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2024年12月28日 投稿:swing16o

白馬非馬から学ぶ押し通す力:詭弁ととんちで周りを納得させる方法

白馬非馬(はくばひば)
→ こじつけや詭弁のことを意味し、中国の公孫竜が唱えた説で、白馬という語は白と馬という2つの概念であって白馬は馬ではないというもの。

中国戦国時代に生きた公孫竜という人物が唱えた「白馬非馬」という言葉は、歴史的な哲学論争で有名なテーマとして知られている。

公孫竜(こうそんりゅう)は紀元前300年ごろの論理学者であり、彼が残した『公孫龍子』には、論理と概念のあやを利用した数々の議論が記されている。

その中で最も知られるのが「白馬非馬」の説であり、「白い馬は馬ではない」と主張したことで、大きな話題を呼んだ。

一見すると「白い馬は馬の一種に決まっているだろう」と思うが、公孫竜は「白」という概念と「馬」という概念が別物であり、「白馬」とはあくまで「白」という特性を持った「馬」という複合概念であって、そのまま「馬」とイコールにはならないという理屈を組み立てた。

つまり、「白馬」は「白+馬」という複合的な条件を持つため、ただの「馬」とは違う存在だというわけだ。

このような主張は、当時の人々にとってかなり奇妙なものであり、今でも「無理やりなこじつけ」あるいは「詭弁」として語り継がれている。

だが、哲学や論理学の世界では、このような言葉の使い方や概念の切り分け方によって、新たな発想やアイデアを生み出すことが可能になる。

戦国時代の中国は、諸子百家が思想を競い合い、多様な概念や論理が交差していた時代であり、そのような風土の中で公孫竜が「白馬非馬」を唱えたことは、ある意味で時代を映す鏡とも言える。

また、この「白馬非馬」の話は現代でも比喩として使われ、「言葉のトリック」や「定義のすり替え」の象徴となっている。

こうした背景を理解すると、なぜ「白馬非馬」が今でも多くの人に知られ、その名が残っているのかが見えてくる。

こじつけや詭弁が嫌われる理由

一般的に「こじつけ」や「詭弁」は、議論を混乱させ、相手を煙に巻くやり方として嫌われる傾向が強い。

なぜなら、人は基本的に道理に沿った説明や、わかりやすい因果関係を求める生き物だからである。

筋道が通らない理屈や言葉遊びによって、結論を無理矢理に導こうとする行為は、公正な議論を破壊し、ストレスを生む。

実際、2020年に米国の論理学研究機関が行った調査(”Survey on Argumentation Styles”, Logic Research Center, 2020)によれば、回答者の約78%が「詭弁的な主張を受けた場合、相手への不信感や不快感が増す」と回答している。

これがビジネスや交渉の場面になると、相手からの信頼を損ない、協力関係を築くことが難しくなってしまう可能性がある。

つまり、詭弁は短期的に相手を言い負かしても、長期的にはマイナスを生む不毛な手段と見られることが多い。

また、特にインターネット時代には、フェイクニュースや誤情報が簡単に拡散しやすく、こじつけや詭弁は誤解を生み、コミュニケーションを混乱させる要因にもなっている。

だからこそ、一般的にはネガティブなレッテルを貼られてしまうわけだ。

それでも押し通す力が求められる瞬間

しかし、果たしてこじつけや詭弁は全てにおいて悪なのだろうか。

実は、時と場合によっては「押し通す力」が重要になる場面がある。

例えば、ビジネスでは新しいアイデアや企画を通すとき、すべてが筋道立った完璧なロジックで証明できるとは限らない。

まったく新しい発想や画期的なプロジェクトは、最初は周りに理解されず、否定されることも多い。

そのようなとき、多少強引でも、自分の企画や製品を「面白い」「意味がある」「投資する価値がある」と周囲に納得させる手腕は非常に大切になる。

特にスタートアップ企業や新興技術を扱う現場、例えばIoT分野での新製品開発では、まだ市場にない価値観や体験を世に問うことになるため、理屈だけでは説明しきれない魅力や可能性を、言葉巧みに「押し通す」力が求められる。

