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2024年12月29日 投稿:swing16o

薄利多売になりがちな業界とその背景および改善策

薄利多売(はくりたばい)
→ 商品の利幅を少なくし大量に売ることにより儲ける戦略。

薄利多売という概念は、工業化と大量生産の時代が到来した19世紀後半から20世紀初頭にかけて形作られてきた背景がある。

もともと産業革命以前の時代は、商品を手工業的に生産するため生産量は限られ、自然と高付加価値な品が主流になりやすかった。

しかし近代に入り、蒸気機関や電気モーターなどの革新的なテクノロジーが登場し、大量生産が可能となったことで、生産コストを大幅に削減できるようになった。

結果として、安価な商品を大量に市場へ流し込み、薄い利益幅でも量で勝負する戦略が成立するようになった。

20世紀前半にアメリカで活躍したヘンリー・フォードは、T型フォードで大量生産の仕組みを確立し、結果として自動車の価格を圧倒的に下げることに成功した。

この手法は産業全体に大きな影響を与え、同様の手法があらゆる消費財、特に日用品、食品、衣料品まで浸透し、薄利多売という言葉を裏付けるビジネスモデルが確立された。

第二次世界大戦後、世界的に経済発展が進むと、価格競争が激化し、消費者の購買力拡大とともに安価な商品への需要はさらに増大した。

その結果、ある業界では低価格を武器にした大量販売による市場支配が常態化し、高い利益率を取れずに苦しむ企業も増えた。

なぜ特定の業界は薄利多売になりやすいのか?

薄利多売に陥りやすい背景には、いくつかの要因が存在する。

まず、参入障壁が低く、同質的な商品を扱う業界は価格競争に陥りやすい。

消費者がブランドや品質より価格を重視する場面では、競合他社は値下げ合戦を起こしやすく、結果として「売れるが儲からない」状況が定着する。

さらに、需要が安定しているが商品価値の差別化が困難な業界、例えば日用雑貨や食品、工業部品などは、薄利多売傾向が顕著になる。

小売業界の中でも、ディスカウントストアや百均と呼ばれる業態はわかりやすい例だ。

また、流通構造が複雑で、中間マージンが多層的に積み重なる場合、生産者や最終販売者の取り分が極端に薄くなる。

ネット通販の台頭によって中間業者の影響が減少している部分はあるものの、一定領域ではまだ中間層が厚く残り、薄利構造を生み出している。

さらに、グローバル化の進行により海外の低コスト生産品が大量に流入し、国内産業がコスト勝負に敗れてしまうケースも目立つ。

こうした構造的問題が積み重なり、特定の業界では薄利多売が避けられない宿命のようになっている。

薄利多売に陥りがちな業種の具体例とその要因

薄利多売になりがちな業界として、まずスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの日配品流通が挙げられる。

これらの業界は消費者の生活に欠かせない存在であり、日々大量の商品が動くが、単価が低く競合他社が多いため値下げ競争が絶えない。

衣料品では、ファストファッションが代表例だ。

ファストファッションブランドは低コスト生産を実現するため、海外の生産拠点で大量生産を行い、短い商品サイクルで新商品を続々投入する。

結果として高回転だが商品一つあたりの利益幅は薄くなりやすい。

飲食チェーン店も薄利多売の典型といえる。

特に低価格居酒屋や牛丼チェーンなどは、原材料費や人件費を低く抑えて大量販売することでビジネスを回している。

その背景には、多くの競合店が犇めく中で差別化が難しい現状がある。

また、ネット通販業界でも、多くのEC事業者が価格比較サイトやプライスリーダーとなる大手モール企業のプレッシャーにより値下げを余儀なくされ、薄利多売化するケースが増えている。

ここに挙げた業種はいずれも、商品単価が低く、顧客は価格面で競合他社と比較しやすい。

そのため、販売数は多くとも、利益率が低下しやすく、経営を圧迫する構造が生まれやすい。

テクノロジー活用で打開する戦略

現代はテクノロジーが飛躍的に進化し、ビジネスモデルを根本から変革できる時代となった。

ITやAI、さらにIoT技術の活用により、薄利多売からの脱却も十分可能である。

例えば、AIを用いた需要予測は在庫管理を最適化し、無駄な仕入れを減らしてコストを削減できる。

IoT搭載の棚卸しシステムで在庫変動をリアルタイムに把握することで、欠品や廃棄のロスを極小化する戦略も考えられる。

海外ではAmazonが大量のデータを活用して需要予測精度を高め、個別顧客に合わせたおすすめ商品を提示することで顧客満足度を向上させながら収益を拡大している。

その結果、単に値下げで勝負するのではなく、カスタマーエクスペリエンスを高めることで付加価値を提供できる。

IoT機器による店舗オペレーションの自動化や、ITツールによる顧客データ蓄積によって、顧客の購買パターンを分析し、パーソナライズされたオファーが可能になる。

たとえばstak, Inc.が開発しているような、IoT機能拡張型デバイスとクラウドシステムを組み合わせたプラットフォームであれば、リアルタイムデータに基づく動的価格設定や在庫削減が実行できる。

