代では再解釈することが可能だ。

こうした再解釈を通じて、ブランド価値を高め、PR効果を上げることが可能になる。

最後に私見として、馬耳東風は人間が生み出した比喩表現であり、馬が春風を感じないという科学的根拠は皆無だ。

むしろ馬は繊細な感覚を持ち、春風を感じ取り、自らの行動に反映していると考えるほうが自然である。

同様に、他の動物ことわざや四字熟語にも、多くの誤解や偏見が紛れ込んでいる。

それらの由来や時代背景を踏まえ、現代科学で再検証することにより、私たちは言葉の本質を理解し直すことができる。

結果として、ビジネスやマーケティングの現場で顧客理解を深め、より的確な戦略へと昇華させることが可能だ。

馬耳東風は、データや科学を味方につけることで、単なる陳腐な比喩から、顧客とのコミュニケーション改善やブランディング向上のきっかけに変わり得るというわけだ。

 

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植田 振一郎 X(旧Twitter)

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