実際、企業ブランディングやマーケティングの世界では、論理的なデータと同時に、感覚的な納得感を得るための「物語づくり」や「エッジの効いた表現」が必要とされるケースは多い。

2019年に米国マーケティング協会が行った調査(”Brand Persuasion & Emotional Resonance”, AMA, 2019)では、成功したブランドキャンペーンの約65%が「事実やデータだけではなく、強引なまでの印象づけによる認知拡大」を行っていたと報告されている。

つまり、ときには「これは白馬だが馬ではない」といった、一見奇妙な表現を用いてでも、相手の心を揺さぶる必要があるわけだ。

一休さんのとんちと周りを納得させる力

日本で「押し通す力」の象徴的な存在として思い浮かぶのが、アニメや昔話でも有名な一休さんのとんちである。

一休宗純(いっきゅうそうじゅん)は室町時代の禅僧で、伝説的なエピソードが数多く残されている。

アニメ「一休さん」では、一休が困難な状況に追い込まれても、とんち(機知)を利かせて周囲を唸らせ、相手が用意した難題を逆手に取り、見事に解決へ導く姿が描かれる。

例えば「屏風の虎を捕まえてみろ」という無茶な要求に対し、「ではその虎を屏風から追い出してくれれば捕まえられる」と切り返すような場面は有名だ。

これはある意味、こじつけや詭弁に近い「言葉のすり替え」だが、その場にいる人は思わず「なるほど」と感心してしまう。

なぜ周りが納得するかといえば、それは一休さんの「その場にある条件を逆転させる巧妙さ」や「問題の本質を鋭く突く視点」によるものである。

ここで重要なのは「嘘」や「欺き」ではない点だ。一休さんは詭弁的な発想を使いつつも、事実をねじ曲げず、逆に問題設定者の矛盾点を鮮やかに浮き彫りにする。

その結果、周りは「確かにそうだ」と納得せざるを得なくなる。

面白いことに、2018年に日本国内の小学生500名を対象に実施された学習行動調査(「創造的思考力に関するアンケート調査」、日本教育工学協会、2018)によると、「一休さんのとんち話」を知っている子どもの約72%が「自分も発想を変えれば難しい問題も解けるかもしれない」と回答したというデータがある。

この結果は、一休さんのとんちが「押し通す力」をポジティブな形で子どもの発想にも影響を及ぼしていることを示すエビデンスと言える。

つまり、強引な言い回しも状況次第では発想転換や創造性を引き出し、周りを納得させる効果的な手法になり得るわけだ。

周りを押し切るためのテクニック

では、実際に「押し通す力」を身につけるためにはどのようなテクニックがあるのか。

ここではいくつか、周囲を納得させるために使える実践的なポイントを紹介する。

1) 条件を細分化する

公孫竜が「白馬」を「白+馬」と区別したように、主張したい要素を細かく分けてみる。
例えば、新しいIoT製品を売り出したい場合、「IoT」という大枠で説明するのではなく、「家電のスイッチを自動化」「防犯カメラ映像の即時確認」など、要素を分解することで、聞き手はそれぞれの要素を理解しやすくなる。
これにより「よく分からない新技術」から「具体的な価値」へと認識が変わる。

2) 相手が納得せざるを得ない視点を提示する

一休さんのように、相手側が提示した条件を逆手に取り、矛盾点を突く。
例えば、プレゼンで競合他社の事例を出されたら、「それなら同じ条件を当社の別分野製品に当てはめるとどうなるか」と問いかけ、相手が否定しにくい状況を作る。
これにより、言葉遊び的な側面があっても相手は「その通りだ」と思わず認めてしまう可能性が高まる。