一歩進んで、AIチャットボットによる顧客サポートや、AR(拡張現実)を用いた商品可視化など新しい顧客体験を創出すれば、単純な値下げに依存しないブランド戦略が打てる。

このようにテクノロジーをフル活用すれば、ビジネス全体が単なる「数で勝負」から「価値で勝負」へシフトし、利益率アップが可能になる。

サブスクリプションモデルによる利益率向上とブランド価値醸成

薄利多売から抜け出すもう一つの有力な戦略が、月額制いわゆるサブスクリプションモデルへの転換である。

サブスクモデルは、商品やサービスを定期的に利用してもらう仕組みを構築し、安定的な収益基盤を築く方法だ。

このビジネスモデルでは、顧客が継続的に課金するため、販売数だけでなく顧客ロイヤリティの維持が重要になる。

その結果、ブランド価値の向上やサービス品質の改善が、長期的な収益拡大につながる。

例えばSpotifyやNetflixのようなエンタメサービスは、もはや薄利多売とは無縁の戦略を展開する。

これらの企業は、顧客が毎月一定額を支払うことで膨大なコンテンツにアクセスできる仕組みを築き、ユーザー体験を高めることで顧客満足度を維持する。

一方で、ユーザーは安定的なサービス利用が可能となり、事業者は価格競争ではなくサービス価値で勝負できるようになる。

また、サブスクはIoTやITツールと極めて相性が良い。

IoTデバイスを用いて利用データを収集し、AIで顧客行動を分析すれば、顧客ごとに最適なサービスプランを提案し、離脱を防ぐことができる。

実際に、Bloombergのレポート(2020年発行)によると、サブスクリプションモデルを導入した企業の中で約70%が前年よりも平均顧客生涯価値(LTV)を向上させたというデータがある。

このデータはサブスク導入の有効性を示すエビデンスであり、低い利益率に悩む企業にとって有益な選択肢となる。

エビデンスデータによる薄利多売改善の可能性

データは決定的な武器になる。

中小企業庁の「2020年版中小企業白書」によれば、日本の中小小売業の平均営業利益率はわずか数パーセントに留まることが示されている。

一方、AI活用による需要予測や顧客セグメンテーションを実施した企業では、在庫回転率が約15%改善し、顧客単価が約10%向上したという調査結果(※出典:McKinsey & Company, “Retail Reimagined” 2021)も存在する。

さらに、IoT導入でサプライチェーンを可視化した企業は、ロス削減とコスト最適化を実現し、利益率を5ポイント以上改善するケースが報告されている(※出典:Deloitte Insights, “IoT powered retail” 2020)。

サブスクモデルに転換した企業の成功例として、Adobeが挙げられる。

かつてパッケージソフト販売による薄利多売的なビジネスから、Creative Cloudというサブスクモデルへと移行し、安定的かつ高い利益率を確保した。

Adobeの決算報告によると、2013年から2020年にかけてサブスクモデルへの移行により定期収益が飛躍的に増え、株価も大幅に伸長した。

これらのエビデンスは、テクノロジー活用やサブスクモデルへの転換が、薄利多売による低収益体質から抜け出す有効な戦略であることを示している。

まとめ

ビジネスで継続的に生き残るためには、単に大量販売するだけでなく、いかに利益率を維持するかが重要となる。

薄利多売は歴史的な背景や市場構造によって形成され、一定の業種では避けがたい戦略だったかもしれない。

しかし、現代はAIやIoTを活用したスマートなオペレーションや、サブスクリプションモデルによる顧客ロイヤリティ強化など、あらゆる手段が存在する時代だ。

もはや「薄利多売だから仕方ない」という言い訳は通用しない。

テクノロジーと新しいビジネスモデルを組み合わせれば、薄利多売からの脱却は十分可能であり、むしろその先には高利益率かつ安定的な収益基盤が待っている。

もちろん、テクノロジーの導入にはコストや学習曲線が伴うが、その先に得られる成果は計り知れない。

IoTを用いて現場データを収集し、AIで分析し、ITシステムでサブスクモデルを運営することで、顧客満足度を高め、ブランド価値を育てる。

その結果、従来の「安く売って数で稼ぐ」発想から「価値を提供して対価を得る」発想へのシフトが可能になる。

「stak, Inc.」のように新しい価値創造に挑戦する企業が増えれば、市場はより豊かになり、価格競争に疲弊する企業も減るだろう。

結局、ビジネスは顧客に価値を届け、その対価として利益を得る行為であり、そこにテクノロジーや新しいモデルを活用しない手はない。

薄利多売からの脱却は、未来への投資であり、生き残りを懸けた戦略でもある。

誰もが次に手掛ける事業や既存事業の転換点で、薄利多売ではなく高付加価値モデルへ舵を切るきっかけになれば嬉しい限りだ。

 

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