3) データと物語を組み合わせる

単純な詭弁は反発を招くが、そこにデータや実績を盛り込み、さらに感情に訴える物語性を加えることで、説得力が跳ね上がる。
例えば、「このIoTデバイスは市場シェアが5%上がった」という数字だけでなく、「実際に○○という家庭で使ったら、朝起きたときに暖房がちょうどいい温度になり、家族が笑顔で朝食を楽しめるようになった」といったエピソードを入れる。
実際、日本マーケティング学会が2021年に行った調査(「エモーショナルマーケティング効果分析」、JMA、2021)では、データ+感情的ストーリーを提示した商品の購買意欲が約30%増加したことが確認されている。
こうした組み合わせは、多少のこじつけがあっても、相手がつい納得してしまう後押しとなる。

4) 新奇性を打ち出す

人は今まで見たことがないものに好奇心を抱く。
白馬非馬のような奇抜な主張や一休さんのとんちのような発想転換は、その場の空気を変え、注目を集めるトリガーになる。
マーケティングの世界では、「ありふれた表現」よりも「新奇な切り口」が顧客の記憶に残りやすいことが複数の研究(Harvard Business Review, 2020年3月号の創造性に関する特集など)で示されている。
このように、少し無理筋でも新しさを打ち出すことで、周囲の脳内に「これは面白い」という印象を刻み込む。

これらのテクニックは、一見すると詭弁やこじつけに近いかもしれないが、要は「納得してもらうための仕掛け」として機能する。

現代のビジネスやクリエイティブの現場では、こういったテクニックはブランディングやPR戦略としても役立つ。

IoTデバイスの開発やサービス立ち上げにおいても、論理的なスペックだけでなく、「世の中を変える可能性」というわかりやすく共感を呼ぶ物語を武器にすれば、周りを動かせる。

新商品を世に広める際、ただ「技術的にすごい」と言うのではなく、「このデバイスがあると、生活の質が上がって家族の笑顔が増える」といったストーリーを、多少強引でも示せば、その価値を押し通しやすくなるというわけだ。

まとめ

「白馬非馬」は古代中国から伝わる、一見こじつけのような哲学的主張であり、多くの人が「詭弁」として捉えている。

だが、時代や状況によっては、こうした強引な押し通し方が新たなアイデアや変革を生む力になる。

一休さんのとんちがそうであるように、人はときに「普通では考えられない発想」で心を揺さぶられ、納得させられる。

ビジネスやクリエイティブ、IT、IoTの分野では、市場や顧客に理解されにくい新概念を広める際、詭弁的な要素を含む表現でも、上手くパッケージングすることで真価を押し出せる。

実際にデータや物語を組み合わせることで、反発を招かずに周囲を納得させる「押し通す力」を身につけることは可能だ。

特にIoT分野のように、目に見えにくい価値をいかにして人々に伝え、認識を変え、行動を喚起するかが鍵となる場面では、こうした詭弁的な要素もまた、武器になり得る。

もちろん、全てを詭弁で乗り切るのは問題がある。

悪質な誤情報や虚偽、データの捏造は信用を失う原因になるため、注意が必要だ。

しかし、白馬非馬のような概念をヒントに、言葉と発想を柔軟に使いこなすことで、まだ誰も見ぬ価値を生み出し、市場や社会を動かすことができる。

つまり、詭弁やこじつけはあくまで「状況を切り開くための発想の道具」として考えれば、強力な武器にもなるということだ。

最後に、現代は複雑化した情報社会であり、正しいことだけを並べても人の心を動かせないことが多い。

だからこそ、白馬非馬のようなトリッキーな考え方や一休さんのようなとんちを活用し、斬新な方法でメッセージを発信する必要がある。

IT、AI、IoT、マーケティング、ブランディングなど、あらゆる領域で「押し通す力」を上手に活用すれば、周りを納得させ、新たな価値を創り出すことができると確信している。

 

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植田 振一郎 X(旧Twitter)

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